
この記事の要点
- コンヴァノが4億円相当のビットコインを取得へ
- 「ビットコイン保有戦略室」を新設しリスク管理を強化
- 資金は新株予約権と自己資金を活用予定
- ビットコインを購買力維持とインフレ対策に活用
- 複数の上場企業でもBTC戦略の導入が加速中
コンヴァノ、4億円相当のビットコイン取得へ
ネイルサロン「FASTNAIL」を展開する東証グロース市場上場の株式会社コンヴァノは2025年7月17日、総額4億円相当のビットコイン(BTC)を取得することを発表しました。
これにより、同社は財務戦略の一環として、ビットコイン保有を軸とする暗号資産事業への参入を本格化させる方針です。
同社の発表によると、今回のビットコイン取得は、財務基盤の強化、円建て事業における購買力の維持、および中期的なインフレ対策を目的としており、企業資産の一部を暗号資産で保全する「ビットコイン保有戦略」に基づいて実施されます。
また、同戦略の実行を担う専門部署として、同日付で「ビットコイン保有戦略室」が社内に新設されたことも明らかにされました。
同部署の責任者には、Web3領域に精通する同社取締役の東 大陽氏が就任し、同氏はエンジニア兼経営戦略家としての経歴を持つ人物と紹介されています。
この発表を受けて株式市場も反応を示し、コンヴァノ株は前日比で一時11%の上昇を記録しました。株価の動きからは、市場が同社の新たな財務戦略に対して好感を示したと見られています。
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インフレ耐性と通貨分散を狙うコンヴァノのBTC財務戦略
コンヴァノがビットコインを財務戦略に組み込む背景には、近年の物価上昇や為替変動の影響により、企業経営におけるインフレ耐性の強化や通貨分散の重要性が一層増しているという認識があります。
増資によるビットコイン購入資金の確保
2025年6月27日に開催された定時株主総会では、定款の事業目的として「Web3・デジタルアセット事業」の追加が承認されました。
また、6月30日付で開示された資料では、第4回新株予約権の発行によって最大約601億8,600万円を調達する計画が明らかにされています。このうち約301億1,000万円を自己勘定投資に充て、暗号資産への投資枠として4億円を確保する方針が示されました。
このビットコイン保有戦略は、円建てで成長する中核事業を背景に、企業資産の購買力を守り、中期的なインフレの影響を和らげることを目的とした財務戦略です。「円で稼ぎ、円の購買力を守るための柔軟な運営手段」として位置付けられています。
同社が想定するビットコインの保有は、値上がり益を目的とした投機的な運用ではなく、原材料費や人件費の上昇局面においても価格転嫁や賃金対応を可能にすることで、財務の柔軟性を高める「購買力防衛策」として位置づけられています。
法的裏付けに基づく企業のBTC保有
同社は、法定通貨は価値が下落しやすい側面があるとした上で、発行上限のあるビットコインは希少性により、企業の内部留保を保全する保険的な役割を果たす見解を示しています。
そのため、ビットコインを自社バランスシートに組み込まない場合、インフレ下で資産価値が目減りするリスクが生じる可能性があると説明しています。
現行の資金決済法ではビットコインが「不特定多数に対して決済に用いることができる資産」と明確に定義されており、企業がバランスシート上でBTCを保有する法的な根拠はすでに整備されています。
さらに、大阪堂島商品取引所ではビットコイン先物の上場が検討されており、ビットコインを既存の金融インフラに組み込む動きも広がっています。これにより、ヘッジや財務コントロールの手段として認知される流れが強まりつつあります。
ビットコイン取得方針とガバナンス体制の整備
こうした環境変化を踏まえ、コンヴァノはビットコインの保有上限を自己資本の一部に厳格に制限しています。加えて、市場への影響を抑制するため、分散的かつ段階的な取得手法を採用する方針を示しています。
取得後の管理体制については、マルチシグ対応のコールドウォレットと金融機関でのカストディを併用し、セキュリティとガバナンスの強化を図る計画です。保有残高については、随時適時開示を行うとしています。
国際会計基準(IFRS)では、ビットコインは無形固定資産(IAS第38号)として計上されます。取得後は原価モデルによる評価が適用され、時価と簿価の差をもとに減損テストが実施されます。相場が急落した場合には、減損損失の計上が求められる可能性があると説明されています。
同社は「本構想は現行法令への準拠にとどまらず、制度の進化とも親和性が高く、インフレ耐性と財務健全性を高める合理的な資金活用である」と強調しています。
なお、ビットコインの購入については、主要な国内暗号資産取引所に開設した口座を通じて実施される予定で、特定の相手先からの直接購入は想定していないと説明されています。
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日本企業にも広がるビットコイン活用戦略
日本国内においても、ビットコインを企業財務に取り入れる動きが徐々に広がりを見せています。
アジャイルメディアがビットコイン投資に参入
インターネット広告事業を展開する東証グロース上場のアジャイルメディア・ネットワーク(AMN)は7月16日に、ビットコインを1,000万円分(約0.55 BTC)取得したことを発表しました。
同社は、7月〜9月期に最大1億円、2029年10月までに最大5億円分のBTCを段階的に取得する計画を掲げており、今回の購入はその一環となります。
AMNは2024年4月から暗号資産を財務資産の一部として取り入れており、これまでに複数回のビットコイン取得を実施しています。2025年6月末には、暗号資産投資事業への本格的な参入を正式に発表していました。
なお、取得したビットコインは四半期ごとに時価評価され、評価損益が業績に与える影響については適宜開示を行うとしています。
東邦レマック、ビットコイン・イーサリアム取得へ
また、東証スタンダードに上場する靴の卸売業・東邦レマックも7月15日、総額10億円を上限とするビットコインおよびイーサリアム(ETH)の購入枠を設定したと発表しました。購入期間は2025年7月から2026年6月までの1年間で、段階的に取得・保有を進める方針を示しています。
同社は暗号資産購入にあたり事前にリスク管理体制や会計処理方針を整備して安全性・透明性の確保に努め、「信頼性の高い暗号資産取引所」を利用して段階的に取得を進めるとしています。
この取り組みは、同社が資産運用および将来のデジタル金融領域への対応力強化を目的として暗号資産の購入枠を設けたものであり、財務基盤の安定化と将来的な成長分野への布石として段階的にBTC・ETHを取得を進めていくとしています。
マックハウスなどもビットコイン購入を発表
コンヴァノに加え、ビットコイン購入計画を発表している上場企業は他にも存在します。
衣料品チェーンのマックハウス、繊維メーカーの北日本紡績、車載部品メーカーのイクヨ、スマートフォンアプリ開発を手がける東京通信グループなどがその一例です。
こうした国内企業の動向は、インフレ対策や資産多様化のみならず、新たな事業創出や経営効率化を目指す観点からもビットコインが企業財務に組み入れられ始めていることを示しています。
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