米ドル/円は、しばらく下値余地が拡大か。 でも、本格的な底割れは生じにくいと見る
2020-09-18
米ドル全体は一進一退だが、米ドル/円は105円の節目を下回り、円のパフォーマンスが再度、注目されている。
菅政権の発足に合わせた円買いがあったように見えるが、107円の節目を上回れなかったことで、より頭が重くなったところが大きい。
米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
テクニカルの視点では、8月28日(金)の大陰線を下回ったこともサイン(インサイドの下放れ)と見なされ、米ドル/円は、しばらく下値余地を拡大しやすい状況にあることが推測される。
明日(9月19日)からの4連休もあり、投機筋による仕掛け的な円買いがあってもおかしくなかろう。
米ドル/円 日足
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■英ポンド/円の大幅下落は、円高圧力に 一方、米ドル/円における円高圧力は、実は主要なクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)とリンクしているところが見逃せない。
特に、英ポンド/円の大幅下落は、直接米ドル/円に波及しなくても、円高圧力として確実な存在なので、これからユーロ/円などクロス円との連動も推測される。しばらく警戒しておきたい。
英ポンド/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)
とはいえ、たびたび指摘してきたように、円高があっても、かつてのような主体性を発揮した値動きではなく、あくまで外貨安による受動的な側面が大きい。
英ポンド/円の急落について、また、これからさらなる下値トライがあるならば、それは、英ポンド安が主因の動きであり、円高が主因の動きではないことが明らかだ。
■英ポンドの先安観を作り出す2つの要素とは? 英ポンドにとっては、目先2つの要素が英ポンドの先安観を作り出している。
1つは、いわゆる無秩序なEU(欧州連合)離脱懸念の再燃。そしてもう1つは、英マイナス金利の可能性だ。
EU離脱を離婚に例えれば、離婚が決まってから、もう4年の歳月が過ぎているのに、まだ財産や親権などの争いでドロドロな裁判が続き、当事者も傍観者も全員が呆れている状態だと言える。
コロナショックの安値から大きく切り返してきただけに、同問題の再燃で英ポンドが売られやすいことは当然の成り行きで、理解しやすい事柄だと思う。
対照的に、英マイナス金利の可能性については、複雑である。
英中銀メンバーらが検討する今の段階において、マイナス金利導入の可能性自体が英ポンド売りの理由として大きく取り上げられるが、実は、本当に実施されれば、今度は、一転して英ポンド買いの理由にもなり得る。
このあたりの常識というか、相場観というものは、実に巷の感覚とは真逆なので、少し説明する必要があるかと思う。
経済学の原理に照らして説明すれば一般人の感覚と違い、通貨の世界では、高金利通貨は長期に渡って下落傾向にあり、低金利、ゼロ金利またはマイナス金利の通貨は、実は買われやすく、上昇傾向にあることが多い。
細かい説明は省くが、つまるところ、高金利通貨は高いインフレ(通貨価値を棄損する要素)などマイナス事情があるから、高金利を設定せざるを得ない。ゆえに、高金利通貨ほど売られる傾向にあるのだ。
対照的に、インフレの傾向やその心配のない国(日本は典型的であったが…)は、ゼロ金利、さらにマイナス金利を採用できる。通貨価値は、モノに対して上昇傾向を維持できるから、買われやすいわけだ。
皮肉に聞こえるかもしれないが、実は「デフレ通貨」が上昇しやすいものだ。
そうなると、仮に英ポンドにマイナス金利が導入されれば、英ポンドは円に取って代わる「デフレ通貨」の代表格として注目され、買われやすくなることが推測される。
この場合、英景気状況が悪化すればするほど英ポンドが上昇しやすくなるかもしれない。かつて円が味わった苦しみを、英ポンドもようやく体験することになると思うと、複雑な気分としか言いようがない。
しかし、この2つの要素は、昨日(9月17日)の英ポンドの乱高下が表しているように、どちらも流動的である。
昨日の英ポンドは、英中銀によるマイナス金利の検討があったと伝わると、急速に売られた。しかしその後、EUとの協議に余地ありといったEU高官の発言で一転して急速に買われ、下落分がほぼ帳消しとなった。
不安定な市況だったからこそ、市場関係者の疑心暗鬼が浮き彫りになり、不確実性の強さを暗示している。したがって、断定的なスタンスは避けたい。
重要なのは、ファンダメンタルズ上、弱い要素を抱える英ポンド…