陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

米中協議は何らかの形で合意する公算大!? 米ドル/円はすでに底打ちした可能性も ブログ

米中協議は何らかの形で合意する公算大!? 米ドル/円はすでに底打ちした可能性も

■米中貿易戦争はもはや「文明の対決」にまで発展する勢い 米中貿易戦における応酬、もはや「貿易戦」の枠組みをはみだし、大袈裟に言えば「文明の対決」にまで発展する勢いを見せている。

 ゆえに、マーケット全体はリスクオフの流れに包まれ、また円高の進行が確認されるのも当然の成り行きと思われる。

世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)

 しかし、冷静に考えてみれば、「文明の対決」だからこそ、歴史的な長期戦になるはずなので、短期間の決着は望めない。

 ゆえに、米中対立が激化したとの理由でマーケットがベア(下落)トレンドに入り、リスクオフの流れが続く、といった発想もおかしい。

 なぜなら、どんな材料であれ、マーケットにおける「賞味期限」があるので、目先の値動きが市場の内部構造に沿わないのであれば、いずれ本来のトレンドへ戻るはであるからだ。

■トランプ氏の決断自体は非難される点は少ない このような可能性を、まずファンダメンタルズ上の理由から説明したい。

 対中関税の引き上げを実施した米国に対して、中国も報復措置を発表したが、その実施が6月1日(土)からだという。このような発表から、決してキリのいい日付を選んだのではなく、対米合意、または妥協を探る期間を残したい、という中国側の意図が透けて見える。

 ギリギリまで合意の可能性を探る戦術は、別に中国のみではなく、世界各国が外交の場において多用してきたが、中国はその手口に精通しており、また上手いことは周知のとおりだ。

 もっとも、今回の米側の関税引き上げは、唐突に行われたものではなく、随分延期してきた経緯があっただけに、トランプ氏の決断自体、非難される点は少ないかと思う。

■「瀬戸際戦術」を仕掛ける中国だが、実情は… トランプ氏を激怒させたのは、中国がいったん合意した内容をほぼ白紙に戻したことだ。統治集団(即ち中国共産党)の利益を守るため、「瀬戸際戦術」をもってギリギリまで有利な条件を引き出す習近平氏の思惑が強いと思われるが、このまま決裂したらまずい、という実情もうかがえる。

 なにしろ、対米完全決裂ということは、WTO(世界貿易機関)の形骸化が進む目下において、中国が世界貿易体系から締め出されることを意味する。

 完全決裂なら、米国は圧倒的な力で遠慮なく中国をたたける(ファーウェイ製品禁止令は最新の好例)から、いくら習近平氏とはいえ、ここまで無知また傲慢に米国を敵に回す可能性は小さい。

 急速な景気後退があれば、国民や党内の不満を招き、自らの地位を揺るがしかねないから、ここでいったん妥協点を探り、鄧小平氏の教えである「蹈光养晦(とうこうようかい・能ある鷹は爪を隠す、あるいは力をためてこれからのリベンジに備える)」路線に戻るのがもっとも現実的であり、また、そうするしかないと思う。

 では、なぜ中国は表面上、ここまで強硬に…
トランプ砲がサプライズとなった理由とは? 米ドル/円の長期と短期の値動きを予想! ブログ

トランプ砲がサプライズとなった理由とは? 米ドル/円の長期と短期の値動きを予想!

■足元の円高はフラッシュ・クラッシュではなく、リスクオフ 今年(2019年)10連休のGWでも、年初のようなフラッシュ・クラッシュはない、といった見方を本コラムがしてきたとおり、連休中の米ドル/円の値幅はかなり限定的だった。

 が、昨日(5月9日)米ドル/円は109.47円まで下落、3月安値を割り込むほど大幅な円高が観察され、一見、同見方は間違いだったように思われた。

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 しかし、よく見てみると、連休中米ドル/円の安値は5月1日(水)の111.05円だった。円の大幅続伸は、連休明け以降の出来事なので、GW前の見方自体は問題なかったはずだ。

 換言すれば、「日本人が休んでいる間、投機筋に仕掛けられ、円は急騰しやすい」といった「ジンクス」をもって足元の円高を説明できない、ということだ。

 執筆中の現時点では、米対中制裁関税引き上げが発動され、5700品目に25%の関税が適用されることになる、と報道されている。

 連休明け後の円急騰は、トランプ米大統領が5月4日(土)東京時間未明に表明した同関税の実施がきっかけだったから、足元続く円高は、いわゆる相場の商い薄を狙ったフラッシュ・クラッシュの性質と大きく異なり、典型的なリスクオフの反応だと言える。

