陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

米雇用統計の結果にかかわらず株高になる!? 米ドル/円は保ち合い継続か ブログ

米雇用統計の結果にかかわらず株高になる!? 米ドル/円は保ち合い継続か

■米ISM製造業景況感指数が悪化、10年ぶりの低水準に 米国のISM製造業景況感指数とISM非製造業景況感指数は共に悪化、製造業の方は10年ぶりの低さを示し、米国株の反落や米ドル全体の反落をもたらした。

【FX初心者のための基礎知識入門】

●発表がめちゃくちゃ早い! 製造業の景気動向を見極める「ISM製造業景気指数」

米ISM製造業景況感指数、長期の推移(出所:Bloomberg)

NYダウ 日足(出所:TradingView)

ドルインデックス 日足 

(出所:TradingView) 

 今晩(10月4日)の米雇用統計の発表でまた一波乱となる公算だが、総じて米ドルの頭が重く、また反落しやすいタイミングにあるかと思う。

【FX初心者のための基礎知識入門】

●知らない人はいないキングオブ経済指標! 米雇用統計は月に一度のお祭りイベント!?

■米雇用統計結果の良し悪しを問わず、米国株は戻す? 一方、昨日(10月3日)の米国株三大指数はそろって反発、ISM非製造業景況感指数の悪化を受けた下落幅を取り戻した。昨日(10月3日)の値動きに照らして考えると、今晩(10月4日)の米雇用統計の中身の良し悪しを問わず、米国株は総じて戻りやすい市況になるかと推測できる。

 なにしろ、目先のマーケットの関心は、米連続利下げの可能性であり、また10月も利下げが実施されるのではないかといった観測が浮上したことが、米国株の買戻しにつながったわけだ。

 したがって、場合によっては、今回の米雇用統計が悪い方が米国株の支えになる、といった可能性さえあり、あまり先入観は持たない方がよさそうだ。

 もっとも、米雇用統計の事前予測などは元々まったく信用できず、また、相場の反応パターンも定かではないから、今になって注意が必要とわざわざ言うことではないかもしれない。

■10月に入ってドルインデックス、米ドル/円、ともに下落 では、肝心の為替市場はどうなるだろうか。

 昨日(10月3日)、米国株の切り返しはあったものの、米ドル全体は続落、米ドル安の市況が鮮明になりつつある。いつも米ドル全体(ドルインデックス)と米ドル/円は分けて見ているが、10月に入ってから両者の相関性は高く、文字どおりの米ドル全面安になっている。

ドルインデックス 4時間足(出所:TradingView) 

米ドル/円 4時間足(出所:TradingView) 

 前回のコラムでも強調したように、経済指標や景況感はどうであれ、基本的には目先リスクオフの時期ではない。不確実性の高い英EU離脱問題が続くなかでも、英ポンドが底割れしないことが確認されていることもあり、リスクオフを心配しすぎるのは杞憂に終わるだろう。

【参考記事】

●今はリスクオフではない! 米ドル/円が8月高値109.33円を回復する前提条件とは?(2019年9月27日、陳満咲杜)

 一般論として、典型的なリスクオフの局面は米ドル高・円高の同時進行(要するに米ドル/円のみ安く、主要外貨に対しては米ドル高となる局面)が見られがちだから、ドルインデックスの頭打ちがあれば、リスクオフに進む状況ではないことが確認できるはずだ。

■テクニカルの視点でも米ドル全体は頭打ちになりやすい形 もっとも、ドルインデックスの値動きが緩やかに進む場合は、リスクオン・オフとの相関性はあまり高くないようだ。米ドル全体が急上昇しなければ、基本的にはリスクオフを示すサインとは見られないもの。2018年夏場以降のドルインデックスの値動きは、その好例だと思われる。

 その間、諸材料の噴出でドルインデックスは上下動を繰り返し、一見トレンドレスに見えるが、実は緩やかな上昇を続けてきた。

 ゆえに、本コラムで繰り返し指摘してきたように、フォーメーション的には「上昇ウェッジ」の形を示し、この「上昇ウェッジ」がすでに最終段階にあるから、米ドル全体は頭打ちになりやすいと推測される。

ドルインデックス 週足(出所:TradingView) 

 だから、ここからのユーロの下値追いは、慎重にすべきだという見方も示してきた。テクニカル上の視点は、往々にしてその後、材料(いわゆるファンダメンタルズ)によって証左されるが、今回も然りだと思う。

 ユーロ圏の材料は相変わらず芳しくないが…
今はリスクオフではない! 米ドル/円が 8月高値109.33円を回復する前提条件とは? ブログ

今はリスクオフではない! 米ドル/円が 8月高値109.33円を回復する前提条件とは?

