ECB後のユーロ安が一時的だった要因と、 ここからの円安に否定的な見方をするワケ

■政治要因に支配される相場環境が続く… ここ数週間、市場の関心事が政治要因に移っていることを、これまでも説明してきました。
 今、もっとも市場に影響を与えるのは、米中の貿易交渉とブレグジット(英国のEU離脱)であることは、言うまでもありません。
【参考記事】
●ジョンソン英首相が窮地!? 英ポンド急騰! しかし、英ポンドはいずれまた売られる(9月6日、今井雅人)
●円高になりやすいのは自明の理。ドル/円の106円台半ばあたりは、良い売りレベルか(8月29日、今井雅人)
●市場を膠着させている4つの「摩擦」とは? 英ポンドはブレグジット後の最安値更新も!?(8月22日、今井雅人)
 市場が政治要因に支配されていることを表す良い例が、昨日(9月12日)ありました。それは、ECB(欧州中央銀行)定例理事会後の動きです。
■たった1日すら持たなかった金融政策の影響 昨日(9月12日)開催されたECBの定例理事会では、利下げや量的緩和の再開など、包括的な追加金融緩和策の導入が決定されました。
 まず、市中銀行が余剰資金をECBに預け入れる際の適用金利である中銀預金金利を、現行のマイナス0.4%からマイナス0.5%に引き下げました。
ユーロ圏の主要政策金利の推移(出所:Bloomberg)
 また、利下げに伴い、金利階層化を導入し、マイナス金利の深堀りが銀行に及ぼす影響を軽減しました。
 さらに、11月から月額200億ユーロの債券買入れを行うほか、銀行を対象としたTLTRO(長期資金供給オペ)の条件を緩和するという内容でした。
 この発表を受けて、ユーロは急落。ユーロ/米ドルは1.09ドル台前半、ユーロ/円は117円台半ばまで売り込まれました。
 しかし、下落も一時的に終わり、その後は激しく反発。理事会前の水準よりもユーロ高になっています。
ユーロ/米ドル 15分足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 15分足)
ユーロ/円 15分足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 15分足)
 これほど金融政策の変更の影響が短時間で終わったのは、最近では見たことがありません。これまでは少なくとも、1日程度は影響が持続していました。これが、今の市場の雰囲気を表しているのだと思います。
■関税引き上げ延期。米中は暫定的な合意へ!? また、トランプ米大統領は9月12日(木)のアジア時間に入ってすぐ、中国からの輸入品2500億ドル分を対象にした、制裁関税第1弾から3弾までの税率引き上げを、10月1日(火)から10月15日(火)に先送りすると発表しました。
....on October 1st, we have agreed, as a gesture of good will, to move the increased Tariffs on 250 Billion Dollars worth of goods (25% to 30%), from October 1st to October 15th.
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) September 11, 2019 続いて、翌日13日(金)のアジア時間には、貿易問題で対立する中国とは包括的な合意の方が良いと述べる一方で、暫定的な合意を検討する可能性があると述べました。
 米中は、来週(9月16日~)に次官級協議、10月初旬に閣僚級協議を予定しています。それに先立って、中国政府は米国産農産物の購入再開に向けた動きを示しています。
 こうした動きを背景に…

参照元:ザイFX! 今井雅人の「どうする? どうなる? 日本経済、世界経済」

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