トランプ大統領、仮想通貨を「米国経済成長の鍵」と位置付け|デジタル資産サミット演説
米国が仮想通貨で主導権を
ドナルド・トランプ米大統領は2025年3月20日に、ニューヨークで開催されたデジタル資産サミット(Digital Asset Summit)にビデオメッセージを寄せ、仮想通貨(暗号資産)が米国経済成長の原動力になると強調しました。
演説の中でトランプ大統領は、米国が仮想通貨と次世代の金融技術において主導的な立場を確立することを目指していると強調しました。また、ステーブルコインや市場構造に関して、シンプルで常識的なルールを制定するよう、議会に求めている姿勢を改めて示しました。
仮想通貨推進へ米国が本腰
トランプ大統領はこの基調講演で、政権発足以来の仮想通貨分野への取り組みを総括し、ビットコイン(BTC)やブロックチェーン技術を支持する姿勢を明確に示しました。
また、仮想通貨産業が金融システムを変革し、米国経済に爆発的な成長をもたらす潜在力があると指摘し「適切な法的枠組みの下で、規模を問わず多様な機関が投資やイノベーションに参加できるようになる」と述べています。
さらに「皆さんのような先駆者が米国の銀行・決済システムを改善し、国民と企業により高いプライバシー、セキュリティ、利便性を提供できる」と聴衆に呼びかけました。
ステーブルコインで米経済強化へ
トランプ氏は演説の中で、ステーブルコインの規制整備にも言及しました。「私は議会に対し、ステーブルコインと市場構造に関するシンプルで常識的なルールを定める画期的な法律を成立させるよう呼び掛けている」と述べ、連邦議会に対し仮想通貨法制の整備を促しました。
このルール整備によって、ドル連動型のステーブルコインが「米ドルの国際的優位性を拡大するのに寄与する」とし、米ドル基軸体制の強化にも資するとの見解を示しました。
演説の締めくくりでトランプ氏は「アメリカを、ビットコインにおける確固たる超大国、そして仮想通貨業界の中核的存在にしていこう」と呼びかけています。
トランプ政権の仮想通貨規制改革
今回の演説は、トランプ政権が仮想通貨産業を重視している姿勢を改めて示すものです。
今月初めにはホワイトハウスで初の「仮想通貨サミット」を開催し、仮想通貨業界のトップや政権高官・議員ら数十名が参加しました。その場でトランプ大統領は、政府が押収した仮想通貨を活用して戦略的な仮想通貨備蓄を構築する構想を明らかにし、3月7日付で関連の大統領令に署名しています。
この「戦略的ビットコイン備蓄(Strategic Bitcoin Reserve)」および「米国デジタル資産ストックパイル」の創設によって、政府は保有するビットコインを売却せず、長期的に保持することで、その価値の向上を図る方針を打ち出しました。
政権のAI・仮想通貨部門の責任者デビッド・サックス氏は、この措置が「米国を世界の仮想通貨資本にするというトランプ氏のコミットメントを示すものだ」と述べています。
また、トランプ政権は前政権下での「仮想通貨業界への規制圧力」を転換する動きを次々と打ち出しています。
バイデン前政権が進めていた銀行の仮想通貨取引規制(いわゆる「オペレーション・チョークポイント2.0」)について、トランプ氏は「行き過ぎた政府の法的武器化によるものだ」と批判し、就任後直ちに終了させたと述べました。
米通貨監督庁(OCC)は3月7日、銀行による仮想通貨関連業務について事前承認を求めるバイデン政権下のガイダンスを撤回し、適切なリスク管理を前提に一定の仮想通貨ビジネスを認める方針を発表しています。
さらにSEC(米国証券取引委員会)も最近、仮想通貨企業に対する訴訟や調査を相次いで取り下げる動きを見せており、Ripple(リップル)社に対する係争では、同社が「SECが訴訟を正式に取り下げる予定」と法廷闘争の終結を報告しています。
仮想通貨市場は静かな反応
トランプ氏は課税や銀行規制緩和などデリケートなテーマには踏み込まず、具体的な新施策の発表はありませんでした。このため、演説直後のビットコイン価格に大きな変動は見られず、市場の反応は限定的でした。
一部の投資家からは「踏み込んだ内容がなく期待外れ」との声も上がりましたが、他方では「大統領が明確に業界支持を表明した意義は大きい」と評価する意見もみられます。
一方、価格変動の激しい仮想通貨市場において、政府が業界支援の姿勢を継続して示したことは、投資家心理を下支えする要因となったとの見方もあります。
仮想通貨市場は依然として政策によって価格が大きく変動する不安定な状況が続いています。トランプ大統領は演説で「今後も困難は続くが、米国は他国に対して大きな優位を保っている」と述べ、米国が主導権を握る決意を示しました。
今後、議会での関連法案の行方や2025年内に予定される追加の規制整備が市場に与える影響に大きな注目が集まっています。
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執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
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