■米ドル/円とドルインデックスの連動性からわかることは? 米ドル全面高の市況が続いている。ドルインデックスは再度99の節目に迫り、米ドル/円は107円の大台を守り、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の多くも保ち合い状態となっている。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)

 米ドル/円とドルインデックスの連動性は、ユーロ、英ポンドなど外貨に比べ、実は高くない。実際、連動性の高低で、おおむねリスクオン・オフの度合いを測ることもでき、両者の連動性が高い時期においては、リスクオンとまでは言い切れなくても、リスクオフの時期ではないと言える。今はまさにそのとおりだと思う。

ドルインデックスVS米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 典型的なリスクオフの局面では、ドルインデックスと米ドル/円は完全に背離する。すなわち、ドルインデックスが急伸する一方、米ドル/円が急落する局面だ。もう10年前のことだが、あのリーマンショック後の市況がその好例で、なお記憶に新しい。

ドルインデックスVS米ドル/円 月足(出所:Bloomberg)

 となると、市場センチメントはまだ完全に回復していないが、足元はリスクオフの局面でないことは確かだ。米ドル/円とドルインデックスの連動性が高い時期においては、やはり積極的に「リスクを取る」判断や行動が望ましい。

【ドルインデックスに関する参考記事】

●米ドル全体に賭けろ! FX界の日経平均=ドルインデックスを取引する方法があった!

 「打たれ弱い」日経平均さえ、一時2万2000円の大台を回復、これからも高値トライを継続するだろう。

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 高値圏での保ち合いが続く米国株も、頭打ちになったのではなく、さらなる上昇の土台を固めている途中、という認識の方が正しいかと思う。

NYダウ 日足 

(出所:Bloomberg)

■米ドル/円の107円トライは押し目ポイントとして重視すべき トランプ米大統領弾劾云々でリスクオフを主張する声も多いが、今のところ、いわゆる安全資産の円や金(ゴールド)などのパフォーマンスではそれが確認されていない。ゆえに、米ドル/円の判断としては、引き続き押し目買いでいきたい。

 米ドル/円は9月24日(火)に一時107円の節目にトライしたが、これは押し目ポイントとして重視すべきだ。この見方、筆者の9月25日(水)のレポートをもって、根拠を開示したい。

米ドル/円 日足(9月27日に再作成、クリックで拡大)(出所:FXブロードネット)

 デイリーの指摘の通り、ドル/円は107関門前後にて押し目を果たしているかと思われる。根拠は以下の通り:

 まず、GMMAも一目均衡表もブル基調への転換を果たし、事実上4月以来の出来事である次に、6月、7月の安値ゾーンや8月の元抵抗ゾーンは合致、106後半~107前半に集中しただけに、目先再度支持として役割を果たす公算。

 更に、遅行線とGMMAにおける長期線組の関係、ここからサポートを確認できれば、GMMAの「鰯喰い」のサインや一目均衡における「雲」の支持形成につながる見通し。最後に、RSIなど主要オシレーター系指標らの堅調もあって、ここからの下値余地が限定されることも推測される。

 もっとも、昨日の陰線は弱気サインと見なされ、ここから下値余地限定、かつ昨日高値107.79のブレイクがあれば、押し目の完成を示唆する最初のサインとなる。スイングトレードなら、目先押し目のところではないかとみる。

 トランプ米大統領弾劾の可能性が伝えられて以降…
正しいのは相場! 市場心理に惑わされず、 勇気をもって行動した少数派が勝つ! ブログ

正しいのは相場! 市場心理に惑わされず、 勇気をもって行動した少数派が勝つ!

■為替が理屈どおりに動くなら、相場自体が成り立たない! 相場は理外の理、時には経済学の教科書の教えとまったく反対の値動きをみせる。

 最近の好例は、前回のコラムで述べた、ECB(欧州中央銀行)が包括的緩和策を打ち出したにもかかわらず、ユーロが買われた件だ。

【参考記事】

●日銀のマイナス金利導入時と同じ動き! とにかくユーロを買っておけ!!(2019年9月13日、陳満咲杜)

ユーロ/米ドル 1時間足(出所:TradingView)

 そして立て続けに、FRB(米連邦準備制度理事会)の連続利下げや日銀の次回緩和示唆で、米ドルや円は売られたのではなく、少なくとも短期の反応パターンとして米ドルと円が買われていたところが興味深い現象だ。

米ドル/円 1時間足(出所:TradingView)

