「量子コンピュータ脅威論は誇張」ビットコイン・イーサリアムに迫るリスクの真実|A16z

「量子脅威は過大評価」a16zセイラー氏が警鐘

米ベンチャーキャピタル大手a16zの研究パートナーで、ジョージタウン大学准教授も務めるジャスティン・セイラー氏は2026年1月25日、ビットコイン(BTC)およびイーサリアム(ETH)を取り巻く量子コンピュータの脅威について「過大評価されている」との見解を示しました。

セイラー氏は自身のX(旧Twitter)記事投稿を通じて「量子計算による現実的なリスクは将来的なデジタル署名の偽造に限定される」としたうえで、現段階では緊急性のある脅威とは見なされないとしています。

同氏はさらに「量子耐性を持つ暗号技術への早急な移行は、かえってセキュリティ上のリスクを高める可能性がある」と警鐘を鳴らし、署名サイズの肥大化や実装上のバグといった問題を伴う点を指摘しました。

ビットコインとイーサリアムが直面する量子リスクの本質とは

セイラー氏が語る量子計算の到達点と限界

セイラー氏は「現在の暗号技術を破る能力を持つ量子コンピュータが2030年頃までに実現する可能性は極めて低い」との見解を示しました。

現時点の量子計算技術は暗号解読に必要な物理的・論理的要件を満たしておらず、企業による「量子優位性」達成の発表も、主に実用性のない特定タスクに限定された成果であると分析しています。

同氏はまた、量子脅威を考えるにあたり「暗号化」と「デジタル署名」の本質的な違いに着目する必要があると強調しました。

前者は機密性を保持することが目的であり、「収穫して解読する(HNDL)」型の攻撃に対して即時の対策が求められる一方、後者は署名の真偽のみを担保するものであり、既存の署名データに対して後から改ざんされるリスクは原理的に存在しないと説明しています。

こうした点から、ブロックチェーン上に公開されているBTCやETHの取引データが将来的に量子計算機で解読されるとする主張には、根拠が乏しいとの見方を示しています。

移行を阻むビットコイン特有の構造問題

セイラー氏は、ビットコインにおいては量子耐性署名方式への移行に時間を要する構造的な事情があることから「早期の準備が技術的脅威そのもの以上に重要だ」との認識を示しました。

新たな署名スキームへ移行するには、ユーザーが自らのBTCを耐量子対応の鍵へ手動で移動させなければならず、秘密鍵を紛失したまま放置されているコイン(推定数百万BTC)は、量子計算機の実現後に狙われる可能性があると警告しています。

特に、古い形式のアドレスに紐づく公開鍵が既にブロックチェーン上に明示されている場合、その脆弱性はより深刻なものとなるため、事前に移行戦略を策定することの重要性を指摘しています。

新暗号技術に潜む実装リスクと不確実性

一方で、現在開発が進められている量子耐性型のデジタル署名技術にも課題は少なくありません。

ハッシュベース署名のような保守的手法は信頼性が高い一方で署名サイズが数キロバイトに達し、格子暗号を用いた手法も既存方式と比べて署名サイズが数十倍に膨れ上がるなど、実用上の制約が課題とされています。

さらに、これらの新興技術は実装の複雑性ゆえに、サイドチャネル攻撃などによる秘密鍵の漏洩リスクも存在しており、一部の有力方式は、標準化過程において既に古典的手法で破られるという事例も報告されています。

モネロやジーキャッシュが直面する匿名性維持の限界

このような背景を踏まえ、セイラー氏はブロックチェーン分野における耐量子署名技術の導入を拙速に進めることには否定的な立場を示しています。

不完全な方式に早期に移行することで、新たな脆弱性が露呈した際に再移行を余儀なくされる可能性が高まり、結果としてセキュリティ全体の信頼性を損なうリスクがあるとしています。

その一方で、将来的な機密保持が必要とされる領域においては、ハイブリッド型の暗号技術やハッシュベース署名の段階的導入といった、現実的な対策を講じることが望ましいとの見解を示しました。

また、ビットコインなどの既存ネットワークにおける署名方式については「量子計算機の本格登場が近づくまで現行方式を維持しつつ、移行手順や古いアドレス形式への対応策を今の段階から協議すべき」と提言しています。

さらに、モネロ(XMR)やジーキャッシュ(ZEC)といったプライバシー指向のチェーンについては、匿名性確保の手法に暗号化を用いていることから、他のブロックチェーンよりも早期の対応が必要であると指摘しています。

セイラー氏が説く量子リスクへの冷静な視点

セイラー氏は最後に、量子コンピュータの脅威に対しては過不足のないバランス感覚が求められると結論付けています。

技術の成熟度と脅威の緊急性を冷静に見極めたうえで、段階的かつ戦略的に対策を講じることが、結果的にブロックチェーンエコシステム全体の堅牢性を高める道であるとしています。

量子コンピュータとブロックチェーンの将来

コインベース、量子計算対応で専門組織設立

量子計算技術の進展を背景に、仮想通貨(暗号資産)業界ではポスト量子時代に向けた動きが活発化しています。

米大手仮想通貨取引所Coinbase(コインベース)は1月21日、量子技術と暗号の専門家から構成される「量子安全性諮問委員会」の設置を公表しました。

同社は、将来的な量子計算がブロックチェーンネットワークにもたらす影響評価および対応指針の策定に乗り出すと明らかにしています。

世界経済フォーラムで問われたBTCの未来

また、スイスの大手金融機関UBSのセルジオ・エルモッティCEOは、同月開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)の討論の中で「ビットコインは量子計算による構造的リスクを克服しなければ、信頼資産としての地位を維持できない可能性がある」と述べています。

そのうえで同氏は、量子耐性への対応が今後の価値維持に直結するとの見方を示しました。

仮想通貨業界に求められる冷静な量子対応

こうした発言や業界動向は、量子脅威が現実的な課題として認識されつつあることを示しています。

もっとも、セイラー氏が強調したように、過度な懸念に基づく拙速な対応ではなく、技術的実情と現実的な脅威評価に基づく冷静な判断が重要となります。

今後、業界全体が量子計算の進展と歩調を合わせながら、堅実なセキュリティ基盤の再構築に向けた取り組みを加速させることが求められます。

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Source:ジャスティン・セイラー氏X記事
サムネイル:AIによる生成画像

参照元:ニュース – 仮想通貨ニュースメディア ビットタイムズ

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