猫も杓子も警戒なら、危機は発生しにくい。 もっとも危惧される英ポンド安に変化の兆し
2019-08-23
NYダウ 日足(出所:Bloomberg)
米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)
相場に関わると、どうしても予測をしたくなるが、一個人はおろか、たとえウォール街の王者のような機関投資家でさえ、将来を予測できる部分はかなり限られる。
言ってみれば、相場自体は誰よりも賢く、誰よりも将来を見極めて値段を形成しており、「相場のことは相場に聞く」という言い伝えの真意はそこにあるのではないかと思う。
前回のコラムでも強調したように、逆イールドがたちまち本格的なリスクオフをもたらすのであれば、米ドル/円の106円台が今、キープされるのはとてもムリなことであり、100円の心理的大台の割り込みがあってもおかしくなかろう。そういった値動きが観察されていないのであれば、市場心理の行きすぎを悟るべきだとも思う。
【参考記事】
●世界経済が大混乱なのに米ドル/円は底割れを回避。それが意味するものは?(2019年8月16日、陳満咲杜)
■猫も杓子も警戒する状況では危機は発生しにくい もっとも、逆イールドが必ず本格的な景気後退をもたらすという前提でも、米国株はこれから高値更新ありとみる。
筆者が8月15日(木)のツイートで述べたように、次のようなロジックや計算ができ、S&P500は3266ドル前後の高値をトライしてもおかしくない(ちなみに、同指数は現在3000ドルの節目手前である)。
ここで、より大事なのは、米国株の強気変動の終焉が叫ばれることも、別に今始まったことではないということだ。米国株は危ない、もうすぐトップアウトするよ、といった論調は、もう何年も続いてきた。本当のところは、米国株がいつトップアウトするかは誰にもわからず、また、トップアウトを判定できるのも、事前ではなく、事後であることを悟るべきだ。
そもそも、世界的な景気循環やバブルの崩壊といったマクロ的な予測を、現在、言われている「トップアウト云々」のように、専門家から素人まで口を揃えて指摘できるはずはない。
2008年のリーマンショックも、ウォール街でも予測できなかったから発生したわけで、現在のように猫も杓子も行く先を警戒する状況では、逆にそのような危機的事象は発生しにくいかと推測される。
つまるところ、相場は誰よりも賢く、誰よりも「正直」なので、米国株の強気トレンドが崩れていない限り、相場心理の行きすぎを警戒した方がロジック的には正しい。
米ドル/円で言うと、前回のコラムにおいて再度提示したように、米中対立の激化など諸ファンダメンタルズの悪化があっても、米ドル/円がなかなか2019年年初来安値を割れず、また、2016年6月の英EU離脱決定、2018年3月の米中貿易戦争勃発時に比べ、安値が右上がりの傾向をキープしていること自体、円高の余地が限られていることを示唆するサインとみるべきだ。
【参考記事】
●世界経済が大混乱なのに米ドル/円は底割れを回避。それが意味するものは?(2019年8月16日、陳満咲杜)
前述のように、ファンダメンタルズや市場心理の悪化を受け…