 もっとも、経済学の教科書どおりに相場が動くものであれば、エコノミストや経済学の教授たち全員が大金持ちになっているはずだ。そうでなければ、やはり相場の世界は別物で、理屈で動くものではないことを悟るべきだ。

 今さら強調することもないが、理屈どおりに動くなら、市場参加者全員がお金持ちとなり、相場全体が成り立たなくなる。ゼロサムゲームの特徴が強い外国為替市場において、これだけは100%自信をもって言い切れるかと思う。

■投資家にとって大事なのは「なぜ」より「どう」 さて、相場の値動きと経済学の原理がかけ離れた時、エコノミストとトレーダーの関心事は大きく違ってくるだろう。エコノミストたちは「なぜ」に興味あり、また、それを解明することが仕事となる。

 一方、投資家にとって「なぜ」はまったく無用とは言い切れないが、大事なのは「なぜ」ではなく、「どう」であろう。

 要するに、「なぜ」を解明(そもそも解明できない可能性も高い)したところで、金儲けに利用できるとは限らないばかりか、「ムダ知識」が「邪魔」になってくる可能性が高い。

 それよりも、「これからどう動くか」を推測し、また、シナリオを立て、市場のトレンドを観察し、できるだけ早い段階で便乗することが、はるかに重要なミッションのはずだ。

 さらに、因果関係が仮に理路整然と解明されても、ほぼ確実に「後付け」や「後講釈」になるから、トレンドに乗れないどころか、乗ろうとしたら逆にトレンドがもう終盤に入っていたり、トレンド自体が転換していたというケースも多い。

 「なぜ」に一生懸命に頭を突っ込んだ結果、高値(安値)掴みさせられるか、相場のメイントレンドと逆のポジションを取る結果になりがちだ。個人投資家にとって「百害あって一利なし」と言える。

■相場自体がすべての英知と判断や思惑の集大成 では、どう対応すればいいかと聞かれると、その答えはシンプルかつ強力だ。相場を信じることに尽きる。

 換言すれば、相場が常識(理論や巷の両方)とまったく反対の値動きやトレンドを示してくれた時、相場が示す方向に張ることがもっともシンプルでもっとも大事なストラテジーだ。

 肝心なのは、相場自体がすべての英知と判断や思惑の集大成であるということだ。だから、機関投資家を含め、誰よりもどの集団よりも賢く、また、これからの方向を知っているため、相場についていくしかない。理論や巷の常識とかけ離れればかけ離れるほど、相場の値動きや方向が正解になりやすいのも、結局、その本質にあるのではないかと思う。

 だから、相場の前例を勉強することは大事だ…
日銀のマイナス金利導入時と同じ動き! とにかくユーロを買っておけ!! ブログ

日銀のマイナス金利導入時と同じ動き! とにかくユーロを買っておけ!!

■株も為替もやはり、リスクオン再来! 前回(9月6日)のコラムでも、リスクオンの再来について注意喚起した。

【参考記事】

●フラッシュ・クラッシュは187週スパンで起こった必然!? リスクオン再来は近い!(2019年9月6日、陳満咲杜)

 そのとおりに、米国株はあと少しでまた史上最高値更新の状況にあり、だいぶ出遅れた日経平均も急速に反騰してきた。

NYダウ 日足(出所:TradingView)

日経平均 日足(出所:TradingView)

 そして、米ドル/円は108円の大台を回復、ユーロ/円も120円の節目寸前まで迫ってきた。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足) 

ユーロ/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足) 

 そして、昨晩(9月12日)の出来事が、一段と筆者の見方を証左したとみる。それは他ならぬ、ユーロの切り返しだ。

■ユーロが売られたあとに一転上昇して狼狽した人たち 切り返しとは反騰のことなので、言ってみれば、ユーロの反騰自体が大半の市場関係者にとってサプライズであったはずだ。だからこそ、大きなサインを灯してくれたとみる。

 もっとも、9月のECB(欧州中央銀行)理事会に関する事前予想では、「利下げするが、QE(量的緩和)はしないだろう」という予想が、市場の主流のようだった。その予想を見事に破ったドラギECB総裁は、市場関係者を驚かせ、ユーロ/米ドルは一時、9月3日(火)安値の再打診まで急落した。

 しかし、その後、ユーロ/米ドルは一転して買われ、ザラ場安値の1.0927ドルに対して、終値では1.1056ドルとずいぶん高く引けた。

ユーロ/米ドル 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 1時間足) 

