S&P、「USDT」の評価を最下位に格下げ。準備資産の高リスク化と開示不足を懸念

S&PがUSDTの評価を最下位に格下げ

S&Pグローバル(S&P Global)が、世界最大のステーブルコインであるテザー(Tether)の米ドル建てステーブルコイン「USDT」の格付けを11月26日に引き下げた。その理由は、準備資産に占める高リスク資産の増加と、「情報開示における持続的な不備」が挙げられている。

これに対しテザーは、S&Pの報告書内容に「強く異議を唱える」と表明した。S&PはUSDTの格付けを、従来の「4(制約あり)」から最低評価の「5(脆弱)」に引き下げた。

格付け機関S&Pは2023年、主要通貨(通常は米ドル)に連動するステーブルコイン各種のリスクを評価するため、1〜5のスケールを導入した。

テザーの広報担当者は電子メールによる声明で、S&Pが「デジタルネイティブ通貨の本質、規模、マクロ経済的重要性を見誤り、USDTの回復力、透明性、世界的な有用性を明確に示すデータを見落とした旧式の枠組み」を適用したと述べた。

エルサルバドル拠点のテザーは、USDTを約1,840億ドル(約28兆6,892億円)相当発行していると説明している。同社は、米国債などの資産で十分な準備金を保有しており、保有者がトークンをドルに戻せる(償還できる)としている。

S&Pはテザーが「ビットコイン」「金」などを準備資産として増やした点を指摘

S&Pは、過去1年でテザーの準備金における高リスク資産が増加したとし、その例としてビットコイン、金、担保付きローン、社債、その他投資を挙げた。

また同社はこれら全てについて「開示情報が限定的」であり、「信用、市場、金利、為替のリスクに晒されている」と指摘した。

さらにS&Pは、「テザーは保管機関(カストディアン)、取引相手、銀行口座提供者の信用力に関する情報提供が限定的なままだ」と付け加えた。

一方でS&Pは、暗号資産市場が変動する局面でも、テザーは「顕著な水準の価格安定性」を維持してきたと評価した。

テザーは、市場のショック局面でも「安定性を途切れさせることなく、数十億ドル規模の償還を処理してきた」と主張している。

またS&P報告書への反論として、テザーの「ステーブルコイン」は、新興国で貨幣として利用されているとして、同地域において「システム上重要な金融インフラ」として機能しているとも述べた。 

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
S&P cuts Tether stablecoin rating to ‘weak’ on disclosure gaps
(Reporting by Elizabeth Howcroft; Editing by Tommy Reggiori Wilkes and Alexander Smith)
参考:S&P
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Reuters

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参照元:ニュース – あたらしい経済

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