西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

「セル・ジャパン!」と言いながら円売り。 低ボラ脱却へ。米ドル/円は下値余地拡大か ブログ

「セル・ジャパン!」と言いながら円売り。 低ボラ脱却へ。米ドル/円は下値余地拡大か

■「セル・ジャパン」と言いながら円売りへ みなさん、こんにちは。

 先週(2月17日~)後半は、米ドル/円が110円台前半にあった強烈なレジスタンスをブレイクし、突然、急騰。

【参考記事】

●日本のGDPは衝撃の年率マイナス6.3%…。悪材料で円安に!? 米ドル/円は115円へ!(2月20日、西原宏一)

 日本の10-12月期GDPが、年率マイナス6.3%という報道をきっかけとして、米系ファンド中心に「日銀の追加緩和期待」をあおって、米ドル/円は一時112.23円まで急騰しました。

米ドル/円 日足(出所:Trading View)

 筆者の友人の米系短期筋も、「セル・ジャパン(日本売り)」と言いながら円売りへ。

 もともと彼は、米系を中心に増えている円安派で、今回に限らず昨年(2019年)からずっと円安派ですが、上述のGDPの数字に、新型肺炎ショックも重なり、さらに円売りに傾いた展開です。

■米国でも新型肺炎報道拡大。資金は株から債券へ ところが、今週(2月24日~)に入って、米ドル/円のセンチメントは一変します。

 その原因は、先週(2月17日~)末、米国でも新型肺炎報道が拡大したこと。

 呼応して、今週(2月24日~)に入り、投資資金は、急速に米国株から債券へ移動しました。

 結果、米10年国債利回りは、過去最低を記録(利回りは1.3055%へ)。

米長期金利(10年物国債利回り) 週足(出所:Bloomberg)

 米金利の低下に呼応して、100に近づいていたドルインデックスは急反落しています。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

■米金利の急低下でドルインデックスも急落… ここで、今年(2020年)に入ってからの主要通貨の動きを確認します。

 中国経済の低迷を背景に、まず豪ドルが下落。

 中国はドイツの主要輸出先であることから、次にドイツ経済の低迷が予測され、今月(2月)はユーロ/米ドルが続落しました。

【参考記事】

●新型コロナが猛威振るう中、なぜ株は好調? 豪ドルが影響を織り込む一方でユーロは…(2月13日、西原宏一)

ユーロ/米ドル 日足(出所:Trading View)

 さらに、先週(2月17日~)は、日本の10-12月期GDPの悪化をきっかけに円安が加速し、米ドル/円が112円台まで急伸。

 結論として、先週(2月17日~)までは主要通貨の中で、買える通貨は米ドルしかないという展開で、ドルインデックスは節目である100に急接近。

 しかし、ドルインデックスが100に急接近すると、マーケットでは、トランプ政権から米ドル高牽制コメントが出るのでは(?)という警戒感が漂っていました。

 そこに、新型肺炎ショックで米金利が急低下し、米10年国債利回りは過去最低を記録。結果、ドルインデックスは節目の100を超えることなく、反落しました。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 ドルインデックスの反落は、米ドル/円の上値を抑えることにもなり、米ドル/円は急反落。112円台前半まで急騰していた米ドル/円ですが、一時110.00円割れまで反落しました。

 米ドル/円は、110.00~112.00円で「行って来い相場」に終始という、ボラティリティの高い展開です。

米ドル/円 日足(出所:Trading View)

 ここで個人的に…
日本のGDPは衝撃の年率マイナス6.3%…。 悪材料で円安に!? 米ドル/円は115円へ! ブログ

日本のGDPは衝撃の年率マイナス6.3%…。 悪材料で円安に!? 米ドル/円は115円へ!

