
この記事の要点
- カルダノ創設者「ユーザーは秘密鍵を持つべきでない」
- スマホが署名端末となる自己管理モデルへ転換点
ホスキンソン氏「秘密鍵を持たない時代が来る」
カルダノ(Cardano/ADA)の創設者であるチャールズ・ホスキンソン氏は2026年5月7日、米マイアミで開催された「Consensus Miami 2026」の基調講演に登壇し、仮想通貨ウォレットの将来像について「ユーザーは秘密鍵を保有すべきではない」と述べました。
ホスキンソン氏は、iPhoneやAndroid、Samsung(サムスン)の各端末に組み込まれたセキュアチップ(暗号処理を担う専用半導体)が、Ledger(レジャー)やTrezor(トレザー)などの専用ハードウェアウォレットに匹敵する保護機能を備え始めていると指摘しています。
仮想通貨を保管するシードフレーズ(12〜24語の復元キー)の管理は、初心者にとって長年の参入障壁となってきたと同氏は説明しています。そのうえで、スマートフォンを活用した新たな自己管理モデルが普及余地を広げるとの見方を示しました。
また同氏は、この構想について、認証技術の普及データに加え、Apple(アップル)やGoogle(グーグル)が進める既存の端末認証基盤によって、実用化に向けた環境整備が進みつつあると説明しています。
「ソーシャルログイン機能」導入
パスキー50億件、進む「スマホ署名」基盤
75%のユーザーがパスキーを有効化済み
ホスキンソン氏は、秘密鍵を本人が直接管理しない仕組みの前提として、生体認証と紐づけた認証情報「パスキー」の普及を挙げました。
同氏は、利用者がすでに端末に縛られた認証情報と生体認証の組み合わせを日常的に受け入れていると指摘しています。
標準化団体FIDO Alliance(フィドアライアンス)が5月7日に公表した最新報告では、世界で50億件のパスキーが稼働中で、消費者の75%が少なくとも1つのアカウントで有効化済みと公表されました。
同氏は、こうした普及状況を踏まえ、復元キーをユーザー自身に記憶させる従来方式から、生体認証によって署名権限を起動する仕組みへの移行が、現実的な標準になりつつあると説明しました。
そのうえで、仮想通貨ウォレットについても同様の移行が可能との認識を示しています。
復元キー不要、コインベースが顔認証で送金
認証基盤の普及に加え、ホスキンソン氏は、スマートフォン側の鍵保管技術そのものも大きく進化していると指摘しました。
同氏はAppleのSecure Enclave(セキュアエンクレーブ)、AndroidのKeystore、SamsungのKnoxといった既存のセキュリティ機構を引き合いに出し、暗号鍵を端末から取り出せない形で保護できると述べています。
同氏は、こうした仕組みによって、専用ハードウェアウォレットに近い保管環境がスマートフォン上でも実現しつつあるとの認識を示しました。
実際の導入事例として、同氏はCoinbase(コインベース)のスマートウォレットを挙げました。Apple・Googleのパスキーを用いることで復元キーなしの登録を可能にしており、Face ID(顔認証)や暗証番号による認証のみで送金処理まで行える仕組みと説明しています。
AIが決済を代行、上限額付きの権限委譲へ
ホスキンソン氏は、こうしたスマホ内蔵型ウォレットの需要は、AIエージェント決済の普及によってさらに高まるとの見方も示しました。
講演の後半で同氏は、AIエージェント(自律的に取引するAIプログラム)が決済機能を持つには、マスター秘密鍵を渡すのではなく、上限額や有効期間を区切った「権限委譲型」の仕組みが必要だと述べています。
イーサリアム(ETH)ではこうした用途を支える規格EIP-4337(アカウント抽象化)がすでに2,600万件超のスマートウォレットと1億7,000万件のUserOperations(ユーザー命令)を生み出していると、イーサリアム財団が公表しています。
こうした既存規格とスマートフォン側のセキュリティチップを組み合わせることで、AIエージェント向け決済基盤を構築できるとホスキンソン氏は述べています。
同氏は、本人が秘密鍵を直接扱わないまま、AIエージェントが許可範囲内で支払いを実行するモデルについて、現実的な決済手法のひとつになり得るとの見方を示しました。
AWS、AIエージェント決済を統合発表
カルダノが実装する「秘密鍵不要」の決済基盤
ホスキンソン氏が語った構想は、カルダノ自身でも実装段階へ進みつつあります。
同氏が率いるカルダノでは、HTTP 402を基盤とする決済規格「x402」を統合し、AIエージェントによる自動マイクロ決済の実装に乗り出しています。
今回示された構想は、同氏がこれまで進めてきたAIエージェント向け決済基盤の拡張路線ともつながる内容となっています。
相互運用と流動性の整備も並行して進められており、カルダノは2026年に入り、ビットコインやXRPと相互運用するDeFi基盤の拡張方針や、米ドル連動ステーブルコインを取り込むUSDCx統合契約を相次いで打ち出してきました。
同氏は、こうした自己管理型ウォレットについて、決済・流動性インフラとの統合が重要になるとの考えを示しています。
ホスキンソン氏は基調講演の最後に、「ユーザーがアイデンティティを所有し、ウォレットを管理し、プライバシーを保てる仕組み」が必要だと述べました。そのうえで、秘密鍵を意識せず利用できる自己管理型ウォレットの実装競争が今後本格化していくとの見方を示しています。
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Source:Consensus Miami 2026
サムネイル:AIによる生成画像






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