今井雅人の「どうする? どうなる? 日本経済、世界経済」

米連続利下げ終わりで米株高も息切れ? ドル/円はレンジ…108円台前半で買い方針 ブログ

米連続利下げ終わりで米株高も息切れ? ドル/円はレンジ…108円台前半で買い方針

■米中交渉が暗礁に乗り上げたら円買いの心構えを 先週(11月4日~)から今週(11月11日~)にかけて、特段、大きな変化はありませんが、一応、最近の政治状況、そして経済状況を1つずつチェックしていきましょう。

【参考記事】

●NYダウ史上最高値更新も為替は膠着…。株高・円安の動きが鈍くなった理由とは?(11月7日、今井雅人)

 まず、米中の貿易交渉です。現在、部分合意に向けての最終的な詰めの協議がされています。

 この中で、どうやらこれまで米中両国がかけ合っている関税を段階的に撤廃するという交渉も行われているようです。こちらは、うまくいくかどうか、よくわかりません。

 その状況次第では、最悪、部分合意すらもできないという事態に陥る可能性は、まだゼロとは言えない状況です。

 もし、交渉が暗礁に乗り上げてしまったときは、リスクオフで株安、円高になると思いますので、思い切って円買いポジションを取る心構えをしておくと良いのではないかと思います。

世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)

■英下院選挙は12月に入ると大勢が予想しやすくなる 次にブレグジット(Brexit・英国のEU離脱)の問題です。英議会下院は解散し、選挙戦に入りました。

【参考記事】

●州知事選敗北がトランプ大統領の痛手に。NYダウ史上最高値更新もドル/円は重い(11月7日、西原宏一)

 世論調査を見ると、今のところ、与党保守党がリード。次に、労働党、自由民主党、ブレグジット党という順番で続いているようです。

英下院選挙の世論調査では、ジョンソン英首相が率いる与党保守党がリードしているようだ (C)Justin Sullivan/Getty Images

 単純に言えば、保守党とブレグジット党がブレグジット推進政党、労働党と自由民主党がEU(欧州連合)残留派政党という構図ですので、どちらが過半数を獲得するかが注目です。

 12月に入ってくると大勢が予想しやすくなってきます。市場への影響が出てくるかもしれませんので、注意しておきましょう。

 さて、政治状況はこれぐらいにして、景気動向、金融政策を…
NYダウ史上最高値更新も為替は膠着…。 株高・円安の動きが鈍くなった理由とは? ブログ

NYダウ史上最高値更新も為替は膠着…。 株高・円安の動きが鈍くなった理由とは?

■株価堅調。でも、為替相場は膠着 今週(11月4日~)、米国の株式市場では、代表的な株価指数が史上最高値を更新し続けています。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

ナスダック総合指数 日足(出所:Bloomberg)

 しかし、一方で為替相場を見ると、今年(2019年)は、どの通貨ペアも年間の変動幅が小さくなっています。このまま、こうした膠着相場が続くのでしょうか?

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

■膠着の理由はディスインフレと低金利 結論から言うと、おそらくこうした膠着相場が、年内は続いてしまいそうです。

 私は、その原因は世界的なディスインフレ(※)と、低金利のせいではないかと考えています。

(※編集部注:「ディスインフレ」とは、デフレとまではいかないがインフレでもない状態。一般的にはインフレの状況下、中央銀行の緩和的な金融政策などによって、インフレではなくなったが、デフレにもなっていない状況を指すことが多い)

 ここ2~3年、米国が金利の正常化を目指して、テーパリング(※)、そして政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)レート誘導目標レンジの引き上げを実施してきました。

(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)

 しかし、今年(2019年)に入ってから、世界経済全体が低迷傾向となり、さらに米中貿易摩擦などへの懸念もあって、FRB(米連邦準備制度理事会)は金利の引き下げに転じました。そして、3会合連続で政策金利を引き下げています。

※フェデラル・ファンドレートの誘導目標レンジ上限を掲載

※FRBのデータをもとにザイFX!が作成

 それと歩調を合わせるように、先進国は各国で、さらなる金融緩和を検討し始めています。

■為替相場は通貨同士の綱引き状態に 金融緩和状態になると、当然、お金が市中に溢れるわけですから、そのお金はどこかに向かいます。一番向かいやすいところは、不動産と株式市場です。ですから、株価は非常に堅調に推移することになります。

