堂島取引所、アジア初「ビットコイン先物上場」申請準備=報道

堂島取引所、アジア初のビットコイン先物上場を申請準備(Dojima Exchange prepares to apply for Asia's first Bitcoin futures listing)

大阪市の堂島取引所が、ビットコイン(BTC)先物の上場に向けて申請準備を開始したと報じられました。金融庁の認可が下りれば、アジアで初めて伝統的な取引所においてビットコイン先物取引が実現します。

堂島取引所は江戸時代の米相場に起源を持つ世界初の先物市場であり、その歴史と伝統を背景に、暗号資産(仮想通貨)市場に新たな時代を拓く動きとして注目されています。

堂島取引所、ビットコイン先物申請へ

大手メディアのブルームバーグは2025年3月4日に、大阪市に拠点を置く堂島取引所が、ビットコイン(BTC)先物の上場認可に向けて、今月末までに申請準備を整える方針であることを報じました。

今回のニュースは、ブルームバーグが「事情に詳しい人物の話」として伝えたもので、金融庁の認可が下りれば、早ければ2025年度中にも円建てのビットコイン先物取引を開始する予定であると明らかにしています。

記事執筆時点で、本件に対する堂島取引所および金融庁担当者からのコメントはありませんが、予定通り上場された場合、伝統的な取引所によるビットコイン先物としてアジアで初の事例となり、国内外の暗号資産(仮想通貨)市場関係者から注目を集めています。

堂島取引所と大阪金融構想

堂島取引所とは

大阪市に拠点を置く堂島取引所は、その起源を江戸時代の「堂島米市場」に持つ、世界初の先物取引所として知られる歴史ある取引所です。1730年に幕府公認の米先物市場として開設され、その伝統を現在も受け継いでいます。

現在の堂島取引所では、金・銀・白金(プラチナ)といった貴金属や、トウモロコシ・大豆など農産物の先物を上場しており、日本の商品先物取引の一翼を担っています。

同取引所には暗号資産事業に注力する「SBIホールディングス」などが出資しており、大阪府・市が推進する「国際金融都市構想」の一環として、新たな金融商品の取扱いにも積極的な姿勢を見せています。

日本における仮想通貨デリバティブ市場の現状

日本国内ではこれまで、ビットコインをはじめとする暗号資産のデリバティブ取引は限定的な環境にとどまってきました。伝統的な取引所での上場商品としての暗号資産先物は存在せず、主な先物・証拠金取引は暗号資産交換業者(仮想通貨取引所)による店頭取引で提供されてきました。

例えば国内大手の取引所「bitFlyer(ビットフライヤー)」は、複数の暗号資産の現物取引に加え、ビットコインのFX(証拠金取引)や先物取引サービス「Lightning」を提供し、利用者は様々な取引手段を選べます。

しかし、このように先物取引を扱う仮想通貨取引所は国内では少なく、他の多くの交換業者は現物取引が中心です。また過去には「Zaif(ザイフ)」のようにビットコイン先物取引サービスを提供していた取引所もありましたが、2018年3月に四半期先物取引の提供を終了しています。

こうした経緯から、日本の仮想通貨デリバティブ市場は限定的で、先物上場への期待が高まっていました。

海外のビットコイン先物市場との比較

一方、海外に目を向けると、米国の「シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)」では2017年末からビットコイン先物が上場されており、現在では世界で最も流動性の高いビットコイン先物市場となっています。

また香港取引所では、CMEのビットコイン先物価格に連動するETFが承認・上場されており、機関投資家がアジア時間でビットコイン先物価格に間接的に投資できる手段も生まれています。

それでもなお、アジアの伝統的取引所で直接ビットコイン先物を扱っている例はなく、今回の堂島取引所の上場が実現すればアジア初の事例となります。

これは、日本がデジタル資産の分野で国際的に先駆的な役割を果たす可能性を示すものであり、国内市場の活性化だけでなく、アジア全体の暗号資産市場における日本の存在感向上につながると期待されます。

日本初BTC先物市場への期待

ヘッジ手段としての価格安定効果

ビットコイン先物の上場は、暗号資産市場における価格変動リスクを緩和し、価格の安定化に寄与する可能性があります。現物市場のみでは急激な価格変動に対応しづらい場面でも、先物市場を利用してヘッジ(値段変動のリスク回避)が可能になるためです。

