
この記事の要点
- イーサリアム共同創設者ブテリン氏、L2戦略の大転換を宣言
- L2は「シャード」ではなく、用途・特性に応じた多様なネットワークに再定義
- 主要L2トークンはピークから90%以上下落、市場に衝撃
- L1性能向上で取引手数料は1ドル未満、L2依存が不要に
- 各L2プロジェクトは差別化と明確な価値提示が必須に
「L2はもはやシャードに非ず」ブテリン氏が戦略の終焉を明言
イーサリアム(ETH)共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏は2026年2月4日、従来のレイヤー2(L2)ネットワークをイーサリアムの「シャード」とする構想が現状に適さないとの見解を示しました。
ブテリン氏はX(旧Twitter)で、L2の完全分散化(Stage 2)が遅れていることや、L1のスケーリング進展、手数料の低下、2026年予定のガスリミット拡張などを挙げ、構想見直しの背景を説明しました。
従来の「L2=イーサリアムの拡張」という考えはもはや意味をなさないと述べ、新たなスケーリング戦略の必要性を示しています。
これまでポリゴン(POL)、アービトラム(ARB)、オプティミズム(OP)、BaseなどのL2は、イーサリアムの信頼性を継承する「シャード」として運用されてきましたが、ブテリン氏は初めてこの見方に異議を唱え、L2の役割再定義を促しています。
There have recently been some discussions on the ongoing role of L2s in the Ethereum ecosystem, especially in the face of two facts:
* L2s' progress to stage 2 (and, secondarily, on interop) has been far slower and more difficult than originally expected
* L1 itself is scaling,…— vitalik.eth (@VitalikButerin) February 3, 2026
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ブテリン氏が示したL2の現在地と次の一手
従来の「L2=イーサリアムのシャード」構想の崩壊
ロールアップ中心構想の限界
イーサリアムは以前より、ロールアップ中心(Rollup-centric)のロードマップを掲げ、L2によって基盤の処理能力を拡張する方針を採用してきました。
当初の構想では、L2はイーサリアムと緊密に統合された「ブランド化されたシャード」として、同等のセキュリティと検閲耐性を確保しつつ、取引処理能力を大幅に拡張する役割を担うと想定されていました。
この点についてブテリン氏は「そのビジョンは実現しなかった」と指摘し、現状では多くのL2が当初期待された要件を満たしていないことを明らかにしています。
複数のL2開発者が、技術的制約や規制対応を理由に「完全な分散化(Stage 2)への移行は困難」との見解を示しており、こうしたL2は一定の利便性を提供している一方で「それではロールアップ中心のロードマップが意図した形でのスケーリングには至っていない」とブテリン氏は述べています。
ブテリン氏は、L2各社が十分な信頼性と分散性を備えていない現状では、当初の構想に照らしてイーサリアムのスケーリングとは言えず、イーサリアム本体の延長と見なすのは困難だとの認識を示しました。
レイヤー1のスケーラビリティ向上
ただしブテリン氏は、こうした状況は重大な課題ではなくなりつつあると指摘しています。
その理由として、イーサリアム基盤(レイヤー1)の性能向上によって「L2に頼らなくても直接L1上でスケーリングが進んでいる」点を挙げています。
2021年前後のネットワーク混雑期には、1回の取引に数百〜数千ドル(数万円〜数十万円)の手数料が発生し、トランザクション失敗時にもガス代が消費される事例が多発しました。
しかし、その後のアップグレードやガスリミットの拡張を経て、現在では平均手数料は1ドル未満にまで低下しています。
さらに2025年末には、ブロックあたりのガス上限が従来の3,000万から6,000万へと引き上げられました。2026年には、これを最大1億5,000万まで拡大する案も検討されています。
L2は「スペクトラム(連続体)」へ:多様な価値の模索