■日本10-12月期GDPは年率マイナス6.3% みなさん、こんにちは。

 今週(2月17日~)、マーケットを驚かせたのが日本のGDPの悪化。

GDP10~12月期 年率マイナス6.3% 5期ぶりのマイナスに

出所:NHK NEWS WEB

日本のGDP 年率換算(出所:Bloomberg)

 前回(2014年)の消費増税時と同様、今回(昨年10月)の10%への増税が個人消費を落ち込ませ、日本経済を減速させているわけですが、昨年(2019年)消費増税が行われた時は、悪影響についてあまり報道されませんでした。

 それは、消費増税の開始とともに日本株が急騰したからです。

日経平均 週足(出所:Bloomberg)

 今回も同様。GDPの年率マイナス6.3%の衝撃を受けて、当初、日本株は下落、米ドル/円は円高へ振れました。

 しかし、マーケットでは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や本邦の生保が、積極的に米ドル/円での米ドル買いをマーケットに持ち込んでいるとのウワサで、日本株は反発。そして、米ドル/円は、じわじわと110円台を回復します。

米ドル/円 1時間足(出所:Trading View)

■リスクオフでの円高の流れが変わりつつある 最近、日本関連の悪材料が出ると、本邦機関投資家から、まとまった日本株や米ドル/円での米ドル買いがマーケットに持ち込まれることに違和感を感じますが、実際、米ドル/円が持ち上げられていることも事実。

 悪材料は出るものの、リスクオフでの円高にならない展開です。

 このコラムでも何度かご紹介させていただきましたが、リスクオフでの円高の流れは変わりつつあります。

【参考記事】

●「株高・米ドル高」の流れは一時的か…? 英ポンド/米ドルは1.2500ドルへ下落再開(2月6日、西原宏一)

 ただ、今年(2020年)に入って、イラン危機、新型肺炎の感染拡大というリスクオフの報道がなされるたびに、何度も円高には振れていますので、円高は継続しないものの、リスクオフでの円売りにもならないという状況でした。

 ところが、今回は…
新型コロナが猛威振るう中、なぜ株は好調? 豪ドルが影響を織り込む一方でユーロは… ブログ

新型コロナが猛威振るう中、なぜ株は好調? 豪ドルが影響を織り込む一方でユーロは…

■新型コロナウイルスが猛威を振るうも、株は好調 みなさん、こんにちは。

 新型コロナウイルスの感染は中国のみならず、海外へもあっという間に拡大。経済への打撃は、計り知れないものがあります。

 たとえば日本では、通常、観光客で賑わう銀座、京都、札幌といった主要観光地の観光客が、新型コロナウイルス感染拡大の報道で激減。

新型肺炎が日本企業の業績直撃、インバウンド銘柄が利益計画下方修正

新型コロナウイルスの感染拡大の影響が、日本企業の業績にも及んできた。31日に決算を発表した化粧品メーカーのコーセーや大手百貨店を傘下に持つ三越伊勢丹ホールディングスなど中国人観光客のインバウンド需要で恩恵を受けている企業が利益予想を下方修正した。

出所:Bloomberg

 こうした環境下、通常、日本株はあっさり値を下げるのですが、本稿執筆時点の日経平均は2万4000円というレジスタンスブレイクをうかがう展開。

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 米国株も、S&P500やナスダック総合指数が史上最高値を更新しています。

S&P500 日足(出所:Bloomberg)

ナスダック総合指数 日足(出所:Bloomberg)

 これは、当局がマーケットに介在しているため。

 米国株は隠れQE(量的緩和策)、日本株はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による株買い、上海総合指数は中国政府による資金供給といったように、当局による介入が株を支えていると想定しています。

上海総合指数 日足(出所:Bloomberg)

 この一連の当局の介入効果がいつまで続くのか? というのが、相場のひとつのポイント。

 ただ、為替市場では…
「株高・米ドル高」の流れは一時的か…? 英ポンド/米ドルは1.2500ドルへ下落再開 ブログ

「株高・米ドル高」の流れは一時的か…? 英ポンド/米ドルは1.2500ドルへ下落再開

■中国当局の「18兆円供給」報道で株価反発 みなさん、こんにちは。

 先週(1月27日~)は、コロナショックでグローバルに株が急落する展開となりました。

【参考記事】

●上値重いユーロ/円は115円レベルへ下落か。市場はECBの金利正常化時期の遅れを懸念(1月30日、西原宏一)

 しかし、今週(2月3日~)、上海市場が再開したことをきっかけに相場は一変。

 世界的に、株価は大きく反発しています。

上海総合指数 日足(出所:Bloomberg)

