2017年のドル/円は調整あっても130円へ! リスクオフの円高が継続しないワケとは?
2016-12-22
激動の2016年も残り少なくなってきました。
振り返ってみれば2016年ほど、「リスクオフ」が話題になった年はないのではないでしょうか?
英国がEU(欧州連合)から離脱する、ドイツ銀行が破綻する、中国経済がハードランディングする、トランプ米大統領が誕生するなど……。
これらの中には、ウワサだけで終わったものもあるのですが、Brexit(英国のEU離脱)とトランプ米大統領の誕生は、現実となっています。
【参考記事】
●EU離脱ショックで英ポンド暴落! 米7月利下げ観測も浮上! ドル/円、次は95円へ(6月24日、西原宏一)
●レーガノミクス再来か。トランプ次期大統領のトランポノミクスのもと、ドル/円は109円へ(11月10日、西原宏一)
■Brexitにトランプ氏当選でも円高は一時的だった では、マーケットが懸念したように、大規模なリスクオフが起きたのか?
つまり、グローバルな株価の急落と、円高が実現したのか?
答えは「ノー」です。
今世紀最大と言われたBrexitという負荷がマーケットにかかったとき、米ドル/円は99.02円まで円高が進みました。
6月24日(金)Brexit決定前後の米ドル/円 5分足(出所:Bloomberg)
予想外にトランプ米大統領が誕生した時点での米ドル/円の安値は101.20円でした。
11月9日(水)トランプ氏当選決定前後の米ドル/円 5分足(出所:Bloomberg)
マーケットが恐れていたことが現実化したわけですが、円高は一時的な現象で終わっています。
米ドル/円 週足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
■リスクオフの円高は米ドル買いの好機に 2008年までの金融市場では、円キャリートレード(※)がもてはやされており、グローバルに円ショートのポジションが増殖していました。
(※編集部注:「キャリートレード」とは一般に金利が非常に低い通貨で資金を調達し、それを相対的に金利の高い通貨に替えて運用する手法のことをいう)
2002年~2013年の豪ドル/円 月足(出所:Bloomberg)
しかし、リーマンショック以降、金利がゼロなのは円だけではありません。
ユーロもマイナス金利に突入するほどの低金利となっています。
そして、かつては高金利通貨といわれた豪ドルですが、現在の豪州の政策金利はわずか1.50%という低金利に…。
【参考記事】
●豪ドルを買う理由がなくなってしまう!? 米ドル/円は「買い遅れ組」の動きに注目!(12月19日、西原宏一&大橋ひろこ)
豪州政策金利(詳しくはこちら → 経済指標/金利:各国政策金利の推移)
このような状況では、マーケットに大きな負荷がかかっても、リスクオフの円高は継続しません。巻き戻すだけの円キャリーポジションが存在しないからです。
2017年には米国は3回ほど利上げすることが予測されているため、来年(2017年)にかけて円キャリーポジションというものが再び脚光を浴びるようになるかもしれません。
米ドル/円 週足(出所:Bloomberg)
ただ、それは来年(2017年)の話。
今年(2016年)の相場を振り返ると、リスクオフトレードによる円高は長続きしませんでした。
短期的な円高で終わることが多いため、「リスクオフによる円高」は、むしろ米ドル買いの好機となっているという認識は当面、持っておいたほうがいいかもしれません。
ともあれ、トランポノミクスへの期待を背景にした…