日本でも暗号資産への個人投資家層が拡大する中、価格ヘッジの観点から先物への潜在ニーズが高まっているとの指摘があります。先物取引によって投資家が下落リスクに備えやすくなれば、過度の高騰や暴落が抑えられ、市場全体の安定性向上が期待できます。

機関投資家の参入促進と流動性向上

また、先物市場の整備は機関投資家の市場参入を後押しすると期待されています。先物取引は証拠金を用いたレバレッジ取引や、清算機構による信用補完があることから、機関投資家が利用しやすい投資適格商品としての特徴があります。

実際、海外ではビットコイン先物の導入によってヘッジファンドや金融機関が暗号資産市場に参入し、市場の流動性が大幅に向上した例があります。投資家からは「機関投資家の参入によりマーケットの厚みが増し、価格の発見機能が高まる」との声も聞かれ、流動性拡大と価格安定性向上への期待が寄せられています。

今回、堂島取引所で先物が開始されれば、日本市場にも海外の大口投資マネーが流入しやすくなり、市場規模の拡大につながる可能性があります。

投資家の選択肢拡大と国際競争力

ビットコイン先物の上場は、日本の投資家にとって新たな投資手段の提供となります。これまで国内の暗号資産取引は現物取引が中心で、一部の取引所が提供する証拠金取引に限られていました。

先物という公式に上場されたデリバティブ商品が登場すれば、投資家は価格上昇だけでなく下落局面でも利益を狙える(空売りによるヘッジや投機)ようになり、より多角的な投資戦略が可能となります。

加えて、日本発の先物価格が確立されれば、アジア市場の主要な価格指標として位置付けられる可能性があります。

現在、ビットコイン先物価格の指標は米CMEが主導していますが、日本時間帯の取引活発化によって大阪の堂島取引所がアジアの価格センターとなれば、日本の暗号資産市場の国際競争力が高まると期待されています。

金融庁規制が業界の足かせに

金融庁による規制枠組み

日本では近年、暗号資産に関する規制が強化され、デリバティブ取引についても明確なルールが設けられています。2020年5月の改正金融商品取引法の施行により、暗号資産を原資産とするデリバティブ取引は第一種金融商品取引業の規制対象となりました。

これにより、暗号資産の証拠金取引を提供する業者は金融庁に登録し、資本要件や投資家保護策を満たす必要があります。実際、主要取引所bitFlyerはこの改正に対応するため2021年10月に「第一種金融商品取引業者」としての登録を完了し、サービスの継続にこぎつけました。

同社の提供する「Lightning」など証拠金取引サービスは、一時は新法対応の遅れから継続が危ぶまれましたが、期日直前の登録完了によって停止を免れています。この背景には、金融庁が無登録業者によるデリバティブ提供を認めず、期限までに登録できなければサービス停止を求めるという厳しい姿勢を示したことがあります。

結果として、金融庁の厳格な締め付けによって多くの取引所が証拠金取引サービスを縮小・終了し、現在ではbitFlyerやGMOコイン、DMMビットコインなど一部の登録業者のみがレバレッジ取引を提供する状況です。

レバレッジ規制と投資家保護

改正法の下、個人向けの暗号資産証拠金取引には「レバレッジ上限2倍」という規制が課されています。これは改正前の最大25倍から大きく引き下げられたもので、過度な投機を抑える狙いがあります。

この規制強化により、国内の証拠金取引の建玉残高や取引高は減少し、投資家保護の観点では一定の成果を上げました。一方で「他の金融商品に比べ暗号資産だけレバレッジ2倍は厳しすぎる」という声も多く上がっており、市場活性化と投資家保護のバランスをどう取るかが引き続き議論されています。

金融庁の最新動向

金融庁は現在、暗号資産を巡る新たな規制方針として、現物の暗号資産取引そのものも含めた包括的な制度整備を検討しています。具体的には、暗号資産を金融商品取引法の対象とするかについて議論が進められており、これが実現すれば投資家保護が強化されるとともに、金融商品としての位置づけが明確になります。

その延長線上で、専門家の間ではビットコイン現物を組み入れたETFの解禁につながる可能性も指摘されています。現状、日本では暗号資産ETFは認められていませんが、米国ではビットコイン先物ETFが既に上場済みであり、現物ETFの承認も検討されています。

金融庁としても、先物市場の状況や海外動向を踏まえつつ、暗号資産関連商品の規制緩和・整備を慎重に検討していく方針と見られています。

過去の事例と既存取引所の対応

前述したように、Zaifは2018年初頭までビットコイン先物取引サービスを提供していましたが、当局の監督強化などを背景に自主的にサービスを終了しました。また、Coincheck(コインチェック)bitbank(ビットバンク)といった他の国内大手交換業者も、改正法施行に合わせてレバレッジ取引提供を停止する措置を取っています。