 現在、米国の株価指数が史上最高値を更新し続けているのも、日経平均が2万3000円を超えてきているのも、それが原因だと思います。

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 一方、為替相場ですが、どの国も歩調を合わせて金融緩和をしているわけですから、通貨同士は綱引き状態になってしまい、その結果として、相場が膠着してしまうということです。

【参考記事】

●NYダウ史上最高値に迫るもバブル懸念…。もしバーストすれば、ドル/円105円割れへ(11月4日、西原宏一&大橋ひろこ)

●米国株の本格的なバブルはこれからだ! 米ドル/円の反落はスピード調整にすぎない(11月1日、陳満咲杜)

 かつて、日本だけが低金利だったときに…
株価堅調推移で円売りに妙味! 米ドル/円 よりユーロ/円がおもしろそうなワケは? ブログ

株価堅調推移で円売りに妙味! 米ドル/円 よりユーロ/円がおもしろそうなワケは?

■当面、ブレグジットへの注目は薄れそう ここ数カ月は、政治リスクに振り回された金融市場でしたが、今後、金融市場の注目は、政治要因から他の要因に移ってくると思います。

 ごたついたブレグジット(英国のEU離脱)ですら、すったもんだした挙句に、また離脱期限を延長することになりました。

 何も解決はしていない惨憺(さんたん)たる状況なのですが、先送りということで当面、材料として注目されることはなくなってきました。

【参考記事】

●ブレグジット絡みの英ポンド上昇は終了か。いずれ下落と見てショートポジション構築へ(10月25日、今井雅人)

●ブレグジット期限は2020年1月末まで延期。リスク選好継続でクロス円買いが良さそう(10月29日、バカラ村)

●【ブレグジット】12月12日に英総選挙。2020年1月の離脱がメインシナリオに

 ただ、12月12日(木)に英国では総選挙が開催されますので、その結果には、かなり注目が集まると思います。

英ポンド/米ドル 週足(出所:TradingView)

 その時になったら、またどう影響が出るか、皆さんといっしょに考えていきたいと思います。

■米中貿易交渉には一定の警戒を 米中の貿易交渉も、当面は一服というところでしょうか。

 ただ、ペンス米副大統領が香港での激しい市民デモ活動に関して、米国は香港市民を支持すると発言したことで、米中の関係が、また悪化しています。

 これが、貿易交渉に、さらなる影響を与えることとなる可能性は十分にありますので、その時はまた、注目が集まると思います。

■トランプ大統領の弾劾は難しい!? 政治的に言えば、今、注目が集まっているのは、トランプ米大統領の弾劾の動きがどうなっていくかです。

 しかし、今のところ、実際に弾劾にまで到達するのはかなり難しいと考えられていますので、そうであれば、市場に影響は出ないと思います。

米国ではウクライナ疑惑をめぐるトランプ大統領弾劾に向けた調査が進んでいる。しかし、実際に弾劾まで到達するのは、かなり難しいというのが今井氏の見立て (C) Chip Somodevilla/Getty Images News

■株価堅調で円安傾向。円売り戦略で! 政治状況は以上のような感じですので、当面、市場の関心は他に移っていくことになると思います。

 となると、各国の金融政策に一番、注目が集まります。

 米国では、昨日まで(10月29日~30日)FOMC(米連邦公開市場委員会)が開催され、政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)レート誘導目標レンジの0.25%の引き下げが決定されました。これで、3回連続の引き下げとなりました。

【FX初心者のための基礎知識入門】

●世界中の市場参加者がもっとも注目する、米国の金融政策を決める「FOMC」って?

