今井雅人の「どうする? どうなる? 日本経済、世界経済」

長期目線で株は二度とない絶好の買い場! でも、為替相場は短期のトレンド狙いで! ブログ

長期目線で株は二度とない絶好の買い場! でも、為替相場は短期のトレンド狙いで!

■株価の急反発は、やはり一時的だった 前回のコラムで、株式市場の急反発も一時的なものに終わる、という話をしましたが、やはり、反発は数日しかもちませんでした。

【参考記事】

●ある程度の反発終われば株は弱気相場へ。米ドルは現状の高値水準でレンジ形成か(3月26日、今井雅人)

NYダウ 日足(出所:Trading View)

 繰り返しになりますが、新型コロナウイルスとの闘いは、長期戦になる可能性が非常に高いです。

 リーマンショックのときとは、まったく違います。リーマンショックは、一度、壊れた世の中でのお金のまわり方を修正すれば、そこからは回復するのみでしたが、今度はそうはいきません。

【参考記事】

●これは、リーマンショック以上の危機!! 世界的な米ドル不足で米ドル全面高に(3月19日、今井雅人)

●新型コロナの影響は最短でも数カ月続く。米ドル/円は、戻りがあれば必ず叩き売り!(3月12日、今井雅人)

■株は二度とない絶好の買いチャンス! 世界的にこの状態が続くと考えれば、おそらく、これから企業の倒産が、各国で急増してくるのではないかと思います。

 そういう状況に陥ってくれば、世界の株式市場は、どこかでもう一度、大きく下に崩れる展開がやってくるのではないでしょうか。

【参考記事】

●コロナショックのNYダウ暴落を、世界恐慌やリーマン・ショックのときと比較してみると…

 しかし、10年単位で考えてみれば、株式市場は、これからもう二度とないほどの絶好の買いのチャンスではないかと思います。

日経平均 月足(出所:Trading View)

 実際に、資金力に非常に余裕のある、超富裕層の人たちは、長期投資として株を買い始めています。皆さんも、本当に長期投資として考えるのであれば、今年(2020年)は一番、買い時ではないでしょうか。

■潰せない企業の株を買うべし! では、どういう株式を買えば良いかといえば、それは、各国の政府が決して潰させない企業です。

 たとえば、大手の銀行などは、もし何かあっても、政府は潰すわけにはいきません。そのことは、リーマンショックで体験しました。

 あのときは、まず、2007年にサブプライムローンショックが起きました。サブプライムローンという、デリバティブの金融商品の値が急落したことをきっかけにして、金融市場の中でさまざまなデリバティブ商品が、一気に壊れてしまいました。

 その金融商品をもっとも扱っていたのが、リーマン・ブラザーズでした。

サブプライムローン問題がきっかけとなって経営破たんした、米投資銀行のリーマン・ブラザーズ。ここから、世界的な金融危機に発展していった (C) Spencer Platt/Getty Images News.

 そこで、リーマン・ブラザーズの経営状態が急激に悪化したのですが、それに対して米国政府は、救済の手を差し伸べず、そのまま潰してしまいました。それが、結果的に世界的な金融危機を誘発して、全体に大きく広がってしまいました。

 私は、あの時、米国政府が…
ある程度の反発終われば株は弱気相場へ。 米ドルは現状の高値水準でレンジ形成か ブログ

ある程度の反発終われば株は弱気相場へ。 米ドルは現状の高値水準でレンジ形成か

■株価反発は短期間で暴落した反動にすぎない 先週(3月16日~)から今週(3月23日~)にかけての動きを見てみますと、今週に入ってからは、世界的に株式市場が急反発しています。

 米国が2兆ドルの経済対策を打ち出したことを始めとして、各国が大規模な経済対策を打ち出していることなどが好感され、株式市場が反応しているわけです。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 ただ、もっと単純に言ってしまうと、株式市場を含め、さまざまな金融市場が短期間に暴落しすぎてしまったので、大規模な経済対策の打ち出しを材料にして、その反動が出ているだけのことだと思います。

■恐る恐るの経済運営は続きそう ここで忘れてはならないのは、ウイルスに国境はないということです。

 最初に感染が広がった中国では、新型コロナウイルスの感染者数が、急激に減ってきています。おそらく、中国は抑え込みに成功しているのではないかと、私は考えています。

中国国内の新型コロナウイルス感染者数(日別)(出所:世界保健機関)

