ドル/円の巨大なシンメトリカル・トライアングル は上に突き破られた。その意味を考えよ! 2021年中に115円の打診も!
2021-10-01
ドルインデックス 日足(出所:TradingView)
当然のように、ユーロ、円や英ポンドなど主要外貨は軒並み安値を更新。そのうち、円の下落がもっとも著しい。
米ドルVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)
なにしろ、米ドル/円は一時112.05円まで買われ、円安の進行がコロナショック後の円の安値、すなわち米ドルの高値(約111.70円)を超えたのだ。
米ドル/円 週足(出所:TradingView)
ドルインデックスがやっとコロナショック直後の安値に接近してきたのに対し、米ドル/円はなんと、コロナショック後の高値も更新したというのである。これは円が最弱通貨であることを如実に物語っている。
ちなみに、コロナショック直後のドルインデックスの高値は103.96であったから、現在の水準から計算すると、ドルインデックスはこれから約10%の上昇率を達成しなければ、高値更新には至らない。
換言すれば、ユーロ、英ポンド、豪ドルなど円以外の主要外貨は、目先、大きく反落してきたものの、コロナショック直後の安値からみれば、まだまだ高い水準にあるから、米ドル高基調が本物なら、これらの主要外貨はこれから円のあとを追ってくる余地が大きい。
米ドル/円は2021年内に115円の節目打診があってもサプライズではない 米ドル/円に関しては、すでにコロナショック直後の高値を更新したから、米ドル高・円安がすでに新たな段階に入ってきたことは示唆されたと思う。
昨年(2020年)高値の112.20円のブレイクはもちろん、年間変動率で考えれば、2021年内に115円の節目打診があってもサプライズではなかろう。
米ドル/円 週足(出所:TradingView)
筆者は昨年(2020年)年末の本コラムにて、米ドル高・円安のシナリオを提示したが、112円の打診は当時の予測としては、もっとも過激な見方だった。
【参考記事】●2021年こそ「新たな円安時代」の幕開けか。米ドル/円をめぐる2つのシナリオとは?(2020年12月25日、陳満咲杜)
詳細は4月2日(金)の本コラムにまとめているので、ここでは重複しないが、強調したいのは、米ドル/円の平均変動幅の15円程度で考えれば、今年(2021年)安値の102.58円から計算し、115円大台の打診があっても決してオーバーな値動きではないということだ。
【参考記事】●5年半続いた保ち合いを上抜けしたドル/円。急上昇が予想されなかった2つの理由とは?(2021年4月2日、陳満咲杜)
ここ2、3年低かった米ドル/円の変動率が、今年は正常に戻った 昨年(2020年)年末、マーケットにおける見方の大半が、円安の進行に懐疑的な上、円安と予想する筋でも慎重なターゲットしか提示できなかった。それは、ここ2、3年の米ドル/円の変動率が極端に小さかったことが大きな背景にあるのではないかと思う。
言い換えれば、今年(2021年)は正常な変動率に戻ったことで、米ドル/円はむしろ、一段と上値トライしやすい環境にあると言える。
というのも、最近2、3年の変動率が極端に低下していたのにはわけがあった。
それはほかならぬ、2015年高値や2016年安値から形成された大型シンメトリカル・トライアングルというフォーメーションに伴う値動きだったからだ。
米ドル/円 週足(出所:TradingView)
同フォーメーションは、変動幅がだんだん縮小することを示すものだから、同フォーメーションのとおりに動いた米ドル/円の値動き自体、保ち合いの局面にあることを示唆していた。
コインの表と裏の関係のように、米ドル/円の変動率の低下と保ち合い局面という位置付けは、実は同じことである。
だからこそ、2021年年初来の上昇、また、コロナショック直後の高値を再度更新したことは、大きなサインの点灯であり、決して見逃せない。
米ドル/円の巨大なシンメトリカル・トライアングルは上に突き破られている。その意味は大きい つまるところ、2015年高値から形成されてきたシンメトリカル・トライアングル型の保ち合いは、すでに終焉を迎え、また上放れを果たしたから、米ドル高・円安の流れも新たな段階に入ってきたといえる。
米ドル高がすでに限界に達したといった見方は、明らかに大局観が欠けていると思う。
テクニカル・アナリシスの視点では、重要な原則がある。それは、保ち合いの期間が長ければ長いほど、その後ブレイクした方向へ進行するモメンタムは強く、また値幅は拡大されていく傾向があるということだ。
ゆえに、すでに上放れを確認できた以上、少なくとも5年以上の保ち合いを経てきた米ドル/円の上昇波が、112円台に留まる可能性は低いと思われる。長期スパンでは、2015年高値の更新も視野に入り、円安の進行、長く続くと覚悟しておいたよさそうだ。
米ドル/円 月足
(出所:TradingView)
今後の円は、米ドルやそれ以外の主要外貨に対しても外貨本位の値動きをしやすいだろう 為替相場の歴史を見てみると、円は常に米ドルに翻弄されてきたことがよくわかる。ユーロ、英ポンドや豪ドルなどの外貨にももちろんそのような側面はあるが、円ほどではないことも一目瞭然だ。
だからこそ、コロナショック後の安値から今年(2021年)5月高値まで、主要クロス円の多くは大きな上昇波を形成してきた。
世界の通貨VS円 月足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円貨 月足)
要するに、主体性を発揮できない円は、米ドル高の受け皿として売られやすい。また、コロナショック以降、米ドル以外の外貨に対しても主体性を発揮しなくなったことが露呈し、これからはかつてのような「リスクオフの円高」といったロジックが効きにくい。
したがって、米ドル高基調が不変であれば、むしろ米ドル/円買いが一番安心できる。
なにしろ、リスクオフ・リスクオンの市場環境との関連性が大幅に低下した円は、引き続き米ドル高の受け皿として売られやすい一方、米ドル以外の外貨に対しても、外貨本位の値動きを形成しやすいかと推測される。
たとえば豪ドルなど「商品通貨」が商品相場との連動性があることは知られているが、仮に米ドル高基調が変わらなくても、商品市場の高騰に連動する形で一時、豪ドルが買われる局面も想定される。
【参考記事】●豪州の輸出構成比24.7%の鉄鉱石と2 .4%の原油。豪ドル/円と相関が高いのはどっち?
その場合、円は「素直に」売られ、豪ドル高に連動する形の円安の更新が確認されやすいだろう。
つまるところ、大きな流れとして円安がすでに新たな段階に入っている以上、円の主体性は一段と削られ、円は米ドルのみでなく、諸外貨にも「翻弄」される存在となりやすい。
これから、仮に株式市場の急落があっても、昔のように「リスクオフの円高」といった反応は引き起こしにくく、円が買われることがあっても長くは続かないだろう。
この意味合いにおいても、米ドル/円における現時点の円安の進行はまだ第一歩目、あるいは初動的な段階にあるといえる。
2015年高値の打診やトライには、時間がかかると思うが、すでに視野に入った以上、いつかは達成できるだろう。市況はいかに。