なぜ、ドル高になりきれない? 世にも怖い 「キンチョウ」の夏の「冷やし中華」とは?
2016-06-03
ドルインデックス 日足(出所:CQG)
米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
米ドル/円は今週月曜(5月30日)の高値111.45円から一貫して下落、安倍総理の消費増税先送り表明と共に円高が早送りされた模様で、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)も「総崩れ」となり、ユーロ/円に至っては昨日(6月2日)、121.05円の安値を記録、2013年4月以来の低い水準まで落ち込んだ。
ユーロ/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)
円高トレンドの継続自体は筆者の予想どおりで、別に驚きでもなんでもない。それと同じく、安倍首相の消費増税先送りも当然の結果で、むしろ、このタイミングで増税を推進していく方がおかしい。
なぜなら、増税はそれ自体がアベノミクス成功の証しとなるはずだからだ。アベノミクスは明らかに失敗しているのに、増税できるはずがない。
このあたりをサプライズとか、驚きとか言う見方自体、おかしいと言わざるを得ない。景気そのものを少し検証すれば誰でもわかるように、アベノミクス云々は幻想にすぎず、まったく効果を上げられなかったからだ。
■2017年の日本はG7で唯一マイナス成長を予想されている IMF(国際通貨基金)の推計によると、2016年の日本の実質経済成長率は0.5%程度で、危機に苦しんでいるEU(欧州連合)圏の3分の1にすぎない。
さらに、来年(2017年)の予想では、日本はマイナス0.1%となっている。G7の中で唯一マイナスの予想をされたほど、日本景気の見通しは厳しい。マイナス金利を導入したにもかかわらず、この程度の成績しか残していない安倍政権は、少なくとも経済面において不合格であることは言うまでもない。
もっとも、アベノミクスの本質は金融政策であり、また、それが事実上の財政ファイナンスと化しただけで、最も肝心の成長政策は何ら実らなかった。
金融政策にしても、財政政策にしても、時間稼ぎが目的で、時間稼ぎの目的は成長を喚起、軌道に乗せることだが、いつの間にか金融政策のみが目的となり、また、その一時的な効果に戸惑わされたのも事実だ。
一時の円安・株高は官製相場の結果にすぎなかったが、安倍政権はそれを自らの功績と自画自賛。昨年(2015年)夏以降、同効果が大きく剥落してくると、今度はリーマンショック前夜などと言い出して、自らの責任をごまかしているのも見苦しい。
消費増税見送り自体がやむえないとしても、頑として失敗を認めず、アベノミクスが成功していると言い張りながらの公約違反は当然、国際的には評価されず、国内でも冷たい視線で見られ、信頼が失われつつあると言わざるを得ない。
■増税見送りで日銀政策終了が疑われた 日銀と同様に、今回は政府も「有言不実行」になったから、市場の評価もまさに厳しいものに。
円高の再開は理屈上、いろいろと解釈されるが、最もわかりやすい話では、消費増税が見送りとなるなら、日銀金融政策もそろそろ終止符が打たれるのでは…といった疑心暗鬼がマーケットに共有されたのではないだろうか。
言い換えれば、増税見送りがアベノミクス失敗の証拠であれば、アベノミクスの核心、または唯一の実体部分である金融政策も出口が模索されるのでは…と市場が疑い始めたということだ。
日銀内部でも金融政策の限界を危惧する声が大きくなっている。日銀の佐藤審議委員が6月2日(木)、「2年で2%実現のコミットメントは再考を要する時期に来ている」、「マイナス金利政策は緩和効果をもたらすどころか、むしろ引き締め的」とインタビューに答え、黒田日銀総裁路線に明白な反対姿勢を表明した。
張本人の黒田さんさえ、もっとも増税推進派であり、また、かねてから量的緩和と財政規律の整合性を主張してきただけに、増税が見送りとなった今は「やる気」が失われたのでは…と推測されるほどだ。
要するに何のために量的緩和やマイナス金利を推進してきたか、という目的が失われている状況では、いわゆる規定路線でも走れなくなるリスクが大きいと言わざるを得ない。
こういった状況を見透かしていたように、円高トレンドが再開し、米ドル/円の5月いっぱいの上昇幅が帳消しになってもおかしくないだろう。
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そもそも111円台までの切り返しは、米追加利上げ…