シャード的地位からの脱却
こうした背景を踏まえ、ブテリン氏は「L2をイーサリアムの“ブランド付きシャード”と見なすべきではない」と提言しました。
代替案として、L2を多様な特性と信頼性レベルを有するネットワークの「スペクトラム(連続体)」と捉えるべきだとしています。
具体的には、イーサリアムの完全な信頼と信用によって支えられている高セキュリティなチェーンから、イーサリアムとの結合が緩く独自性を追求したチェーンまで、L2には幅広い選択肢が存在し得ると指摘しました。
ユーザーや開発者は、自らのニーズに応じて、イーサリアム本体のセキュリティや分散性をどの程度重視するか、または一定の信頼性低下を許容して他の利点を得るかを選択することが求められるとしています。
全てのL2が一律にイーサリアムと同等の保証を提供すると捉えるべきではなく、各ネットワークが提示する「セキュリティ上の保証とトレードオフ」を明確に理解し、適切に選択する必要があるとの見解を示しました。
スケーリング以外の付加価値の提示
各L2プロジェクトの今後の方向性について、ブテリン氏は「もし自分がL2の開発者であればどうするか」という視点から、単なるスケーリング性能にとどまらない新たな付加価値の提示が不可欠であると強調しました。
従来は「イーサリアムをより安価かつ高速に利用可能にする」ことがL2の主な訴求点でしたが、現在ではそれだけでは競争優位を確保できないとの見方を示しています。
ブテリン氏は、L2が模索すべき方向性として、以下の例を提示しています。
- ゼロ知識証明による秘匿性に特化したプライバシー重視型チェーン
- ゲーム・決済向けに最適化された高効率チェーン
- 秒間数万件規模の処理に対応する超高スループットチェーン
- EVMに依存しない分散型SNSやAI連携基盤など非金融用途向けチェーン
- 極低レイテンシー(遅延)や順序保証が要求される用途に対応するチェーン
- 内部にトラストレスな紛争解決機構やオラクル機能を組み込んだチェーン
ブテリン氏は、こうした差別化によって各L2が「単なるイーサリアムの延長線上にある存在」から脱却し、新たな価値提案を打ち出すことが不可欠だと強調しています。
L2トークン市場の動向を見ると、主要プロジェクトのトークン価格は軒並みピーク時から90%以上下落しており、ローンチ直後に注目を集めた新興L2でもユーザーの継続的な利用を確保できないケースが目立ちます。
ブテリン氏の発言は、こうした市場環境を踏まえ、L2各プロジェクトに対して「スケーリング以外の明確な強みを示す必要がある」との認識を示したものです。
最低限の分散化要件「Stage 1」
ただし、ETHやERC-20といったイーサリアム基盤の資産を取り扱うL2については、最低でも「Stage 1」に相当するセキュリティ基準を満たすべきだと述べています。
ブテリン氏は2022年に提唱したロールアップの段階的分散化フレームワークで、Stage 1を「限定的な補助輪付き」と定義し、Stage 2を「完全分散化(補助輪なしで不正や検閲に対処できる段階)」と位置付けました。
現在主流のL2の多くは未だStage 1段階にとどまっているかその途中にあると見られますが、ブテリン氏は少なくともETH資産を扱う以上「独立したチェーンと位置付けるのではなく、最低限Stage 1に到達すべきだ」と述べています。
イーサリアム由来の資産を扱いながら、不正プルーフやセキュリティ委員会(マルチシグ)を備えていないチェーンは、レイヤー2とは位置付けられず、独立した別種のチェーンとみなすべきだとの見解を示しました。
新アプローチ「ネイティブロールアップ・プリコンパイル」
ZK証明を直接検証可能にする仕組み
L2への課題提起と並行して、イーサリアム基盤側でもL2を巡る技術的課題に対応する取り組みが進展しています。
ブテリン氏はここ数ヶ月「ネイティブロールアップ・プリコンパイル(Native Rollup Precompile)」と呼ばれる新たな提案への支持を強めています。
これは、イーサリアムのプロトコル内部に標準実装される予定のスマートコントラクト(プリコンパイル)で、ゼロ知識証明を用いたロールアップの証明(特にZK-EVMによる有効性証明)を直接イーサリアムL1上で検証できるようにする仕組みです。
現在のL2プロジェクトの多くは、独自の正当性をイーサリアムに証明する手段として、セキュリティ審議会(マルチシグの管理者グループ)や外部の合意検証システムに頼っています。
