オレは高値づかみさせられたのでは…。 ロング筋はおびえ、戦々恐々としている
2017-03-24
米ドルvs世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルvs世界の通貨 4時間足)
米ドルが米利上げ後に反落したり、米株安を背景に下落したりしているのは、大きく進行した「トランプ・ラリー」に対する反動という視点において、トランプ政権の実行力に対する不安がもっとも大きな要因だと思う。
オバマケア代替法案の採決が見送られたことに象徴されるように、マーケットがトランプ政権の「現実的妥協」の可能性に備えようとしていることが、米株安、米ドル安をもたらしている、もっとも大きな原因だとみる。
■米ドル&米国株、足元の調整はまだ「初歩」的? 強硬で不遜な態度で知られるトランプ大統領が、いざ国政運営に入ると、周りをまとめられず、政策を推進できないなら、「トランプ・ラリー」どころか、むしろ「トランプ・ライト」のリスクが大きいのでは…と市場関係者が警戒しているのは確かだ。
政策推進がはかどらないトランプ政権のリスクを、市場関係者は警戒し始めている。
(C)Chip Somodevilla/Getty images
そもそも、「トランプ・ラリー」自体が行きすぎた側面が大きかったから、いまさら大きな声で言えなくても、「オレは高値づかみさせられたのでは」とロング筋がおびえ、戦々恐々としているのが実情だ。
この意味では、足元の米国株や米ドル全体の調整は、まだ「初歩」的な段階にすぎない可能性がある。
そして、米国株にしても、米ドルにしても、ロング筋の憂鬱は含み損を抱えていることよりも、実はそこにあるのではないかと推測される。
■「トランプ・ラリー」便乗があまりにうまくいったので… 換言すれば、トランプ氏が「有言実行」してくれないと、今までのスタンスが180度転換される、というリスクの現実味が増し、一部市場関係者が真剣に「ドテン」の可能性を考え始めているということだ。
もっとも、金融市場における戦略は、大成功を収めることはあっても、永久に有効といった事例は1つもなかった。言うまでもないが、こういった戦略が存在すれば、市場自体が壊れるから、当たり前のことといえばそのとおりだ。
しかし、あまりにも長く、またパフォーマンスがよかった戦略につい錯覚を覚えてしまう事例は、枚挙に暇がない。「トランプ・ラリー」に便乗する戦略、すなわち米株買い、債券売り、そして、米ドル買いがあまりにも成功し、また、あまりにも大きな成果を挙げたから、「トランプ・トレード」に錯覚があったとしても、別におかしくなかろう。
だからこそ、足元で広がっている懐疑、葛藤または恐怖といったセンチメントは、本当のところはむしろ健全な市場心理だといえる。
■トランプ氏の主張の多くは最初から不確実性が高かった なにしろ、トランプ氏の主張の多くは最初から不確実性が高く、大型財政支出計画に具体性が欠けるといった批判が多かった。にもかかわらず、マーケットは期待先行で評価してきたから、時間の推移につれ、反動が出るのは自然の成り行きであり、また、なお許容範囲にとどまっているとみる。
ゆえに、「トランプ・トレード」の失速が確認されていること自体は「健全」な動きであり、「トランプ・ラリー」に対する反動が一段とみられたとはいえ、「ドテン」されるほど深刻化していないと思う。
言い換えれば、「トランプ・ラリー」に対するスピード調整がある程度延びた方が、逆に「トランプ・ラリー」が完全に終わっていないという可能性を保つことができる。
この視点から言えば、米国株に比べ、為替市場の状況がより「健全」かもしれない。何しろ、ドルインデックスは2017年年初から調整してきたわけだから、足元で米ドル全面安とはいえ、それは基本的には2017年年初からの調整変動の一環と見なされる。
ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)
調整のスパンがだいぶ長くなり、「トランプ・ラリー」に対する懸念が強まる足元だからこそ、実はスピード調整の終盤が近い、といった可能性もある。
トランプ大統領の支持率が、また最低水準を更新した…