FOMCで将来的な利上げの可能性示唆! 徐々に米長期金利や米ドル上昇の流れへ
2021-06-17
政策金利は0.00-0.25%で据え置きとなりましたが、今後の米国経済の見通しに関して、ワクチン接種の普及を背景に、かなり前向きな見方に変えてきていること、それに合わせて、金融政策も変更していく可能性に言及しています。
この結果を受けて、米国の長期金利は上昇、米ドルも上昇する展開になっています。
米長期金利(米10年債利回り) 15分足(出所:TradingView)
米ドルVS世界の通貨 15分足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 15分足)
■18人中13名が2023年までに少なくとも1回の利上げを予想 それでは、FOMCの中身を具体的に見ていきたいと思います。まず、声明文の内容を抜粋して紹介します。
全体的に新型コロナウイルスの影響のリスクは残り、当面は緩和的な金融政策を維持するという見方は維持しています。
しかし、「ワクチン接種の進展により、米国での新型コロナウイルスの蔓延は減少した」「ワクチン接種と強力な経済支援の進展で、経済活動と雇用指標は強まった」と、米国経済に関して前向きに捉えた表現を入れています。
同時に発表された金利見通し(ドットチャート)や経済見通しは、これまでより楽観的な見方を示しました。
金利見通しでは、メンバー18人のうち13名が、2023年までに少なくとも1回の利上げを予想しています。2022年の利上げということでは7名が利上げを予想しています。
6月16日のFOMCの金利見通し(ドットチャート)(出所:FRB)
また、経済見通しに関しては、2021年の実質成長率の見通しを3月発表時の5.8-6.6%から6.8-7.3%に上方修正しています。ただ、その分2022年については、3月発表時の3.0-3.8%から2.8-3.8%へ若干ではありますが、下方修正をしています。
■パウエルFRB議長が金融引き締めへ転換する可能性示唆 次に、FOMC後に行われたパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の会見の内容を見てみましょう。
米国経済全体には依然としてリスクがあると指摘し、引き続き緩和的な金融政策を維持していくとの見方を示す一方で、これまでと違った強気の見方も示しています。
たとえば、インフレに関してですが、まず、「インフレはここ数ヵ月で著しく上昇し、数ヵ月間高止まりしたあとに鈍化する可能性がある」という慎重な言い方をしている一方で、「インフレはFRBの予想以上に上昇し、持続する可能性がある」とし、「インフレ期待が過度に上昇すれば、金融政策を調整する用意がある」と、今後、金融政策を引き締め方向に転換する可能性を示唆しました。
パウエルFRB議長はFOMC後の会見で、今後、金融政策を引き締め方向に転換する可能性を示唆した (C)Bloomberg/Getty Images News
全体的に、前回のFOMCのときに比べると、米国経済に対して強気になっていることがはっきりしました。
また、将来的な利上げの可能性に言及したことも注目に値します。ですから、FOMCの結果を受けて、米長期金利が上昇し、米ドルが上昇したのもうなずけます。
■米ドル/円は111円超えが徐々に見えてきた さて、これまでなかなか米国の景気回復期待を背景とした相場展開になってこなかったことに、私も苛立ちを覚えていましたが、少しステージが変わりました。
【参考記事】
●正常な市場の反応は長続きしなさそう。米ドル/円の押し目買いが一番安全か(5月20日、今井雅人)
●失業手当の充実が、悪い雇用統計の原因か。より実態を反映しているのは強い米CPI(5月13日、今井雅人)
●米国の強さを改めて痛感。それでも、米ドル高がどんどん進行しない理由は?(5月6日、今井雅人)
●米長期金利が比較的堅調なのに米ドル全体の動きがさえず、円安が進んでいるのはなぜ?(4月30日、今井雅人)
●米ドルの大崩れはないだろう。最近の為替市場で起こった不思議な動きについて解説(4月22日、今井雅人)
これからは、米国の経済指標により注目が集まってくるのではないでしょうか。
どういう指標の結果に反応するのかを事前に予測するのは非常に困難ではありますが、それでも米国の経済は動き出しているのは間違いありません。
一気にはいかないとしても、徐々に米国の長期金利上昇、米ドル上昇という流れができてくる可能性が、これまでよりは高くなったと考えています。
トレードについては、当然、米ドル/円、ユーロ/米ドルなどでの米ドル買いを基本戦略とします。米ドル/円も111円超えが徐々に見えてきました。
米ドル/円 日足(出所:TradingView)
ユーロ/米ドル 日足(出所:TradingView)