コロナショック後の豪ドルは30%超上昇! 2021年の豪ドル/円は、90円を目指すか

■ブレグジット交渉成立の確率は極めて低いか? みなさん、こんにちは。
 「新型コロナウイルス感染」に揺れた激動の2020年も、20日を残すところとなりました。
 しかし、為替市場はまだ神経質で不安定な展開が続いています。
 それは、ブレグジット(英国のEU離脱)の行方が依然不透明なため、乱高下が続いている英ポンドが要因です。
 ボリス・ジョンソン英首相とフォンデアライエン欧州委員長は、通商協定をめぐる交渉を決裂から救い出すために、12月9日(水)、ベルギーのブリュッセルで協議しました。
 このミーティングに向けてジョンソン首相は、「成立は可能だ」との強い期待を示しつつも、「合意なき離脱」になっても構わないとコメント。
ジョンソン首相はフォンデアライエン欧州委員長との会談に向けて、強い期待を示しつつも「合意なき離脱」でも構わないとコメントしていた (C)Justin Sullivan/Getty Images
 加えて、EU(欧州連合)側の交渉を率いるバルニエ首席交渉官も「合意成立の確率は極めて低い」と発言していました。
 年末も近い中、決着する可能性が高いと思われていた今回のミーティングですが、ジョンソン英首相とフォンデアライエン欧州委員長は、EUと離脱後の英国とのFTA(自由貿易協定)締結交渉を13日(日)まで継続することで合意した模様。
 つまり、FTA交渉は成立せず、13日(日)まで先送りとなったわけです。
 英ポンド/米ドルは、再び1.33ドル台後半まで下落しました。
英ポンド/米ドル 1時間足(出所:IG証券)
 英ポンド絡みの通貨はもちろんですが、ユーロ絡みの通貨ペアであるユーロ/米ドル、ユーロ/円もブレグジットの行方がはっきりしないことにより、不安定な動きが続いています。
■豪ドル/ニュージーランドドルは、引き続き堅調に推移 このように、神経質な動きを続ける欧州通貨を横目に、堅調な動きを続けているのが、今年(2020年)、当コラムで注目している豪ドル。
【参考記事】
●注目は豪ドル! 豪ドル/NZドルは、中期で1.15NZドルまで上昇との予測も!!(12月3日、西原宏一)
 豪ドル/米ドルは、節目の0.7500ドルをブレイク寸前の0.74ドル台後半まで、そして豪ドル/円は、レジスタンスであった77.00円をブレイクして、本稿執筆時点では78.09円まで反発しており、80円に向けて上昇中。
豪ドル/米ドル 日足(出所:IG証券)
豪ドル/円 日足(出所:IG証券)
 そして、前回のコラムで取り上げた豪ドル/ニュージーランドドルですが、英ポンド/米ドルの乱高下を横目に堅調に推移しており、1.06ニュージーランドドル台を回復、こちらも1.100ニュージーランドドルに向けて上昇中です。
【参考記事】
●注目は豪ドル! 豪ドル/NZドルは、中期で1.15NZドルまで上昇との予測も!!(12月3日、西原宏一)
豪ドル/ニュージーランドドル 週足(出所:IG証券)
■コロナショック後からの豪ドル/米ドル上昇率は30%超 筆者が今年(2020年)豪ドルに注目しているのは、主要通貨の中で上昇率がきわだっているからです。以下は、米ドルに対する主要通貨の上昇率です。
(筆者提供のデータを基にザイFX!編集部にて作成)
 3月のコロナショックによる急落後からのデータを取ったものですが、対米ドルでもっとも上昇したのが豪ドルで、その上昇率は30%を超えています。
 トレードはもっともトレンドの明確な通貨を選ぶのが収益に結びつけやすいわけですから、現在の環境下では、豪ドルに注目するのは理にかなっているわけです。
 豪ドル/円は以前コラムでご紹介させていただいたとおり、続伸。
【参考記事】
●新型コロナのワクチン開発期待で、市場はリスクオン。豪ドル/円は80円へ向けて上昇(11月12日、西原宏一)
