ユニスワップがプロトコル手数料を有効化、UNIトークンの焼却メカニズム導入

ユニスワップがプロトコル手数料でUNIをバーンへ

分散型取引所(DEX)大手のユニスワップ(Uniswap)が、プロトコル手数料を導入しUNIトークンを焼却する包括的な提案「ユニフィケーション(UNIfication)」を11月10日に発表した。この提案は創業者のヘイデン・アダムス(Hayden Adams)氏、ユニスワップラボ(Uniswap Labs)、ユニスワップ財団(Uniswap Foundation)が共同で行った。

ユニスワップはこれまで約4兆ドル(約616兆円)の取引高を処理してきたが、取引手数料の全額が流動性提供者(LP:Liquidity Provider)に分配されていた。今回の提案では長年議論されてきた「フィースイッチ(Fee Switch)」を正式に有効化し、プロトコルが手数料の一部を徴収してUNIの焼却に充てる仕組みへ移行する。これによりプロトコルの利用がUNIの供給削減を促進し、トークン保有者の利益と直結する構造が構築される。

手数料の導入は段階的に実施される計画だ。まずユニスワップv2のプールとイーサリアム(Ethereum)メインネット上のv3プールの80から95%を対象に開始し、その後レイヤー2ネットワーク(L2)や他のレイヤー1ブロックチェーン(L1)、v4、ユニスワップX(UniswapX)へと拡大される。v2では流動性提供者の手数料が0.3%から0.25%に、プロトコル手数料が0.05%に設定される。v3では流動性提供者手数料が0.01%と0.05%のプールでプロトコル手数料が流動性提供者手数料の4分の1に、0.3%と1%のプールでは6分の1に設定される。

提案には「プロトコルフィーディスカウントオークション(PFDA:Protocol Fee Discount Auction)」と呼ばれる新たな手数料メカニズムも含まれている。これは短時間プロトコル手数料を支払わずに取引できる権利をオークション形式で販売し、落札額をUNI焼却に充てる仕組みだ。通常はバリデーターやサーチャーに流れるMEV(最大抽出可能価値:Maximal Extractable Value)をプロトコルが内部化することで、流動性提供者のリターンを改善しながらUNI焼却の原資を増やせるという。初期分析では、1万ドルの取引あたり流動性提供者のリターンが0.06ドルから0.26ドル改善される可能性が示されている。

さらにユニスワップv4に導入される「アグリゲーターフック(Aggregator Hooks)」により、プロトコル自体がオンチェーン上の外部流動性を集約するアグリゲーター機能を持つようになる。これらの外部流動性源からの取引にもプログラマティックにUNI焼却の手数料が上乗せされ、誰でも統合可能なアグリゲーターとしてユニスワップv4が機能する。ユニスワップラボはこのアグリゲーターフックを自社のフロントエンドとAPIに統合し、ユーザーにより多くのオンチェーン流動性へのアクセスを提供する。

9カ月前にローンチされたユニチェーン(Unichain)のシーケンサー手数料も、レイヤー1のデータコストとオプティミズム(Optimism)への15%配分を除いた全額がUNI焼却メカニズムに送られる。ユニチェーンは現在、年間換算で約1,000億ドル(約15.4兆円)のDEX取引高と約750万ドル(約11.5億円」)のシーケンサー手数料を処理している。

提案にはトレジャリーから1億UNIを焼却する「遡及的焼却(Retroactive Burn)」も含まれている。これはトークンローンチ時からプロトコル手数料が有効だった場合に焼却されていたであろう量の推定値であり、過去に徴収できなかった手数料分を一度に焼却することでコミュニティの要望に応える。

また技術的な実装として、各手数料源からの収益はアダプター契約を通じてトークンジャー(TokenJar)と呼ばれる不変のオンチェーンコントラクトに蓄積される。手数料はファイヤーピット(Firepit)と呼ばれる別のスマート契約でUNIが焼却された場合にのみ引き出し可能だ。v2、v3、ユニチェーン向けのアダプターはすでに実装済みで、PFDA、v4、アグリゲーターフック、L2や他のL1のブリッジアダプターは開発中であり、今後のガバナンス提案を通じて導入される。

