
年内最終化を目指す
英中央銀行のイングランド銀行(BoE)のサラ・ブリーデン(Sarah Breeden)副総裁が、5月19日に英ロンドンで開催された「City Week」に登壇し、ステーブルコインやトークン化資産、次世代決済インフラを統合した英国金融システムの将来像について説明した。
ブリーデン副総裁は講演の中で、ステーブルコインに関する規制ドラフトを6月に公表し、年内の最終化を目指す方針を明らかにした。英国では、金融安定性とイノベーションの両立を意識した包括的なデジタル資産規制の整備が進められている。
BOEは昨年11月のコンサルテーションで、急速なステーブルコイン普及による預金流出リスクへの対応策として、個人・法人向けの「保有上限」を提示していた。
一方で今回ブリーデン副総裁は、その代替案として、発行総量に対する一時的なガードレール(上限)の導入を検討していることを示唆した。定期的な見直しを前提とすることで、イノベーションを阻害せず、法人利用を含む幅広いユースケースへの対応が可能になるとの考えを示している。
また銀行グループによるステーブルコイン発行についても、一定条件のもとで認める方向性を示した。具体的には、預金とステーブルコインの混同を避けるため、非預金取扱かつ倒産隔離された事業体からの発行を求めるほか、ブランド表示についても明確化を図る方針だ。
リテール決済領域では、従来の銀行預金に加え、トークン化預金、規制対象ステーブルコイン、デジタルポンド(CBDC)などが共存する「マルチマネー」システムの実現を目指す考えも改めて示された。
BOEは、「どの発行主体であっても1ポンドは1ポンドとして機能する」相互交換性を重視しており、これにより大手銀行以外も決済イノベーションへ参入しやすい環境整備を進める狙いがある。
なおデジタルポンドについては、BOEとHM Treasury(英国財務省)が引き続き設計フェーズを進めており、年内にも関連アップデートが示される見通しだ。
資産トークン化分野では、BOEと英国金融行動監視機構(FCA)が共同で進める「Digital Securities Sandbox(DSS)」にも言及された。
DSSでは、株式や債券、投資ファンドなどのデジタル証券を対象に、分散型台帳技術(DLT)を活用した新たな市場インフラの検証が進められている。ユーロクリアやHSBC、ロンドン証券取引所グループ(LSEG)など複数の金融機関・市場インフラ企業が参加している。
BOEは現在、次世代RTGS(即時グロス決済)インフラの刷新も進めている。
その一環として、トークン化資産と中央銀行マネー決済を連携させる「同期(synchronisation)」機能の実証実験を複数企業と進めており、不動産決済やトークン化証券、外国為替決済などへの活用可能性を検証しているという。
またBOEは、RTGSシステムの稼働時間拡大も視野に入れており、将来的な準24時間・週7日稼働を目指す方向性も示している。
英国政府が検討を進めるデジタル国債(DIGIT)についても触れられた。
DIGITはDSSを活用したトークン化国債の実証プロジェクトとして位置付けられており、英国政府はデジタル金融市場における国際競争力強化を狙う。BOEは今後、担保適格性などについても検討を進める方針だ。
ブリーデン副総裁は講演の中で、「英国は正しい方向に進んでいる」と述べたうえで、実証段階から本格運用への移行を加速する必要性を強調した。
参考:声明
画像:PIXTA
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参照元:ニュース – あたらしい経済

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