 この値動きは、多くの市場関係者にとって2回目のサプライズとなり、また、2回目の方がより「ショック」だったかもしれない。

 何しろ、「ECBの量的緩和再開11月から実施、月額200億ユーロ」といった政策内容は、時期にしても金額にしても市場関係者の想定と違ったから、本来ユーロは一直線に安値を更新、またガンガン下値を切り込んでいく「はず」だった。

 ワケ知り顔に「QEはまだ早い」と語っていた「相場解釈屋」たちが顔色を失い、サプライズを受けて「ユーロ売り」が叫ばれた途端、市況はまた大きく反転した。狼狽するのも当然だった。

 筆者の場合は、最初からユーロ安の継続に懐疑的であった…
フラッシュ・クラッシュは187週スパンで 起こった必然!? リスクオン再来は近い! ブログ

フラッシュ・クラッシュは187週スパンで 起こった必然!? リスクオン再来は近い!

■香港問題緩和などは、ドル/円の切り返しの後付けの理由 前回のコラムでは、円高の限界を指摘した。また、米ドル/円の内部構造に基づき、8月安値トライ自体が「ダマシ」であった可能性を示した。執筆中の現時点で、米ドル/円は107円の節目を回復しているから、目先その可能性は一段と高まっている。

【参考記事】

●米ドル/円に2つのシナリオ。いずれにせよ大幅な円高はなく103円台後半が円高の限界(2019年8月30日、陳満咲杜)

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 もっとも、2015年高値を起点とした大型保ち合いが仮に延長されても、トライアングルというフォーメーションに留まると考え、巷の「常識」となりつつある本格的円高トレンドへ復帰する、といったシナリオに距離を置いてきたから、8月安値104.45円からの切り返しは当然の成り行きとみる。

 香港問題の緩和や米中協議の継続といった、いわゆる外部要素の好転云々はあくまで「後付け」であり、決定的な要素ではないことを改めて認識しておきたい。

■やはり「相場が正しい」 たびたび指摘してきたように、米中対立の激化や、一時収束不可能と思われたほどの香港デモ問題など、かなり険悪だった状況にもかかわらず、米ドル/円は104円台に留まり、言われるほど円の上昇モメンタムは見られなかった。

 英EU離脱問題も、2016年6月の国民投票時より一段と危機的な段階に来ているにもかかわらず、米ドル/円はあの時の安値99.12円を割りこむどころか、105円の節目以下の終値さえなかった。

 これはほかならぬ、市場心理の極端な悪化とは対象的に、市場内部構造は違うシナリオを示唆していることを意味するものである。

 危機的な状況とマスコミがあおり、米長短金利逆転や欧州各国国債利回りの軒並み低下で、景気見通しが一段と不透明であり、また世界規模のリッセション必至と解釈されるなか、本来ならば米ドル/円は100円の心理的大台をとっくに割り込んでいるはずだ。しかし、105円以下の終値さえなかったことから考えると、やはり「相場が正しい」と再認識してもらいたいところだ。

 前述の大型保ち合いのシナリオをもって相場を説明できなくもないが、トライアングル型保ち合いの延長よりも、そもそも安値トライ自体が「ダマシ」となり、2019年1月3日(木)安値104.97円をもって同トライアングルをすでに完成したのでは、という見方も高まりつつある。

米ドル/円 週足(クリックで拡大)(出所:TradingView)

 なにしろ、2019年が明けてからの米ドル/円の急落、いわゆる「フラッシュ・クラッシュ」が発生した原因に、未だに納得できる説明などない。いろんな解釈があったが、どれも説得力がなく、真相はよくわからない。

 「フラッシュ・クラッシュ」とは、相場が理由もなく突然崩れてきたものだと思われがちで、またこのような曖昧な考え方が広く受け入れられている。よくわからないから、受け入れるしかないからだ。

 しかし、時間がかかるにしても、往々にして徐々に真相が浮上し、値動きの必然性や可能性を認識できるのが、相場の常である。時には数十年の時間がかかるケースもあるが、幸い今回米ドル/円はそこまで時間がかからなかったから、今こそもう1回、「フラッシュ・クラッシュ」の意味を再確認したい。

 前回のコラムで提示した米ドル/円の週足を…
米ドル/円に2つのシナリオ。いずれにせよ 大幅な円高はなく103円台後半が円高の限界 ブログ

米ドル/円に2つのシナリオ。いずれにせよ 大幅な円高はなく103円台後半が円高の限界

■米ドル/円の下落は103円台後半が限界 トランプ砲で、先週末(8月23日)の相場は再度波乱となり、今週週明け(8月26日)、米ドル/円は一時2019年年初来安値を更新した。

