仮想通貨に関する税制改正の現状と日本政府の姿勢|参院調査室が関連資料公開

暗号資産の税金に関する要点をまとめた資料公開

参議院常任委員会調査室・特別調査室は2024年12月3日に、暗号資産(仮想通貨)の税金に関する日本の現状と動向をまとめた資料を公開しました。

公開された資料では「暗号資産の概要と歴史、日本の法整備状況、現行税制の概要、税制改正要望の内容、日本政府の姿勢、金融庁の動き、今後のポイント」などがわかりやすく簡潔にまとめられています。

この資料は参議院議員向けに発行される調査情報誌という位置付けで、参議院の経済関係委員会・調査会委員への情報提供機能を強化する目的があると伝えられているため、今回の資料公開で暗号資産についての理解が深まり、税金関連の議論が加速する可能性があると期待されます。

なお、この資料は「経済のプリズム」という名称で、予算委員会調査室に所属する谷合 正成氏が執筆、編集・発行は参議院事務局 企画調整室(調査情報担当室)が担当、「本文中の意見にわたる部分は、執筆者個人の見解です」との注意書きもなされています。

暗号資産の現行税制や税制改正を求める声も記載

今回の資料では「暗号資産市場が急速に拡大してきていること」や「日本国内でも暗号資産に関する法整備・法改正が進められていること」を説明した上で、「暗号資産の現行税制の概要」と「税制の見直しを求める声」が紹介されています。

税制の見直しを求める声の項目では複数の意見が紹介されていて、政府は慎重な姿勢を示しているが金融庁の税制改正要望には動きもあるということが説明されています。

「現行税制の概要」や「税制の見直しを求める声」などについては、以下のような内容の説明がなされています。

暗号資産に関する現行税制の概要

  • 暗号資産取引で生じた利益は所得税の課税対象となり、原則として雑所得に区分されるため、暗号資産の売却などで得た利益は、総合課税として給与所得などの他の所得と合算した額に応じて超過累進税率の適用を受け、 15%~55%(住民税10%を含む)が課されることになる。
  • 暗号資産取引の利益は雑所得となるため、暗号資産同士の損益や雑所得内で損益を差し引きすることはできるが、配当所得や譲渡所得などに区分される他の金融資産に対しては損益通算ができないほか、株式投資などで認められる繰越控除も対象外となっている。
  • 暗号資産取引で課税対象となるケースとしては「暗号資産を売却した場合、暗号資産で商品を購入した場合、暗号資産同士の交換を行
    った場合、暗号資産の分裂(分岐)で暗号資産を取得した場合、マイニング・ステーキング・レンディングなどで暗号資産を取得した場合
    」が挙げられている。

税制改正を求める声の例(意見や指摘の一部紹介)

  • 譲渡所得の対象となる資産は「譲渡性のある財産権をすべて含む」と解釈されるべきであり、その中には暗号資産も含まれる
  • 政府は暗号資産について抜本的な性格を吟味することなく、資金決済法の取扱いをそのまま税制に当てはめたに過ぎない
  • 暗号資産は投資対象や資金調達手段にもなり得るため、支払手段の面のみを強調することは妥当でない
  • 課税の在り方を定める上で資金決済法の借用だけでは不十分であり、金融商品取引法も考慮すべきである
  • 暗号資産は最大55%の税率が課せられることになるが、今のまま暗号資産ETFが登場した場合はETFの税率が20%になると予想されるため、ETFの需要が高まり既存の暗号資産交換業者での取引が減少する懸念がある
  • 海外と日本の暗号資産税制を比較すると、主要国は日本よりも低い税率を採用しており、米国や英国は20%ほどの税率を適用、ドイツは1年以上暗号資産を保有した場合には原則非課税とする仕組みが採用されている
  • 人材や資金の海外流出を防ぎ、ブロックチェーン技術等による経済社会の高度化に向けた競争力を確保するためには、国内外の税制の差を縮める必要がある
  • 暗号資産取引にかかる税制に関しては「20%の申告分離課税の導入」を求める声が多く上がっている

日本政府の姿勢について

暗号資産の税制改正に対する日本政府の姿勢については「日本政府は暗号資産の税制改正について慎重な姿勢を示している」ということが説明されています。

具体的には、石破総理が先日の国会で申告分離課税の導入について答弁した内容が紹介されていて、「給与や事業による所得には最大55%の税率が適用される一方で、暗号資産取引による所得は20%の税率とすることについて国民の理解を得られるかどうか」や「株式のように家計が暗号資産を購入することを国として推奨することが妥当なのか」など様々な論点を踏まえて丁寧な検討をする必要があると語ったことが紹介されています。

このような政府の姿勢については、以下のような様々な問題点から「政府の慎重な対応にもうなずける面がある」とコメントされています。

  • 暗号資産には依然として投機的な動きが強いという問題がある
  • 暗号資産は価格変動が非常に激しく、資産としては安定性に欠ける
  • 世界中で何度も不正流出事案が発生しており、利用者保護の制度整備は道半ば

金融庁の動きについて

金融庁の動きについては、金融庁が公開した令和7年度の税制改正要望では初めて暗号資産取引への言及がなされるなど変化も見られていると説明されています。

この税制改正要望には具体的な改正内容は書かれていないものの「暗号資産取引に係る課税上の取扱いについては、暗号資産を国民の投資対象となるべき金融資産として取り扱うかなどの観点を踏まえ、検討を行っていく必要がある」と記載されています。

金融庁の仮想通貨関連の動きについてはここ最近で複数のニュースが報じられており、今年9月末には「金融庁は暗号資産の規制を根本的に見直すための点検・評価を今後数ヶ月間にわたって行う予定」との報道もなされています。

今後求められる議論について

今回公開された資料の最後では「米国では暗号資産への理解があるトランプ氏が大統領選挙で勝利したことから、今後はさらに暗号資産が普及するとの見方も強いが、暗号資産は詐欺にも利用されることが多く、価値の裏付けもないため、懐疑的な見方も多い」と説明されています。

今後のポイントとしては、投機的な動きが強いことや不正流出事件が多発していることから「国民の資産として推奨されるべきか否か更なる議論が求められる」とコメントされていて、「今後、暗号資産取引に係る所得税制について動きがあるのか、その動向を注視したい」とも記載されています。

今回公開された資料の内容は「こちらのページ」で確認することができます。

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執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用

参照元:ニュース – 仮想通貨ニュースメディア ビットタイムズ

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