今井雅人の「どうする? どうなる? 日本経済、世界経済」

日銀追加緩和は今回なくても近々あるか!? 米ドル高相場にならないと思う理由とは? ブログ

日銀追加緩和は今回なくても近々あるか!? 米ドル高相場にならないと思う理由とは?

■日経平均は1000円ほど、米ドル/円は3円ほど上昇 前回のコラムでは、「円高・株安の動きがいったん落ち着いて、少し円安・株高になる可能性が高い」との見通しを立てていました。

【参考記事】

●日銀の追加緩和あっても効果は一時的!問題は長期化…戻りはしっかり売っていく(1月21、今井雅人)

 この1週間を見ると、ほぼ想定どおりの動きになっています。

 日経平均は、1000円ほど上昇。

日経平均 日足(出所:株マップ.com)

 為替相場も米ドル/円で3円程度、円安の方向に向かいました。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

■短期筋のポジション調整が起きて相場が反転 一気に相場が一方向に進んだあとは、短期筋の投資家のポジション調整が起きやすいため、相場も反転するということが頻繁に起きますが、今回も例外ではなかったようです。

 前回のコラムでご紹介したIMM(国際通貨先物市場)のポジションも、さらに円買いが増えていましたが、これが良い示唆になったと思います。

【参考記事】

●日銀の追加緩和あっても効果は一時的!問題は長期化…戻りはしっかり売っていく(1月21、今井雅人)

IMM(国際通貨先物市場)のポジション状況(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)

■米ドル高相場になっていかない理由は? さて、今後についてですが…

2015年に中国経済の減速が中国以外の新興国経済に打撃を与える。また、米国の利上げが重なれば、さらなる新興国からの資金流出を招き、景気減速をもたらすリスクが生じてくる。したがって、米国も利上げペースを鈍化せざるを得なくなってくるのではないか

 という見通しを私は立てました。

 それが「米ドル高になっていかない原因にもなってくる」、こう考えていました。

【参考記事】

●証券会社の上昇予想は話半分で読むべき。日経平均1万5000円、米ドル/円は110円も(2015年12月25日、今井雅人)

●ドル/円120円~121円台はなぜ買いなの?安易な新興国通貨への投資は止めよう!(2015年12月17日、今井雅人)

■2016年、FOMCの利上げペースは鈍るかも 1月27日(水)、2016年初めてのFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されました。金利は、予想どおり据え置かれています。

 声明文の中では、「世界の経済・金融情勢を注視している」とした上で、「そうした情勢が労働市場やインフレ、また見通しのリスクバランスに対してどのように影響するか精査している」としています。

 これは、前回の声明文よりは、世界経済の影響をより深刻にとらえているという表れとなっています。

 これまでFOMCは、「2016年に0.25%の利上げを4回実施する」との見通しが主流でありましたが、これで少しペースが落ちるかもしれないという印象を受けています。

 利上げのペースが鈍ってくるとすれば、やはり、米ドル高相場には、なかなかなりにくいということではないでしょうか。

米ドルVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル VS 世界の通貨 日足)

 中国でありますが、相変わらず株式市場は絶望的な…
日銀の追加緩和あっても効果は一時的! 問題は長期化…戻りはしっかり売っていく ブログ

日銀の追加緩和あっても効果は一時的! 問題は長期化…戻りはしっかり売っていく

■値動きは荒いままだが、一方的な円高の流れはストップ 前回のレポートで、今回の株安・円高の動きは、あまりにも動きが急であることから、早晩、いったん終了するのではないかという見方を紹介しました。

【参考記事】

●月曜朝方の突っ込みで流れが変わった?でも下げ止まっても2016年は強気になれず(1月14日、今井雅人)

 その後、株価は下落が続くこともありましたが、円相場の方は、動きは荒いままであるものの、一方的な円高の流れはいったん収まっています。

世界の通貨VS円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)

■株価も反発、ある程度、円安方向へ向かう可能性あり 下のIMM(国際通貨先物市場)のポジションにもあるとおり、投機的なポジションは、すでに円買いに向かっているので、さらに大きく突っ込む可能性は低いのではないかと考えています。

IMM(国際通貨先物市場)のポジション状況(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)

 ですから、少し、株も反発、為替市場もある程度、円安方向に向かう可能性も十分あると考えています。

日経平均株価 日足(出所:株マップ.com)

世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)