 前述のように、節目の77,00円をクリアに抜いてきて、本稿執筆時点では78.00円レベルで堅調推移。当コラムの直近の目標値である80円まで、あと2円まで迫ってきました。
豪ドル/円 日足(出所:IG証券)
 そして、ここでは2021年に向けて豪ドル/円の中期の見通しを考察してみます。
 豪ドル/円は、他の豪ドルクロス(豪ドルと米ドル以外の通貨との通貨ペア)同様に、今年(2020年)の3月19日(木)が重要な日となりました。3月19日(木)は、RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])が政策金利を0.50%から0.25%へと利下げを行った日です。
 その日に、豪ドル/米ドルは過去10年の高値からほぼ半値まで暴落し、それを境に急反発に転じています。
【参考記事】
●リスクオフのきっかけはユーロ/ドルの反落。9月1日からトレンドが変わった可能性…(9月10日、西原宏一)
豪ドル/米ドル 月足(出所:IG証券)
 3月中旬は豪ドル絡みのみならず、多くのプロダクトがその方向性を変えており、ゲームチェンジが起きています。
 英ポンド/米ドルが1.1412ドルの安値をつけたのが3月20日(金)。
 英ポンド/円が124.09円の安値に到達したのは、3月19日(木)。
 ユーロ/米ドルが1.0636ドルの安値に急落したのが3月23日(月)。
 加えて、金(ゴールド)も3月16日(月)に1451ドルの安値まで急落しています。
 そして、豪ドル/円が59.91円の安値に到達したのも3月19日(木)。以下は、豪ドル/円の月足チャートです。
豪ドル/円 月足(出所:TradingView)
 過去10年をかけて、その価値を半分にまで下げた豪ドル/米ドルと比較すると、豪ドル/円は半値まで下げたわけではありませんが、2007年の高値である107.87円から59.91円まで50円近く急落しています。
 この間、リーマンショックやチャイナ・ショック、そして、今回のコロナショックなど、マーケットに大きな負荷がかかると、リスクアセットのヘッジ通貨として豪ドル/円は大きく売られてきました。
■豪ドル/円は80円に急接近で、来年は90円が目標に ただ、このところ、豪州と中国の関係が悪化していること、そして、円が避難通貨としてのポジションから外れてきていることなどで、豪ドル/円の役割も次第に変わってきました。
 中国との相関性が薄れてきたことにより、上海株が上昇すれば豪ドル/円も上がりますが、その上昇率は低下。
 一方、グローバルに株が急落する局面では、これまでどおり豪ドル/円は下落しますが、その下落率も下がってきました。つまり、これまでグローバル経済の動向に必要以上に影響を受けていた豪ドル/円ですが、豪州経済やRBAの金融政策をこれまで以上に反映するようになると想定しています。
【参考記事】
●豪ドル/米ドルは、ゴールドとともに上昇! 金鉱株急騰の裏にウォーレン・バフェット(8月20日、西原宏一)
 そして、繰り返しになりますが、欧米が新型コロナウイルスによる感染症対策で頭を悩ませている中、豪州の感染者はほぼゼロ。さらに、経常収支は黒字化、来年(2021年)、金の産出量で世界一になるともいわれていますので、豪ドルに資金が集まってきています。
 そのため、豪ドルの上値余地は徐々に拡大しており、前述のように直近の目標値である80円まであと2円弱。3月の安値から9カ月ほどで20円近く上昇。
 ファンディングカレンシー(調達通貨)である、米ドル/円が来年(2021年)もボラティリティが低いとすれば、豪ドル/円は、90円に向けて上昇するのではないでしょうか。
豪ドル/円 週足(出所:IG証券)

参照元:ザイFX! 西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

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