※フェデラル・ファンドレートの誘導目標レンジ上限を掲載

※FRBのデータをもとにザイFX!が作成

 金融市場はこれを好感し、米国の株価指数は史上最高値を更新しています。

S&P500 日足(出所:Bloomberg)

 FOMCは今後も、必要に応じて利下げを実施していくと思います。そういう状況ですので、おそらく、今後、米国を中心に株価は堅調に推移すると考えられます。

【参考記事】

●利下げほぼ確実…米株はバブルの可能性!? 英ポンド/米ドルは1.40ドルがターゲット?(10月28日、西原宏一&大橋ひろこ)

●10月暴落説が喧伝されたが日米株は暴騰も! 米ドル/円は上昇前のスピード調整(10月25日、陳満咲杜)

 そうであれば、為替相場は全体的に円安の傾向になってくると思いますので、トレード戦略としては、円売り(米ドル/円やクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の買い)ポジションを取っていくことが良いかと思います。

■おもしろいのは米ドル/円よりユーロ/円 その上で、どの通貨ペアが良いかということですが、まず、米ドル/円は下値が底堅く、安定していますが、米ドル高の展開になりにくいので、一気に上昇していくのは難しいと思います。

 108円台の真ん中より下のレベルで買っている分には、あまりリスクはないと思いますが、109円台に乗せて一気に駆け上がる感じもしません。押し目をしっかり拾うことです。

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

 それよりも、ユーロ/円での円売り、つまり、ユーロ/円のロング(=買い)の方が、おもしろいのではないでしょうか。

 ECB(欧州中央銀行)は、ドラギ総裁が10月末(本日)で退任し、11月からラガルド新総裁に交代します。そうなると、当面、ECBは大きな政策変更をしづらい状況になってきていると言えます。

 それを考慮すると、ユーロ安要因が今はあまりないことになります。ですから、ユーロ/円での円売りは、かなり有効なのではないかと考えています。

ユーロ/円 日足(出所:TradingView)
ブレグジット絡みの英ポンド上昇は終了か。 いずれ下落と見てショートポジション構築へ ブログ

ブレグジット絡みの英ポンド上昇は終了か。 いずれ下落と見てショートポジション構築へ

■EU離脱延期申請で、ブレグジット問題は先送りに… 結局というか何というか、ブレグジット(英国のEU離脱)の問題は、また先送りになってしまいました。

【参考記事】

●米中部分合意で米ドル/円に110円の可能性。でも、リスクオンの円安基調は期間限定!?(10月18日、今井雅人)

 英国のジョンソン首相は、10月末に迫っていたEU(欧州連合)離脱の期限を、来年(2020年)の1月まで延ばすことをEUに申請しました。

 10月末の離脱にあれだけこだわっていましたが、結局どうすることもできず、離脱申請書に自身の署名をしないという最後の抵抗を見せてはいますが、議会の決定した延期法案に従わざるを得なくなったということです。

ジョンソン首相は10月末に迫っていたEU離脱期限を来年(2020年)1月まで延期することをEUに申請。離脱申請書に自身の署名をしないという最後の抵抗は見せているが… (C)Justin Sullivan/Getty Images

 EU側も、合意なき離脱は避けたいというのが本音で、この申請は認められると思います。

 さらにジョンソン首相は、12月に解散総選挙を行い、国民にEU離脱の是非を問う意向を示していますが、これも議会の承認が必要なので、どうなっていくか、よくわからない状態です。まったく、この国の混乱ぶりには呆れるばかりです。

■EU離脱延期ほぼ確定的で、英ポンド上昇も終了か 英ポンド/米ドルは、一時1.30ドル台まで上昇しましたが、離脱の延期がほぼ確定的になった現在、1.28ドル台ですので、もうこの材料での英ポンドの上昇は終わったと見るべきではないかと思います。

 したがって、いずれまた、ずるずると下落する局面が来るのではないかと考えています。

英ポンド/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 日足)

 米中の貿易交渉も…
米中部分合意で米ドル/円に110円の可能性。 でも、リスクオンの円安基調は期間限定!? ブログ

米中部分合意で米ドル/円に110円の可能性。 でも、リスクオンの円安基調は期間限定!?