■日銀金融政策決定会合で追加緩和などされれば… 戻りのメドを考えるのは非常に難しいのですが、この問題がスタートした出発点にまで戻ることは考えにくいと思います。米ドル/円では120円、日経平均では1万9000円あたりまで戻るのは、正直難しいと思うのです。

 ただし、来週1月28日(木)~29日(金)に実施される日銀の金融政策決定会合において、今回の状況に対応して緊急の対策、たとえば、緊急の金融追加緩和策などが講じられれば、戻りはかなり大きくなってくるかもしれません。

 来週の週末は、十分注意をしておいてもらいたいです。

 しかし、ここで1つ…
月曜朝方の突っ込みで流れが変わった? でも下げ止まっても2016年は強気になれず ブログ

月曜朝方の突っ込みで流れが変わった? でも下げ止まっても2016年は強気になれず

■どうしても、この流れが続くとは考えられない 2016年は、年初から中国経済の減速、原油価格の急落などを原因として、世界の金融市場に激震が走っています。

 2016年は、この2つが大きなテーマになるということを2015年の年末に予想していたことは、前回のコラムでお話をしました。

【参考記事】

●急激な円高は一服か。けれど2016年は強気相場にならない。1月に日銀追加緩和も…(1月7日、今井雅人)

●証券会社の上昇予想は話半分で読むべき。日経平均1万5000円、米ドル/円は110円も(2015年12月25日、今井雅人)

 しかし、年初からあまりにも急に、これらのことが起きており、この流れがこのまま続くとは、どうしても考えられません。

■月曜日の朝方に突っ込んだ時、その流れはいったん終了へ 今週、1月11日(月)の朝方、米ドル/円相場は東京時間が始まる前に、大きく米ドル安・円高に向かう局面がありました。

 米ドル/円は、一瞬116.70円あたりまで下落しました。しかし、東京時間に入ってから、すぐに117円台に戻っています。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 今までの経験則ですが、ある一定の流れができているときに、週明けの月曜日の朝方にさらに突っ込んで行った時、その流れがいったん終わるということがよくあります。

 今週、11日(月)の動きを見ていると、今回もそういう相場になりそうだなと感じています。

■相場は、底値を固める動きになってくる 11日(月)以降も、相場は不安定でありますが、少なくとも一方的な下落傾向は止まっています。

 IMM(国際通貨先物市場)のポジション動向を見ても、米ドル/円は、一転してドルショートに転換しています。

IMM(国際通貨先物市場)のポジション状況(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)

 ポジションの動向から考えるとすると、これからポジション調整による米ドル安・円高というのは起きないということになります。

 相場は、いったん底値を固めるような動きになってくるのではないでしょうか。

■一気に株高・円安に向かうにはサプライズが必要だろう ただ、これをもって相場が一気に反転して株高・円安に向かうというのは、ちょっと難しいと思っています。

日経平均株価 日足(出所:株マップ.com)

世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)

 戻るような動きがあったとしても、大幅なものにはなりにくいのではないかと考えています。

 もし、本格的に戻る展開になるとすれば、前回のコラムでお話をしたように、日銀が2016年1月、追加緩和に踏み切るというようなサプライズが必要になってくると思います。

【参考記事】

●急激な円高は一服か。けれど2016年は強気相場にならない。1月に日銀追加緩和も…(1月7日、今井雅人)

 さて、その後の展開ですが…
<i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>急激な円高は一服か。けれど2016年は強気</i> 相場にならない。1月に日銀追加緩和も… ブログ

<i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>急激な円高は一服か。けれど2016年は強気</i> 相場にならない。1月に日銀追加緩和も…

■クリスマスに書いた2016年の相場予想は、円高・株安 みなさん、明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 さて、2015年のクリスマスに当コーナーで、2016年の相場予想を書きました。

【参考記事】

●証券会社の上昇予想は話半分で読むべき。日経平均1万5000円、米ドル/円は110円も(2015年12月25日、今井雅人)

 簡単にまとめれば、2016年は原油価格がさらに下落。中国経済は、落ち込む。米国は利上げをしていくものの新興国への影響、ハイイールド債券(※)への影響を考慮しなければならず、利上げペースは鈍る。

 そうした環境のもと、為替は円高、株価は下落する可能性が高い。

 こういうものでした。

(※編集部注:「ハイイールド債」とは、格付けのランクが低く、元本割れリスクが高い代わりに高利回りの債券のこと。ジャンク債などと、ほぼ同じ意味で使われる)

