豪ドルは、対円・対ユーロでの買い継続。 中期でも、天然ガス急騰が続く公算高く、 豪ドルの上昇トレンドは不変か
2021-10-07
今週(10月4日~)のサプライズは、なんといっても日経平均の暴落。
今回の新政権誕生には、お約束の「ご祝儀相場」は見られませんでした。
それどころか、岸田文雄政権誕生後の日本株は下げ止まらず、9月6日(月)の日経平均株価は約12年ぶりに、8日続落を記録しました。
日経平均 日足(出所:TradingView)
この日経平均の急落は、下記の「Kishida Shock(岸田ショック)」という記事も影響しているといわれています。
Japan stocks suffer ‘Kishida shock’ as new leader suggests tax rise(日本株は「岸田ショック」に見舞われる 新リーダーは増税を示唆)
出所:フィナンシャル・タイムズ(FT)
オプションSQ前に売り叩きの憶測も。日経平均は米系短期勢のおもちゃに ただ、自分も含めてマーケットの一部ではこの「Kishida Shock」という言葉が拡大していることを利用して、CTA(商品投資顧問業者)が、10月8日(金)のオプションSQ(※)を控えて、日経平均を売り叩いているという憶測が拡大しています。
メジャーSQは3月、6月、9月、12月の第2金曜日ですが、毎月あるオプションSQ前のほうが彼らは日経平均を動かしやすいといわれています。
(※編集部注:「SQ」とは日経225先物などの株価指数先物や株価指数オプションといった取引の最終決済を行なうための価格のこと。株価指数先物は3月、6月、9月、12月の第2金曜日、オプション取引は毎月第2金曜日がSQ算出日となっている)
もしそうした憶測が正しければ、SQ前のNY市場では、もう一段、日経平均が反落する可能性があるのではないかと想定しています。
日経平均を再びロング(買い)にするのであれば、オプションSQ後のタイミングでしょうか。
日経平均 日足(出所:TradingView)
最近の日経平均は、米系短期勢がSQを利用して売買を活発化させ、彼らのおもちゃとなっている状況。よって、ボラティリティが極めて高いので、オプション主体の取引のほうが安全かもしれません。
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欧州の天然ガス価格が暴騰。オランダと英国のガス先物は2日間で60%上昇 一方、今週(10月4日~)公開した「FX&コモディティ(商品) 今週の作戦会議」でも取り上げましたが、今年(2021年)の欧州は偏西風が弱く、風力発電での電力供給が不足。結果、欧州の天然ガス価格が暴騰しています。
【参考記事】●豪ドルには、年に1度の「イージーマーケット」のチャンスがまだある! 天然ガスで格差が鮮明な豪ドルは、対ユーロで買い方向!(10月4日、西原宏一&大橋ひろこ)
欧州天然ガス 日足(出所:TradingView)
ブルームバーグの報道によれば、オランダと英国のガス先物は、わずか2日間で60%も上昇。2日間で60%ですよ……。
10月6日(水)は、ロシアのプーチン大統領が「欧州エネルギー市場への支援」を約束したことから、急速に下げに転じ、いったん収束。
ただ欧州が天然ガスの供給をロシアに頼るというのは、「安定的な電力確保」の答えであるのかどうかという点には疑問が残ります。
注目される「ベースロード電源」。クリーンエネルギーとして注目のLNG ここで、なぜ為替の話に天然ガス価格の動向が影響するのかを、もう一度確認してみましょう。
現在、世の中のキーポイントは、「ベースロード電源」といわれています。
ベースロード電源とは、コストが安く、昼夜を問わず安定的に発電できる電力源のことで、原子力や石炭火力、水力、地熱発電などがあげられます。
前述の風力発電では、偏西風が弱くなると、供給が不足するといった状況が起こるので、ベースロード電源確保が重要となるわけです。
日本はエネルギー政策を考える上で、安全性や安定供給、経済効率性、環境への適合といった要素を重視しており、ベースロード電源の割合を高めていけば、停電のリスクは減り、電気料金も抑制できるとしています。
しかし、現時点で原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ再稼働させる事は難しい環境下にあります。
よって、主要なベースロード電源のひとつとして火力発電が上げられます。
その「火力発電」では、おもに「天然ガス」、「石炭」、「石油」の3種類の燃料を使用します。
この中で、LNG(液化天然ガス)は化石燃料ではありますが、二酸化炭素の排出量が石炭に比べて40%と少ないため「クリーンエネルギー」として注目されています。
【参考記事】●豪ドル/円は85円台に向けて上昇再開。天然ガス急騰が後押しとなる一方、鉄鉱石の暴落が重しに。鍵を握るのは…!?(9月30日、西原宏一)
よって、ベースロード電源確保のために、LNGが注目されているわけです。
写真はLNGを運ぶタンカー。ベースロード電源確保のために、LNGが注目されている (C)Bloomberg/Getty Images
急落材料があっても、天然ガス急騰が豪ドルをサポート そのLNGが前述のように急騰しています。次に添付したのが天然ガスの週足チャートです。
2020年の6月には1.43ドルまで下落していた天然ガスですが、今月(10月)に入り、一時6.45ドルと約4.5倍に急騰しています。
天然ガス 週足(出所:TradingView)
前回のコラムでも紹介しましたが、世界のLNG輸入量の7割はアジアが占めていますが、日本は世界のLNG輸入量の約2割を占める世界最大の輸入国です。
【参考記事】●豪ドル/円は85円台に向けて上昇再開。天然ガス急騰が後押しとなる一方、鉄鉱石の暴落が重しに。鍵を握るのは…!?(9月30日、西原宏一)
そしてLNGは、主に豪州、カタール、マレーシアが主要輸出国ですから、日本も当然、豪州から輸入しており、天然ガスの価格が豪ドル/円を底堅くする要因となっているのです。
天然ガスの取引量(2018年)(出所:日本ガス協会)
過去数カ月、これまでのルールでは、豪ドルはいつ急落してもおかしくない状況が続いています。
まず、鉄鉱石が220ドルから110ドルへと、価値が半減したこと。
日経平均が「岸田ショック」で急落した事。
そして、中国恒大集団問題に関連し、中国株が不安定であること。
これだけ揃えば、リスクアセットである豪ドル/円はすでに急落しているはずです。
ところが、豪ドル/円が本稿執筆時点でも81円台と底堅く推移しているのは、前述のように、天然ガス価格の急上昇の影響があげられるわけです。
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中期での天然ガス急騰は継続する公算高い。豪ドルは対円・対ユーロで買い 豪ドルをロングにする対象通貨ペアは、前回のコラムで取り上げた豪ドル/円でもいいのですが、ECB(欧州中央銀行)の金融緩和姿勢が大きく変わらず、上値の重いユーロと絡め、ユーロ/豪ドルの下値も拡大していると考えています。
【参考記事】●豪ドル/円は85円台に向けて上昇再開。天然ガス急騰が後押しとなる一方、鉄鉱石の暴落が重しに。鍵を握るのは…!?(9月30日、西原宏一)
主要国の関心は「ベースロード電源」。
そのカギを握るのが、LNG。
そして、LNGの主要な産出国でもある豪ドルの底堅さは変わらないと考えています。
中期での天然ガスの急騰は継続する公算が高く、豪ドル/円のロングとユーロ/豪ドルのショート(売り)は継続します。
豪ドル/円 日足(出所:TradingView)
ユーロ/豪ドル 日足(出所:TradingView)