■今回はトランプ氏ではなく習近平氏の「ご乱心」だった 一方、トランプ米大統領の「ご乱心」は、氏の「作風」から事前に予測できたはずなので、円高も予想できたはずだといった指摘もある。

 しかし、事後的な話はともかく、今回トランプ氏の「君子豹変」を事前に予想するのはかなり難しかったと思われるから、円の急騰自体もマーケットのサプライズと受け止めるべきだと思う。

 なにしろ、今回はトランプ氏の「ご乱心」ではなく、習近平氏の「ご乱心」が原因であった。

 いったん合意した内容が、習氏の指示でほぼ白紙に戻させされ、トランプ氏の怒りを買ったことが、今回急遽決定された関税引き上げの原因だったと報道されており、習氏の思惑を事前に読むのは、決して容易ではなかった。

習近平氏の「ご乱心」を事前に予想するのは、市場にとって難しいことだった(C)Bloomberg/Getty Images

 実際、米中合意間近と散々報道され、また話し合いが順調に進んできた経緯もあって、市場関係者の大半(筆者も含め)が警戒を緩めていたはずだ。

 この意味では、トランプ氏のつぶやき(ツイッターにて関税引き上げを示唆)を見て驚いた関係者が多く、上海株の大暴落もあって、リスクオフの反応パターンとして円が急速に買われた、といった解釈の方が間違いないだろう。金融の世界において、100%の正解はないと思うが、今回の円高が投機筋による仕掛けではなかったことは明らかだ。

■長期スパンでは、円高トレンド継続は難しいだろう となると、米対中関税の引き上げが発動された以上、ここからの焦点はマーケットがどう動くかに集中するだろう。

 「ウワサの買い、事実の売り」なら、円買いがいったん中止されてもおかしくないが、対米報復の応酬として中国から何等かの政策や行動があれば、リスクオフの一段拡大もあり得るから、短期スパンにおいて、状況はなお流動的であろう。

 とはいえ、より長いスパンでみると、今回のサプライズによって、継続的な円高トレンドを推進するのは難しいと思う。短期スパンにおいて、材料次第で円の一段高もあり得るが、その大半がすでに相場に織り込まれる以上、上値余地が限定的である上、さらなる上値打診があれば、逆に頭が重くなっていくだろう。

 まずトレンドの見込みとしては、2019年年初来安値からすでに円安トレンドが再開された、という見方を維持する。目先3月安値の割り込みがあっても、途中の大型保ち合いの一環として見なすことができる。

 この見込みのテクニカル上の根拠については、3月1日(金)の本コラムにて開示している。目先の変動があっても変化はないとみなしているので、再度ご参照いただきたい。

【参考記事】

●一本調子のトレンド加速は想定しにくいが、円高のピークは過ぎた! その根拠とは?(2019年3月1日、陳満咲杜)

 次に、昨年(2018年)から米ドル/円の変動は…
投機筋の「仕掛け」は、GW前にすでに邪魔 されている?クロス円下落はあくまで「調整」 ブログ

投機筋の「仕掛け」は、GW前にすでに邪魔 されている?クロス円下落はあくまで「調整」

■米株高・米ドル高の同時進行はしばらく続く見通し 筆者が繰り返し指摘してきたメインシナリオは、米国株と米ドルのダブル高が「本筋」であった。

 2019年4月24日(水)、米国株主要3指数のうち、ナスダックスとS&P500は事実上史上最高値を更新(終値ベース)し、ドルインデックスも2017年5月以来の高値を更新、NYダウも高値更新が確実視されるなか、先のメインシナリオの可能性が一段と高まっている。

ナスダック 日足(出所:Bloomberg)

S&P500 日足(出所:Bloomberg)

ドルインデックス 週足(出所:Bloomberg)

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 もっとも、米株高と米ドル高の同時進行を疑問視する向きが多いようだが、このあたりの理屈はさておき、足元では間違いなく米株高と米ドル高の同時進行が見られ、しばらく続く見通しであることを強調しておきたい。

 前回(2019年4月19日)の本コラムで指摘したように、米株高を背景としてリスクオンの流れが強まっており、日本の10連休に突っ込んでくる投機筋の円買いがあっても、2019年年初のようなフラッシュ・クラッシュの再来はないだろうとみている。

【参考記事】

●10連休にフラッシュ・クラッシュはないとみる理由とは?トラウマとなった年初との違いは?(2019年4月19日、陳満咲杜)

 マクロ環境や市場センチメントの違いが一目瞭然なので、多少の円高があってもクラッシュまでにはならないだろうと思う。

■連休前から、クロス円に円高傾向が ところで、まだ連休に入っていない現時点で、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)における円高傾向がすでに見えてきた。4月16日(火)、17日(水)あたりの高値からユーロ/円、英ポンド/円や豪ドル/円はともに反落、週明け(4月22日)から足元まで一段と下落幅を拡大させており、執筆中の現時点でなお、下げ止まる気配が見られない。

