日銀局長、暗号資産対応の新規制をG7で構築必要
日銀局長が暗号資産対応の新規制をG7で構築必要と発言
日銀の神山一成決済機構局長は、ロイターとのインタビューで、ステーブルコインや暗号資産(仮想通貨)を経由したロシアの制裁逃れの可能性について、現行の規制はデジタル通貨を念頭に作られておらず「デジタル通貨にも対応できる新しい規制の共通枠組みを主要国がしっかりまとまって作っていく必要がある」と述べた。金融システムの安定性確保に向け、主要7カ国(G7)として早急に共通認識を取りまとめる必要があるとの認識を示した。
神山局長は30日に実施したインタビューで「今やステーブルコインを使って独自の国際決済網を作るということがそれほど難しいものではなくなってきている」と指摘。ロシアの通貨ルーブルを売って、ドル建てのステーブルコインや暗号資産を買う取引の増加で「制裁の実効力が下がっているという指摘もあるので、新しく出てきている動きへの対応をしっかりやっていかなければいけない」と述べた。
「金融システムの安定性確保に向けて、従来の金融サービスと新たな形態のサービスをまたがる一貫した対応がどういうものか、(G7として)早急に考え方をまとめていかないといけないのではないか」とも指摘。「G7では今起きていることをしっかり共有しながら必要な対応を考えていこうということで共同してやっている」という。
CBDCの付利には消極的
中央銀行デジタル通貨(CBDC)について、日銀は4月から実証実験の第2段階に入る。神山局長は「最終的にどうするかは決める段階にはないが、技術的に可能かどうかという観点から保有額制限や利用額制限、付利についてシステム的な実現可能性をフェーズ2で検討していく」と述べた。
「マネロンやテロ資金支援のリスクが低い少額の取引についてはあまり詳しく見ないということを具体的に当てはめていくために、保有額制限や利用額制限をかけるという考え方もある」と話す一方、保有額制限については「金融システムの安定という観点からしっかり目線を定めていく必要がある。7中銀(日、米、欧、英、カナダ、スイス、スウェーデン)でも議論している」と話した。
CBDCの付利には消極的な見方を示した。神山局長は「現金の代替と考えれば、現金には利息が付かないからCBDCにも付けない方がいいのではないかという議論の方が多いように思う」と指摘した。
日銀は第2段階終了後、必要があれば民間事業者を交えたパイロット実験を行う方針。神山局長は「さらに必要と判断されれば、現在のフェーズ2を終えた後、何らかの形で実証実験の取り組みを続けていくべきだろう」と述べ、「次の段階としてはより進んだ検討として、仲介機関やその他の民間事業者と共同で技術システム面の検討を行うことなどを考えていく」とした。
黒田東彦日銀総裁は今年1月の国会審議で、CBDCの発行の能否について2026年くらいには判断できていると述べた。神山局長は「総裁発言はCBDCの技術的な実現可能性についての1つの考え方だ」と指摘。「可否を判断する具体的な時期は関係者との調整や国際的な検討状況にも影響されるのではないか」と述べた。
CBDC発行時、民間事業者とのすみ分けは
CBDCを発行する場合、日銀は、民間の事業者を「仲介機関」としてCBDCを利用者に届ける「間接型」を想定している。その場合、日銀と利用者の間に1つの事業者が入る「単層型」か、仲介機関を2層にして日銀と直接CBDCをやり取りする事業者の負担を重くする「複層型」にするかが焦点の1つになる。
神山局長は「間接型の発行形態をどのようなものにするかは決済システム全体に関わるものなので、CBDCに関する全体的な検討の中で決めていきたい」と指摘。「民間事業者との議論では、様々な業態や規模の事業者がいることを踏まえ、全ての仲介機関が同じ負担や責任を負う単層型ではない方がいいという話が多い」と話した。
複層型を念頭に置いた場合、「第1層の仲介機関は日銀と一緒になって検討を行っていくことになる。CBDCのエコシステムに大きな関与をしたいと思っている仲介機関が第1層となり、そこまでは関与できないが顧客にサービスを提供する上でCBDCを扱いたい方々が第2層ということになる」と説明した。
神山局長は「決済プラットフォームの構築のため、個々の事業者が投資すると重複投資になるところがある」と話し、「競争を排した方がいい領域は公的部門が請け負って、いろいろなユーザーのニーズに従っていろいろなサービスを提供する部分は競争領域として民間の事業者が工夫を競うような環境を整えていくことが必要だ」と語った。
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※記事:ロイター/和田崇彦・木原麗花
※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集したものです。
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参照元:ニュース – あたらしい経済