■いきなり予想が的中し、中国でサーキットブレーカー発動 年が明けまして、1月4日(月)から、いきなり予想していたことが起きてしまいました。

 中国の景況指数が予想を下回ったことをきっかけに、取引初日から中国の株価が急落し、中国人民元も急落しています。

中国人民元/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:中国人民元/円 4時間足)

 景況指数が予想を下回ったといっても、48.9の予想に対して、48.2と大した差でもありませんし、そもそも、それほど普段は重要視されていない経済指標です。

 それがこれほどの激しい相場の原因となってしまうというのは、結局、元々何かのきっかけがあれば、崩れそうな環境にあったということなのでしょう。

 上海の総合株式指標は、2016年から1日の変動幅が7%になったら、自動的に取引が停止される、いわゆるサーキットブレーカー制度が採用されています。

中国CSI300指数 1時間足(出所:CQG)

 そして、1日7%下落して制度が適用されてしまうという事態がいきなり2日間も起こるという、信じられないようなことが起きています(※)。


(※編集部注:上海株式市場では1月4日に続き、1月7日もサーキットブレーカーが適用された)

■産油国のチキンレースが起きて、原油価格は下落 原油価格の方も、中国経済の落ち込みで下落をしていますが、これも実はきっかけに過ぎません。

 下のグラフを見ていただけるとわかりますが、今、世界的な景気の低迷で原油の需要が落ち込んでいるにもかかわらず、各国は原油価格の下落分を量産で補おうとするため、供給は逆に増えてしまっています。

(IEA(国際エネルギー機関)公表のデータより、ザイFX!編集部が作成)

 その結果、需要と供給の推移を見ると、ワニの口のように開いていっているのがわかると思います。

 また、産油国のチキンレースが起きてしまっているのです。これでは原油価格が下落するのは当たり前でしょう。

 OPEC(石油輸出国機構)も、今や指導力をまったく失っており、誰もこの需給調整ができない状態に陥っています。であれば、今後は、採算が合わなくなった企業などで倒産、あるいは撤退していくことが連鎖的に起きるまでこの傾向は続いてしまうのではないかと思っています。

 中国がおかしくなっていることを受けて…
<i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>証券会社の上昇予想は話半分で読むべき。</i> 日経平均1万5000円、米ドル/円は110円も ブログ

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■1年を振り返ると「行って来い」の展開だった 2015年も残すところ、わずかとなりました。みなさんにとって良い1年でしたでしょうか?

 1年を振り返ってみると、日本の株式市場も、年初来で見て多少上昇してはいますが、それほど勢いがあるわけではなく、行って来いの展開となりました。

日経平均 週足(出所:株マップ.com)

 為替市場も年間を通して見ると、あまり大きく動いていないという結果となっています。

米ドル/円 週足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)

■「わっしょい相場」は、もう期待できない いろいろと原因があるとは思いますが、まず、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などの公的資金による株買い・円売りが2015年の秋口で、ほぼ終わってしまったことが大きかったと思います。

【参考記事】

●9月米利上げの可能性は、まだ五分五分!この先、イケイケ相場にならない理由とは?(9月3日、今井雅人)

●FOMC後の相場の動きをシミュレーション!利上げは10月か12月へ持越しの可能性大(9月17日、今井雅人)

 それまでの「わっしょい相場」は、ある意味、政府による官製相場であったので、これからは、もう、そういう期待ができないということを頭に入れておいた方が良いと思います。

【参考記事】

●日経平均2万円達成で官製相場も終盤に!?調整済みのドル/円よりユーロ/ドルに注意(5月7日、今井雅人)

■証券会社の相場予想は話半分で読んでおく理由 さて、今回は2015年最後のコラムとなりますので、2016年の相場展開について考えてみたいと思います。

 年末になると、各金融機関やエコノミストなどが来年の予想を出してきます。それを見る時に、1つ気をつけておいてほしいことがあります。

 金融機関、特に証券会社の予想に関しては、話半分で読んでおくということです。

 証券会社は、株が売れないと業績が上がりませんし、外貨の商品を売るときも円安になってもらわないと、なかなか売れません。そのため、どうしても「株が上がる、円が弱くなる」という予想をする傾向があるからです。

 私もかつて、銀行で円安になると有利になる金融商品を売るために、顧客向けに円安になるという話をお願いされたことがよくありました。へそ曲がりの私は、そのたびに「それはできません」と言って、銀行をよく困らせていましたが(笑)。

■あえて「2016年は、株安・米ドル安に向かう」と考えたい その上で各専門家の予想を見ていると、「2016年は、さらに株が上昇する、さらに米ドル高が進む」という予想が大半を占めています。