 その要因として挙げられるのが、まず、中国当局の対応。

中国人民銀、18兆円供給へ 春節明け3日に

中国人民銀行(中央銀行)は2日、3日に公開市場操作(オペ)で金融市場に1兆2千億元(約18兆7千億円)を供給すると発表した。

出所:日経新聞

 中国当局が事態の沈静化に動くというのは、ある意味、予想されていたことではありますが、金額が巨額であるため株式市場は反発を開始。

 さらに、新型コロナウイルスのワクチン開発で大きな進展があったとの報道もあり、米国株は上昇に転じます。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 さらには、アイオワ州で実施された民主党の大統領候補者選の混乱がトランプ大統領の再選の可能性を高めたことで、米国株の上昇に弾みがつき、ナスダック総合指数は史上最高値を更新しました。

ナスダック総合指数 日足(出所:Bloomberg)

■トランプ大統領の弾劾裁判は予想どおり「無罪」に こうした中、米上院の弾劾裁判で、トランプ大統領は、コンセンサスどおり無罪判決となり、これも米国株にとってプラス材料とされているようです。

【参考記事】

●2大イベント終了で利益確定の動き加速!? トランプ大統領の弾劾裁判の影響は…?(2019年12月19日、西原宏一)

米上院の弾劾裁判で、トランプ大統領はコンセンサスどおり無罪に。これも米国株にとってプラス材料とされている模様 (C)Mark Wilson/Getty Images

 米上院でトランプ大統領が無罪判決になるのは、個人的には織り込み済みだと想定していましたが、CNNなどでは、一時「トランプ大統領はもしかすると有罪になるかも?」との報道も目立っていたので、マーケットはトランプ大統領の無罪判決を素直に受け取り、ポジティブに反応。

 余談ですが、民主党のナンシー・ペロシ下院議長が、トランプ大統領の一般教書演説の原稿を破り捨てたことが話題になっています。

 約1時間20分のトランプ大統領の一般教書演説を聞き終えたペロシ議長が、演台を後にしようとするトランプ大統領に見せつけるように、原稿を数度にわたって破リ捨てた映像が全米に流れました。

 これにより、米国政治が深刻な「対立と分断の時代」に陥ったという印象を残した一般教書演説でしたが、政治とは別に、米国株は絶好調という展開です。

 ただ、アイオワ州での民主党・大統領候補者選の結果でマーケットが動くのであれば、この後…

● 2月11日 ニューハンプシャー州予備選

● 2月22日 ネバダ州党員集会

● 2月29日 サウスカロライナ州予備選

とイベントが続き、その間、コロナウイルスに関する新たな報道も加わることになるため、2月のマーケットが乱高下する可能性が高まります。

■「株高・米ドル高」の流れは一時的…? ともあれ、株が急上昇している中、いつもと違う動きをしているのが為替相場。

 通常、株が上昇しているときは、リスクオンであり、「米ドル安・円安」でクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)が上昇します。

 しかし、今週(2月3日~)のリスクオン相場においては、「株高・米ドル高」の流れになっています。

米ドル/VS世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)

 この流れが一時的なものなのか、ゲームチェンジになるのかにマーケットの注目が集まっています。

 この米ドル高の…
上値重いユーロ/円は115円レベルへ下落か。 市場はECBの金利正常化時期の遅れを懸念 ブログ

上値重いユーロ/円は115円レベルへ下落か。 市場はECBの金利正常化時期の遅れを懸念

■新型コロナウイルス感染拡大報道受け、米国株は反落 みなさん、こんにちは。

 先週(1月20日~)前半まで、米国のメディアでは新型コロナウイルスについて、あまり大きく取り上げられていませんでした。

 マーケット参加者の多くが、アジアのローカルニュースに過ぎないと判断していたわけです。

 そのため、NYダウも2万9000ドル台を維持し、堅調に推移していました。

 しかし、米国で新型コロナウイルスの感染者が出たことで、マーケットのセンチメントは大きく変わります。

 マーケットは、コロナショックが中国経済の新たなけん引役である個人消費に大きな打撃を与えることを危惧し、米国株は反落。

【参考記事】

●コロナウイルス騒動で景気低迷!? 隠れQE打ち切りに言及するのか? FOMCに注目!(1月27日、西原宏一&大橋ひろこ)