■米中の部分合意でリスクオンに 米中が、貿易交渉に関して部分合意をしたことを好感し、株価が堅調に推移しています。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 それに伴って、リスクオンの動きから、為替市場では全体的に円安になっています。

世界の通貨VS円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)

 まだ正式に調印したわけではないので、絶対、大丈夫とは言えませんが、今回は、まず大丈夫だと思います。

【参考記事】

●米中が部分合意へ!? トランプ大統領が米中貿易摩擦のヤバさに気づいた!?(10月11日、今井雅人)

■米ドル/円は110円近くへの上昇も そうなると、しばらくこの問題に関しての懸念は払拭できるので、リスクオンの雰囲気は当面は続くのではないかと考えています。

 ということは、しばらく円安基調が続くということになります。米ドル/円が110円近くまで上昇する可能性も、十分にあると見ています。

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

 しかし、それは、あくまでも当面だということを忘れてはいけません。

 繰り返しになりますが、今回はあくまでも部分合意であり、しかも、これ以上の追加関税を見送るというだけです。

 これまで課してきた関税措置は、そのまま続くことになります。ですから、これからが交渉の本番となります。

■いつまでもリスクオンのムードは続かない!? 現状の関税措置を撤廃するためのハードルは、非常に高いと言わざると得ないでしょう。今後の本格的な交渉では、中国政府の国有企業への補助金の問題など、中国の国策に関わるものがテーマになるからです。

 これに中国側が応じることは、難しいと思っています。

 となると、またどこかで摩擦が激化する可能性も十分あるので、いつまでもリスクオンのムードは続かないということは、頭に入れておく必要があるでしょう。

今井氏は関税措置を撤廃するためのハードルは非常に高く、今後の本格交渉の中でまた米中の摩擦が激化する可能性は十分あると指摘。部分合意によるリスクオンムードはいつまでも続かないと思っておいた方がよいとも…。写真は2019年6月に開催された大阪G20時のもの (C)Visual China Group/Getty Images

 当面は、米ドル/円、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)での円売りを基本方針としていいと思いますが、期間限定という感覚で見ておく必要があります。

 次に、ブレグジット(英国のEU離脱)の問題…
米中が部分合意へ!? トランプ大統領が 米中貿易摩擦のヤバさに気づいた!? ブログ

米中が部分合意へ!? トランプ大統領が 米中貿易摩擦のヤバさに気づいた!?

■米中協議に新たな動き 市場の注目材料が、米中貿易交渉の行方とブレグジット(英国のEU離脱)の先行きという状態は、現在も変っていません。その中で、いろいろとまた、動きが出てきています。

 10月10日(木)、11日(金)の2日間、米中の閣僚級協議が7日(月)~8日(火)の次官級協議に引き続き、ワシントンで行われています。

 1日目の協議(10日)が終わり、トランプ米大統領からは「今回の協議はうまくいっており、合意を目にすることができる」との発言がありました。

 また、中国の劉副首相と、日本時間12日(土)3時45分から、ホワイトハウスで会談することも伝えられています。

Big day of negotiations with China. They want to make a deal, but do I? I meet with the Vice Premier tomorrow at The White House.

— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) October 10, 2019■トランプ大統領の態度が軟化した理由は? これまで、トランプ米大統領は「包括的な合意でなければダメ」という姿勢を示してきましたが、どうも「部分合意」に応じる可能性が出てきました。

【参考記事】

●10月は重要イベントが目白押し! 米ドル/円の108円台超えは考えにくい(10月3日、今井雅人)

●トランプ発言で米中の問題は振り出しへ。円高傾向…ユーロ/円の売りが良さそうか(9月26日、今井雅人)

 ひょっとすると、トランプ米大統領は、米中貿易摩擦が米国経済にかなりマイナスになると考え始めているのかもしれません。

 来年(2020年)の米大統領選挙に向けて、米国景気が減速することはどうしても避けたいというのが本音でしょうから、協議に対して態度を軟化させているのかもしれません。

2020年の米大統領選挙に向けて、米国景気が減速することはどうしても避けたいトランプ大統領。今井氏は米中貿易摩擦が、米国経済にかなりマイナスになるとトランプ大統領が考え始めているのではないかと指摘。写真は2016年の米大統領選のときのもの (C)Scott Olson/Getty Images

■関税撤廃までいけば、間違いなくリスクオン 仮に部分合意をして、その上で、これまでかけている関税を撤廃するというところまでいけば、間違いなく市場はリスクオンの動きとなってくるでしょう。