ユーロ/円 日足 

 (リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)

英ポンド/円 日足 

 (リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)

豪ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 日足)

 しかし、クロス円における円高の進行は、厳密にいうと円高ではなく外貨安だ。なにしろ、米ドル/円は4月24日(水)に112.41円と、いったん2019年年初来の高値を再更新し、4月25日(金)は上海株の急落で反落しているものの、執筆中の時点ではなお、111円半ばを維持。円高に転じたとは言えない。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 米ドル/円を除く円高の進行なので、円高ではなく外貨安がもたらした「受動的」な円高、ということに尽きる。そう判断する背景には、米ドル全面高、また米ドル高のスピードが速いということがある。

 一般論として、米ドル高の受け皿としてユーロ安が…
10連休にフラッシュ・クラッシュはないとみる 理由とは?トラウマとなった年初との違いは? ブログ

10連休にフラッシュ・クラッシュはないとみる 理由とは?トラウマとなった年初との違いは?

■筆者のメインシナリオ、ドル高の継続を市場の値動きが証明 筆者が繰り返し指摘してきたメインシナリオ、すなわち米ドル高の継続は、巷の見方とは相違するかもしれない。しかし、市場の値動きが証明しているだけに、一段と可能性が高まっていると思う。

 FRB(米連邦準備制度理事会)のハト派スタンス転換および利上げ停止、そして、米金利の逆イールドカーブ云々で米景気後退を危惧する声も多かったが、少なくとも目先では杞憂であることが証左されている。

 本コラムでも指摘したように、仮に逆イールドカーブのサインがホンモノであったとしても、米景気後退は早くても来年(2020年)になる計算であり、本当のところは逆イールドカーブ自体が大げさに取り上げられていた疑いが濃厚なので、信憑性は低い。

【参考記事】

●逆イールドを深刻に捉えすぎる必要はない!? 景気後退は早くても来年、当面ドル高維持(2019年3月29日、陳満咲杜)

■景気の先行指標として有効な「株のパフォーマンス」 景気全体の判断は、たとえFRBであっても容易ではないから、個別の指標を取り上げた論議自体はほとんど意味を持たない。

 とはいえ、一般人にも、方法がないことはない。一般人にとってわかりにくい物差しがあっても意味がないから、最もわかりやすく、また、使える指標は「株価」だと思う。

 景気の先行指標として、株式のパフォーマンスが有効であることは、歴史が繰り返し証明してきた。一般論として、株式のパフォーマンスは、景気の強弱を現実より1年か1年半ぐらい早めに織り込んでいくという傾向が強いから、株価を見ることは、一般の投資家にとって、最も手っ取り早く、また適切な指標となるはずだ。

 米国株の三大指数(NYダウ、ナスダック、S&P500)は、2019年年初から、ほぼ一本調子の戻りを果たし、昨年(2018年)高値、すなわち史上最高値に迫る勢いを示している。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

ナスダック 日足(出所:Bloomberg)

S&P500 日足(出所:Bloomberg)

 米国株は昨年(2018年)10月高値から大きく反落していたが、そのブル(上昇)トレンドが終わっていないことも本コラムにて指摘してきたとおりで、これから高値更新を果たす可能性が高いとみる。

【参考記事】

●逆イールドを深刻に捉えすぎる必要はない!? 景気後退は早くても来年、当面ドル高維持(2019年3月29日、陳満咲杜)

■200日線を回復した日経平均の上昇余地は大きい また、昨年(2018年)、最も悪いパフォーマンスを記録した上海株も、今年(2019年)第1四半期の上昇をもって、昨年(2018年)ほぼ1年間の下げ幅を取り戻したほどだ。

上海総合指数 日足(出所:Bloomberg)

 この意味では、上海株云々で日経平均の低迷を説明してきたロジック自体も崩れており、目先、やっと200日移動平均線(200日線)を回復した日経平均の上昇余地は大きいと思う。

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 株のパフォーマンスが景気の先行指標として有効であれば…
米IPOラッシュでリスクオフになるヒマなし!? 目先はくよくよせず、円安トレンドに乗れ! ブログ

米IPOラッシュでリスクオフになるヒマなし!? 目先はくよくよせず、円安トレンドに乗れ!

