
BTC・ETHを両替・使用できるサンドボックス制度
タイの証券取引委員会(SEC)と中央銀行が共同で、タイを訪れる外国人観光客がビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの仮想通貨(暗号資産)をタイバーツに両替して国内で使用できるようにする全国規模の暗号資産サンドボックス(実証実験環境制度)を導入する予定であることが明らかになりました。
この取り組みは暗号資産を活用してタイの経済や観光業界を活性化するためのもので、2025年7月15日にはタイ証券取引委員会から「仮想通貨交換サンドボックスに関する意見募集開始」が発表されています。
仮想通貨サンドボックスが導入されると、仮想通貨を保有する外国人観光客はSECに承認された暗号資産交換業者を通じてBTCやETHをタイバーツに交換し、タイ中央銀行に認められた電子マネー業者を通じて商品やサービスの支払いにそのタイバーツを使用できるようになります。
仮想通貨そのものを直接支払いに利用することは認められておらず、KYC/AML(本人確認/資金洗浄対策)など一定のルールは定められているものの、観光客は規制されたデジタルウォレットでスムーズに仮想通貨を交換して支払いができるようになるため、旅行時の現地通貨獲得が容易になり、タイ全土の観光業界が活発になると期待されています。
仮想通貨サンドボックスの概要と参加条件
タイの仮想通貨サンドボックス制度で実際にサービス提供を受けられるのは外国人観光客のみであり、リスク管理対策としてタイ資金洗浄対策局(AMLO)の基準に準拠したKYC/CDD(本人確認/継続的顧客管理)も実施されます。
SECの承認を受けた暗号資産交換業者・ブローカー・ディーラーは最大18ヶ月間にわたってサービスを提供することが可能で、このテスト期間は延長される可能性もあるとのことです。
また、観光客の支出上限も「一般サービスでは月額最大50,000バーツ、プレミアム事業者では月額最大500,000バーツまで」のように設定されており、参加企業の承認制・本人確認・資金洗浄対策・観光客の支出上限などといった複数のルールを導入することによって制度の不正利用を防止する仕組みとなっています。
SECの公式発表には今回のサンドボックス制度で交換できる仮想通貨の銘柄が明記されていないものの、複数の報道ではビットコインとイーサリアムが交換可能な仮想通貨として挙げられており、「他の仮想通貨については今後の評価やパブリックコメントをもとに決定される予定」とも報じられています。
仮想通貨の活用に取り組むタイ
タイでは昨年末に「プーケット・サンドボックス構想」と呼ばれる仮想通貨決済関連の取り組みが発表されていましたが、今回のサンドボックス制度はこの構想を発展させたものだと報じられています。
プーケットのサンドボックス構想は、観光都市プーケットで仮想通貨決済を試験導入することによってビジネス機会を高めるもので、今年1月にもこれに関する報道がなされています。
今回のサンドボックス制度は「仮想通貨の利用を促す」という点でプーケット・サンドボックス構想と共通していますが、今回は「プーケット限定ではなく、全国を対象とした構想である」という点が高く評価されています。
また、このサンドボックス制度はSECや中央銀行から正式に支援される構想であるため、制度的枠組みの下で実現される本格的な取り組みとしても注目されています。
一部では「SECなどから観光業関係者に対する十分な説明がなされていない」「仮想通貨利用に必要なエコシステム全体を整備してから導入すべき」「対象となる仮想通貨の種類・どの取引所が使えるのかなど、より明確なガイドラインを定めるべき」などの指摘も出ていますが、今後のこのような取り組みがさらに加速してしっかりと環境が整えば、仮想通貨を手軽に換金して旅行先で使えるようになるため、仮想通貨がより便利で身近なものになると期待されます。
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source:タイSEC
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