イーサリアム財団、宮口あや氏が事務局長を退任|交代劇の背景と今後の展開

イーサリアム財団の宮口あや氏が事務局長を退任|背景と今後の展開(Ethereum Foundation’s Aya Miyaguchi resigns as Executive Director | Reasons and future prospects)

宮口あや氏が事務局長を退任

イーサリアム(ETH)の開発支援を行う非営利組織「イーサリアム財団(Ethereum Foundation)」にて事務局長を務めてきた宮口あや氏が2025年2月25日に、自身の役職交代を公式ブログで発表しました。

「A new chapter in the infinite garden(無限の庭園の新たな章)」と題された投稿において、宮口氏は近く事務局長を退任し、新たにEFのPresident(プレジデント)という役職に就く予定であることを明らかにしました。

同氏は2018年から同財団の事務局長を務めており、在任7年間でEFの発展とイーサリアム・コミュニティに貢献してきました。この新たなポジションでは、EFの制度的パートナーシップを強化し、イーサリアムのビジョンや文化をより広範に広めていくことに注力するとしています。

同氏はブログ記事の中で「この決断は1年前に下したものだが、最近の出来事によって自分にとって本当に大切なものを振り返る絶好の機会を得た」と述べており、今回の交代は自身にとって”新たな章”への移行であると位置付けています。

本日、私は新たな一歩を踏み出すことをお知らせします。まもなくEthereum Foundation(EF)のエグゼクティブ・ディレクターの役職を退き、新たに「President)」としての役割を担うことになりました。

この新たな機会を通じて、EFの機関との関係をさらに強化し、Ethereumのビジョンと文化をより広い範囲に広めていくことができると考えています。

この決断を下したのは1年前のことですが、最近の出来事を振り返ることで、自分にとって本当に大切なものが何かを改めて見つめ直すことができました。

また、同氏は、イーサリアムコミュニティへの深い感謝の念を示すとともに、新たな役職で引き続きイーサリアムの価値観と文化を広めることに意欲を見せました。

交代劇の背景にある批判とブテリン氏の発言

この人事交代の背景には、直近でEFや宮口氏に対して噴出していた様々な議論や批判があるとされています。

BLOCKHEADが報じたところによると、過去1年ほどの間にイーサリアム財団内ではリーダーシップ体制の大幅な見直しが進められており、コミュニティ内でも財団の運営に対する不満が高まっていました。

イーサリアムがソラナ(SOL)などの他の競合チェーンに開発者やユーザーの関心を奪われつつあり、2024年のETH価格上昇率も約42%とビットコイン(BTC)の112%やソラナの73%を大きく下回ったことから、市場パフォーマンスの低迷について財団の指導力不足を指摘する声も出ていました。

特に物議を醸したのは「EFによる保有ETHの大型売却であると見られています。過去半年間で数度にわたり保有するETHを売却してきたことがオンチェーン分析プラットフォーム「Spot On Chain」の投稿によって明らかにされています。

財団側は「財務管理上の通常業務」と説明していますが、コミュニティの一部から「EFのETHを売却するのではなく、ステーキングに回すべき」といった批判の声が上がりました。

こうした中、2024年末から2025年初めにかけてEFの指導部に対する風当たりが強まり、宮口氏の交代を求める声が一部コミュニティメンバーから公然と出される事態となりました。

実際、2025年1月21日にはイーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏がX(旧Twitter)上で事態に言及し、EFのリーダーシップ構造改革について見解を示しています。

現在、イーサリアム財団の指導体制に大きな変更を加えるプロセスの真っ只中にあり、約1年にわたって進行しています。一部はすでに実行・公表されており、また一部はまだ進行中です。

新しいEFの指導チームを決定するのは私です。改革の目標の一つは、財団に適切な理事会を設けることですが、それが実現するまでは、私が決定を下します。

一方でブテリン氏は宮口氏の貢献を評価しており「事務局長の役割は他のメンバーがベストを尽くせる環境を作ること」だとした上で、これまでのハードフォークの円滑な実施やクライアントの相互運用テスト、Devcon(開発者会議)の成功、イーサリアムの文化醸成などは「宮口氏のリーダーシップによるところが大きい」と称賛しています。

イーサリアム財団の新体制とは?

記事執筆時点で、宮口氏の事務局長退任後、誰が新たにこの役職に就任するかは明らかになっていません。コミュニティ内で名前が挙がっていたダニー・ライアン氏(イーサリアム2.0開発の中心メンバー)についても、現時点で公式な指名は行われていません。

ブテリン氏は「新しいリーダーシップチームの決定は自分が行う」と述べており、今後は適切な理事会の設置を含む新ガバナンスモデルへの移行を進める方針です。

今回の人事に伴い、EFの運営方針にもいくつかの変化が見られ始めています。財団はコミュニティの懸念に対応する形で、従来の資金管理手法を見直す動きを見せました。

これまで必要資金を捻出するために随時ETHを売却してきたEFですが、今後は保有するETHの一部を外部の分散型プロトコルに預けて利回りを得ることで、直接売却を減らす試みを始めています。

実際、2025年1月末までにEFは約45,000 ETH(1.2億ドル/180億円相当)を複数のDeFiアプリケーションに割り当て、トレジャリー運用の新モデルを模索しています。

イーサリアム財団は、以下の運用を行っています。

Sparkに10,000 ETH、Aave Primeに10,000 ETH、Aave Coreに20,800 ETH、Compoundに4,200 ETHを入金しました。

また、ブテリン氏が示しているように、新体制では技術者主導の色合いが強まる可能性があります。EFはこれまで以上に開発者コミュニティとの連携や対話を重視し、プロジェクト支援における透明性向上を図る見通しです。

コミュニティの期待と懸念が交錯する中、宮口氏の新たな挑戦とイーサリアム財団の体制刷新がイーサリアムの今後にもたらす影響に注目が集まっています。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル= 149.21円)

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Souce:宮口あや氏公式ブログ
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用

参照元:ニュース – 仮想通貨ニュースメディア ビットタイムズ

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