
Marti、ビットコイン投資戦略で資産保全を強化
2025年7月29日、トルコのモビリティ企業Marti Technologies(マーティ・テクノロジーズ)は、自社の現金準備の約20%をビットコイン(BTC)に投資する新たな仮想通貨財務戦略を発表しました。
Marti社は、現金準備の最大50%まで仮想通貨(暗号資産)の保有比率を引き上げる柔軟性を確保しており、今後はイーサリアム(ETH)やソラナ(SOL)といった他の主要仮想通貨も取得対象に加える方針を示しています。
同社はこの戦略について、現金や現金同等物といった従来資産に加えて仮想通貨も組み入れる方針であり、長期的な価値保存および制度的な金融リスクのヘッジ手段として位置づけていると説明しています。
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モビリティ企業Martiの仮想通貨財務戦略
仮想通貨に見る価値保存手段としての期待
Martiの創業者兼CEOであるオグズ・アルパー・オクテム氏は、仮想通貨資産への投資判断について「ビットコインをはじめとする主要仮想通貨は、過去数年間で法定通貨や金と並ぶ価値保存手段であることが証明された」と述べています。
同氏はトルコ国内のインフレリスクや通貨の不安定性を踏まえ、今回の方針を「慎重かつ長期的な財務戦略の一環」と位置付け、仮想通貨を将来的な価値保存手段として捉える考えを明らかにしました。
Martiが採用する分散投資と資産保全策
Martiは取得した仮想通貨を長期的に保有し、時間をかけて段階的にポジションを増やす方針を打ち出しています。
また、投資資産の管理については、規制に準拠した機関投資家向けカストディアンを活用し、安全性の確保を図る方針です。
同社は、関連する法令や業界のベストプラクティスに準拠した運用を徹底し、管理体制の透明性とコンプライアンスの確保にも注力していることを強調しています。
モビリティ事業と財務投資の共存モデル
今回の仮想通貨戦略は、Martiの本業であるモビリティサービスの日常業務や中長期の成長戦略に影響を及ぼさないよう、余剰資金を活用する形で実施されます。なお、投資資金の対象となるのは、事業活動に使用しない現金に限定されています。
オクテムCEOは「当社の事業運営に使わない現金が様々な市場環境下でも価値を維持できるようにすることが狙い」と述べ、財務の柔軟性と資産保全の両立を図る姿勢を示しました。
イーサリアムやソラナへの分散も視野
Martiは初期段階で、自社資金の約20%をビットコインに割り当てる計画を進めており、今後の市場動向や社内判断に応じて、保有比率を最大50%まで引き上げる可能性があるとしています。
さらに今後は、イーサリアムやソラナなどアルトコインへの分散投資も検討対象とする方針です。
同社は、今後取得する主要な仮想通貨についても随時情報開示を行う方針を掲げ、投資活動の透明性を確保するとしています。
今回の発表を受けて株価は時間外取引で約7%上昇しましたが、翌日の市場では6%前後下落し、投資家の反応は慎重なものとなりました。
トルコ発の上場企業Martiが示す先進性
Martiは2018年に設立され、ライドシェアや電動スクーターなどを展開するモビリティ企業として成長を遂げてきました。2023年7月にはNYSE American市場への上場を果たし、米国市場に上場した初のトルコ発モビリティ企業として注目を集めています。
この決定により、Martiはビットコインを企業資産に取り入れる国際的な流れに参入する形となり、今後の展開や他企業への影響にも関心が寄せられています。
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世界で広がる企業のビットコイン財務戦略
米企業によるビットコイン投資の加速傾向
2025年中盤以降、ビットコインを財務戦略に組み込む企業は世界各地で増加し続けています。
Architect Partnersの調査によると、2025年6月以降だけでも、仮想通貨の取得を目的とした資金調達を発表した企業は世界で約98社にのぼり、調達総額は430億ドル(約6.4兆円)に達しています。
この流れを象徴する企業の一つが、マイケル・セイラー氏が率いるストラテジー(旧マイクロストラテジー)社です。
同社は628,791 BTCを保有する世界最大級のビットコイン保有企業であり、7月29日には約25億ドル(約3,770億円)で21,021 BTCを追加取得したことを報告しました。
また、決済企業ブロック社(旧スクエア)や米大手仮想通貨取引所Coinbase(コインベース)も、ビットコインを自社の準備資産に組み込むを示しています。
こうした動きは、大手上場企業による仮想通貨の制度的な採用を象徴するものであり、ビットコインが企業の資産ポートフォリオの一部として徐々に認知されつつあることを示しています。
日本企業によるビットコイン戦略導入事例
日本国内でも、ビットコインを企業財務に取り入れる動きが広がりを見せています。
ネイルサロン「FASTNAIL」を展開する東証グロース上場のコンヴァノは、7月17日に約4億円相当のビットコイン取得を発表し、それをインフレ対策や購買力維持の手段として位置付ける方針を示しました。
また、東証スタンダードに上場するメタプラネット社は2024年に「ビットコイン・スタンダード」戦略を打ち出し、現金資産をビットコインに転換する方針を明言しました。
同社は、2027年末までに21万BTCの保有を目指す「555ミリオン計画」を掲げており、記事執筆時点で17,132 BTCの取得が完了しています。
ビットコインを活用する企業戦略の拡大と課題
ビットコインを企業財務に組み込む動きは世界的に拡大しており、今後はさらに多様な業種や地域においても同様の戦略が展開される見通しです。
特に、高インフレや通貨不安を抱える国々では、ビットコインが「価値の保存手段」としての役割を強めており、Martiのような事例はその先行モデルとして注目されています。
その一方で、価格変動リスクや規制への対応といった課題も残されており、今後の企業の動きや市場の成熟度が重要な焦点となっています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=149.28 円)
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Source:Marti公式発表
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用






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