 株価は上昇し、そして円安になるという流れがしばらく続くことになると思います。米ドル/円が、108円をしっかりと超えてくる可能性も、出てくるのではないでしょうか。

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

 しかし、トランプ米大統領のことですから…
10月は重要イベントが目白押し! 米ドル/円の108円台超えは考えにくい ブログ

10月は重要イベントが目白押し! 米ドル/円の108円台超えは考えにくい

■今月は重要イベントが目白押し! 今週(9月30日~)から、10月が始まりました。10月は非常に重要なイベントが目白押しなので、まずはその確認からしたいと思います。

※筆者提供の情報をもとにザイFX!が作成

■円相場は米中貿易交渉の行方次第!? 米中貿易交渉は、今、金融市場がもっとも注目しているテーマです。

 トランプ米大統領は一時期、中国と部分合意をしてもいいという発言をして、市場に安心感を与えましたが、その後、手のひらを返して、全体合意でなければダメだと言い出しています。

 また、来年(2020年)の大統領選挙までに合意をする必要はないと言っています。

【参考記事】

●トランプ発言で米中の問題は振り出しへ。円高傾向…ユーロ/円の売りが良さそうか(9月26日、今井雅人)

 こうした背景の1つには、日本との貿易協定が合意に達し、米国内でこの成果をアピールすることができるため、中国に対しては強硬姿勢を貫くということになったのではないか、と私は考えています。

 それにしても、まったくもってトランプ米大統領には、振り回されっぱなしです。

日本貿易協定が合意に達したため、トランプ大統領は中国に対しては強硬姿勢を貫くということになったと今井氏は指摘。10月10日(木)から始まる米中閣僚級会合には、非常に高い注目が集まりそうだ。写真は2019年6月に開催された大阪G20時のもの (C)Visual China Group/Getty Images

 10月10日(木)から始まる米中閣僚級の会合ですが、全体合意が前提であれば、また交渉は決裂する可能性が非常に高くなってくると思います。

 交渉の行方に注目が集まるのは必至です。交渉が暗礁に乗り上げれば、確実に円高になるだろうし、進展があれば、円安という反応になるでしょう。

世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)

■混迷を極めるブレグジット。まだまだ一波乱も… ブレグジット(英国のEU離脱)の問題も、混迷を極めてきました。

 ジョンソン英首相は、EU(欧州連合)との合意があるなしにかかわらず、10月末のブレグジットを目指すと言っていますが、英国議会は、合意なき離脱を回避するために、10月19日(土)までに離脱協定が議会承認されない場合は、首相に離脱延期申請を義務づける法律を成立させています。

 10月17(木)~18日(金)に欧州理事会があるので、そこで協定の合意が取り付けられなければ、離脱延期を申請しろということです。

 こうした状況に陥っているにも関わらず、ジョンソン英首相は強気の姿勢を崩していません。まだまだ、一波乱あるかもしれません。

【参考記事】

●トランプ発言で米中の問題は振り出しへ。円高傾向…ユーロ/円の売りが良さそうか(9月26日、今井雅人)

●今、市場が注目する4つの材料を総点検! 英首相の飛び道具で英ポンドは再び暴落!?(9月19日、今井雅人)

●ジョンソン英首相が窮地!? 英ポンド急騰! しかし、英ポンドはいずれまた売られる(9月6日、今井雅人)

●ユーロ/米ドルにテクニカル的な下落余地。10月の英ポンドは乱高下しやすい!?(10月1日、バカラ村)

英ポンド/米ドル 日足(出所:TradingView)

 また、10月24日(木)のECB(欧州中央銀行)定例理事会や…
トランプ発言で米中の問題は振り出しへ。 円高傾向…ユーロ/円の売りが良さそうか ブログ

トランプ発言で米中の問題は振り出しへ。 円高傾向…ユーロ/円の売りが良さそうか

■米中貿易交渉に変化 前回のコラムで、市場が注目する4つの材料について整理をしましたが、その中で、米中貿易交渉に関して変化がありました。

【参考記事】

●今、市場が注目する4つの材料を総点検! 英首相の飛び道具で英ポンドは再び暴落!?(9月19日、今井雅人)

