豪ドル/円や米ドル/円を中心に、戻り売りを 継続。米国のインフレは沈静化せず、リスク オフの「株安・米ドル高・円高」は続く!

ウクライナ問題を整理。プーチン大統領の目的はウクライナ侵攻ではなく、NATO加盟阻止 今週(2月14日~)に入っても、ウクライナ情勢は混沌としています。
 2月16日(水)、ロシアのプーチン大統領が、ウクライナ国境付近に集結させている部隊について、一部撤退させました。
 そして、米国およびその同盟国との間の緊張状態について、外交による解決を望んでいるとコメント。このコメントに呼応して、マーケットはいったんリスクオフの巻き戻しに入っています。
 リスクアセットの豪ドルは、対円で83円台を回復しました。
豪ドル/円 日足(出所:TradingView)
 しかし、プーチン大統領は、ウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟を認めないようにという、ロシアの要求を巡る西側の対応を、同国が永遠に待ち続けることはないとも警告。
 ロシア側は一貫して侵攻の意図を否定していますが、プーチン大統領はロシアの安全保障に関する要求が対処されない場合、緊張を一段と高める可能性を排除しなかったことから、リスクアセットの戻りも限定的になっています。
 ここで改めて確認できることは、プーチン大統領の目的は、ウクライナのNATO加盟の阻止。ロシアにとって、ウクライナは西側諸国との緩衝地帯でなければいけないということです。
 ロシアのウクライナ侵攻はその手段であって、目的ではありません。結果、ウクライナのNATO加盟阻止という目的が達成できれば、侵攻などしないわけです。
 そもそも、今回のウクライナの件は、今年(2022年)11月に行われる米国の中間選挙に向けて、バイデン大統領の支持率が急激に落ち込んだことが原因だと考えているマーケット参加者も多数います。
 2003年のイラク戦争時のブッシュ大統領(当時)のように、ウクライナとロシアの戦争を支持率アップの材料にしたいバイデン大統領は、ウクライナを守るための「正義の戦争」に突入し、低い支持率を上げて11月の中間選挙に突入しようと考えているというわけです。
バイデン大統領は、ウクライナとロシアの戦争を低下する支持率アップの材料にしたいという見方もあるという  (C)Scott Olson/Getty Images News
 前述のプーチン大統領の目的も考慮すれば、ロシアがウクライナに侵攻する可能性は、10~20%程度しかないという考え方もできます。
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ロシアのウクライナ侵攻の可能性低下も、ファンドマネージャーはわずかな可能性を無視できない しかし、先週(2月7日~)11日(金)に、ホワイトハウスが、ロシアのウクライナ侵攻の可能性が高まっていると報道しました。
 筆者は依然として、ロシアのウクライナへの侵攻の可能性は高くないと想定していますが、顧客のお金を預かっているファンドマネジャーはどう考え、どのように行動するのでしょうか。
 ウクライナ問題は単なるプロセスであり、ロシアが侵攻する可能性は低いと思っているマネジャーが多いと思います。しかし、実際にロシアが侵攻すれば、顧客はどう思うでしょうか。
 世界中、誰でも知っているロシアによるウクライナ侵攻の報道を無視して、リスクオンのポジションを持って大きな損失を被ったとすれば、そのファンドマネジャーに再びお金を預けようと思うでしょうか?
 答えは「ノー」です。
 そのため、多くのファンドマネジャーは、わずかな可能性であったとしても、ロシアのウクライナ侵攻が現実になったときのことを想定してトレードをします。
 ロシアのウクライナ侵攻が現実となれば、もちろん、欧州に多大な影響を与えます。
 つまり、ECB(欧州中央銀行)のタカ派スタンスにも関わらず、ユーロに関するアセットに関してはヘッジし、ユーロロング(買い)のリスクも減らさざるを得ないということになります。
 これが先週(2月7日~)後半、ユーロ/米ドルが1.1300~1.1500ドルで激しく乱高下した要因となっています。
ユーロ/米ドル 日足(出所:TradingView)
ウクライナ問題が落ち着けば、「米国のインフレ→3月FOMCでの0.50%利上げ」が再び焦点になる ただ前述のように、2月16日(水)以降、ウクライナ侵攻の可能性は低下しています。
 では、もうリスクオンのポジションに戻せばいいのではないかという考え方もできるのですが、ウクライナに関する問題が霧散したわけではありません。
 そもそも、1月に米国株が急落したのは、ウクライナ問題が深刻化したからではありません。
NYダウ 日足(出所:TradingView)
 その要因は米国を襲っているインフレです。
 先週(2月7日~)後半、ロシアによるウクライナ侵攻の可能性が高まった時、リスクオフで米金利は下がっています。
 株に大きな負荷がかかると、リスクオフで米国債が買い戻され、米金利が下がるからです。
 逆にいえば、ロシアのウクライナ侵攻の可能性が低下すれば、マーケットの焦点は、米国を襲っているインフレに焦点があたり、3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)での0.50%の利上げの可能性がさらに高まります。
【参考記事】●豪ドル/円の戻り売り継続。今は、緊急FOMCの噂が出るくらい異常事態! 北京五輪閉幕で、中国の不動産バブル崩壊が露呈する可能性も(2月14日、西原宏一&大橋ひろこ)
 結果、構成銘柄にグロース株を多く含むナスダック総合指数を中心とした米国株の急落が迫るということになります。
【参考コンテンツ】●ナスダック崩壊間近!? FRBのみたこともない大規模利上げが迫る!そのとき為替は…?(2月14日、西原宏一&大橋ひろこ)
ナスダック総合指数 日足(出所:TradingView)
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3月からのFRBタカ派スタンスに備え、豪ドル/円、米ドル/円中心に戻り売り継続で まとめると、ロシアのウクライナ侵攻の可能性が高くなれば、リスクオフで「株売り・米ドル高・円高・スイスフラン高」となります。
 一方、ロシアのウクライナ侵攻の可能性が低下すれば、再びテーマは米国を襲っているインフレとなり、「米金利上昇・リスクオフで株売り・米ドル高・円高・スイスフラン高」となります。
 本稿執筆時点(2022年2月17日)では、どちらに振れてもリスクオフの可能性が高くなっているともいえます。
 短期では、ウクライナ関連の報道で、激しくリスクオンとリスクオフが繰り広げられる可能性が高い状態といえます。
 しかし、3月からのFRB(米連邦準備制度理事会)のタカ派へのスタンス変更に備え、豪ドル/円、米ドル/円中心に戻り売りを継続しそうです。
豪ドル/円 日足(出所:TradingView)
米ドル/円 日足(出所:TradingView)

参照元:ザイFX! 西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

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