米長期金利が比較的堅調なのに米ドル全体の 動きがさえず、円安が進んでいるのはなぜ?
2021-04-30
【参考記事】
●米ドルの大崩れはないだろう。最近の為替市場で起こった不思議な動きについて解説(4月22日、今井雅人)
米国では、英国同様ワクチンの接種が順調に進んでおり、他の先進国より先に景気が回復する期待が高まっています。
最新の数字では、4月28日(水)現在、少なくとも1回ワクチンを接種した割合が、42.7%にまで上昇しています。
世界のワクチン接種状況(4月28日時点)(出所:Our World in Data)
そうした状況を背景に、米長期金利も10年物国債利回りで1.6%台の後半と、一時の1.7%台から見れば多少低い水準ではあるものの、比較的堅調な動きを見せています。
米10年物国債利回り 日足(出所:TradingView)
米長期金利のこのような動きから考えれば、もう少し米ドル高になってもおかしくないと思うのですが、米ドルはさえない状態が続いています。
米ドルVS世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)
■米ドル高シナリオうまくいかず、クロス円での円売り選択か このような、定石では説明しづらい動きをしているときは、投資家の心理状態が正常でなくなっていることが多いです。
今回の場合は、米国の景気回復からの米ドル高というシナリオで一度勝負をしたのが、うまくいかなかったために、2度目のチャレンジに躊躇している。
その代わりに、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)での円売りという選択を今、投資家がしているために、この1週間は全体的に円安が進んでいるということではないでしょうか。
世界の通貨VS円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)
■英ポンド高、米ドル高はどこかで本格化 それでは、今後の展開はどうなっていくのでしょうか?
まず、ここ数日の円安の流れですが、これに関してはもう少し続くと思います。
世界的に株式市場は安定していますので、リスクオフの円高は起きづらいですから、投資家も円売りでしばらく勝負をするのではないかと考えるからです。
ただ、中期的に考えれば、やはり英ポンド高、米ドル高がどこかで本格化するのでないかと思っています。
その理由は何度も説明しているとおり、ワクチン接種の普及です。
【参考記事】
●米ドルの大崩れはないだろう。最近の為替市場で起こった不思議な動きについて解説(4月22日、今井雅人)
●なぜ、米長期金利上昇と株価上昇が同時に起こっているのか? 米ドル高もまだ続く!(4月1日、今井雅人)
英国では、ワクチン接種が国民の半分程度に行き渡ったことを受けて、マスクなしの日常が戻ってきています。
米国でも、5月一杯までに全国民分のワクチン供給が確保できる予定となっており、経済活動もかなり通常に近い状態に戻っている可能性が高まっています。
昨日(4月29日)は、ニューヨーク市が7月1日(木)からの経済活動の全面的な再開を表明しました。
英国や米国の景気回復が他の先進国より早くなることは、ほぼ間違いありません。
昨日発表された1-3月期米GDP速報値でも、前期比年率6.4%というかなり強い数字が確認されています。
そうであれば、両国の長期金利は確実に上昇してくるでしょう。長期金利の上昇は中期的には通貨高をもたらします。
そうした経験則から考えて、どこかで米ドル高、英ポンド高が本格化してもまったく不思議ではないと考えています。
■米ドル/円ロングが一番安定。110円へじわじわ上昇か その上で今後のトレードを考えると、やはり米ドル/円のロング戦略が一番安定していると思います。
円安になっても、米ドル高になってもどちらでも、米ドル/円ロングは有効です。
110円台に一度乗ったあと、107円台にまで下落する動きとなってしまいましたが、また、110円を目指してじわじわと上昇していく展開を予想しています。
米ドル/円 日足(出所:TradingView)