 トランプ米大統領は、中国との貿易交渉の中で、まずは「部分合意から始めてもいい」というような趣旨の発言をしました。

 その発言を受けて、貿易交渉が前に進むのではないかと、市場に期待が広がっていたわけです。

 しかし、トランプ米大統領のことですから、また、何か言い出すのではないかと警戒していたところ、思ったとおりでした。やはり、中国との貿易交渉は「包括的な合意でなければダメだ」と言い出しました。発言を180度、ひっくり返したわけです。

米中交渉は「部分合意でもOK」的な発言から「包括的な合意でなければダメ」と、態度を180度ひっくり返したトランプ大統領。いつものことながら、市場は振り回される結果に (C) Chip Somodevilla/Getty Images News

■結局、米中の問題は振り出しへ… 部分合意ができる場合、まずは、中国側が米国の農産物への関税を撤廃するなどして、輸入を大幅に増やすということで合意するという見方が大半でした。これは、それほど両国にとって困難なことではありません。

 交渉の核心は、中国の国有企業などに対しての補助金政策など、中国の国家政策に関することです。

 これは、中国側にとっては受け入れられない要求。包括的な合意ということになれば、この問題に踏み込まざるを得ないわけですから、合意はできないということになります。

 また、トランプ米大統領は中国の合意に関しては、「来年(2020年)秋に行われる大統領選に間に合わなくてもよい」とも発言しています。この問題は、振り出しに戻ってしまったのではないかとも思えます。

【参考記事】

●ECB後のユーロ安が一時的だった要因と、ここからの円安に否定的な見方をするワケ(9月13日、今井雅人)

■米ドル/円よりクロス円で円高が進む可能性 元々、米中貿易交渉がうまく進むのではないかという期待感から円安が進んできたわけであるので、これがまた暗礁に乗り上げるということになれば、当然、円高になっていきます。

 今、起きている円高傾向は、まさにそれを反映していると言えます。

世界の通貨VS円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)

 今後の展開では、まだまだ円高になる可能性が出てきました。ただ、円高は米ドル/円よりも、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)で、より進むのではないかと考えています。

 特にユーロ/円では…
今、市場が注目するの4つ材料を総点検! 英首相の飛び道具で英ポンドは再び暴落!? ブログ

今、市場が注目するの4つ材料を総点検! 英首相の飛び道具で英ポンドは再び暴落!?

■ポジション調整終わり、方向感のないレンジへ 前回のコラムの中で、ポジション調整はそろそろ終わったのではないかとの見方を示しましたが、その後の動きを見ると、大体、見方は合っていたと思います。

【参考記事】

●ECB後のユーロ安が一時的だった要因と、ここからの円安に否定的な見方をするワケ(9月13日、今井雅人)

 しかし、円安や英ポンド高から反転しているわけではなく、方向感のないレンジに入り込んでいます。

世界の通貨VS円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)

英ポンド/米ドル 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 4時間足)

 ポジション調整は終わったものの、「さて、それからどうしたものか」と、市場が迷っているということを示しているのだと思います。

■日米貿易交渉は合意へ。円高リスクは後退 そこで、今、注目の材料を、もう一度整理してみることにします。

 まず、日米の貿易交渉は、うまくまとまりそうな状況です。

 今のところの情報では、10月には合意の協定が調印される予定です。おそらく、日本がかなり大量の兵器を米国から買う約束をしたことが、功を奏したのではないかと思います。

日米の貿易交渉は、10月には合意の協定が調印される予定とのこと。日本が米国からの兵器大量購入を約束したことが功を奏したと、今井氏は推測している。写真は2018年4月の日米首脳会談時のもの (C)Joe Raedle/Getty Images

 これで、この問題に関しての円高リスクは、ほぼなくなったと考えていいかと思います。

■米中次官級協議開始へ。注意すべきはトランプ大統領!? 次に、米中貿易交渉の行方です。

 先週(9月9日)の段階から、特段、進展はありませんが、両国の次官級の協議が9月19日(木)から始まります。あるとすれば、一部だけの暫定合意に収まる可能性でしょう。