 しかし、その一方で、他の国では今、まさに急激に感染が広がっています。

世界全体(中国含む)の新型コロナウイルス感染者数(日別)(出所:世界保健機関)

 今、感染の広がりが激しいのは、欧州、米国ですが、仮にそれが落ち着いても、今度はアフリカ、南アメリカと、次々に続いていきます。

 そうすると、せっかく落ち着いた国も、2次拡大の恐れがありますので、恐る恐るの経済運営を続けざるを得ません。

 つまり、世界的に経済活動が正常に戻るのに、相当、時間がかかるのは、ほぼ確実だということです。

【参考記事】

●これは、リーマンショック以上の危機!! 世界的な米ドル不足で米ドル全面高に(3月19日、今井雅人)

●新型コロナの影響は最短でも数カ月続く。米ドル/円は、戻りがあれば必ず叩き売り!(3月12日、今井雅人)

●新型肺炎は中国の問題から世界的な問題へ。米ドル/円は105円程度まで下落の可能性も(2月28日、今井雅人)

■反発終われば、じわじわとした弱気相場へ そうであれば、企業業績は、今後もかなりの期間、落ち込むということになってくるでしょう。

 当然、株価にはマイナスなわけですから、今、起きている株式の反転は、それまでの反動程度のものであって、あくまでも一時的と考えるべきだと思います。

 ある程度の反発が終わると、今度は、じわじわとした弱気相場になるのではないかと予想しています。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 新型コロナウイルス危機の最初は暴落、それが一巡すると、暴落への反動からの上昇、そして、それが落ち着くと、実体を反映した落ち着いた相場展開に向かう、という流れになってくるというイメージです。

 さて、そこで為替相場ですが…
これは、リーマンショック以上の危機!! 世界的な米ドル不足で米ドル全面高に ブログ

これは、リーマンショック以上の危機!! 世界的な米ドル不足で米ドル全面高に

■リーマンショック以上の危機に! これまでの危機にはない金融市場の相関が、さらに強まっています。新型コロナウイルスの影響は、非常に深刻です。

 この危機は、リーマンショック以上です。

 リーマンショックは金融危機だったので、資金を潤沢に提供すれば、ある程度、効果がありました。しかし、今度の危機は、実体経済からきています。

 これだけ感染力が強いウイルスの感染対策をするには、通常の経済活動を犠牲にするしかありません。しかも、それは長期間にわたります。少し感染が収まってきたからといって、手を緩めると、また感染が広がるリスクがあるところが厄介です。

 つまり、完全に正常な状態で、各国が経済活動を再開できるようになるには、かなりの時間がかかってしまうということです。

【参考記事】

●新型コロナの影響は最短でも数カ月続く。米ドル/円は、戻りがあれば必ず叩き売り!(3月12日、今井雅人)

●新型コロナのダメージに金融緩和や財政出動は効かない!? 米ドル/円は105円前後へ(3月5日、今井雅人)

●新型肺炎は中国の問題から世界的な問題へ。米ドル/円は105円程度まで下落の可能性も(2月28日、今井雅人)

 そして、そのことが明らかになってきた途端、金融市場も崩れ始めたという流れです。

■すべてのリスク資産を現金化する動きに まず、それは株式市場の崩壊から始まりました。

 新型コロナウイルス対策による企業業績へのダメージは計り知れませんので、暴落するのはある意味、当然です。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 また、経済活動が滞れば、原油などの商品市場が、需要低下のために急落するというのも自然な流れです。

NY原油(WTI)先物 日足(出所:Bloomberg)

 ただ、ここからが、これまでのケースとは違いました。

 最近の危機のときは、株価が下落すると、デフレ懸念から長期金利が低下していました。つまり、債券が買われていたということです。

 そして、株価の下落がリスクオフをもたらし、結果として、為替市場では円高になるという相関もありました。安全資産の金も、こういうときは上昇していました。

 ところが、今回は違います。損失があまりにも大きいため、とにかくお金がなくなってしまうので、すべてのリスク資産を現金化する、という動きになりました。

■世界的な米ドル不足で米ドルは上昇 その結果、債券も売られ、結果として長期金利も上昇する。金も現金化のために売られる。そして、それでも、企業も投資家も、お金が足りなくなってしまう…。