このネイティブプリコンパイルが導入されれば、イーサリアム自体がロールアップの正当性を検証する機能を持つことになり、第三者の多重署名によるブリッジ管理に依存しない「完全な信頼性(セキュリティ)担保」が可能になります。
この仕組みにより、L2側で生成されたブロックも、イーサリアム本体の信用とセキュリティを前提としたものとして扱える可能性が高まると指摘しています。
EVM以外との組み合わせと同期性
ブテリン氏は、このネイティブプリコンパイルの導入により「セキュリティ評議会に依存しない(多重署名不要の)ロールアップ検証が可能になり、強力かつ信頼不要な相互運用性が容易になる」と述べています。
たとえば、L2同士あるいはL2とL1間でほぼリアルタイムに状態共有を可能とする「同期的コンポーザビリティ」の向上が見込まれ、異なるチェーン上のアプリケーションをシームレスに組み合わせることが可能になると期待されています。
さらに同氏は、プリコンパイルの設計によっては「L2がEVMに加え独自機能を搭載する構成でも利用可能にすべきだ」と述べています。
プリコンパイルがEVM標準部分の検証処理を引き受けることで、各L2は独自機能に特化した証明器(プローバー)の開発に注力できる構成が望ましいとしています。
イーサリアム側でこのような包括的支援策が実装されれば、L2側もより安心して独自機能の開発に踏み込める環境が整うことになります。
ネイティブプリコンパイルの実装には高度な開発技術と慎重な設計プロセスが求められますが、ブテリン氏は「ZK-EVMの技術成熟によりEthereumがL1でZKロールアップを検証できる見通しが立った今、この仕組みをエコシステムに組み込む好機だ」と述べています。
仮にプリコンパイルに不具合が発見された場合でも、イーサリアム本体がハードフォークによって修正・保証する方針であるため、ユーザーから見ればL2利用時の安心感が飛躍的に高まります。
イーサリアム基盤とL2の垣根を低減しつつ、L2側の技術的自由度も確保するアプローチを通じて、エコシステム全体の発展を目指す考えを示しました。
分散化と多様化の中で求められる透明性
ブテリン氏は最後に、許可制のないオープンな環境においては「一部のL2が他よりセキュリティに劣る、あるいは中央集権的な設計を残すことは避けられない」との認識を示しました。
これは、誰もが自由に開発に参加できるエコシステムにおいては、設計方針や妥協点が開発者ごとに異なるためであり、一定の多様性は構造上不可避であるという点を踏まえたものです。
ただしブテリン氏は、こうした多様性そのものは問題ではなく、むしろ重要なのは、各ネットワークがユーザーに対して、提供する保証の内容や、内在するリスク(たとえば裏口やバックドアの有無など)を明確に開示することであると強調しました。
そのうえでブテリン氏は「可能な限り強固なイーサリアムの構築こそが今後の課題だ」と述べ、メッセージを締めくくりました。
進化か固定化か、SOLとETHの分岐点
スケーリング構想の転換点に立つイーサリアム
L1の進化が変えたL2の存在意義
ブテリン氏は、イーサリアムのスケーリング戦略における現実的な転換点を提示しました。
2026年2月現在、L1性能の向上により取引手数料は平均1ドル未満に低下し、ガスリミットの拡張も進行中です。この結果、「L2なしでは拡張不可」とされていた前提に変化が生じています。
L2各プロジェクトには、L1の補完にとどまらず、用途や設計方針に応じた差別化と明確な価値の提示が求められています。
2025年末時点でStage 1を達成したL2は約10件にとどまり、多くは依然として多重署名や中央集権的なシーケンサーに依存しています。また、主要L2トークンの価格はピーク時から90%以上下落しており、ユーザーの定着にも課題が残っています。
ネイティブ連携で変わるL1とL2の関係
エコシステム全体は、基盤レイヤーの性能向上とL2の機能高度化が交差する局面に入っています。
ブテリン氏が言及した「新しい道」を踏まえ、各L2がどのような技術的展開や保証を提示するのかが今後の焦点となります。
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Source:ヴィタリック・ブテリン氏X投稿
サムネイル:AIによる生成画像







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