仮想通貨サミットで何が語られた?トランプ政権が示した政策と反応

仮想通貨サミットで語られたトランプ政権の政策と業界の反応(Crypto Summit discusses Trump administration's policies and industry reactions)

歴史的なイベント「仮想通貨サミット」開催

2025年3月7日に、ワシントンD.C.のホワイトハウスで史上初となる「仮想通貨サミット」が開催されました。

サミットには、ドナルド・トランプ米大統領をはじめ、政権高官や議員に加えて、大手仮想通貨取引所Coinbase(コインベース)CEOのブライアン・アームストロング氏、ストラテジー(旧マイクロストラテジー)会長のマイケル・セイラー氏、Ripple(リップル)CEOのブラッド・ガーリングハウス氏など、仮想通貨業界を代表する重要人物が多数出席しました。

業界トップと政権首脳が一堂に会したこのサミットは、米政府の仮想通貨に対する姿勢転換を示す歴史的なイベントとして大きな注目を集めました。

サミットで語られた今後の仮想通貨政策

サミットの席上、トランプ大統領や政府側は、仮想通貨産業振興に向けた以下の政策方針を表明しました。

ステーブルコイン規制の整備

トランプ大統領は、議会に対し「8月の夏季休会前まで」に包括的なステーブルコイン規制法案を成立させるよう強く求めました​。

この法案はUSDT(テザー)USDC(USDコイン)といった民間発行のドル連動型ステーブルコインに連邦の法的枠組みを与えるものです。

また、スコット・ベセント財務長官は、米国政府としてステーブルコインを活用して米ドルの世界基軸通貨の地位を維持していく方針を表明しました​。「明確なルールの整備こそがドル覇権を守る助けになる」と強調し​、ステーブルコイン規制法整備の早期実現に強い意欲を見せました。

仮想通貨に対する課税・規制見直し

トランプ大統領は、仮想通貨に対する課税・規制面の過剰な締め付けの見直しにも言及しました。

「仮想通貨に対する戦争」の終結を掲げるトランプ政権は、前バイデン政権下で内国歳入庁(IRS)や他機関が策定したガイダンスや厳しすぎる規制措置を撤廃・修正する方針であり、仮想通貨企業の事業展開を阻害してきた税制・規制上の障壁を取り除く考えを改めて示しました。

トランプ大統領は「前政権による拙速な規制強化がイノベーションを海外へ追いやった」と批判しており​、今後は国内での事業展開を促す環境整備に注力すると見られています。

戦略的ビットコイン準備金設立

サミットの前日、トランプ大統領は連邦政府による「戦略ビットコイン準備金設立」を指示する大統領令に署名しており​、サミットでは改めてその詳細が語られました。

準備金は、司法省などが押収し連邦政府が保有するビットコインで構成され、いわば“ビットコイン版フォートノックス(金塊貯蔵庫)”として長期的に保管されることが明らかにされています​。

さらに、スコット・ベセント財務長官とハワード・ラトニック商務長官に対しては「納税者に追加負担をかけない予算中立的な方法」でビットコインを追加取得する戦略を策定するよう指示が出されています​。

トランプ大統領はサミットの場で「我々はあるルールに従う。それは”ビットコインは決して売るな”ということだ」と述べ、長期保有の方針を強調しました​。これは前バイデン政権が差し押さえたBTCを市場で売却し、結果的に安値で手放したために「約170億ドル(約2兆4,000億円)の損失を招いた」ことへの反省が示されています​。

また、トランプ大統領は「納税者に一切のコストを負わせるつもりはない​」という点を強調し、政府による仮想通貨保有が国民の負担増や債務拡大につながらないよう配慮する姿勢を示しました。

業界関係者のコメント・意見

今回のサミットと仮想通貨政策について、業界からは賛否の声が上がっています。

リップル社のブラッド・ガーリングハウスCEOはサミット後、自身のX(Twitter)で「政権が仮想通貨に関してどのような優先事項で進めるのかが改めて明確になった」とコメントしています。

仮想通貨業界にとって、今週はまるで数カ月分の出来事が詰まったような一週間でした。

(中略)

ホワイトハウスが仮想通貨政策で何を優先しているか、また今後優先するかについては多くの議論がなされました。特に、議会を通じた規制の明確化、ビットコインの準備資産化と仮想通貨備蓄、米国債を裏付けとしたステーブルコインのイノベーション支援などが重要なテーマとして挙げられています。

また、資産運用会社21シェアーズの米国事業責任者フェデリコ・ブロカーテ氏は「機関投資家参入加速や規制の明確化、さらには米国のデジタル資産革新のリーダーシップ強化につながる可能性がある」と高く評価しました。

国の方針転換を好感して欧州やアジアの投資ファンドからも米市場への資金流入が増えるとの見方があり、長期的にはニューヨークを再び仮想通貨ビジネスの中心地に押し上げるとの期待が見られています。

一方で、慎重・批判的な意見も見られています。

ビットコイン特化型ヘッジファンド、カプリオール・インベストメンツ創業者のチャールズ・エドワーズ氏は「政府が積極的に買い増さない方針には失望した」とXに投稿し​、期待先行で買われていた市場が失望売りに転じた状況を端的に示しました。

今週の結果としては、期待外れで残念な結果となりましたが、正直なところ驚きはありません。

どうやら2025年に具体的なBSR(ビットコイン準備資産)は実現しないようです。

政府による積極的な買い入れがない以上、これは単なる「既存のビットコイン保有を飾り立てたタイトル」に過ぎません。

また、「政治パフォーマンス」との批判もあり​、チェインリンク創設者のセルゲイ・ナザロフ氏(Sergey Nazarov)氏はサミット後に「仮想通貨が政治の道具になると、その運命はワシントンの権力争いに左右される」と指摘しました​。

米国市場の課題と期待

業界関係者からは、今回のサミットで示された政策について一定の評価をしつつも「今後の具体的な制度整備が重要になる」との声が上がっています。

実際に企業が安心して米国市場で事業を拡大するためには、実効性のある法案や規制ルールの整備が欠かせません。サミット後、コインベースのように一時は海外移転を検討していた企業が「米国市場で1,000人規模の増員計画」を発表するなど、前向きな動きも見え始めています。

一方、企業が本当に安心して事業拡大に乗り出せるようになるためには、政策が実際に法律化されるだけでなく、議会や規制当局との連携が不可欠だと指摘されています。

トランプ大統領がサミットで述べた「今日から我々は開拓者になる​」との言葉通り、米国が仮想通貨時代の最前線を切り開いていけるのか、国内外の注目が集まっています。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=148.02円)

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Souce:ロイター通信
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用

参照元:ニュース – 仮想通貨ニュースメディア ビットタイムズ

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