■米IPOラッシュ、リスクオフムードになっているヒマがない!? 英国のEU離脱の「お騒がせ」は、永遠に続くように思われ、また、米中貿易協議もいつまで続くか読めなくなってきたが、市場は落ち着いてきた上、均衡を保とうとしているようにみえる。

 為替市場における均衡は、さまざまな市況が想定されるが、リスクオンのパターンなら最も確実視されるのが、「米ドル全体は高値圏を維持、円は売られる」という状況ではないかと思う。目下の状況はまさにこのとおりだ。

 米国株は堅調であるものの、そこにいろいろなリスク要素はあって、引き続き市場が撹乱される恐れは大きいものの、総じて米ドル全体(ドルインデックス)は高値圏で保ち合いを継続、円は売られる傾向にある。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 米国株堅調のわけは、米利上げいったん停止のほか、足元で進行しているIPO(新規公開株式)ラッシュを見逃せない。

 米配車サービス2位のLyftの上場に続き、米UberやAirbnbなどユニコーン企業の上場を控えており、米株式市場は現在活況に包まれている。

 こんな時に、ブレグジットやら米中対抗やらを危惧したり、リスクオフに傾いたりしている「ヒマ」がない、という言い方をしても大袈裟ではなかろう。

 言ってみれば、今の市場は強気スタンスを必要としているから、諸外部要素がもたらすリスクはいったん軽視されるはずだ。

 ウォール街の理屈は、巷の理屈と本質的に違う。因果関係におけるロジックには根本的な違いがあるだろう。ゆえに、巷の常識をもって相場は測れないと悟るべきだ。

■米ドル/円はロジックどおり大幅切り返し 繰り返し指摘してきたように、米ドル全体が高値圏で保ち合いを維持する場合、米ドル/円はクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の堅調とともに上昇しやすい。

 昨日(4月11日)の米ドル/円の大幅切り返しは、このロジックを証左した直近の好例だとみる。

 4月8日(月)から連続3日反落したものの、反落自体が途中のスピード調整と見なされ、仮に「深押し」があっても限度があると思われ、いずれブル(上昇)基調に復帰できると見込んでいた。

 そのロジックに関しては、4月10日(水)のレポートをもって詳説したので、以下の内容をご参照いただきたい。

米ドル/円 日足(4月10日作成、クリックで拡大)(出所:FXブロードネット)

 ドル/円は3月25日からV字型回復を果たし、一旦3月20日(1)高値111.69のブレイクを果たし、上昇波への復帰を示唆した。同日は弱気「リバーサル」のサインを点灯したから、その後の深押しをもたらしたわけ。ゆえに、同日高値の一旦更新自体をひとつのサインとみる。

 ゆえに、目先を含める反落、途中のスピード調整と見なし、自ずと限られるでしょう。昨日の大陰線、安値をもってGMMAチャートにおける長期組のサポートゾーンを一旦トライ、また3月安値を起点とした全上昇幅の38.2%FIBO押しの水準を試したから、これから続落を回避できれば、調整自体が早期完成される可能性は大きい。

 更なる押しがある場合、3月安値を起点とした全上昇幅に対する半分押しや同61.8%FIBO位置が目安として測れる。前者は110.76前後で4月1日(3)安値と整合性を示し、後者は3月29日安値と合致だが、前者のほうがより重視されるでしょう。同日の大幅続伸をもってGMMAにおける「トビウオ」のサインを点灯したから、より大きな役割を果たす見通し。

 もっとも、3月28日(2)のサインはもっとも重要であった。同日の「スパイクロー」や強気「リバーサル」のサインに鑑み、理論上同日安値110.02を割らない限り、ブル基調の崩れがないから、目先ハードルは高い。押し目のスタンスを維持しておきたい。

 現時点の米ドル/円は、下のチャートのとおり…
米株高・米ドル高が継続する公算大! 米ドル/円の次のターゲットは113.70円 ブログ

米株高・米ドル高が継続する公算大! 米ドル/円の次のターゲットは113.70円

■米株高・米ドル高市況が継続される公算大 最近、為替市場の変動率が再び小さくなってきたが、総じて米ドル高の基調を保っている。ドルインデックスも米ドル/円も堅調な値動きを見せ、米国株の堅調とともに、米株高・米ドル高といった市況が継続される公算が高い。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 米ドル高の根拠について、最近の本コラムで指摘したとおり、まず、米利上げ最終局面においては米ドル高になりやすいことが、次に米逆イールドが当面杞憂であったことが、理論的な話として挙げられる。

 米国株の堅調もあって、いわゆるリスクオフの円買いが当面発生しにくいことも、既述のとおりだと思う。

【参考記事】

●逆イールドを深刻に捉えすぎる必要はない!? 景気後退は早くても来年、当面ドル高維持(2019年3月29日、陳満咲杜)