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

 ここで、米ドル/円の内部構造の再考を迫られる。2015年高値からの大型保ち合いは大きく延長され、同保ち合いはシンメトリカル・トライアングル型を形成中だ。

 この場合、足元は子波Cの最終段階と推測されるが、主に以下の2つのカウント方法を提示できる。

 1つは、2015年6月高値は125.86円、2016年6月安値(約99.12円)までの下落を、同トライアングルにおけるA子波、同安値から2016年12月高値118.67円までの上昇をB波と見なし、8月26日(月)の安値は1月安値をいったんブレイクしただけではなく、2018年3月安値も下回ったので、2016年12月高値以降の下落をすべてC子波と数えるカウント方法である。

米ドル/円 週足(クリックで拡大)(出所:TradingView)

 この場合、おおむねの計算としてB波はA波の約73%ぐらいの値幅を有し、同じ比率なら、C波もB波値幅の73%程度の値幅になりやすいから、次の安値ターゲットは104円台の前半と推測される。

 そして、よく使われる76.4%の計算では、約103.60~65円前後のターゲットが得られる。結局、さらなる下値打診があっても、103円台後半が円高の限界かと思われる。

■米ドル/円はすでに底打ちした可能性も もう1つは、8月26日(月)に一時、安値トライしたことを「ダマシ」と見なし、従来のカウントを維持するカウント方法だ。このように「ダマシ」と解釈した方がむしろ、米ドル/円がすでに底打ちした可能性が高まる。

 この場合、結果的に8月26日(月)は「リバーサル・デー」として記録される。この可能性について、8月28日(水)のレポートで解説したので、原文を開示しておきたい。

米ドル/円 日足(8月30日再制作・クリックで拡大)(出所:TradingView)

 ドル/円は26日一時年初来安値更新してから切り返し、陽線引けをもって「リバーサル・ディー」の可能性を示唆。同サインがホンモノなら、これからの安値トライを回避でき、リバウンドにつながるでしょう。同サインの可能性について、以下の4つの視点で検証できるかとみる。

 A:1月安値や8月12日安値で形成されたサポートラインの割り込みがあっても一時に留まり、その後のリバウンドをもって「フォールス・ブレイクアウト」の可能性を示唆。

 B:下落トレンドの支持ラインに合致、安値トライがあっても大幅乖離した値動きではない。

 C:対照的に、RSIなどオシレーター系指標の強気ダイバージェンスの点灯、むしろ更に強化され、ベアトレンドの終焉を暗示。

 D:同日の罫線、前記のようにリバーサル・ティーの条件を有し、また同日の材料(トランプ砲)の特殊性に鑑み、一層蓋然性が強まる。

 まとめてみると、近々の値動きは重要、底打ちのパターンを形成していくかどうかは肝心なので、条件が備えつつある目下では、一層注目すべきだと思う。

 2つの異なるカウントを提示したが、これから安値更新があっても下値余地は限定的、またはすでに底打ちを果たした、という見方だったので、いずれも大幅な円高シナリオではない。

 その理屈に関して本コラムは繰り返し指摘してきたので、ここでは重複して説明しないが、一番重要なのはファンダメンタルズ上の材料をもってテクニカル上の節目と対照しないといけない、という考え方にある。

【参考記事】

●猫も杓子も警戒なら、危機は発生しにくい。もっとも危惧される英ポンド安に変化の兆し(2019年8月23日、陳満咲杜)

●世界経済が大混乱なのに米ドル/円は底割れを回避。それが意味するものは?(2019年8月16日、陳満咲杜)

 何回も言ってきたように、ファンダメンタルズ上の材料が…
猫も杓子も警戒なら、危機は発生しにくい。 もっとも危惧される英ポンド安に変化の兆し ブログ

猫も杓子も警戒なら、危機は発生しにくい。 もっとも危惧される英ポンド安に変化の兆し

■相場自体が、誰よりも将来を見極めて値段を形成している 逆イールドにおびえる市場関係者が多いなか、マーケット全体はむしろ冷静な値動きを示している。米国株は7月高値の回復には至っていないが、一段の反落を回避。米ドル/円も106円台をキープし、保ち合いの状況に留まっている。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 相場に関わると、どうしても予測をしたくなるが、一個人はおろか、たとえウォール街の王者のような機関投資家でさえ、将来を予測できる部分はかなり限られる。