 米ドル高の一番の根拠は、2016年も米国が利上げを継続していくというものです。また、日銀がさらなる追加緩和をするので、円安が進むという見方もあります。

 私は、みんなが同じことを言えば言うほど疑ってしまいます。相場の世界に長く生きてきて、みんなが同じことを言うと、逆のことが起きやすいということを肌で感じてきたからです。

 そこで、あえて「2016年は、株安・米ドル安に向かう」と考えておきたいと思います。

■中国経済は2016年も低迷。原油価格も低迷。さらに… 1つ目の理由は、中国です。

 ひと言で言えば、中国の経済は良くありません。先日講演をするために中国の経済指標をチェックし直しましたが、どれも不安だらけです。

 特に電力使用量、鉄道貨物輸送量が減少していることが、とても気に掛かります。中国経済は2016年も低迷必至です。

 そうなると、原油価格も低迷します。インフレ圧力が弱まり、米国の利上げペースは鈍くなるでしょう。

原油価格 週足(出所:CQG)

 また、米国にはもう1つ…
ドル/円120円~121円台はなぜ買いなの? 安易な新興国通貨への投資は止めよう! ブログ

ドル/円120円~121円台はなぜ買いなの? 安易な新興国通貨への投資は止めよう!

■FOMCで0.25%FF金利引き上げ! 利上げは10年ぶり! FOMC(米連邦公開市場委員会)は、12月15日(火)、16日(水)に開催した定例会合で、FF金利誘導目標のレンジをそれぞれ0.25%引き上げ、0.25%~0.5%にすることを決定しました。

 利上げは、ほぼ10年ぶりのことになります。

 同時に発表された経済予測の基になる2016年末の適切なFF金利は1.375%と、9月時点の予想と同じ数値になっています。

 つまり、2016年に1%程度の追加利上げがなされる可能性が高いということを示唆しているのです。これで、長く続いた米国のほぼゼロ金利政策が終了し、これからは金融の引き締め時期に入ったということが言えると思います。

■FOMC後は、株高・米ドル高の展開に! これに対しての市場の反応でありますが、株価も上昇し、為替市場でも米ドル高の展開となっています。

NYダウ 1時間足(出所:CQG)

米ドルVS世界の通貨 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 1時間足)

 利上げのペースも比較的ゆっくりであることがちょうどバランスが良いと、市場が評価しているということなのだろうと思います。

 しかし、ここから一気に流れができるかといえば、そうとは、なかなかならないと思います。

■米ドル高が一気に進むとは思えない理由 それは、市場が依然として、かなりドルロングになっているからです。

 IMM(国際通貨先物市場)の通貨先物ポジション動向を参考にしてみると、1~2週間で対円、対ユーロなどで一時的に米ドル安の展開になったにもかかわらず、ドルロングのポジションがまったく減っていないことがわかります。

IMM(国際通貨先物市場)のポジション状況(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)

 対ユーロでは、ユーロ/米ドルがECB(欧州中央銀行)の量的緩和が予想より少なかったことで急上昇した12月3日(木)以降も、ポジションが減っていないということは、かなり悪いコストで(つまり下のほうで売ってしまった)ユーロ売り・米ドル買いポジションが残っているということです。

 米ドル高が進むと、そういう人たちの米ドル売りが年末にかけて出てくる可能性を考えておきたいと思います。

ユーロ/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)

 もう1点は…
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■前回のコラムどおり、ECB後にユーロ急上昇! 前回のコラムで、ECB(欧州中央銀行)が緩和をした後は、ユーロ買いになるのではないかという話をしました。

【参考記事】

●ECB理事会後にユーロはどう動く?ユーロ/ドルは下値確認後ショートカバーか(12月3日、今井雅人)

 結果としては、ドイツなどの反対があったので、市場が期待していた量的緩和の積み増しにまで、ECBは踏み込みませんでした。そのため、よりユーロ買いが進み、1日で400ポイントも上昇する激しい動きとなりました。

ユーロ/米ドル 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)

 上げが急過ぎたので、投資家の多くはロスカットする機会をとらえられなかったようで、その後も少し下がると買いが入るという展開が続いています。

 こうした状況を見ると、今後はFOMC(米連邦公開市場委員会)のあとに、また調整が入って米ドルが売られるのではないか? という連想が働くのは当然であり、それによって、また、米ドルが下落するという展開につながっているのだと思います。