米長期金利(10年物国債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

NY金 日足(出所:Bloomberg)

 特に、世界的には、米ドルが不足するという事態が生じました。そのため、資金市場で米ドルを調達することはもとより、為替市場でも米ドルを買って、米ドルを確保するという動きになりました。

【参考記事】

●FRBが流動性供給策導入も、米ドルの需給逼迫は継続! 株安でも米ドル/円は上昇か(3月19日、西原宏一)

●利下げにもかかわらずレパトリで米ドル高。弱い商品市況。豪ドルは弱い通貨に逆戻りか(3月18日、志摩力男)

●株式市場崩壊、恐怖の米ドル買いが進行! 「リスクオフの円高」ロジックは崩れた!?(3月13日、陳満咲杜)

米ドルVS世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)

 これが、今回の流れです。もう1度…
新型コロナの影響は最短でも数カ月続く。 米ドル/円は、戻りがあれば必ず叩き売り! ブログ

新型コロナの影響は最短でも数カ月続く。 米ドル/円は、戻りがあれば必ず叩き売り!

■サウジアラビアのブチ切れで原油が急落! 今週(3月9日~)は、激しい相場となりました。少し、振り返ってみましょう。

 先週末(3月5日~6日)に、OPEC(石油輸出国機構)と非加盟産油国との話し合いが行われました。OPEC諸国は原油産出量を減産する方向で話をしましたが、非加盟国のロシアが、これを拒否するという事態になりました。

 そして、そのことに腹を立てたサウジアラビアが、それなら自分も増産するという行動に出ると明らかにしたことが、3月8日(日)に報じられました。ブチ切れたということです。

 これが、原油価格の大暴落を招き、3月9日(金)には、なんと、1日で30%以上も下落しました。

【参考記事】

●原油暴落はなぜ米経済を悪化させるのか? サウジ増産は米シェール企業潰しが目的!?(3月11日、志摩力男)

●米ドル/円、95円が現実的なターゲットに!? 新型コロナに減産協議決裂…リスク満載!(3月9日、西原宏一&大橋ひろこ)

NY原油(WTI原油)先物 日足(出所:Bloomberg)

■米ドル/円は一気に101円台へ急落! もともと、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、市場が不安定になっていたところに、こんなことが起きたため、金融市場は激しく反応しました。

 米ドル/円も、一気に101円台まで、米ドル安・円高が進む展開となりました。

米ドル/円 日足(~2020年3月9日)(出所:Trading View)

 しかし、さすがに1日で下に突っ込みすぎてしまい、マーケットは、かなりショート(=売り)になってしまった感じでした。

 こういうときは、いったん、揺り戻しが起きることがよくありますが、今回もやはり、翌日(3月10日)に、トランプ米大統領が緊急の経済対策を講じると発表したことを受けて、NYダウが急騰すると、米ドル/円も一気に105円台に戻るという展開となりました。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

米ドル/円 日足(出所:Trading View)

 そして、その後は上値を試す展開となり、106円近くまで上昇する局面がありましたが、結局、そのレベルで止まり、また反落しています。

【参考記事】

●大きな米ドル安の流れ継続。長期サポートを割り込んだ米ドル/円は100円をトライか!(3月10日、バカラ村)

 現在の米ドル/円は、わずか10分程度で1円動いてしまうような…
新型コロナのダメージに金融緩和や財政 出動は効かない!? 米ドル/円は105円前後へ ブログ

新型コロナのダメージに金融緩和や財政 出動は効かない!? 米ドル/円は105円前後へ

■スーパーチューズデーはバイデン氏が躍進! 市場の注目が新型コロナウイルスに集まっていますので、そのことを中心にお話したいと思いますが、その前に、昨日(3月4日)、米国の大統領選挙における民主党候補を決めていくにあたって重要な「スーパーチューズデー」の結果が出てきましたので、まずは、それから話をしたいと思います。

 結果から言うと、それまで苦戦していたジョー・バイデン氏が、一気に躍進したということです。

 スーパーチューズデーでは、14の州で候補者決定が争われました。14州のうち10州でバイデンが勝利し、4州でバーニー・サンダース氏が勝利するという結果になりました。

(出所:The New York Times)