 言ってみれば、相場自体は誰よりも賢く、誰よりも将来を見極めて値段を形成しており、「相場のことは相場に聞く」という言い伝えの真意はそこにあるのではないかと思う。

 前回のコラムでも強調したように、逆イールドがたちまち本格的なリスクオフをもたらすのであれば、米ドル/円の106円台が今、キープされるのはとてもムリなことであり、100円の心理的大台の割り込みがあってもおかしくなかろう。そういった値動きが観察されていないのであれば、市場心理の行きすぎを悟るべきだとも思う。

【参考記事】

●世界経済が大混乱なのに米ドル/円は底割れを回避。それが意味するものは?(2019年8月16日、陳満咲杜)

■猫も杓子も警戒する状況では危機は発生しにくい もっとも、逆イールドが必ず本格的な景気後退をもたらすという前提でも、米国株はこれから高値更新ありとみる。

 筆者が8月15日(木)のツイートで述べたように、次のようなロジックや計算ができ、S&P500は3266ドル前後の高値をトライしてもおかしくない(ちなみに、同指数は現在3000ドルの節目手前である)。

 ここで、より大事なのは、米国株の強気変動の終焉が叫ばれることも、別に今始まったことではないということだ。米国株は危ない、もうすぐトップアウトするよ、といった論調は、もう何年も続いてきた。本当のところは、米国株がいつトップアウトするかは誰にもわからず、また、トップアウトを判定できるのも、事前ではなく、事後であることを悟るべきだ。

 そもそも、世界的な景気循環やバブルの崩壊といったマクロ的な予測を、現在、言われている「トップアウト云々」のように、専門家から素人まで口を揃えて指摘できるはずはない。

 2008年のリーマンショックも、ウォール街でも予測できなかったから発生したわけで、現在のように猫も杓子も行く先を警戒する状況では、逆にそのような危機的事象は発生しにくいかと推測される。

 つまるところ、相場は誰よりも賢く、誰よりも「正直」なので、米国株の強気トレンドが崩れていない限り、相場心理の行きすぎを警戒した方がロジック的には正しい。

 米ドル/円で言うと、前回のコラムにおいて再度提示したように、米中対立の激化など諸ファンダメンタルズの悪化があっても、米ドル/円がなかなか2019年年初来安値を割れず、また、2016年6月の英EU離脱決定、2018年3月の米中貿易戦争勃発時に比べ、安値が右上がりの傾向をキープしていること自体、円高の余地が限られていることを示唆するサインとみるべきだ。

【参考記事】

●世界経済が大混乱なのに米ドル/円は底割れを回避。それが意味するものは?(2019年8月16日、陳満咲杜)

 前述のように、ファンダメンタルズや市場心理の悪化を受け…
世界経済が大混乱なのに米ドル/円は 底割れを回避。それが意味するものは? ブログ

世界経済が大混乱なのに米ドル/円は 底割れを回避。それが意味するものは?

■世界の債券市場で逆イールドが広がっている ファンダメンタルズは最悪にみえる。なにしろ、逆イールド(長短金利差の逆転)は世界の債券市場で広がりをみせ、米国のみでなく、英国、カナダ、ノルウェーでもみられ、中国でさえ長短金利差が接近している。

 米10年物国債利回り(米長期金利)は一時1.495%まで低下、3年ぶりに1.5%の大台割れとなり、このままでは2016年安値(1.382%)に接近、またはそこを割り込むことも連想される。

米長期金利 日足(出所:Bloomberg)

 長期金利が急低下し、逆イールドが発生することは景気後退(リセッション)のシグナルと解釈される──経済学の教科書にはこのように書かれており、市場参加者なら誰でも緊張感を持ち、一層のリスクオフを覚悟しているところだ。債券市場が発生したシグナルを、誰も軽視できないからである。

【参考記事】

●株価を暴落させた逆イールドとは? 逆イールドは景気後退の予兆って本当?

 それにしても、今の債券市場を「完全におかしい」とみる市場関係者は少なくないようだ。というのは、「悪名高い」日本国債でさえ、欧州の最高格付け債市場のどこよりも高く、「魅力的な投資先」としてみる投資家が現れたからだ。

 ドイツ、フランス、オーストリア、ベルギーなどの国の国債利回りが軒並みマイナス圏に沈み、5年もの日本国債は、マイナス幅が同じ年限のドイツ国債より小さいから、「選好」されたというわけだ。

欧州の高格付け国と日本の5年債利回りの推移 日足(出所:Bloomberg)

 要するに、“世界的な債券逆イールド”は、長短金利差のみでなく、「デフレの象徴」であった日本国債利回りとの逆転でもみられ、市場参加者の総意として「市場心理がいかに悲観的か」を示すバロメーターとなっているのだ。