●米利上げ最終局面で米ドル安になるより、米ドル高が鮮明になるのはなぜか?(2019年3月22日、陳満咲杜)

■110円以下にいったん落ちたが、短期間で回復した 米ドル/円に関して、3月22日(金)のコラムで、重要なことを記していたはずだ。それは

「今回のFOMC政策発表を受け、米ドル全体は調整してきたものの、下値余地は限定的だろう。また、米ドル/円について、110円の節目以下の終値がなければ、2019年の年初安値を起点とした上昇波がなお維持されるだろう。さらに、仮に110円を下回ったとしても、米ドル/円の調整が深い押しにならずに済む可能性は大きいだろう」

 という箇所だ。

【参考記事】

●米利上げ最終局面で米ドル安になるより、米ドル高が鮮明になるのはなぜか?(2019年3月22日、陳満咲杜)

 実際、3月22日(金)に大きく続落し、また、110円の節目以下で大引けとなったものの、3月25日(月)の安値は109.70円に留まり、翌日3月26日(火)の大陽線で調整波の底打ちを示唆した。

 110円の節目以下の終値があったものの、短期に終わったこと自体、米ドル/円のメイン変動を示したと思う。

米ドル/円 日足(クリックで拡大)(出所:FXブロードネット)

 プライスアクションの視点では、3月28日(矢印)の強気「リバーサル」、または「アウトサイド」のサインが重要であった。

 同日のチャート自体が、「スパイクロー」のサインを点灯しながら、一目均衡表の「雲」の支持を再確認したから、より強いサインとして効いたわけだ。

 したがって、その後、ほぼ一直線に上昇し、昨日(4月4日)、200日移動平均線(200日線)を再度上回ったことも大きい。

 これから3月高値のトライ、またブレイクが有力視され、2019年年初来安値を起点としてV字回復し、まず、昨年(2018年)12月13日(木)高値の113.70円の打診をもたらすだろう。

 米ドル/円の堅調、また、上値余地の予測について…
逆イールドを深刻に捉えすぎる必要はない!? 景気後退は早くても来年、当面ドル高維持 ブログ

逆イールドを深刻に捉えすぎる必要はない!? 景気後退は早くても来年、当面ドル高維持

■「逆イールド」発生! 週末の日でも迎えたような雰囲気!? 最近、市場関係者や個人投資家の多くは「逆イールド」という単語を口にしたり、深刻な顔をしたりする。終末の日でも迎えたような重い口調で語る専門家もいるが、少なくとも目先では大袈裟だと思う。

 まず、2018年8月にも「逆イールド」云々と騒がれた。その時は米10年物国債利回りと2年物国債利回りの逆転だったが、今回は10年物国債利回りと3カ月物国債利回りの逆転で、市場関係者の多くはショックを受けた模様だ。なにしろ、一般論として逆イールドはリッセション、すなわち景気後退のシグナルとみられるからだ。

米10年物国債利回り(赤)と米3カ月物国債利回り(青) 日足 (出所:Bloomberg)

 難しい理論や話を避けたいので、簡単に言うと、国債の利回りは、満期までの期間が短いほどリターン(利回り)も低いはずだ。しかし、一時的にせよ、長期物の利回りが短期物の利回りを下回れば、これが逆イールドという現象になる。

 もっとも、逆イールドという現象自体、経済理論では説明できないものなので、経済学者の頭を悩ませてきたと言える。

■「逆イールド」が起きた理由とは? 経済理論では説明できない、または説明しきれないのであれば、これが発生する背景には市場関係者の心理的な要素が大きいのではないかと思われる。言ってみれば、諸要素により投資家たちの判断が感情的になり、その結果として逆イールドが作り出された、といった解釈が一番適切かもしれない。

 つまるところ、マーケットを左右するのは投資家の判断や思惑だ。その上、いわゆる市場センチメント、すなわち心理面の影響が大きい。経済理論上において「不条理」な現象を作り出すのも、結局、市場関係者の総意としての「相場のこころ」または、その「見えざる手」、ということである。

 したがって、相場が発した警告に耳を傾けるべきだが、神経質になったり、大袈裟に受け止める必要はない。なにしろ、相場の心理やこころは、人間と同じく行きすぎる可能性も大きいから、落ち着いてから、もう一度現実に照らして冷静に検証する、といったプロセスを踏んでいくのが大事だと思う。

 実際、昨年(2018年)8月に発生した逆イールドを大袈裟に扱っていたら、その後、10月初頭まで続く株高の局面を見逃し、また、間違った判断するリスクが大きかっただろう。

 米国株の状況で言えば、昨年(2018年)年末までの急落、また、2019年年初からのV字型回復があったからこそ、目下の逆イールドはより慎重にみるべきではないかと思う。