これらの事例は、金融庁が投資家保護のために厳格な姿勢を示してきたことの表れと言えます。一方、bitFlyerやGMOコインなど一部の取引所は先述のとおり第一種金融商品取引業者の登録を完了し、レバレッジ規制に沿った形でサービスを継続しています。

このように国内業者の対応は二極化しましたが、いずれにせよ現状の日本市場では公設取引所に上場された先物商品は存在しないため、堂島取引所の動きが国内他社に与える影響が注目されています。

大阪発グローバル指標の期待

新たな「大阪発グローバル指標」誕生へ

仮に堂島取引所のビットコイン先物上場申請が金融庁に認可された場合、その影響は多方面に及ぶものと見られています。まず、前述のとおり早ければ2025年度中にも取引開始となり、日本の投資家は国内の伝統ある取引所でビットコイン先物を売買できるようになります。

これは日本市場への信頼感を高め、海外の投資資金の流入を促す効果が見込まれます。また、CME中心だったビットコイン先物価格形成に日本が参加することで、アジア時間における価格主導権を握る可能性もあります。

大阪発の価格指標が定着すれば、日経平均先物のシンガポール市場や香港市場における影響力に匹敵する、新たな「大阪発グローバル指標」が誕生することになるでしょう。

他の国内取引所や機関への波及効果

堂島取引所でのビットコイン先物開始は、他の国内取引所への刺激となる可能性があります。例えば、東京商品取引所や大阪取引所(いずれも日本取引所グループ傘下)は現在暗号資産を扱っていませんが、堂島での実績次第では将来的に検討を始めるかもしれません。

また、証券会社や銀行などの伝統的金融機関も、新たなヘッジ手段や商品開発の機会として注目するかもしれません。さらに、既存の暗号資産交換業者にとっても、公設取引所に先物ができることで、自社でのデリバティブ提供に再チャレンジする動機が生まれる可能性もあります。

「暗号資産のデリバティブ市場が活性化すれば、遅れを取っている日本のETF解禁への布石となる」との見方もあり、業界全体でポジティブな連鎖反応が期待されています。

規制当局のさらなる対応

新たな市場が立ち上がる際、金融当局の役割も重要です。金融庁は堂島取引所のビットコイン先物上場を慎重に審査するとともに、承認後も市場動向を注視して適切な監督を行うものと見られています。

具体的には、清算リスクや投機過熱への監視を強め、必要に応じて建玉上限や証拠金率の調整などの措置を取る可能性があります。また、市場健全性を保つために取引参加者への啓発(例えばボラティリティの高さや追証リスクについての注意喚起)を進めることも考えられます。

さらに、堂島取引所での先物市場が安定的に運営されれば、金融庁が検討中のビットコインETF解禁に向けた議論にも弾みがつく可能性もあります。ETFは一般投資家がより簡便に暗号資産に投資できる手段であり、先物市場と合わせて日本の暗号資産エコシステムを充実させるものとなります。

大阪から始まる暗号資産の新時代

堂島取引所によるビットコイン先物上場の動きは、歴史ある日本の先物市場と新興の暗号資産市場を融合させる試みと言えます。江戸時代に米相場で世界初の先物取引を生んだ大阪が、約300年の時を経て再び金融革新の舞台となろうとしています

SBIホールディングス会長兼社長の北尾吉孝氏はかねてより、堂島取引所での暗号資産先物取引の必要性を主張しており「もし堂島取引所で暗号資産先物の取扱いが実現すれば喜ばしい」と今回の動きを歓迎するコメントをしています。

大阪府・市が推進する国際金融都市構想においても、暗号資産は重要な柱の一つと位置付けられており、堂島取引所の挑戦は大阪発の金融イノベーションとして今後ますます注目を集めるかもしれません。

今後、ビットコイン先物上場が正式に承認されれば、日本の暗号資産市場は新たな局面を迎え、個人投資家から機関投資家まで幅広い参加者にとって魅力的な市場環境が整う可能性があります。歴史と革新が交差する大阪から、日本の暗号資産市場の次なるステージが切り開かれる日が訪れるかもしれません。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=円)

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Souce:ブルームバーグ報道
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用

参照元:ニュース – 仮想通貨ニュースメディア ビットタイムズ

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