 この結果を受けて、レースから降りた候補者も、軒並み、バイデン氏を支持することを表明しています。バイデン氏にとっては、大逆転の1日となったわけです。

■バイデン氏優勢による株高は今回だけの現象か サンダーズ氏は極端な左派のため、彼が大統領になったら、経済にかなりマイナスの影響が出るのではないかと、専門家の中では囁かれています。

 一方、バイデン氏は穏健派で、そんなに極端な政策は採らない人ですので、サンダーズ氏のように経済にマイナスの影響を与えることはないだろうというのも、大体の意見です。

 そのバイデン氏が、一気に台頭してきたことを好感して、昨日(3月4日)は、NYダウが1000ドル以上も上昇することとなりました。

 FOMC(米連邦公開市場委員会)が0.5%もの緊急利下げをしても下落するのに、バイデン氏の躍進で株が急騰するというのは、何とも不思議な感じもしますが、それだけ、サンダーズ氏に対する懸念が強かった、ということだろうと思います。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 しかし、今後は、マーケートも織り込んできますので、今回のような反応は、もうしないと思います。

■新型コロナウイルスのダメージは収まらない さて、新型コロナウイルスの話に移ります。

 これに関しては、前回のコラムで、私なりの見方をご紹介しました。

【参考記事】

●新型肺炎は中国の問題から世界的な問題へ。米ドル/円は105円程度まで下落の可能性も(2月28日、今井雅人)

 1週間たって、益々、その見方に確信を持ってきました。

 すでに中国では、抑え込みが奏功して、感染者数が減少してきていますので、中国はこのまま落ち着いてくると思います。

中国国内の新型コロナウイルス感染者数(日別)(出所:世界保健機関)

 しかし、中国以外の国では、逆に感染者が拡大しています。

世界全体(中国含む)の新型コロナウイルス感染者数(日別)(出所:世界保健機関)

 インドは、日本からの渡航者のビザを無効にするという対応に出ています。米国も、韓国だけでなく、日本も渡航制限の対象国にすることを検討しています。

 世界中が、このように鎖国政策を採っていくことが、今後も、実体経済と金融市場にダメージを与えることになるだろうと考えています。

 FOMCが緊急開催(3月3日)され、0.5%の利下げが…
新型肺炎は中国の問題から世界的な問題へ。 米ドル/円は105円程度まで下落の可能性も ブログ

新型肺炎は中国の問題から世界的な問題へ。 米ドル/円は105円程度まで下落の可能性も

■新型肺炎に関する状況が大きく変化! 新型肺炎(新型コロナウイルスによる肺炎)に関して、状況が大きく変化してきました。それを見ながら、私も見方を変え、リスクオフ相場に対応することにして、実行しています。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

世界の通貨VS円 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)

■問題は非常に強い感染力 新型肺炎の特徴をもう一度、整理をすると、重症化率は通常のインフルエンザより少し高い程度であるということですが、感染力は非常に強いということになると思います。

※WorldometerのデータをもとにザイFX!が作成

 この、感染力が非常に強いというのが問題です。

 ここのところの感染者を見てみると、感染した人の家族などが軒並み感染するなど、すごい感染力なのがわかります。また、大型客船、ダイヤモンド・プリンセス号に乗船していた人に限れば、なんと、2割以上の人が感染したという状態となっています。

 これだけ、感染力が強いとなれば、放っておけば、一気に感染が拡大してしまうのは、火を見るより明らかです。

 そうなれば、ともかく感染を防ぐような体制を作ることが必須になってきます。

 各国の政府も、初めは様子を見ていたとしても、感染が拡大し始めれば、さまざまなイベントを中止したり、国民に出歩かないように指示を出さざるを得ません。実際、日本政府は、イベントの中止、延期を国民に広く求め、全国の学校に対して休校も要請するという対応に出ました。

【参考記事】

●新型コロナの初動対応に失敗した日本政府。円安は「日本売りそのもの」だと認識すべき(2月21日、陳満咲杜)

■最低でも数カ月間は経済活動が停滞か これは、何も日本に限ったことではありません。ウイルスに国境はないからです。

 すでに、国内で感染者が出た国は、南極を除いた5大陸に広がっています。これから、もっと増えていくでしょう。

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染状況マップ(2月27日時点)(出所:世界保健機関)

