
USDT最低評価「5」にテザーCEOが反論
テザー(Tether)社CEOのパオロ・アルドイーノ氏は2025年11月27日、米格付け大手S&Pグローバル・レーティングがUSDTの安定性評価を最低ランクの「5(弱い)」に引き下げたことに対し、その評価手法に異議を唱えました。
S&Pは、テザー社の準備資産に占める高リスク資産の比率が増加していることや情報開示が限定的であることを理由に、ステーブルコインUSDTの評価を従来の「4(制約付き)」から最低の「5(弱い)」に引き下げています。
これを受け、テザー社は「従来型の評価フレームワークではUSDTの規模や重要性を正しく評価できず、透明性や強靭性を示すデータも見落としている」と反論しています。
また、同社CEOのパオロ・アルドイーノ氏も自身のX(旧Twitter)で「S&Pなどの格付け機関が用いる従来の信用格付け手法は、システムが機能不全に陥った結果生まれたものだ」と痛烈に批判しました。
to S&P regarding your Tether rating:
We wear your loathing with pride.
The classical rating models built for legacy financial institutions, historically led private and institutional investors to invest their wealth into companies that despite being attributed investment grade…
— Paolo Ardoino
(@paoloardoino) November 26, 2025
(前略)S&Pの敵意は我々にとっての誇りと受け止めています。
従来の格付けモデルは、歴史的に民間や機関投資家に資産を投じさせてきました。しかし、投資適格とされた企業でさえ倒産し、世界中の規制当局がこうしたモデルや格付け機関の独立性・客観性を疑問視する事態となったのです。
(中略)しかしテザーは、金融業界で初めて、過剰資本を持ち、有毒な準備資産を一切持たない企業を築き上げました。それでいて極めて高い収益性を誇ります。
テザーは、伝統的金融システムの欠陥を鮮明に示す生き証人であり、そのため「裸の王様」を恐れる皇帝たちに恐れられているのです。
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テザーCEO、S&Pの評価手法に真っ向から反論
S&PがUSDT準備資産のリスク増大を指摘
S&Pグローバルは11月26日付の報告で、テザー社USDTの準備資産構成にリスク増大の兆候があると指摘しました。
特にビットコイン(BTC)や金(ゴールド)、融資、社債など価格変動や信用リスクの高い資産が準備金に占める割合が、前年の17%から直近では24%に拡大したと報告されています。
S&Pは、高リスク資産の比率増大によりビットコイン価格急落時などには準備金不足に陥る可能性があると警告しました。
また、テザー社が準備資産のカストディアン(保管管理機関)や取引先金融機関の信用力、資産の内訳詳細に関する情報開示を依然限定的にしか行っていない点も問題視しています。
アルドイーノ氏、収益性と裏付け比率の高さを主張
S&Pが準備資産のリスク増加を指摘したことを受け、アルドイーノ氏はXに「あなた方の敵意は我々にとって誇りだ」と投稿し、伝統的金融機関向けに構築された格付けモデルは過去に投資適格とされた企業の破綻を招いたと痛烈に批判しました。
さらにアルドイーノ氏は「テザー社が金融業界で初めて過剰資本を備え、有毒な資産を保有せず、極めて高い収益性を維持する企業を築き上げた」と強調し、従来型金融システムの在り方そのものを”壊れている”と非難しています。
実際テザー社による最新の準備金報告では、USDTの準備金には1,350億ドル(約21.1兆円)の米国財務省証券が含まれており、同社は現在、世界最大級の米国債保有者となっています。
さらに、準備金全体がUSDT流通額を68億ドル(約1兆円)上回っており、裏付け比率は103.9%に達することも報告されています。
また、同発表では、これまで銀行危機や仮想通貨(暗号資産)取引所の破綻など市場混乱時にも数十億ドル規模のUSDT償還に応じつつペッグ(連動)を維持してきた実績があると強調しました。
こうした準備資産の強固な裏付けを背景に、現在USDTの時価総額は1,840億ドル(約28.6兆円)を超え、第2位のUSDコイン(USDC)の時価総額約750億ドル(約11.7兆円)の2倍以上に相当します。
世界最大のマイニング企業を目指す
テザー社、金保有拡大で準備資産を強化
テザー社は準備資産の運用を強化しており、新たに金保有の拡大が確認されています。
英フィナンシャル・タイムズ(FT)の分析によれば、テザー社は2023年第3四半期に26トンの金(ゴールド)を購入し、9月末時点で保有量は約116トン、評価額にして約129億ドル(約2兆円)に達しました。
この金保有量は、テザー社が中央銀行であった場合に世界上位30位以内に相当し、ギリシャやカタール、オーストラリアの国庫保有高を上回る規模で、USDT準備資産の約7%を占めています。
同社は今後も利益の一部をビットコインや金など安全資産に投資し続ける方針を示しています。
こうした投資戦略は、伝統的な評価機関からリスクと見なされる一方、同社が独自の信念に基づき事業を拡大していることを示唆しています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=156.04 円)
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Source:S&P / パオロ・アルドイーノ氏X投稿
サムネイル:AIによる生成画像
(@paoloardoino) 






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