 これに関しては、すでに市場はかなり、織り込んだのではないかと思います。

 しかし、トランプ米大統領のことですので、いつ、何があるかは予断を許さない状況であることは、言うまでもありません。引き続き、交渉の行方には、よく注意をしておく必要があるでしょう。

【参考記事】

●円高になりやすいのは自明の理。ドル/円の106円台半ばあたりは、良い売りレベルか(8月29日、今井雅人)

●市場を膠着させている4つの「摩擦」とは? 英ポンドはブレグジット後の最安値更新も!?(8月22日、今井雅人)

米中の次官級貿易協議は9月19日(木)から開始される。今井氏はトランプ米大統領のこれまでの言動を踏まえると、いつ、何があるか予断を許さない状況であることは、言うまでもないと指摘。写真は2019年6月に開催された大阪G20時のもの (C)Visual China Group/Getty Images

 3番目は、各国の金融政策です…
ECB後のユーロ安が一時的だった要因と、 ここからの円安に否定的な見方をするワケ ブログ

ECB後のユーロ安が一時的だった要因と、 ここからの円安に否定的な見方をするワケ

■政治要因に支配される相場環境が続く… ここ数週間、市場の関心事が政治要因に移っていることを、これまでも説明してきました。

 今、もっとも市場に影響を与えるのは、米中の貿易交渉とブレグジット(英国のEU離脱)であることは、言うまでもありません。

【参考記事】

●ジョンソン英首相が窮地!? 英ポンド急騰! しかし、英ポンドはいずれまた売られる(9月6日、今井雅人)

●円高になりやすいのは自明の理。ドル/円の106円台半ばあたりは、良い売りレベルか(8月29日、今井雅人)

●市場を膠着させている4つの「摩擦」とは? 英ポンドはブレグジット後の最安値更新も!?(8月22日、今井雅人)

 市場が政治要因に支配されていることを表す良い例が、昨日(9月12日)ありました。それは、ECB(欧州中央銀行)定例理事会後の動きです。

■たった1日すら持たなかった金融政策の影響 昨日(9月12日)開催されたECBの定例理事会では、利下げや量的緩和の再開など、包括的な追加金融緩和策の導入が決定されました。

 まず、市中銀行が余剰資金をECBに預け入れる際の適用金利である中銀預金金利を、現行のマイナス0.4%からマイナス0.5%に引き下げました。

ユーロ圏の主要政策金利の推移(出所:Bloomberg)

 また、利下げに伴い、金利階層化を導入し、マイナス金利の深堀りが銀行に及ぼす影響を軽減しました。

 さらに、11月から月額200億ユーロの債券買入れを行うほか、銀行を対象としたTLTRO(長期資金供給オペ)の条件を緩和するという内容でした。

 この発表を受けて、ユーロは急落。ユーロ/米ドルは1.09ドル台前半、ユーロ/円は117円台半ばまで売り込まれました。

 しかし、下落も一時的に終わり、その後は激しく反発。理事会前の水準よりもユーロ高になっています。

ユーロ/米ドル 15分足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 15分足)

ユーロ/円 15分足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 15分足)

 これほど金融政策の変更の影響が短時間で終わったのは、最近では見たことがありません。これまでは少なくとも、1日程度は影響が持続していました。これが、今の市場の雰囲気を表しているのだと思います。

■関税引き上げ延期。米中は暫定的な合意へ!? また、トランプ米大統領は9月12日(木)のアジア時間に入ってすぐ、中国からの輸入品2500億ドル分を対象にした、制裁関税第1弾から3弾までの税率引き上げを、10月1日(火)から10月15日(火)に先送りすると発表しました。

....on October 1st, we have agreed, as a gesture of good will, to move the increased Tariffs on 250 Billion Dollars worth of goods (25% to 30%), from October 1st to October 15th.

— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) September 11, 2019 続いて、翌日13日(金)のアジア時間には、貿易問題で対立する中国とは包括的な合意の方が良いと述べる一方で、暫定的な合意を検討する可能性があると述べました。

 米中は、来週(9月16日~)に次官級協議、10月初旬に閣僚級協議を予定しています。それに先立って、中国政府は米国産農産物の購入再開に向けた動きを示しています。

 こうした動きを背景に…