
この記事の要点
- トランプ大統領、量子開発推進と耐量子暗号移行に関する2件の大統領令に署名
- 米政府が2031年までの耐量子暗号移行期限を設定、仮想通貨業界でも対応検討が進展
量子開発と耐量子暗号で大統領令を発令
トランプ大統領は2026年6月22日、ホワイトハウスで量子技術の開発推進と耐量子暗号への移行を柱とする2件の大統領令(14411・14409)に署名しました。
2件のうち一方は量子コンピュータの開発を国家目標に据える推進策で、もう一方は政府システムを耐量子暗号へ移行させる防御策にあたり、量子技術の研究開発と暗号基盤の刷新を並行して進める措置が盛り込まれています。
防御を担う大統領令(EO 14409)は、連邦政府の重要システムについて、鍵共有を2030年12月、電子署名を2031年12月までに耐量子暗号へ移すよう義務づけています。
こうした対応が進められる背景には、現行の公開鍵暗号が将来的に量子コンピュータによって破られる可能性が指摘されていることがあり、同じ暗号方式に支えられる仮想通貨でも、公開鍵が露出した約700万BTCが標的になり得ると議論されてきました。
量子攻撃で700万BTCに警鐘
大統領令が定める移行期限と量子戦略
推進策が描く量子開発のロードマップ
推進を担うEO 14411は、科学研究を加速させるための量子コンピュータの開発を国家的な優先課題として位置づけ、その実機をエネルギー省(DOE)の施設に設置する目標を掲げました。
同大統領令はさらに、科学技術担当の大統領補佐官(APST)に対し、180日以内の国家量子戦略の更新を求め、各機関には更新から30日以内の対応状況の報告を義務づけています。
政府契約先にも耐量子暗号を義務化
一方、防御を担うEO 14409は、米国立標準技術研究所(NIST)が2024年に世界で初めて策定した耐量子暗号の標準規格を移行の基準としています。
この移行義務は連邦政府機関だけでなく、政府と契約関係にある民間事業者にも及び、2030年12月までにNIST規格への準拠が求められています。
同大統領令はあわせて、重要インフラを担う事業者の移行計画づくりを、米サイバーセキュリティ・インフラ安全保障庁(CISA)が支援するよう求めています。
BTC量子防御の新提案「PACTs」
量子脅威にさらされる約700万BTC
移行対象となる公開鍵暗号はビットコイン(BTC)の安全性を支える仕組みにも使われており、その中核には楕円曲線暗号(ECC)と呼ばれる方式が使われています。
このECCは現在のところ安全とされる一方で、十分な性能を持つ量子コンピュータが現れた場合には、公開鍵から秘密鍵が逆算される恐れがあると以前から指摘されてきました。
とくに公開鍵がすでに露出した、一度でも送金に使われたアドレスに残るBTCは標的になり得るとされ、その規模は流通量の約35%にあたる約700万BTCと試算されています。
この条件に当てはまるBTCには、サトシ・ナカモトが初期に採掘したとされるBTCも含まれ、古い形式のアドレスに公開鍵が記録されている可能性が指摘されています。
ただし、現時点では既存の暗号を実際に破れる量子コンピュータは存在せず、Qデーがいつ訪れるかの見通しには数年から数十年の幅があるとされています。
量子脅威が仮想通貨を襲う日
BTCとETH、量子耐性移行の課題
こうした脅威を見据え、仮想通貨業界ではいまのうちに量子耐性を持つ署名方式へプロトコルをどう移行するかをめぐる検討が、開発者コミュニティを中心に続いています。
ビットコインの場合、プロトコルの変更にはBIP(ビットコイン改善提案)を通じた幅広い合意が必要となり、既存アドレスの移行手順をめぐる調整には相応の時間がかかるとみられています。
イーサリアム(ETH)でも量子耐性を見据えた移行計画づくりが進められ、基盤となるレイヤー1(L1)の刷新は2029年の完了を目標に掲げています。
米政府が2031年という具体的な期限を示したことで、仮想通貨業界でも耐量子化への対応を見据えた署名方式の選定や大規模ウォレットの移行コストをめぐる検討が進められています。
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Source:White House(EO 14411) / White House(EO 14409)
サムネイル:AIによる生成画像





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