
チェーンリンク、ICEデータ活用で金融革新を推進
2025年8月11日、仮想通貨チェーンリンク(Chainlink/LINK)の開発企業であるSmartContract(スマートコントラクト)社は、米インターコンチネンタル取引所(ICE)との提携を発表しました。
この提携により、ICEが保有するグローバル市場データがチェーンリンクのオラクル基盤「Chainlink Data Streams」に統合され、ブロックチェーン上で利用可能となります。データには主要通貨の為替レートや金・銀などの貴金属価格など、多様な資産クラスが含まれます。
ICEの統合フィードは、世界300以上の取引所や市場のデータを集約し、複数資産クラスにわたる高精度の価格情報をリアルタイムで配信しています。
この配信基盤を統合することで、チェーンリンクはエコシステム内の2,000以上の分散型アプリ(主要銀行や資産運用会社を含む)に、改ざん耐性を備えた精度の高い市場データを提供する体制が整う見通しです。
また、伝統金融の市場データをオンチェーン化する今回の提携は、オンチェーン金融の普及に向けた重要な節目とされ、オラクル基盤の活用が市場データの信頼性向上を促すと説明されています。
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チェーンリンクとICE提携が示すオンチェーン金融の未来
チェーンリンク×ICEが推進する金融市場のデジタル化
チェーンリンクを開発するスマートコントラクト社とICEの提携は、従来金融とブロックチェーン技術の連携を加速させる取り組みです。
ICEはニューヨーク証券取引所(NYSE)を傘下に持つ世界的な取引所運営企業であり、市場データ事業をグローバルに展開しています。
今回統合されるICEの統合フィードには、主要通貨の為替レートや金・銀などの貴金属価格が含まれ、これまで銀行や資産運用会社、独立系ソフトベンダー(ISV)などに構造化データとして提供してきました。
チェーンリンクによる高精度データ活用の可能性
ICEデータの統合により、ブロックチェーン上でも伝統市場と同等の価格精度と低遅延が実現すると見込まれています。あわせて、トークン化資産の決済やデリバティブ取引など、新たなサービス創出を支える基盤としての活用も期待されています。
ICEのグローバルデータ責任者マウリサ・バウマン氏は、今回の提携の狙いについて次のようにコメントしています。
当社のコンソリデーテッドフィードは、世界中の300超の取引所から信頼性の高いデータを集約し、銀行や資産運用会社などに提供してきました。チェーンリンクとの協業により、オンチェーン市場へ安全かつ確実なデータを供給できることを歓迎します。
こうした取り組みは、グローバルなブロックチェーン経済の成長に向けた重要な一歩です。
グローバルなオンチェーン金融システムの転換点
チェーンリンクの資本市場責任者フェルナンド・バスケス氏は、ICEのデータをチェーンリンクのインフラ上でオンチェーン化することは「グローバル市場の進化における画期的な瞬間だ」と述べています。
バスケス氏は、今回の協業が統一的なオンチェーン金融システムへの転換点となり、数百兆ドル規模の資産トークン化に向けた道筋を示す契機になり得ると強調しました。
実際、RWA(現実資産)のトークン化市場規模は、今後数年で30.1兆ドル(約4,460兆円)に達すると予測されています。この分野でいち早く高品質なデータ基盤を提供する両社の提携は、市場拡大に伴う新規ユースケース開拓や競争優位の確立を目指す動きとみられています。
チェーンリンクと大手金融機関の戦略的パートナーシップ
チェーンリンクは、SWIFT(国際銀行間ネットワーク)やMastercard(マスターカード)など大手金融機関と連携を進め、複数分野でのブロックチェーン実装を拡大しています。
今年1月には、Ripple(リップル)社の米ドル連動型ステーブルコイン「RLUSD」がチェーンリンクの価格オラクル(Chainlink標準)を採用しており、高品質なオンチェーン価格データを活用したDeFi領域での実利用が広がった事例が報告されました。
このようにチェーンリンクのオラクル技術は、伝統金融と仮想通貨業界を結ぶ中核インフラとしての評価が高まっています。専門家の間では、ICEとの提携により「クリプト業界がウォール街クラスの信頼性とデータ精度を手に入れる」との見方も示されています。
一部アナリストは、今回の提携がオンチェーン金融インフラの標準化を後押しし、結果としてLINKトークン需要の拡大につながる可能性を指摘しています。
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LINK準備金制度「Chainlink Reserve」始動
チェーンリンクは8月7日、オンチェーンでLINKの準備金を積み立てる制度「Chainlink Reserve」を開始したと発表しました。
この積立制度は、チェーンリンクのサービス利用料や企業からのオフチェーン収益をLINKに換算して蓄積する仕組みで、ネットワークの長期的な成長と持続性を支援することを目的としています。
提携拡大に伴い、Chainlink Labsが得た収益を原資として市場からLINKを買い入れ、順次準備金に組み入れる設計となっています。
運営側は「今後数年間はリザーブから引き出しを行わない」方針を示しており、ネットワーク拡大に伴い準備金の積み上がりが続く見通しです。
なお、発表時点で、約100万ドル(約1.5億円)相当のLINKが蓄積されたと報告されています。
市場関係者の間では、Chainlink ReserveによるLINK流通供給の減少と安定的な需要が「LINK価格の下支え要因になる」との見方もあります。実際、7月以降のLINK価格は堅調に推移し、直近1カ月で30%を超える上昇が報告されています。
ブラジルのCBDC実験におけるチェーンリンクの貢献
さらに、ブラジル中銀のデジタル通貨実験(Drex)では、チェーンリンクのCCIP(クロスチェーン相互運用プロトコル)が貿易金融トークンの決済に試験採用されています。こうした取り組みにより、チェーンリンク技術の実世界での応用領域は広がりを見せています。
業界内では「チェーンリンクがオンチェーン金融の基盤として不可欠な存在になりつつある」との評価が高まりつつあり、ICEとの提携やChainlink Reserveの始動がLINKの中長期的な価値に与える影響にも注目が集まっています。
ICEとの提携とChainlink Reserveの始動は、オンチェーン金融の信頼性と利便性を高める重要な契機とされ、LINKの長期的価値向上を後押しする要因になるとの期待が寄せられています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=148.31 円)
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Source:Chainlink公式発表
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