
ブータン、約80万人の国家デジタルIDをイーサリアム上に構築
ブータン政府は2025年10月14日、国家デジタルIDシステムをイーサリアム(ETH)のブロックチェーンに移行したことが明らかになりました。
イーサリアム財団の宮口あや氏はブータンで開催されたローンチ式典に出席し、X(旧Twitter)上で「ブータンが歴史的な節目を迎えた」と成功を称えました。
1/ Today, Bhutan celebrates a historic milestone, becoming the first nation to anchor its national digital identity system on Ethereum.
@VitalikButerin and I were honored to join the launch ceremony on behalf of the Ethereum community, graced by His Royal Highness. pic.twitter.com/KA4tOYbsJ4
— Aya Miyaguchi (@AyaMiyagotchi) October 13, 2025
本日、ブータンは歴史的な節目を迎え、世界で初めて国家のデジタルIDシステムをイーサリアム上に構築しました。
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イーサリアムコミュニティを代表して、ヴィタリック・ブテリン氏と共に、皇太子殿下を迎えた発表式に参加できる光栄をいただきました。
イーサリアム上での国家ID実装は世界初の事例であり、宮口氏はこれを「よりオープンでセキュアなデジタル未来へのグローバルな一歩」と表現しています。
この移行により、約80万人の国民がパブリックブロックチェーン上で自身の身分証明を検証できるようになると伝えられています。
仮想通貨観光決済システムを導入
世界初、イーサリアム上で国家IDをパブリックチェーン化
国家IT戦略「デジタル・ドルク」と自己主権型IDの整備
ブータン政府はこの取り組みを国家IT戦略「デジタル・ドルク(Digital Drukyul)」の一環として推進しており、2023年には国家デジタルID法を施行し、全国民向けの自己主権型ID基盤を整備しました。
象徴的な第一登録者として、国王夫妻の子であるジグメ・ナムゲル・ワンチュク皇太子(ギャルセー)がデジタル市民に登録されています。
当初、同国のデジタルIDプラットフォームは「Hyperledger Indy」を用いた許可制ブロックチェーンで運用されていましたが、2024年8月にはスケーラビリティ向上とプライバシー強化のためポリゴン(Polygon/POL)チェーンへ移行しました。
さらに、ゼロ知識証明技術を活用することで、取引量の増加にも耐えうる性能と匿名性を両立させています。
イーサリアム移行で実現する完全分散型のインフラ
最終段階として完全なパブリックネットワークであるイーサリアムに移行したことで、中央管理者が不在のオープンな環境で運用されるようになりました。
個人の機微情報は暗号化ハッシュや検証可能な資格情報(VC)として記録され、実データはオフチェーンで保護される仕組みと伝えられています。
ブータンのローンチ式典に出席したロテン・ツェリン・トブゲー首相は「イーサリアムのグローバルネットワークを活用することで、我が国のデジタル基盤のセキュリティ、透明性、レジリエンスが強化される」と述べています。
また、イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏も「分散型IDによって人々が自らのデータをより安全に管理できるようになる」と述べ、ブータンの大胆なブロックチェーン活用を称賛しました。
ブータンの事例が示す「Web3国家」の可能性
ブロックチェーン技術を活用したデジタルIDの試験導入はブラジルやベトナムなど他国でも進められていますが、全国民を対象とした本格導入はブータンが世界初の事例とされています。
さらに同国では今後、ハッカソン等を通じて開発コミュニティを育成し、ブロックチェーン上での電子署名や投票システムなど新サービスの展開も検討されています。
ブロックチェーン国家基盤導入を発表
ブータン政府、国家戦略として仮想通貨活用を加速
再エネ活用でBTCマイニングを拡大するブータン
ブータン政府は近年、ビットコイン(BTC)をはじめとする仮想通貨の活用にも積極的に取り組んでいます。
政府系ファンドは再生可能エネルギーを利用したマイニングでビットコインを蓄積しており、その結果、ブータンは国家として世界有数のBTC保有国となっています。
Bitboの最新データによると、ブータンの保有量は約11,286 BTC(12.6億ドル/1,920億円相当)に達し、米国・中国・英国・ウクライナに次ぐ5位の規模と報告されています。
Binance Pay導入で進む観光分野のデジタル化
さらに、2025年にはブータン南部の特別行政区「ゲレフ・マインドフルネス・シティ(GMC)」が、公式準備金にビットコインに加えてイーサリアム(ETH)やビルドアンドビルド(BNB)も採用する方針を打ち出しました。
観光分野でも、大手仮想通貨取引所Binance(バイナンス)の決済サービス「Binance Pay」を導入し、世界で初めて仮想通貨による観光決済インフラを構築しています。
ブータンは、今回のイーサリアムへの国家ID移行やビットコイン保有拡大などを通じて、ブロックチェーン技術を国家戦略の中核に据え、分散型社会への移行を先導する新たなモデル国家となりつつあります。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=152.55 円)
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Source:宮口あや氏X投稿
サムネイル:AIによる生成画像







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