■逆イールドが認められてから景気後退までに1年のタイムラグ そもそも、市場関係者が言う逆イールドと、経済学者が言う逆イールドは違うかもしれない。

 多くの経済学者は、3か月と10年といった特定の年限だけを取り上げて比較したり、論議したりするのではなく、イールドカーブ(利回り曲線)全体でみるべきだと主張する。

 ここでも難しい話を避け、結論から申し上げるが、要するに、期間の異なる国債の利回りをつないだイールドカーブを全体的に見て、逆イールドの現象が認められない場合、特定の年限だけを取り上げ、景気後退の予兆と判断すること自体が大きな間違いである可能性は高い。

 また、特定の年限だけ取り上げる場合でも、逆イールド発生の期間や度合いによってそのシグナルの信憑性が違ってくるようだ。

 その上、より重要なのは、たとえ逆イールドが認められる場合でも、本格的な景気後退まではそこから約1年のずれがあり、仮に今回のシグナルが正しくても、米景気後退は早くても2020年になってからだと想定される、ということだ。

 実際、米利上げサイクルのトップアウトがあれば、その1年後に景気後退が発生するといった「規律」が米経済史において観察されており、別に驚くものではない。

 米国株の過去のパフォーマンスを見ると、「ホンモノ」の逆イールドのサインが発生してからリセッションまでの約1年において、実はすばらしかったという前例も多い。少なくとも目先、米国株に対し弱気スタンスに転換する必要はなく、むしろ、強気スタンスを強化する時期ではないかと思う。

 米ドルのパフォーマンスは、そもそも逆イールド…
米利上げ最終局面で米ドル安になるより、 米ドル高が鮮明になるのはなぜか? ブログ

米利上げ最終局面で米ドル安になるより、 米ドル高が鮮明になるのはなぜか?

■超ハト派なFOMCで米ドル全体は一段と反落 日本時間3月21日(木)未明、3月FOMC(米連邦公開市場委員会)を通過し、米ドル全体は一段と調整(反落)してきた。市場の予想を上回るハト派的な決定がなされたからだ。

ドルインデックス 4時間足(出所:Bloomberg)

 FOMCメンバーの政策金利見通しの中央値として、「2019年年内政策金利引き上げなし」と示されたから、前回(2018年12月)示された2回分の引き上げから、一気に下方修正された上、2020年の政策金利引き上げは1回と、2015年以来の政策金利引き上げの最終局面が示された。

 一方、月間500億ドルペースで進めているFRB(米連邦準備制度理事会)の保有資産縮小策は、2019年9月末に停止することも決まった。

 FOMC後、米ドルの反落が一段と進んだのは、市場コンセンサスより一段とハト派寄りとなったFRBの決定が理由だと思われる。

 大きなサプライズはないものの、市場関係者の多くが2019年年内1回の利上げ、またバランスシートの縮小は年末時点で停止と考えていたところへ、FRBの一段とハト派シフトした政策が発表され、やや戸惑った模様だ。

■市場はすでにハト派姿勢を警戒、影響は今のところ限定的 とはいえ、その戸惑いがもたらした影響は、現時点では限定的だと思う。なにしろ、マーケットはFRBのハト派姿勢をすでに警戒していた。昨年(2018年)年末以降、トランプ氏の攻撃に耐えられなかったか、それとも株安の影響で臆病になったかは定かではないが、パウエル議長の政策運営は事実上、驚くほどハト派方向にシフトしてきていたから、市場関係者の大半は腹をくくっていた。

 要するに、FRBの「豹変」がすでになされていた以上、市場関係者にとって大きなサプライズにならないはずだ。実際、ドルインデックスは昨日(3月21日)反騰し、一時割り込んでいた200日移動平均線(200日線)をまた回復している。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

■米利上げ最終局面にあることは覚悟すべきだが… とはいえ、昨年(2018年)年末のFOMC以降、経済情勢に特段大きな変化があったわけでもなく、また、米国株がだいぶ戻ってきたところに、FRB政策の一段のハト派シフト自体が大きなメッセージとなった可能性は大きい。

 言ってみれば、今回の一段踏み込んだ政策は、経済・金融情勢の変化を受けた一時的なものではなく、より構造的なものだと考えられる。

 そうなると、米利上げ最終局面にあることは覚悟すべきであろう。歴史に照らして考えると、利上げ最終局面における各セクターのパフォーマンスに何かのヒントが得られるなら、今だからこそ参考にすべきではないか。

