「米ドル連動型ステーブルコインは証券ではない」SEC公式発表|不確実性の解消へ

SECが「米ドル連動型ステーブルコインは証券に該当しない」と公式発表(SEC officially declares USD-pegged stablecoins are not securities)

カバード・ステーブルコインは「証券適用外」

SEC(米国証券取引委員会)は2025年4月4日に、米ドルに連動したステーブルコイン(カバード・ステーブルコイン)について、証券法上の「証券の定義に該当しない」との公式見解を示しました​。

対象となるステーブルコインは、米ドルと1対1で交換可能であり、米ドルや低リスク資産を準備金として保有して価値を安定させているものです​。

SECは「カバード・ステーブルコインの発行・償還は証券の発行および販売には当たらない」と明言しており、ステーブルコインの発行や償還に関わる事業者には、SECへの証券登録義務がないことが明確化されました。

これはUSDT(テザー)USDC(USDコイン)など主要ステーブルコインに関する長年の法的な不確実性を解消する動きとして注目されています。

SECは今回の声明で、この種のステーブルコインは投資目的ではなく「商取引や決済手段」として提供されていることを強調し、利益配当や投機的なリターンを持たない点を指摘しています​。

「証券該当性」の議論に終止符

ステーブルコインが証券に該当するか否かは、仮想通貨(暗号資産)業界で長年議論されてきました。

2023年には、SECがステーブルコイン発行企業「パクソス」に対して米ドル連動型ステーブルコインBUSDを”未登録証券”として警告(ウェルズ通知)する事態も起きており、当時は規制当局がステーブルコインを証券と見なす可能性が取り沙汰されました​。

パクソス社は一貫してBUSDは証券ではないと主張し、SECはその後この調査を終了して法的措置を取らない判断を下しています​。この決定は「ステーブルコインを証券とみなすべきか」という長年の議論における大きな転換点となりました​。

SECによる調査終了を受けたパクソス社の幹部は「今回の決着は当社にとって非常に大きな安心材料であり、ステーブルコイン領域に参入しようとする大企業に市場の確実性をもたらすだろう」と述べています​。

このように、規制上の不確実性が解消されたことで業界には安心感が広がり、ステーブルコインの利用・発行を検討する企業や金融機関にとって追い風となる可能性があります。

利回り付きステーブルコインは証券に?

ステーブルコイン利回りに関する懸念についても議論が続いています。

現在、USDTやUSDCなどステーブルコイン発行者は準備金として保有する米国債等から利息収入を得ていますが、その利回りをトークン保有者に還元していません​。この理由の一つは、利息を付与するステーブルコインは従来の金融商品に近づき、証券と見なされるリスクが高まるためです。

SECは今年2月、分散型取引所フィギュア・マーケッツが発行する利回り付きステーブルコイン「YLDS」を初めて承認しました​。YLDSは安全資産利率に連動し「年利3.85%」を提供する世界初のSEC規制下ステーブルコインとして注目されました​。

ただし、利息や配当を伴うステーブルコインは証券として扱われ、YLDSはSECの規制対象になり得ると見られています。

SECの今回の声明でも、カバード・ステーブルコインの発行体は準備金と自社運営資金を混同したり、トークン保有者に利息を支払ったりしてはならないと強調しており、あくまで利回りを伴わない「デジタルドル」の範囲に留まる場合のみ証券から除外される立場です。

こうした利回りをめぐる議論は今後の規制整備の焦点にもなっています。米国議会では現在、ステーブルコインの包括的な規制枠組みを定める法案作りが進められており、今年中の成立を目指す動きがあります​。

ステーブルコインの利払いを巡る議論

特に注目されているのは、ステーブルコイン発行企業がトークン保有者に利息を支払うことの是非です。

下院金融サービス委員会で可決された法案では発行体がステーブルコイン保有者に利息を支払うことを明確に禁止していますが、上院版の法案では一部タイプのステーブルコインを除き利払い禁止を明記しないなど、両院で対応が分かれています​。

大手仮想通貨取引所Coinbase(コインベース)のブライアン・アームストロングCEOは「銀行と仮想通貨企業の双方が消費者と利息をシェアできるべきだ」と指摘しており​、一部議員も将来的な利払い解禁に前向きな姿勢を示しています​。

しかし銀行業界などからは、ステーブルコインに利息を認めれば預金が銀行から無保険の仮想通貨口座へ流出しかねないとの懸念が提示されています​。

このように、米ドル連動型ステーブルコインが証券ではないことは明確になったものの、今後はステーブルコインに付随する金融サービス(利息提供や運用方法)をどう位置付けるかが課題となります。

ステーブルコイン規制の不確実性解消へ

ステーブルコインはすでに仮想通貨市場や決済手段として巨大な存在感を示しており、米国政府もその潜在力に注目している状況です。

その一方で、利回り提供など銀行業務に近いサービス展開については慎重な監督が求められ、銀行規制当局や議会も含めた幅広い調整が続く見通しです。

トランプ政権下の米国は現在、ステーブルコインを含むデジタル資産の法整備を急速に進めており、今回のSECの見解表明もその流れに沿ったものと見られています。

今回のSEC声明は、仮想通貨業界にとって歓迎すべき前進であり、今後もユーザー保護とイノベーション促進のバランスを取りながら、より明確で安心できるルール作りが進展していくことが期待されています。

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Source:SEC公式発表
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用

参照元:ニュース – 仮想通貨ニュースメディア ビットタイムズ

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