
円建てステーブルコイン「JPYC」金融庁が承認方針
2025年8月17日、金融庁がフィンテック企業JPYC社の日本円連動型ステーブルコイン「JPYC」を国内で初めて承認する方針を示したと報じられました。
日本経済新聞によると、金融庁は8月中にもJPYC社を資金移動業者として登録し、登録から数週間以内にもJPYCの販売が開始される予定です。
JPYCは1JPYC=1円に価値が連動するよう設計され、銀行預金や日本国債といった流動性の高い資産を裏付けに保有することで価格の安定性を確保しています。
利用者(個人・法人)は購入申請後に代金を銀行振込し、その入金額に応じてJPYCトークンがデジタルウォレットに送付される仕組みです。
3月には米ドル連動型ステーブルコイン「USDコイン(USDC)」がSBI VCトレードで国内に初めて導入されましたが、円建てステーブルコインの承認は今回が初の事例となります。
「ステーブルコインは金融決済の未来」
JPYCが切り開く日本のデジタル通貨インフラの未来
電子決済手段として承認されるJPYCの意義
今回のJPYC承認方針は、2023年6月に施行された改正資金決済法の枠組みに基づく初の円建てステーブルコイン事例です。
同改正により、ステーブルコインは暗号資産とは異なる「電子決済手段」と定義され、登録・許可を受けた事業者が発行・取扱いできる制度が確立しました。
JPYC社はこの新制度のもとで月内の登録完了を見据え、今後3年間で累計1兆円規模の発行を目標に掲げていると伝えられています。
JPYCは国際送金や法人間決済、分散型金融(DeFi)での活用が想定されており、円建てステーブルコインをキャッシュレス決済の選択肢として広げる狙いも示されています。
「JPYCは暗号資産ではない」岡部氏が強調
JPYCは銀行預金や日本国債を裏付け資産として確保し、1JPYC=1円の価値を維持するよう設計されています。
この設計により、日本円建てデジタルマネーとしての信頼性が高まり、国内外で安心して利用できる決済手段としての役割が期待されています。
JPYC社の岡部典孝代表取締役は、JPYCについて「電子決済手段であり暗号資産ではない。法定通貨と連動する通貨建資産で、デジタル現金と預金の利点を併せ持つ」と強調しています。
今こそ広めてほしい!
JPYCは電子決済手段であり、暗号資産ではありません。価値が法定通貨と連動した通貨建資産であり、デジタル現金と預金の良いとこ取りのような性質です。
— 岡部典孝 JPYC代表取締役 (@noritaka_okabe) August 17, 2025
また同氏は、ステーブルコインを「巨大な国債消化装置」と位置づけ、米国ではTether(テザー)やCircle(サークル)が米国債の大口購入者になっていると指摘しました。
日本国内についても、JPYCの普及が国債需要を押し上げる可能性に言及し「これからJPYCが日本国債を買いまくることになる」と述べています。
加えて同氏は、各国政府がステーブルコイン制度整備を急ぐ背景には、国債金利上昇を抑制する狙いがあることも示唆しました。
ステーブルコインは巨大な国債消化装置であり、
ステーブルコイン発行体のTetherやCircleは米国債の主要な買い手になっています。日本でもこれからJPYCが日本国債を買いまくることになります。
ステーブルコイン発行が伸びない国の国債金利はこれからどんどん上がっていくでしょう。…
— 岡部典孝 JPYC代表取締役 (@noritaka_okabe) August 14, 2025
金融庁とJPYC社が目指す健全な市場形成
金融庁は資金洗浄や不正利用への対策としてモニタリングを強化し、JPYC社も取引履歴の追跡や利用者確認を徹底する姿勢を示しています。
今回取得予定のライセンスは「第二種資金移動業」に分類される見通しであり、1回あたりの送金上限は100万円以下となります。
JPYCの正式な登録日には公式リリースや記者会見が予定されており、市場関係者から注目が集まっています。
2025年仮想通貨決済トレンド
JPYC承認がもたらす日本の暗号資産市場への影響
JPYC普及による国内送金の効率化
今回承認が見込まれるJPYCは、日本円建てという特徴から、国内の個人や企業にとって日常的な決済や送金の利便性向上につながる可能性があります。
ドル建てが中心だった既存のステーブルコイン市場に多様性をもたらすとの見方があり、国内外の投資家や事業者の関心も高まっています。
実際、世界全体のステーブルコイン時価総額は約2,850億ドル(約42兆円)に達しており、その大半をUSDT(テザー)やUSDCなどの米ドル連動型資産が占める状況です。
円建てJPYCが普及すれば、日本円の国際的な存在感の向上や、国内の暗号資産決済インフラの一層のデジタル化促進につながると見込まれています。
これにより、個人利用にとどまらず、法人間取引や国際送金でも円の利用範囲が拡大する可能性があります。
JPYC発行が日本の金融システムに与えるインパクト
国際的な金融機関も日本市場に関心を示しており、今後の展開次第では海外勢との競争や協業が活発化する局面も想定されています。
金融庁によるJPYC承認は、日本がデジタル通貨時代で主導権を確立するうえで重要な一歩と評価されており、2025年は普及の転換点になるとの見方も出ています。
今秋以降に予定されているJPYCの正式発行や普及の進展、さらに日本の金融や経済システムへの影響について、引き続き注目が集まっています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=147.49 円)
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Source:日本経済新聞
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