 そうなると、国同士での渡航制限が益々、広がるだけではなく、それぞれの国内でも、経済活動が一気に停滞していくのは間違いありません。

 中国の例を見てもわかるとおり、ウイルスの完全制圧には、最低でも数カ月間はかかります。それだけの期間、経済活動が停滞するということは大打撃です。

 1週間ほど前から、金融市場が反応し始めていますが…
米ドル高の原因はFRBの引き締め方針か。 米ドル/円は利食い売り後にジリジリ上昇へ ブログ

米ドル高の原因はFRBの引き締め方針か。 米ドル/円は利食い売り後にジリジリ上昇へ

■一気に米ドル高へ。米ドル/円は112円台に到達 為替市場はここ数日で、一気に米ドル高の展開となっています。

米ドルVS世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)

 今年(2020年)は、米国が大統領選挙の年なので、米ドル高になりやすいと、年初に予想しましたが、早速やってきたという感じです。

【参考記事】

●110円超えの米ドル/円は当面、押し目買い。ユーロ/米ドルは、上がれば売りが良さそう(1月17日、今井雅人)

●市場の新型コロナウイルスへの反応は読みどおり。米ドル/円の108円台は迷わず買い!(2月6日、今井雅人)

 ただ、米ドル/円も、110円をなかなか超えることができなかったのですが、ヘッジファンドや日本の機関投資家が、こぞって米ドル/円を買い上げたため、一気に112円台に達しています。

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

■米ドル高の原因はFOMC…? しかし、どうして米ドル高になったかという、直接的な原因が、あまり見つかりません。

 敢えて言えば、FOMC(米連邦公開市場委員会)が米ドル高の原因の1つだと市場では言われていますので、一応、内容をチェックしておきます。

【FX初心者のための基礎知識入門】

●FOMCとは? 米国の政策金利FFレートやイベントのスケジュールを徹底解説!

 FRB(米連邦準備制度理事会)は2月19日(水)、1月28日(火)~29日(水)に開催された、FOMCの議事要旨を発表しました。その中身を、端的にご紹介します。

 まず、米国の景気に関しては、「労働市場は底堅く成長し、経済活動は緩やかに拡大している」と、比較的、楽観的な見方をしています。

 また、金融政策に関しては、「景気が予想どおりに推移すれば、現在のスタンスが当面、適切だろう」との考え方で一致し、しばらくの間は、政策金利を現状のまま据え置く考えを示しています。

※FFレートの誘導目標レンジ上限を掲載

※FRBのデータをもとにザイFX!が作成

 一方、中国で発生した新型コロナウイルスに関連して、「世界景気の新たなリスクとして持ち上がってきた」と、警戒感を示しています。

 新型コロナウイルスの問題は、中国だけではなく、世界経済全体に影響を及ぼすかもしれないと、心配しているということです。

■きっかけはFRBの金融の引き締め方針かも FRBが当面、金利を据え置くということは、前々からわかっていたことですし、この内容で米ドル高になるというのは、ちょっとしっくりきません。

 ただ、1点、これが原因かもしれないなというものがあります。

 FRBは、短期市場の金利の安定を目的に、2019年10月から短期国債の買入れを進めて、市場に資金供給をしてきています。

 今回(1月)のFOMCで、参加者の多くは、「資金量が潤沢になれば、短期国債の買入れは、段階的な縮小か廃止が必要だ」と強調しています。

 パウエルFRB議長は、FOMC後に開かれた定例記者会見で、「2020年4月~6月期には、資金量が十分な水準に達する」と、言っていました。

 そうなると、今年(2020年)の7月以降に、短期国債の買入れを見直す可能性が高くなってくるということになります。

1月FOMC後の定例記者会見で、7月以降に短期国債の買入れを見直す可能性が高いことを示したパウエルFRB議長 (C)Bloomberg/Getty Images News

 これは、量的な面での金融の引き締めですので、米ドル高のきっかけになったのかもしれません。

 話は変わりますが、新型コロナウイルスの影響も…
米ドル高の原因はFRBの引き締め方針か。 米ドル/円は利食い売り後にジリジリ上昇へ ブログ

米ドル高の原因はFRBの引き締め方針か。 米ドル/円は利食い売り後にジリジリ上昇へ

■一気に米ドル高へ。米ドル/円は112円台に到達 為替市場はここ数日で、一気に米ドル高の展開となっています。

米ドルVS世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)