■FOMCは利上げ後の金融政策が注目ポイント FOMCは、来週の12月15日(火)-16日(水)であるので、その動向には十分注意をしていただきたいと思います。

 ポイントは、今回の利上げの後、金融政策をどうするかという点でしょう。声明文や会見の内容をよく見る必要があります。

 仮に、当面追加利上げはしないというニュアンスの内容があれば、米ドル売りが加速する可能性があるので、注意しておいていただきたいです。

 より長期的な観点で見れば、米ドル高の流れが変わっているとは思いませんが、紆余曲折があるということです。

■ユーロ/米ドルは3月の相場と同じ動きに? 米ドル/円に関しては、あとで紹介しますが、ちょっと気になることがあるので、米ドル買いに対しては少し慎重に見ています。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 ユーロ/米ドルですが、これは2015年3月の時の動きとよく似ているので、少し参考にしたいと思います。

ユーロ/米ドル 週足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 週足)

 2015年3月は、底をつけた後に急騰し、その後一旦緩んだものの、もう一度買い戻され、そして、また底を試しにいくというジグザグの動きをしていますが、今回もそのような展開になるのではないでしょうか?

【参考記事】

●2015年3月と似ているユーロ/ドルの動き。みんな同じことを言い出すと相場は終わり(11月12日、今井雅人)

 それとは別に…
ECB理事会後にユーロはどう動く? ユーロ/ドルは下値確認後ショートカバーか ブログ

ECB理事会後にユーロはどう動く? ユーロ/ドルは下値確認後ショートカバーか

■月初のユーロ/米ドルは買い戻しの動きに 12月相場となり、いよいよ市場が注目するECB(欧州中央銀行)の追加緩和やFOMC(米連邦公開市場委員会)による金融政策の正常化、つまり、利上げ開始がどのような形で実行されるかが注目されています。

 前回のコラムでは、「米ドル高相場が、ゆっくりではあるが進行する」と予想していましたが、ユーロ/米ドルは先週末、11月27日(金)のロンドン16時(日本時間翌午前1時)のフィキシングにかけて、月末絡みのまとまったユーロ売りが観測されたこともあり、12月の月初は、逆に買い戻しの動きとなりました。

 しかし、戻りも1.0637ドルまでと、かなり限定的な動きに留まりました。

【参考記事】

●ロシア軍機撃墜もリスクオフは限定的。米ドルを買うなら対円よりも対ユーロで!(11月26日、今井雅人)

ユーロ/米ドル 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)

■ECB理事会を控えて、思惑的なユーロ売り その後は、11月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値が、前月比0.1%と、市場予想の0.2%を下回る弱い数字となったほか、強い米雇用指標を受けた米長期金利の急上昇につれて、ユーロ/米ドルは再び売りが強まる展開に。

 本日、12月3日(木)21時45分には、ECB定例理事会の声明発表を控えており、アジア時間から思惑的な売りが観測されるといった動きとなっています。

ユーロ/米ドル 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 1時間足)

■追加緩和は織り込み済み。発表後、買い戻しの可能性高い 先週末の英サンデータイムズでも、具体的な追加緩和策が報じられているように、市場では、「中銀預金金利の0.1%引き下げと同時に、資産買取り額を600億ユーロ拡大して買取り対象を広げるほか、期間延長も検討する」とのコンセンサスになっています。

 その後に予定されているドラギECB総裁の定例記者会見では、さらなる詳細や今後の方針などが表明されるはずですが、市場はすでに、かなり織り込み済みの状態になっていると考えられます。

 追加緩和の内容次第ではありますが、いったんは売られるものの、その後はショートカバーから買い戻される可能性も高いでしょう。

 昨日、12月2日(水)のNY市場では…
ロシア軍機撃墜もリスクオフは限定的。 米ドルを買うなら対円よりも対ユーロで! ブログ

ロシア軍機撃墜もリスクオフは限定的。 米ドルを買うなら対円よりも対ユーロで!