ユニスワップラボは今回の提案により、インターフェース、ウォレット、APIの手数料をゼロに設定し、プロトコルの成長と開発に注力する方針へ転換する。これまでユニスワップラボはこれらの製品から収益を得ていたが、手数料を撤廃することでより競争力を高め、高品質な取引量と統合を促進し、流動性提供者やエコシステム全体により良い結果をもたらすという。ユニスワップラボはプロトコルとの利益を完全に一致させるため、分散型非法人非営利団体(Decentralized Unincorporated Nonprofit Association・DUNA)であるDUNIの利益と整合する活動のみを追求する契約上のコミットメントを行う。

さらにユニスワップ財団の機能もユニスワップラボへ統合される。ヘイデン・アダムス氏とカリル・カプオッツォ(Callil Capuozzo)氏が既存の財団理事のデヴィン・ウォルシュ(Devin Walsh)氏、ハート・ランバー(Hart Lambur)氏、ケン・ング(Ken Ng)氏に加わり、理事会は5名体制となる。財団の従業員の大半はユニスワップラボへ移籍し、少数のチームのみがグラントとインセンティブに注力する。このチームは財団の残予算をミッションに沿って展開し、その後のグラントはユニスワップラボの成長予算から提供される。

2026年1月1日から年間2,000万UNIの成長予算を作成し、四半期ごとにベスティング契約を通じて配分する提案も含まれている。この成長予算はユニスワップラボとDUNIの間のサービスプロバイダー契約によって管理され、ユニスワップラボがトークン保有者の利益と対立する戦略を追求しないことを明示的にコミットする。財団はDUNIのミニステリアルエージェント(事務代理人)としてこのプロセスを調整する。

ユニソックス(Unisocks)の流動性ポジションに関する計画も含まれている。ユニソックスは2019年5月にユニスワップラボが最初のトークン化された靴下としてローンチした。2020年9月のUNIローンチ時に、ユニスワップラボは元のユニスワップv1のSOCKS/ETH流動性ポジションの所有権をユニスワップガバナンスへ移転した。提案ではこのポジションをメインネット上のユニスワップv1からユニチェーン上のユニスワップv4へ移行し、流動性提供ポジションをバーンアドレスへ移転して永久にロックする。これにより元の価格曲線が永久に固定され、ユニソックスのビジョンが実現される。

ヘイデン・アダムス氏は自身のXにて、この提案がユニスワップへの8年間の情熱と集中の結果であると語った。またUNIは2020年にローンチされたが、過去5年間ユニスワップラボはガバナンスに意味のある形で参加できず、コミュニティに価値を構築する方法も大きく制限されていたが、それが今日終わると述べた。この制限は主に敵対的な規制環境によるもので、数千時間と数千万ドルの法務費用を要したが、規制環境がシフトしたことで今回の提案が可能になったという。

なお提案の最終的な承認には、スナップショット投票に続くオンチェーン投票が必要だ。スナップショット投票が可決された場合、ベン・ジョーンズ(Ben Jones)氏とハート・ランバー氏で構成される独立委員会が財団によって任命され、クーリーLLP(Cooley LLP)を外部法律顧問として交渉を主導する。最終的に交渉された契約は完全なオンチェーン投票の一部としてガバナンス提案に含まれ、可決時に実行される。

発表後の24時間でUNIの価格は約30%上昇し、一時9ドル台をつけた(コインマーケットキャップ調べ)。ヘイデン・アダムス氏は、ユニスワッププロトコルがトークンが取引される主要な場所になれると信じており、この提案が今後10年間の成長の舞台を整えると語っている。 

参考:ユニスワップブログ
画像:PIXTA

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参照元:ニュース – あたらしい経済

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