2021年、ポストコロナの注目通貨は豪ドル! コロナ変異種の感染拡大は懸念されるが…

■2020年は新型コロナウイルスに振り回された1年 みなさん、こんにちは。
 12月に入ると、いろんなメディアの方から2021年の相場展望の取材を受けます。
 例年は、テーマがある通貨ペアをピックアップし、ご紹介させていただくわけですが、2021年に関しては、なかなかそういう通貨ペアを特定できません。
 その理由は、新型コロナウイルスです。
 今年(2020年)は、新型コロナウイルスの影響で、春先に米国株が大暴落し、米ドル/円も一気に101.19円まで急落しました。
 しかし、同時に米ドル不足が注目され、あっという間に112円近くまで踏み上がった後、再び反落。このような相場を想定していたマーケット参加者は、皆無でしょう…。
【参考記事】
●FRBが流動性供給策導入も、米ドルの需給逼迫は継続! 株安でも米ドル/円は上昇か(3月19日、西原宏一)
米ドル/円 週足(出所:IG証券)
 その後、新型コロナウイルスの影響で疲弊した経済の立て直しのために主要国が行った大規模な金融緩和や財政出動などから、米国株の主要インデックスが大きく持ち直すというのはマーケットのコンセンサスでしたが、数カ月で史上最高値を次々と更新していくと考えていたトレーダーは多くないはずです。
 そして、新型コロナウイルスがバリュー株の売りを誘引し、グロース株を急激に押し上げたことも2020年の特色のひとつ。
 個別銘柄で、特に衝撃的な値幅を演出したのがテスラ株。以下は、テスラの日足チャートです。
テスラ株 日足(出所:IG証券)
 3月に70.10ドルまで急落したテスラ株ですが、12月18日(金)に695ドルまで暴騰しています。9カ月で9.9倍、約10倍の大暴騰を演じています。
■新型コロナ変異種が、ポストコロナ相場を読みにくくする 本稿執筆時点での新型コロナウイルス関連動向は、トランプ大統領のワープスピードオペレーションの効果もあってワクチン配布が現実化することにより、2021年春ごろから米国経済もリスタート、夏ごろには米国景気も新型コロナウイルス感染拡大前の状況にかなり戻っているのではないかという意見が大半です。
 この文脈に従えば、相場予測も立てやすいのですが、マーケット参加者の多くが懸念しているのが、「COVID-20(新型コロナウイルスの変異種)」です。
 今月(12月)に入り、英国で新型コロナウイルスの変異種が確認されました。
 その感染力は、これまでのものより、さらに強い恐れもあるとのことで、警戒感が高まっています。
英BBC放送は21日、感染力が強いとされる新型コロナウイルス変異種の感染拡大が英国で確認されたため、40カ国・地域以上が英国からの入国規制を決めたと伝えた。
出所:東京新聞
 このように、新型コロナウイルスの変異種の発見により、いきなり多くの国から入国制限をされるような事が起きると、その国の経済成長が読みにくくなるのは当然です。
 こうした懸念がある中、2021年の注目通貨ペアをピックアップすることは、マーケット参加者にとって困難を極めています。
■米ドル/円は、2021年も収益性は見込めない? 前述のように相場予測が難しい環境下、マーケット参加者の相場予測が同じなのが米ドル/円。
 ほとんどの参加者の、2021年の相場展望は95~105円がコアで、ほぼ95~110円に収まっています。
米ドル/円 月足(出所:IG証券)
 この気味が悪いほど狭いレンジに収まっている2021年の米ドル/円の相場予測に関して、懇意にしている金融ライターからは、あまりにも陳腐でつまらないため、「西原さん、新しい視点で違う相場予測をしてもらえませんか?」という依頼もあったほどです。
 こういう展開になっているのは、マーケット参加者が注目している相場の材料が同じだからです。
 まず、米国の低金利が長期化することで米ドル安が続くであろうということがひとつ。
 ただし、米ドル/円の100円以下はあまり続かないと想定しているのは、菅首相の米ドル/円に関する報道が意識されているからです。
菅首相に期待、「為替介入なし」に対米輸出増やす戦略=熊野英生氏
その菅首相が「100円を割らないようにしてくれ」と「霞が関の官僚」に言っているらしい。ドル/円レートが100円を割り込むような円高にならないことを願って話しているのである。
出所:ロイター
 この菅首相が持つ、「米ドル/円の100円」というラインに対する強い意向(?)により、米ドル/円の100円以下は長続きせず、再び100円台を回復するだろう。ただし、米ドル/円が続伸する要因も限られるため、上値は105円だろうと想定されているのです。
 仮に、米金利が続伸したとしても、米ドル/円の上値は110円が限界だろうと想定されています。
 米ドル/円に関しては、個人的にも同じような予測になり、95~110円といったところ。
 仮に、実際にそういう展開になるのであれば、米ドル/円は100~105円のコアレンジが長くなるということになり、来年(2021年)も、あまり収益性の高い通貨ペアではないということになります。
 ただし、そうした相場予測を覆す可能性として、COVID-20の影響が考えられます。
 COVID-20の危険性が高まり、相場の不透明性が高まると、米ドル/円のボラティリティもさすがに高まるからです。
■2021年、ポストコロナ相場の注目は豪ドル! COVID-20への懸念に関して言えば、本稿執筆時点で感染者数が極端に少ない、中国、台湾、そして、当コラムで頻繁に取り上げているオセアニアが優位となります。
【参考記事】
●豪ドル、鉄鉱石急騰を受けて上昇継続! 長期では水素燃料関連の報道も買い材料に(12月17日、西原宏一)
●コロナショック後の豪ドルは30%超上昇!2021年の豪ドル/円は、90円を目指すか(12月10日、西原宏一)
●2021年はユーロ/豪ドルの動向に熱視線!? 欧米と豪州で新型コロナの感染状況に差(11月26日、西原宏一)
 今週(12月21日~)、豪州のシドニーで感染が拡大し、制限が厳格化されたことが報道されています。
 ただ、その後の対応も早く、本稿執筆時点での豪州の新規感染者数は豪州全土で24人ですが、その大半は空港でチェックされており、他の欧米主要国とは比較にならないほど、うまくコントロールされています。
豪州の新型コロナウイルス新規感染者数(過去24時間)(出所:COVID LIVE)
 加えて、中国が豪州からの石炭の輸入制限をしていることが話題になっていますが、この措置は中国にとって悪材料となっており、豪州が困っているわけではありません。
外交優先の中国、豪産石炭禁輸で電力不足に
出所:日経新聞
 新型コロナウイルスからの急速な経済回復により、中国は豪州から鉄鉱石を大量に輸入していますので、鉄鉱石価格が高騰しているのも豪州にとっては朗報です。
鉄鉱石価格 週足(出所:IG証券)
 さて、今年(2020年)のマーケットがコンセンサスと相違し、乱高下したのは新型コロナウイルスの影響でした。
 新型コロナウイルスに対しては、ワクチン配布が実施されることによってマーケットも安定化すると思われますが、変異種の拡大は懸念材料です。
 こうしたことから、2021年は新規感染者がほぼゼロで、COVID-20の感染拡大の可能性が低い、オセアニアの豪ドルが、やはり注目通貨になるのではないでしょうか?
【参考記事】
●ライブセミナーで西原宏一×大橋ひろこが赤裸々トーク! 2021年は豪ドルがアツい!?
豪ドル/円 月足(出所:IG証券)
 「ヘッジファンドの思惑」は、本記事で今年最後となります。本年もご愛読いただき、ありがとうございました。
 良い年をお迎え下さい。

参照元:ザイFX! 西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

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