 今年(2020年)は、米国が大統領選挙の年なので、米ドル高になりやすいと、年初に予想しましたが、早速やってきたという感じです。

【参考記事】

●110円超えの米ドル/円は当面、押し目買い。ユーロ/米ドルは、上がれば売りが良さそう(1月17日、今井雅人)

●市場の新型コロナウイルスへの反応は読みどおり。米ドル/円の108円台は迷わず買い!(2月6日、今井雅人)

 ただ、米ドル/円も、110円をなかなか超えることができなかったのですが、ヘッジファンドや日本の機関投資家が、こぞって米ドル/円を買い上げたため、一気に112円台に達しています。

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

■米ドル高の原因はFOMC…? しかし、どうして米ドル高になったかという、直接的な原因が、あまり見つかりません。

 敢えて言えば、FOMC(米連邦公開市場委員会)が米ドル高の原因の1つだと市場では言われていますので、一応、内容をチェックしておきます。

【FX初心者のための基礎知識入門】

●FOMCとは? 米国の政策金利FFレートやイベントのスケジュールを徹底解説!

 FRB(米連邦準備制度理事会)は2月19日(水)、1月28日(火)~29日(水)に開催された、FOMCの議事要旨を発表しました。その中身を、端的にご紹介します。

 まず、米国の景気に関しては、「労働市場は底堅く成長し、経済活動は緩やかに拡大している」と、比較的、楽観的な見方をしています。

 また、金融政策に関しては、「景気が予想どおりに推移すれば、現在のスタンスが当面、適切だろう」との考え方で一致し、しばらくの間は、政策金利を現状のまま据え置く考えを示しています。

※FFレートの誘導目標レンジ上限を掲載

※FRBのデータをもとにザイFX!が作成

 一方、中国で発生した新型コロナウイルスに関連して、「世界景気の新たなリスクとして持ち上がってきた」と、警戒感を示しています。

 新型コロナウイルスの問題は、中国だけではなく、世界経済全体に影響を及ぼすかもしれないと、心配しているということです。

■きっかけはFRBの金融の引き締め方針かも FRBが当面、金利を据え置くということは、前々からわかっていたことですし、この内容で米ドル高になるというのは、ちょっとしっくりきません。

 ただ、1点、これが原因かもしれないなというものがあります。

 FRBは、短期市場の金利の安定を目的に、2019年10月から短期国債の買入れを進めて、市場に資金供給をしてきています。

 今回(1月)のFOMCで、参加者の多くは、「資金量が潤沢になれば、短期国債の買入れは、段階的な縮小か廃止が必要だ」と強調しています。

 パウエルFRB議長は、FOMC後に開かれた定例記者会見で、「2020年4月~6月期には、資金量が十分な水準に達する」と、言っていました。

 そうなると、今年(2020年)の7月以降に、短期国債の買入れを見直す可能性が高くなってくるということになります。

1月FOMC後の定例記者会見で、7月以降に短期国債の買入れを見直す可能性が高いことを示したパウエルFRB議長 (C)Bloomberg/Getty Images News

 これは、量的な面での金融の引き締めですので、米ドル高のきっかけになったのかもしれません。

 話は変わりますが、新型コロナウイルスの影響も…
市場は新型コロナに不思議なほど冷静。 米ドル買い方針を維持する3つの理由とは? ブログ

市場は新型コロナに不思議なほど冷静。 米ドル買い方針を維持する3つの理由とは?

■読めなくなった新型コロナウイルスの先行き… 今回は、まずは、今、もっとも注目をされている新型コロナウイルスについての状況から見ていきましょう。

 中国政府の発表によりますと、2月13日(木)の朝の時点で、中国国内の感染者は5万9692人、死者は1364名と伝わっています。これまで、1日の感染者の増加は、4000人ぐらいをピークにして徐々に下がっていて、この状況からは、早期に収束に向かうのではという、期待感が広がっていました。

 ところが、13日(木)の発表では、感染者数が一気に1万4986人も増加しました。武漢市がある湖北省での感染者の基準が変更されたことによる急増ということではありますが、これで、また先行きが、まったくわからなくなってしまいました。

 その影響で、4月に予定されていた習近平・中国国家主席の訪日も、どうやら延期されそうになってきています。中国国内では、さまざまな産業に深刻な被害が出ていることは、想像に難くありません。