■米ドルは高値圏でのもみ合いに入っている まず、前回のコラムの内容を思い出していただきたいと思います。

 その中で、「米国の12月利上げは、ほぼ確実となり、基本的には米ドル高方向を向いてはいるが、2015年の米ドルの最高値水準に近いところまで米ドル高が進んでしまっているので、ここからは、簡単に米ドル高になっていくのは難しいのではないか」という意見をお伝えしました。

【参考記事】

●「2015年最後の勝負」で日本株は堅調!?ドル高基調だが、ドル/円の伸びしろは…(11月26日、今井雅人)

 結局、その後どうなったかというと、やはりというか、米ドルは高値圏でのもみ合いに入ってしまっています。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

■ロシア軍機撃墜で一時リスクオフの動きになったが… 今週は、11月23日(月)が勤労感謝の日で、東京市場は休場となりましたが、翌24日(火)の欧州時間には、事実上、戦争状態となっているシリア国境付近において、トルコによるロシア軍機撃墜という、ある意味「不可避」の事件が勃発しました。

 照準を当てられたことが判明した時点で脱出に成功したロシアのパイロットを反政府軍が銃撃。残りのパイロットを救出に向かったヘリコプターも再び反政府軍に撃墜されるなど、ロシア側に言わせれば、最悪の結果となってしまい、当然のようにロシアのプーチン大統領は激怒。

 早速、トルコにつながる天然ガスのパイプラインをシャットアウトするなどの制裁措置に出たことで、一時、「リスクオフ」の動きから、市場のドルロングポジションが調整される動きとなりました。

 しかし、24日(火)のNY市場でダウ平均が買い戻されたことで、この動きも極めて限定的に終わっています。

NYダウ 1時間足(出所CQG)

 そして、再び、米ドルが買い戻されるなど、神経質な動きを繰り返すことになりました。

■米ドルを買うなら、米ドル/円よりもユーロ/米ドル もう1つ申し上げていることは、米ドルを買うなら、米ドル/円よりもユーロ/米ドルの方が、おもしろいということです。

 理由は簡単で、日銀はなかなか追加緩和をやりそうもない一方で、ECB(欧州中央銀行)は、2015年12月にも追加緩和することが、ほぼ確実だからです。

 昨日11月25日(水)にも、ECB関係者筋から「次回理事会では、2段階の中銀預金金利の導入や、資産買入れ対象拡大の検討を見込む」ことがリークされるなど、すでに具体的な緩和策まで報じられています。

 ということは、円よりもユーロの方が、より弱くなりやすいということですから、ユーロ/円も当然弱くなっていくということです。

 そこで、ユーロ/円の…
「2015年最後の勝負」で日本株は堅調!? ドル高基調だが、ドル/円の伸びしろは… ブログ

「2015年最後の勝負」で日本株は堅調!? ドル高基調だが、ドル/円の伸びしろは…

■次回12月のFOMCで、おそらく利上げをすることになる 11月18日(水)に、10月27日(火)~28日(水)に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録が公開されました。

 いろいろな意見が出たことが紹介されていますが、市場がもっとも注目したのは、以下の文言です。

「メンバーらは、この変更が、事前に決定はなされてはいないものの、次回会合で正常化プロセスを開始するのがおそらく適切になるという見解の伝達を意図したものであることを強調した」

 これは何を意味しているかと言うと、「次回の2015年12月のFOMCで、おそらく利上げをすることになります」ということです。

 すでに10月28日(水)に声明文が出た時点で、利上げの可能性は高いという認識はできていましたが、より詳しい議事録が出たことで、確信に変わってきたということではないかと思います。

【参考記事】

●米FOMCで年内利上げ期待高まりドル高!黒田日銀総裁の追加緩和に対する本音は?(10月29日、今井雅人)

■市場も米利上げを織り込み済みか 通常であれば、利上げされると株式にはマイナスの影響が出るのですが、今回は、逆に米国の株式市場は上昇するという反応を見せています。

NYダウ 1時間足(出所:CQG)

 こういう反応をするということは、すでに利上げは想定済みで、市場も織り込んでしまったということなのでしょう。

■日銀は、現状の政策方針維持を決定。影響ほぼなし 一方の日銀は、11月18日(水)~19日(木)の金融政策決定会合で、現状の政策方針を維持することを決めました。

 直近のGDPがマイナス成長に終わってしまったことも踏まえて、「このところ、弱めの指標も見られている」との記述を追加し、判断は引き下げました。

 しかし、物価動向に関しては、「やや長い目で見れば、全体として上昇している」という見方を維持しているので、追加金融緩和を期待する市場関係者もおらず、ほとんど影響は出ていません。

■海外投資家の「2015年最後の勝負」で日本株買いか 日本の株式市場は、米国の株式市場が好調なことに加え、一部の海外投資家が、2015年最後の勝負ということで、日本株を断続的に買ってきているようでして、それが日本株を引き上げているようです。

日経平均株価 日足(出所:株マップ.com)

 さて、そこで…