ブロックチェーンでワインの価格は下がるのか?
本稿では、サプライチェーン領域においてブロックチェーン技術がどのような変革を起こしているのか、そしてワイン関税撤廃も追い風となり安く美味しいワインが飲めるようになった世界においてブロックチェーンの活用でさらににワインの価格は下がるのか考察していきます。
そもそもワインの価格は何で決まるのか?
ワインの輸入国の1位はチリで年間約7,900万リットル、2位はフランスで約6,000万リットルものワインを輸入しています。
詳細は省きますが、これらのワインが海上輸送にてお手元に届く際のコストはざっくり下記のようになっています。
- ワインの元値(現地倉庫前渡価格)
- 現地輸送費
- 輸出通関費
- 海上輸送費
- 輸入通関費
- 国内輸送費
- 海上保険料
- 酒税
- 消費税
- 地方消費税
- インポーター販売利益
この中で、ブロックチェーン技術によって変化が起こりうる可能性があるのは②~⑥です。通関費に関しては可能性が低いと考えられるので、特に可能性が高いのは輸送費です。ブロックチェーンの活用で輸送費は変わるのか、代表的なプロジェクトであるトレードレンズを例に考えます。
トレードレンズ(Trade Lens)
まずは、世界貿易の海運業界においてリードプレイヤーとなっている「トレードレンズ(Trade Lens)」を例にブロックチェーンがどのように活用されているのかを見ていきます。
トレードレンズは、2018年にデンマークのマースク社とIBMが共同出資し発足したプロジェクトです。現在、トレードレンズのエコシステムには海上運送業者や政府当局、サードパーティーロジスティクス等を含め190以上のもの組織が参画しており執筆時点では処理されたコンテナ数は4,300万以上となっています。
参照:TRADELENS
海運市場では、未だに各プレイヤー同士の情報伝達に紙が使用される工程が多く存在し、加えて個別プラットフォームを使用している事も多く、情報の参照・転記や紙を郵送する工程が発生し、プレイヤー間の情報伝達が困難となり大きなコスト発生源となっていました。IBMによると花1輪の貿易時に30組織間で200回以上も紙で情報伝達が行われており、輸送日数の3分の1程度が書類処理に費やされるケースもあるとのこと。
下記の図はIBMが出している、海運業界の大まかなやりとりを図解したものです。
参照:IBM
コミュニケーションコストが大きく発生する他、積み荷のトレースやステータス確認も困難な状況が続いていました。ブロックチェーン技術の活用に上記の様な形から構造が下記の様に変化します。
参照:IBM
トレードレンズの活用で輸送に関わる各レイヤーのコミュニケーションが円滑になることで、書類処理などの事務処理にかかる時間が減るため輸送にかかる時間が大幅に削減されると期待されています。付随して、事務処理などの人的リソースや保管費などのコストも削減が見込まれます。
ブロックチェーンでワインの価格は下がるのか?
ワインの価格決定項目の中の輸送費が占める割合は非常に小さく、ワインの価格が目に見えて下がる事は見込まれません。
しかし、前述の通り個人的にワインを輸入している方やインポーターからすると価格はこれまでとあまり変わらないが、今までより短期間で輸入できるようになる可能性は高いです。もしくはインポーターが委託していた通関代行が不要になり、その分のコストで価格がもう少し下がることはあり得るかもしれません。
総論
身近なワインの価格がブロックチェーンの活用で変わるのかを考察しました。今回はワインというヨーロッパや中南米からの輸入が多いものでしたが、今後アフリカ圏などからの輸出入を考察した場合は違う結果になる可能性もあり、今後もサプライチェーンにおけるブロックチェーン活用には大きな可能性があります。
【こんな記事も読まれています】
・オーシャンプロトコル(Ocean Protocol)とは?ブロックチェーンを活用したデータマーケットプレイス
・エンタープライズブロックチェーン基盤の比較
・新しいパブリックブロックチェーンやサイドチェーンが続々とEVM互換にする理由
noteでもとっておきの仮想通貨情報を配信しています(一部有料含む)
参照元:CoinChoice