トルネードキャッシュ創設者、マネーロンダリング等共謀の刑事起訴への棄却申し立て
訴因3件の棄却求める
暗号資産(仮想通貨)ミキサー「トルネードキャッシュ(Tornado Cash)」の共同創設者の1人であるローマン・ストーム(Roman Storm)氏の弁護団が、同氏がマネーロンダリング等を共謀したとする刑事起訴の棄却申し立てを3月29日行った。
同氏は昨年8月、米司法省(DOJ)よりマネーロンダリングの共謀、無認可送金業の共謀、制裁違反の共謀で起訴されている。今回の棄却申し立てはこの3つの訴因の取り下げを求めるものだ。
ODJの発表によれば、「トルネードキャッシュ」は10億ドル以上の犯罪収益の資金洗浄を行い、その中には北朝鮮に関連するハッカー集団「ラザルス(Lazarus)」による犯罪収益も含まれていたことから、トルネードキャッシュは米国の制裁に違反したとのことだった。なおストーム氏は同日、「ラザルス」をはじめとするグループが資金洗浄に使用する「トルネードキャッシュ」を開発したとして、連邦捜査局(FBI)と内国歳入庁犯罪捜査部(IRS)によりワシントンにて逮捕された。
なお同氏は昨年9月、すべての罪状で無罪を主張。逮捕後200万ドルの保釈金を支払い保釈されたが、ニューヨーク、ニュージャージー、ワシントン、カリフォルニアの一部地域以外への移動が制限されていることが報じられていた。
今回ニューヨーク州南部連邦地方裁判所に提出された書類では、ストーム氏がこれらグループと協力していたのではなく、ベンチャーキャピタルから多額の資金を調達し、オープンソースのトルネード・キャッシュ・プロトコルを極めて公に開発しただけであり、同プロトコルはすぐに完全に分散化されたため誰の管理下にもないと主張されている。弁護団は起訴状について、「致命的な欠陥があり、却下されるべきである」と述べている。
また同書類では、政府がこの行為により同氏を複数の共謀罪で有罪にすると結論付けたのは「不当」とし、「ストーム氏は開発者であり、米国に拠点を置く会社のメンバーとともに、合法的な暗号資産ユーザーに金融プライバシーを提供するソフトウェア・ソリューションを構築することだけが合意事項だった。これは犯罪ではない」と述べられている。
また弁護団は、「マネーロンダリング」には「金融機関」が関与する「金融取引」が必要だが、「トルネードキャッシュ」はいかなる金融取引も行っておらず、法律上金融機関としての資格もないと主張。さらに、プロトコルが「手数料を徴収することなく、無料でオープンソースのソフトウェアツールであった」ため、「金融機関」の定義に当てはまらないとした。
また、起訴状ではストーム氏が資金洗浄のために悪質業者と共謀契約を結んだこと、もしくはマネーロンダリングを行う具体的な意図を持っていたことを示す事実が示されていないと指摘した。事実、マネーロンダリング容疑の中心となる犯罪行為が発生する前に、トルネード・キャッシュ・プロトコルは開発され、流通したため、ストーム氏にそのような合意や意図がなかったことを起訴状は明らかにしていると弁護団は述べている。
さらに書類で弁護団は、起訴状が「トルネードキャッシュ」を「ミキシング・サービス」と評していることが誤解を招くと指摘した。
「トルネードキャッシュ」とは、サービス・プロバイダーや他の仲介者に頼る必要なく、ユーザーが資産の完全な所有権とコントロールを維持する、非保管型スマート・コントラクトのセットを指すと弁護団は説明。
「トルネードキャッシュ」の利用者は、資産の管理を誰かに委ねることはなく、自ら資産を投入し取り出すとし、「創設者」が「トルネードキャッシュ」のスマートコントラクトの「秘密鍵」を持つことはなかったとし、2020年5月の時点でスマートコントラクトは最終化され、これ以上の変更ができないように更新されたためストーム氏やその他開発者を含む誰もそれ以上変更または無効にできない状態になったと主張している。
トルネードキャッシュについて
「トルネードキャッシュ」は、複数ユーザーの暗号資産の取引をミキシングすることで、その取引履歴を匿名化できるサービスだ。
その特性をサイバー犯罪に関与した資産のロンダリングに利用されていることが問題視されていた。昨年3月には、「ラザルス」が「トルネードキャッシュ」を利用してサイバー攻撃で得た資産をミキシングし、当局の追跡を困難にしていた。
これらの事実から昨年8月に米財務省外国資産管理局(OFAC)は「財産および財産上の利益がブロックされている人物である北朝鮮政府に対して、実質的に支援を提供した」として「トルネードキャッシュ」を制裁対象に加えた。
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参考:裁判書類
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参照元:ニュース – あたらしい経済