 以下は、あくまで前例であり、また、大まかな傾向であることをご注意いただきたいが、利上げ最終局面における各セクターのパフォーマンスの、大まかな傾向の比較である。

1.商品>債券>株式

2.先進国>新興国

3.市場変動率拡大

4.原油>貴金属(金を含め)

5.米ドル全体は上昇するが、段階ごとに相違が大きい

 ここで大事なのは、過去の事例をまとめてみると、巷の常識に反して、利上げ最終局面における米国株や米ドル全体のパフォーマンスはおおむね良好だ、ということである。

■米ドルの高安は米国以外の主要経済圏との比較で決まる 米長期金利の低下に伴い、米国株は往々にして上昇傾向を強めていくというのは理解しやすいと思うが、米ドルの高安が米国株のパフォーマンスよりもEU(欧州連合)など米国以外の主要経済圏との比較で決定されることは、広く認識されたロジックとは言えないかもしれない。

 要するに、米利上げの最終局面は、往々にして世界景気後退の懸念が出やすい時期に差し掛かり、米国に比べ、諸外国や地域の状況がより悪化していた、といった前例が多かった。

 つまるところ、消去法による米ドル選好はむしろ、米利上げ最終局面の後半において一段と鮮明になってくるから、米利上げ停止=米ドル安といったロジックは短絡的すぎると言える。

 もっとも、主要中銀におけるバランスシート政策は…
米ドル/円はそろそろ頭打ち…?と思って 売ったら踏み上げ相場の土台にされるかも!? ブログ

米ドル/円はそろそろ頭打ち…?と思って 売ったら踏み上げ相場の土台にされるかも!?

■ドルインデックスに新たなサイン点灯! 為替市場は一進一退しながら、また新たなサインを点灯している模様だ。米ドル高基調は維持されているものの、その勢いが低下していく可能性が示唆されたとみる。

 ドルインデックスの日足に照らしてみるとわかるように、3月7日(木)のECB(欧州中央銀行)会合後に大幅続伸し、昨年(2018年)高値をブレイクする勢いを示したが、先週末(3月8日)から一転して続落、3月13日(水)には7日(木)安値を割り込み、7日(木)の大陽線を「帳消し」した形となった。このサインはやはり、無視できないかと思う。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 なにしろ、前回のコラムでも強調したように、3月7日(木)にECBが打ち出したハト派政策は、多くの市場関係者にとってサプライズであった。

【参考記事】

●ドル/円は下落調整があれば、2019年内に120円の大台にトライする可能性が高まる!?(2019年3月8日、陳満咲杜)

 サプライズだったからこそ、ユーロ/米ドルもいったん昨年(2018年)安値を割り込んだわけだが、本来ならこのままベア(下落)トレンドを継続し、さらに下値余地を広げることになるかと思われた。しかし、先週末(3月8日)からほぼ一貫して切り返し、1.13ドルの節目回復もあって、目下、下落モメンタムをだいぶ緩和されたようにみえる。

ユーロ/米ドル 日足 

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足) 

■英ポンドの強さが米ドルの軟調を浮き彫りに そのほかの主要外貨では、延々とEU(欧州連合)離脱問題に悩まされる英ポンド/米ドルが13日(水)に大幅続伸し、一時1.3385ドルと、昨年(2018年)6月中旬以来の高値を更新した。

英ポンド/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 日足) 

 英議会の2度目の離脱案否決で英ポンドが買われたのは、いわゆる「合意なき離脱」はもうないという思惑が支配的になってきたからだ。

 実際の状況はなお流動的だが、目先の英ポンド切り返し継続、また強気変動の維持は、米ドルの軟調を浮き彫りにする。

 利下げ観測がある豪ドルさえ、安値圏に留まってはいるものの、3月8日(金)から小幅ながら反発しており、「底割れ」を回避している模様。

豪ドル/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 日足) 

 要するに、目下、米ドル全面高の局面にはほど遠い。

■ドルインデックスはユーロ急落に乗れなかったから失速? ドルインデックスで言えば、3月7日(木)のECB会合でユーロの急落に乗れず、昨年(2018年)高値を更新できなかったところが大きく、モメンタムの低下を招いたと思われる。

 米ドル全体の失速を、いろいろ理由付けて解釈してもよいが、重要なのは原因ではなく、これからの流れだ。米ドル全体の流れやそのモメンタムを把握できれば、これからの流れもある程度推測できるから、こちらに専念したい。

 本コラムが繰り返し指摘してきたように、米ドル全面高となったとき、その上昇スピードが速く、モメンタムが強い場合は、往々にしてクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)における外貨安・円高の傾向が強くなる。その時は米ドル/円も頭打ちとなりやすく、また、反落しやすい傾向にある。

