(SBI R3 Japan山田氏解説コメントあり)SBIが外国為替取引の内容確認業務にCordaを導入へ
SBIが外国為替取引の内容確認業務にCordaを導入へ
SBIホールディングス株式会社(SBIHD)と同社子会社であるSBIリクイディティ・マーケット株式会社(SBILM)が、ブロックチェーンを用いた外国為替取引データのコンファメーションシステム「BCPostTrade」を提供開始すること4月16日プレスリリースにて発表した。
「BCPostTrade」は、ブロックチェーン/分散型台帳技術のソリューションである米R3の「Corda」を実装した外国為替取引のコンファメーションシステムだ。(コンフォアメーション:取引内容の確認)
同システムは、SBIHDの外国為替取引事業会社であるSBIリクイディティ・マーケット(SBILM)が主体となり、システム開発はCordaパートナーである株式会社シーエーシー(CAC)の協力のもと、SBIセキュリティ・ソリューションズ株式会社が統括をして実用化に向けたフェーズへと進めてきたという。またSBIグループのフィンテック企業である株式会社SBIプロセス・イノベーターが、参加者各々の業務仕様に関して取り纏めを行ったとのこと
SBILMでの業務も含め、従来の外国為替取引のコンファメーション業務では、電話やメールでの手作業に頼ったオペレーションであったため、情報の確認漏れやメールの誤送信といったオペレーショナルリスクが顕在化していた。SBILMは同システムを活用することにより、コンファメーション業務におけるオペレーショナルリスクを低減するとともに、Cordaを用いることで高いプライバシー保護と改竄耐性の確保を図るとのこと。またブロックチェーン技術により当事者間での取引データの同一性が保証され照合作業の信頼性が向上し、さらに情報伝達のリアルタイム化によりバックオフィス作業へのシームレスなデータ連携も可能となるとのことだ。
今回システム開発を担当したCACの発表したプレスリリースによると、今回の開発ではCordaの特徴を活かした複数企業のPeerノード・Notaryノードの連携のほか、Corda Network Foundationが提供するthe Corda Networkサービス(Network Map Service、Identity Manager Service等)を活用したことにより、既存のCorda参加者ノードからの利用や動的な新規ノード追加も可能となったとのこと。また、Permissioned NetworkにおいてもCorda Firewallを組み合わせたセキュアなアプリケーションインフラを構築したということだ。同社は引き続き、複数ユーザー企業向けに同ソリューションの実運用を行いながら、現行のスマートコントラクトをより拡張させたコンファメーションのマッチング自動化、資金決済を含めた一貫した契約の自動執行等、更なる機能追加をしていく予定としている。
SBIHDおよびSBILMは今後、SBIグループ内での同ソリューションの実運用を行いながら、現行のスマートコントラクトをより拡張させたコンファメーションのマッチング自動化、資金決済を含めた一貫した契約の自動執行等、更なる機能追加を行っていく。また将来的には、広くグループ外からも参加企業を募り、複数企業間でのプロトコルの統一化を推し進めるとのことだ。
編集部のコメント
あたらしい経済編集部は、SBI R3 Japan株式会社のマネージャーである山田宗俊氏に対し「コンファメーション業務へのCorda導入によりオペレーショナルリスクが低減することや、コンファメーションデータを共有する具体的なメリットとはなんでしょうか?」と質問をしました。
それに対し山田氏は「外国為替取引におけるコンファメーション業務は、フロントが電話で取引した内容はバックオフィスが記帳します。この記帳の際に発生するミスは非常に高額で、絶対にミスが出来ません。今回のユースケースは個人の外国為替取引ではなく、機関投資家を対象にしたものなので、取引で取り扱う金額が100万ドル(1億円)単位と非常に高額です。なので絶対に間違えることができません。外から見ると単純な業務に見えるかもしれませんが、絶対に間違えられない業務なので、どうにかシステム化が求められていたということです。」と解説をしてくれました。
米R3社開発の「Corda」は、エンタープライズでの使用を想定して開発されたプライベート/コンソーシアム型のブロックチェーンソリューションです。Cordaはkotlinで開発されており、アプリケーション開発はJavaまたはkotlinを使用することができます。またUTXO(Unspent Transaction Output)モデルを採用しつつもコンセンサスアルゴリズムを情報の共有相手とノータリーと呼ばれる2重支払防止用ノードのみでファイナリティを与える仕組みになっている為、パフォーマンスを維持しながらの参加者の追加が容易な構造となっています。 なおCordaの日本国内の販売とサポートはSBI R3 Japan株式会社が行っています。
Cordaに関してここ1か月多くの発表がありましたので、直近の動きをおさらいしておきます。
3月28日には、HSBCがCorda Blockchain上で100億ドルの私募債の増資を実施しています。4月5日には、香港のデジタル資産のカストディ企業であるHex Trustが、R3 Cordaエンタープライズブロックチェーンとカストディソリューションとの統合を発表し、Cordaを利用している金融機関はHex Trustが提供するZeroKeyソリューション」を使用して、Cordaプラットフォーム上に構築されたデジタル資産やトークンを保有できるようになるとの報道がありました。4月7日にはブロックチェーン専門企業であるコンセンサス・ベイスが、R3社と開発パートナー契約を締結し、4月9日にはLayerXがCordaを開発しているR3社の公式ソリューションパートナーに認定されています。
なお今回の報道で一部メディアでは、「FX(外国為替証拠金取引)」のコンファメーションシステムにCordaを利用すると報じられていましたが、正しくは「外国為替取引」です。外国為替証拠金取引と外国為替取引は別のものです。簡単に言うと外国為替取引を「証拠金」で行うかの違いがあります。
例えば円とドルを両替する行為を「外国為替取引」といいます。FXは、外国為替取引を「証拠金」で行う取引です。FXは将来必ず決済(反対売買)することが約束された「差金決済」という決済方法を採用した取引です。そのため、総取引額の現金(キャッシュ)の受渡しは必要とされず、売買の損益の受渡しのみで取引が完結がします。
コメント:大津賀新也(あたらしい経済)
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参照元:ニュース – あたらしい経済