■問題山積でも底堅い米ドル/円、どちらが真の示唆? 無理もない。8月14日(水)に米国株がまた大きく反落し、世界同時株安が示唆していたように、経済と政治の変調が激しく、また不透明感が一段と増しているからだ。

 悪化したファンダメンタルズとしては、中国、ドイツの最近の経済指標の悪化が代表的なものだが、中国人民元安がもたらした通貨戦争の思惑も根深いと言える。

 米中摩擦による中国経済減速は、日本を含め、対中輸出国への影響が大きい。トランプ米大統領の「自国優先主義」が危惧され、諸国の金融緩和戦争も目に余る。

 香港騒乱の地政学リスクに加え、アルゼンチン危機の再来に見られるポピュリストの台頭などなど、不安要素が数えきれないほど噴出しており、リスクオフの流れについていくしかないという考え方自体、むしろ当然の成り行きと思われる。

 さらに、お盆といえば、日本市場の薄商いが連想され、また、投機筋の跋扈がウワサされる。こんなにファンダメンタルズが悪化しており、混乱の最中で暗い見通ししか聞こえない今年(2019年)のお盆に、仕掛け的な円買いを実行すれば、ほぼ確実に利益を上げられると思われても、ロジック的には間違いとは言い切れない。

 しかし、一部市場参加者の意表を突く形となったが、米ドル/円は執筆中の現時点で106円の節目を回復しており、この間の安値(8月12日)も105.05円に留まっていた。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 つまるところ、最悪の市場環境や暗い市場心理と相異なり、米ドル/円にみる円高のモメンタムは極めて限定的であり、また、為替相場全体の変動率も8月にしては小さい。

 ここで考えなければならない問題はただ1つ、どちらが真の示唆か、ということに尽きる。

 言ってみれば、周知のとおりのファンダメンタルズなら、米ドル/円は今100円の大台にトライしてもおかしくなかろう。

 しかし、目先、2019年1月安値割れを回避しているようにみえる値動きがホンモノであれば、逆に相場の内部構造をより鮮明に指示してくれているのではないかとみる。

 その内部構造については、先週(8月9日)のコラムで…
米ドル/円はさらに下がっても、あくまで 一時の行きすぎ!? 米金利も底打ち間近! ブログ

米ドル/円はさらに下がっても、あくまで 一時の行きすぎ!? 米金利も底打ち間近!

■米長期金利は想定より大きな下落を演じた 8月1日(木)の急反落があって、米ドル/円は8月7日(水)に105.50円の安値にトライした。

 前回のコラムでも指摘したように、8月1日(木)の値動きは、本質的には「フォールス・ブレイクアウト」のサインを点灯していたので、安値トライはその結果と受け入れ、また、さらなる下値打診があってもおかしくなかろう。

【参考記事】

●米ドル/円波乱の最大の要因は?トランプ氏の対中ツイートは「きっかけ」にすぎない!(2019年8月2日、陳満咲杜)

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 もっとも、米ドル/円は米長期金利(米10年物国債利回り)の動向に敏感で、米10年物国債利回りの値動きが最近の米ドル/円を左右している、と見ても間違いではないだろう。

 米10年物国債利回りは、8月1日(木)に7月安値1.939%を割り込み、8月7日(水)には一時1.595%の安値を記録、想定よりさらに大きな急落を演じた。

米10年物国債 日足(出所:Bloomberg)

 米中対立の激化やFRB(米連邦準備制度理事会)継続利下げの思惑に、米国株の急落もあって、安全資産の米国債への資金流入が一段と激化した結果だと言える。

■米国株はなお、強気基調を保っている 反面、米10年物国債利回りの急速な低下のすべてが、必ずしもリスクオフで説明できるわけではないと思う。

 なにしろ、中国人民元切り下げを機に、米国株の急落が再び見られたが、史上最高値からの調整であり、また昨日(8月8日)再度大幅に切り返し、ナスダックに至っては先週末(8月2日)からの下落幅をすべて取り戻したほどの修復ぶりだったので、米国株はなお、強気基調を保っていることも明らかだ。

ナスダック 日足(出所:Bloomberg)

 換言すれば、米株高局面における米長期金利の低下は、リスクオフの視点をもって完全には説明しきれない。

 まずテクニカル上の視点だが、米10物国債利回りが、2012年7月安値1.381%と2016年1月安値1.321%をもって「ダブルボトム」を形成し、2018年10月高値3.261%への反発をもたらした経緯に照らして考えると、目先の急落は、その切り返しへの反動と位置づけられ、また、すでに最終段階に入っているかと思われる。