■金融市場は極めて冷静な反応 しかし、本当に不思議なのですが、金融市場は極めて冷静な反応を見せています。

 中国の代表的な株価指数である上海総合指数も、新型コロナウイルス発生前の水準にまで、ほぼ回復してきました。

【参考記事】

●市場の新型コロナウイルスへの反応は読みどおり。米ドル/円の108円台は迷わず買い!(2月6日、今井雅人)

●危の中に機あり。新型肺炎の危機感が強いほど、米ドル/円の上昇につながる!(2月7日、陳満咲杜)

上海総合指数 日足(出所:Bloomberg)

 米国のNYダウは、史上最高値を更新しています。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 どうして、こんなにも冷静なのかが、正直、不思議ですが、これが現実です。

■予想どおり、米ドル高の展開に さて、そうした中で、為替相場ですが、ここにきて全体的に米ドル高の展開となっています。

 米ドル/円は、また110.00円を、一時的ですが、上に抜ける展開が見られました。

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

 ユーロ/米ドルも、1.09ドル台を下に割り込んできています。

ユーロ/米ドル 日足(出所:TradingView)

 私も、前回までのコラムの中で、基本的には米ドル買い方針ということを申し上げてきましたが、まさに、そうした展開となってきています。

【参考記事】

●市場の新型コロナウイルスへの反応は読みどおり。米ドル/円の108円台は迷わず買い!(2月6日、今井雅人)

 その大きな原因の1つは…
市場の新型コロナウイルスへの反応は読み どおり。米ドル/円の108円台は迷わず買い! ブログ

市場の新型コロナウイルスへの反応は読み どおり。米ドル/円の108円台は迷わず買い!

■事態は深刻だが、金融市場は極めて冷静 新型コロナウイルスが、猛威を振るっています。

 2月6日(木)朝の時点で判明しているところでは、中国国内での感染による肺炎の感染者数は2万8000人を超え、死者は560名を超えています。ここのところ、感染者は1日で3000人以上増えており、その数は、今後も増え続けると考えられます。

 これだけ深刻な状況にありますが、金融市場は極めて冷静な反応をしています。

 世界の株式市場は、一時、大きく下落する局面が、先週(1月27日~)までありましたが、その後は落ち着きを見せ、下落幅をほぼ取り戻しています。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 さすがに、中国の株式市場は、下落幅を取り戻せていませんが、それでも下落は止まり、徐々に上昇してきています。

上海総合指数 日足(出所:Bloomberg)

■やはり円高局面は絶好のチャンスだった! 私は、前回のコラムで、

 「このウイルスの市場への影響は、一時的、かつ限定的なので、すぐに回復するのではないか。円高になった局面、株安の局面は、絶好の円売り、株買いのチャンスではないか」

 といった趣旨のことを書きましたが、まさに、そういう展開になっています。

【参考記事】

●新型コロナウイルスでリスクオフの今は、円売りの絶好のチャンスになるかも!?(1月31日、今井雅人)

米ドル/円 4時間足(出所:TradingView)

■市場が回復した3つの原因は? こうした反応となっているのは、3つの原因があると考えています。

 1つ目は、死者の数です。

 560名というのは、確かに多い人数ではありますが、市場関係者が震え上がるような数ではありません。そして、遅ればせながら、中国政府も都市の封鎖をするような措置まで実行し、本気でウイルスを閉じ込めようとしています。

 こうしたことも、市場に安心感を与えているのでないかと思います。

 2つ目は、中国以外での感染が、まだ、それほど多くないということです。

 これまでのところ、中国以外の国で、感染者がもっとも多いのは日本ですが、それでも、その数は40人以下です。

 死者も、中国以外では1人だけです。こうしたことで、中国以外の人には、それほど深刻さがないのではないでしょうか。

 3つ目は、中国の経済対策です。

 中国政府は、今回の事態を受け、今週(2月3日~)から市場が再開するのと同時に、大量の資金供給をしたりするなどの景気対策を打ち出しました。

 この対応が、市場に評価されているという面もあります。

【参考記事】

●中国の資金供給は、18兆ではなく2.3兆円!? リスクオフの円高。ドル/円は戻り売り継続(2月3日、西原宏一&大橋ひろこ)

●新型コロナウイルスは為替にどう影響する? 米ドルは上がるのか? 下がるのか?(2月4日、バカラ村)

 今後も、決して油断してはいけないと思いますが…