
ヴィタリックがイーサリアムの基盤レイヤーの変更停止を提案
イーサリアム(Ethereum)の共同創業者であるヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が、イーサリアムの基盤レイヤーについて、「頻繁なアップデートを減らし、時間をかけて徐々に固定化(ossification)すべきだ」と提言した。固定化とは、エコシステムにバグを引き起こす可能性のある変更を防ぐため、コア機能を凍結することを指す。なおこのことはブテリン氏がブエノスアイレスで開催されたカンファレンス「デブコネクト(Devconnect)」にて述べた内容を「DLnews」が11月19日に報じている。
ブテリン氏は500人以上が参加した会場で「時間の経過とともにより多くの固定化が進むことは、イーサリアムにとって良いことだ」と語り、「現在、予期しない事態の発生率ははるかに低くなっている」と述べた。この発言は、柔軟性と実験を重視して構築されてきたプロトコルにとって大きな方向転換を示すものだという。
イーサリアムは長年にわたり、開発者がさまざまなものを構築でき、プロトコル自体が新しいユースケースをサポートするために進化する能力が主な特徴だった。しかしブテリン氏は現在、適応性よりも安定性が重要だと考えているとのこと。固定化された基盤レイヤーは刺激的ではないかもしれないが、壊れる可能性も低くなる。数千億ドルの価値を保護するネットワークにとって、退屈であることは欠陥ではなく機能かもしれないという。
なおブテリン氏は、イーサリアムは異なるレイヤーを異なる速度で固定化できると主張した。コンセンサスレイヤーは変更を凍結する一方で、イーサリアム仮想マシン(EVM)は柔軟性を維持することも可能だという。目標はイノベーションを抑制することではなく、基盤レイヤーから周辺エコシステムへとイノベーションをリダイレクトすることだという。
これは、レイヤー2ロールアップ、ウォレット、プライバシーツール、ユーザー向けアプリケーションを意味し、基本的なプロトコル変更ではないという。レイヤー2はすでにイーサリアムのトランザクション量の大部分を処理しており、そこへ移動する活動が増えるほど、レイヤー1には決済とセキュリティのためのスペースが増えるとのことだ。ブテリン氏は「レイヤー1から周辺エコシステムへと注目を移すことは健全だ」と語った。
しかしブテリン氏は、この移行にはトレードオフが伴うことを認めた。イーサリアムの初期には「探求の精神」があったが、ミームコインの急増によってエコシステムが好ましくない方向に進み、同時に機関投資家の参入によって成熟したことで、その精神はほぼ消失したという。同氏は「成功したければ、すでに機能しているものを模倣する迅速なフォロワーになるという方向に進んでいる部分が多すぎる。それはこの分野の想像力を損なう」と述べた。
またブテリン氏は講演の終わりに、イーサリアムとビットコイン(Bitcoin)のセキュリティの基盤である楕円曲線暗号(ECC:Elliptic Curve Cryptography)は永遠には続かないという厳しい警告を発した。同氏は「楕円曲線は消滅する」と述べ、量子コンピューティングがイーサリアムの基礎となるセキュリティモデルを破る能力は、2028年の次回米大統領選挙前に実現する可能性があるとの予測を示した。
これにより、イーサリアムには耐量子暗号(quantum-resistant cryptography)への移行に約4年の猶予があることになるが、このタイムラインは量子コンピュータが予定通りに進歩することを前提としている。これはエコシステム全体での調整を必要とする存亡に関わる技術的課題だという。しかしブテリン氏のビジョンが実現すれば、これらの変更はイーサリアムの変更不可能なコアではなく、周辺部分で起こることになるとのことだ。
参考:DLnews
画像:iStocks/koyu
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参照元:ニュース – あたらしい経済

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