米10年物国債利回り 月足(出所:Bloomberg) 

 換言すれば、前述の「ダブルボトム」を下回るような事態、目先は想定しにくく、RSIなどオシレーター系指標でみると、現時点ですでにかなりの「オーバーシュート」になっており、いつ底打ち、また反騰してもおかしくないだろう。

■ファンダメンタルズ的には米中対立激化が最大の材料だが… ファンダメンタルズ上の視点として、やはり米中対立の激化が最も大きな材料であり、またFRB継続利下げの理由もそこにあるかと思われる。

 ただし、繰り返し指摘してきように、そもそも米中対立は歴史的なテーマであり、中短期スパンをもってそれを相場に一気に織り込むには無理がある。

 また中国に対して3000億ドル規模の追加関税を表明した米サイドは、関税カードをすべて使いきったことになり、米中貿易戦争自体が続くにしても、「関税の応酬は、これをもって一段落」といった思惑は逆に高まる。

 米ドル/中国人民元の7元の大台乗せ(米ドル高・人民元安)をもって…
米ドル/円波乱の最大の要因は?トランプ氏 の対中ツイートは「きっかけ」にすぎない! ブログ

米ドル/円波乱の最大の要因は?トランプ氏 の対中ツイートは「きっかけ」にすぎない!

■予想外の米ドル/円の波乱で見通しはいったん修正 FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ後、マーケットは激しく動いた。利下げ後の米ドル全面高は、筆者の予想どおりだったが、米ドル/円の波乱は想定外なので、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の見通しもいったん修正せざるを得ない状況にある。

米ドル/円 4時間足(出所:Bloomberg)

 円の急伸は、米長期金利(米10年物国債利回り)の急落や米株反落に連動する側面が大きかった。リスクオフの意味合いは否定できないが、主要クロス円における円高の急伸は、外貨安(つまり米ドル高)の受け皿としての結果であることを見逃せない。

世界の通貨VS円 4時間足 さらに「いつも」のように、トランプ大統領による対中追加関税のツイートが市場センチメントを大きく悪化させ、昨日(8月1日)の大波乱をもたらした「きっかけ」であったことは間違いないが、起因となったことには、より深い市場心理があったと思われる。

 もっとも、前回のコラムでも強調したように、米利下げ後の米ドル高基調を有力視するものの、米ドル高の進行が紆余曲折になる可能性も指摘させていただいていた。

【参考記事】

●いよいよ運命のFOMC! 米利下げが実施されたらドル安? ドル高?(2019年7月26日、陳満咲杜)

 目先は、まず米ドル/円の波乱がこのシナリオを証左し、これからはこれが米ドル全般(ドルインデックス)の値動きに波及していくかと推測される。

 換言すれば、足元のドルインデックスの強気変動がこのまま継続されるかどうかについて、あまり確信を持たない方がよさそうだ。

ドルインデックス 4時間足(出所:Bloomberg)

■米ドル/円はダマシのサインを点灯していた では、具体的に見てみよう。まず米ドル/円だが、昨日(8月1日)、大きなサインを灯していた。同サインに関する解釈を、以下のようにまとめている(筆者が8月2日の午前中に配信したレポート)ので、開示しておきたい。

米ドル/円 日足(出所:FXブロードネット)

 米長期金利の急落や米中対抗の激化で昨日米株急落、円も急伸してきた。日足では、大きなサインが点灯されているから、まず確認しておきたい。

 既述のように、6月安値を「ヘッド」と見なした「ヘッド&ショルダーズ・ボトム」(三尊底)というフォーメーションの可能性、一旦消滅された。同見方、まず昨日(藍矢印)の大陰線をもって説明され、一旦高値トライした後の下落、弱気「リバーサル」や「アウトサイド」のみではなく、「三尊底」のネックラインに対する一時のブレイク、結局「ダマシ」であったことを示し、また7月18日(赤矢印、ライト・ショルダーと見なされた節目)を下回ったから、「フォールス・ブレイクアウト」の蓋然性は高い。

 従って、同サインの点灯で近々6月安値106.78を割り込み、下値余地を拓くでしょう。反面、オシレーター系指標の多くはベアトレンドへの復帰を指示せず、安値打診や更新があっても下値限定なら、再度底打ちのサインを点灯しよう。逆説になるが、昨日の大緯線、多くのサインを点灯しただけに、ここから早期安値更新、また急落していかないと、却って再度「ダマシ」になりやすいから、目先下値追いを避けたいところ。目先一旦様子見をおすすめ。

 そして、「米ドル/円の上放れがいったん失敗したから…