 反面、米ドルに対する主要外貨のパフォーマンスがバラバラで、また、全体のモメンタムが低下する時は、クロス円における外貨高・円安の傾向が強く、逆に米ドル/円は支えられやすく、また上昇しやすい環境にあるケースが多い。

 このような視点を大事して、目下の米ドル/円の状況を再考しておきたい。米ドル全体の上昇については前述のように明らかなので、米ドル/円の調整(反落)はまた後ずれになる公算が大きい。

 このようなロジックは、当然のようにクロス円との整合性で考えないといけない。英ポンド/円の2019年年初来高値更新、また、ユーロ/円の124円節目割れ回避、そして、豪ドル/円の2月安値割れ回避は、共に、目先なお円売り継続の可能性を示唆している。

英ポンド/円 日足 

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ユーロ/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)  

豪ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 日足)  

 ファンダメンタルズ上の理由として、英EU離脱の…
ドル/円は下落調整があれば、2019年内に 120円の大台にトライする可能性が高まる!? ブログ

ドル/円は下落調整があれば、2019年内に 120円の大台にトライする可能性が高まる!?

■ECBのハト派スタンスはサプライズだったのか? ドルインデックスは昨日(3月7日)、大幅に続伸した。執筆中の現時点では昨年(2018年)高値をブレイクする寸前まで迫っており、高値更新は当然視される。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 というのは、米ドルの対極として位置づけられるユーロが、昨日(3月7日)、一気に昨年(2018年)安値を下回り、ユーロ安・米ドル高の余地が一段と大幅に拡大しており、米ドル全体の強気変動がこれから強まっていくのも、当然の成り行きと思われるからだ。

ユーロ/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)

 ユーロの大幅下落は、昨日(3月7日)のECB(欧州中央銀行)理事会がきっかけであったが、ECBのハト派スタンスが、多くの市場関係者にとってサプライズと受け止められたようだ。

 しかし、筆者からみれば、このようにサプライズとなること自体が意外である。換言すれば、ユーロの続落は、市場の内部構造に沿った値動きで、本来サプライズではなかったはずである。

 米ドル高を支える内部構造については、2月15日(金)や2月22日(金)の本コラムで説明していた。

【参考記事】

●米ドル高は新たなステージに入りそうだが、ドルインデックスの強気で米ドル/円頭打ち!?(2019年2月15日、陳満咲杜)

●米ドル高構造再確認! 米経済指標が悪化しても、なぜ米ドルは大きく売られなかった?(2019年2月22日、陳満咲杜)

 繰り返し指摘してきたように、ドルインデックスの昨年(2018年)高値更新は、もはや時間の問題なので、米利上げ見通しはどうであれ、米ドル高の構造が維持される限り、米ドル高トレンドは続くはずである。

 昨日(3月7日)のユーロの大幅下落は、スピードはともかく、方向性としては完全に市場の内部構造に沿った値動きなので、サプライズというより、むしろ当然の成り行きで、出遅れた値動きと思えたほどである。

 なにしろ、米ドル全面高のトレンド自体、2月中旬~同月末までスピード調整を経ており、ユーロ/米ドルも2月において変動幅が限定的だったので、下落自体が「煮詰まった」あとの出来事であり、米ドル高派にとっては「やっと来た」感じが強い。

■トランプ大統領の米ドル高牽制が効かなかったところにヒント 一方、米ドル高の展開が紆余曲折であったものの、米ドル高トレンドの維持について疑いの余地はあまりなかった。テクニカル的な要素以外に、最近の出来事がファンダメンタルズ上の検証材料になったところも大きかった。

 2月22日(金)の本コラムにて指摘した「米経済指標が悪くても米ドルが売られなかった」こと以外に、先週末(3月2日)のトランプ米大統領の幾度目かとなる米ドル高牽制が、まったくその威力を発揮できなかったことは、重要なヒントであった。

【参考記事】

●米ドル高構造再確認! 米経済指標が悪化しても、なぜ米ドルは大きく売られなかった?(2019年2月22日、陳満咲杜)

●米ドル/円は強い! 調整しても大崩れ回避!?ECB理事会でTLTROの導入はあるのか?(2019年3月5日、バカラ村)

 言い換えれば、「トランプ砲」の空回りで、米ドル高の構造が再確認されたというほかあるまい。

 あえてロジックをもって解釈するなら、「トランプ砲」の失効は、

 1.消去法による米ドル選好

 2.米中協議成立間近の思惑

 3.米利上げ余地、なおあり

 という3つの視点をもって説明できるだろう。

 そのうち、最も重要なのは消去法による米ドル選びではないと思うが、基本的にはそれ自体が後解釈であることを強調しておきたい。

 後解釈とはいえ、ロジック自体は適切で正しい…