新型コロナウイルス、中国経済成長の新たなけん引役の脅威に-S&P

投資に代わる中国経済の重要なけん引役になった個人消費が新型コロナウイルス感染拡大による打撃を受けそうだと、S&Pグローバル・レーティングは指摘した。

出所:Bloomberg

 NYダウは一時、2万8440ドルまで急落。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 原油や銅も大きく値下がりし、マーケットはリスクオフへ。

WTI原油先物 日足(出所:Bloomberg)

NY銅先物 日足(出所:Bloomberg)

 米ドル/円も一時、108.73円まで下落しました。

 本稿執筆時点では、200日移動平均線が108.47円に位置しており、米ドル/円をサポートしていますが、中国発のパンデミックリスクが、マーケットのテーマとなっている現状では、米ドル/円の上値は限定的。

米ドル/円 日足(出所:Trading View)

 筆者が使用しているインディケーターである、TDシーケンシャル(※)では、昨年(2019年)8月に105.05円から始まった米ドル/円の上昇相場の終焉が示唆されています。

(※編集部注:「TDシーケンシャル」とは、トーマス・R・デマーク氏が開発したテクニカル指標の1つ)

 米ドル/円は調整局面入りした可能性が高まっています。

 加えて、もうひとつ…
トランプ大統領再選に向けて株高は継続! NYダウ3万ドル間近でクロス円も底堅い ブログ

トランプ大統領再選に向けて株高は継続! NYダウ3万ドル間近でクロス円も底堅い

■米大統領選挙において、株高が極めて重要な材料 みなさん、こんにちは。

 米大統領選に関して、真っ先に思い出されるのが、「It's the economy, stupid(経済こそが重要なのだ、愚か者)」(※)というメッセージ。

※「It's the economy, stupid(経済こそが重要なのだ、愚か者)」とは、ビル・クリントン氏がジョージ・H・W・ブッシュ氏に勝利を収めた1992年の米大統領選挙の最中、広く使われたメッセージ


 当時、クリントン氏が冷戦の終結や湾岸戦争における勝利といったような、外交政策で大きな成果をもたらしたブッシュ氏に勝つことは極めて難しいというのが一般的な見方でした。

 ところが、こうした「外交」よりも、重要なのは「経済」であるとしたビル・クリントン氏がブッシュ氏に勝利。

 その後、米大統領選挙においては、株高が極めて重要な材料と捉えられています。

■NYダウは3万ドルの大台が視野に その米国株は、今年(2020年)に入っても視界良好。

【参考記事】

●米国株を「買わない理由」はない!? 株高追い風に豪ドル/円は押し目買い!(1月20日、西原宏一&大橋ひろこ)

 先週(1月13日~)、17日(金)のNYダウは2万9373ドルまで高騰。

 3万ドルの大台まで、あと700ドル弱と堅調に推移しています。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 これは、このコラムで何度か取り上げた「隠れQE(量的緩和)」が大きく影響しています。

【参考記事】

●2大イベント終了で利益確定の動き加速!? トランプ大統領の弾劾裁判の影響は…?(2019年12月19日、西原宏一)

 昨年(2019年)までは、「米中貿易戦争」、「イラン問題」、そして、「トランプ大統領の弾劾」がリスクオフの可能性を残し、米国株の上値を抑える材料となっていました。

 しかし、昨年(2019年)末から、「米中貿易戦争」、「イラン問題」といった株にとっての問題が次々と沈静化し、米国株の上値は軽くなっています。

【参考記事】

●イランと米国による戦争回避で株価反発! リスクオフ沈静化で豪ドル買いに妙味!?(1月9日、西原宏一)

 そのため、NYダウを中心とした米国株は堅調。

 クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)も底堅く推移しています。

世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)

■トランプ大統領の弾劾成立の可能性は極めて低い 残る懸念は、「トランプ大統領の弾劾」。

 もともと、ナンシー・ペロシ下院議長は、弾劾に関して及び腰…。

 しかし、AOC(アレクサンドリア・オカシオ=コルテス議員)を筆頭とした民主党左派勢力に押された形で、民主党は弾劾に向けて動き出したと言われています。

【参考記事】

●2大イベント終了で利益確定の動き加速!? トランプ大統領の弾劾裁判の影響は…?(2019年12月19日、西原宏一)

 ただ、共和党が上院の多数を占めているため、弾劾が成立する可能性は極めて低い状況。

共和党が上院で多数を占めているため、トランプ大統領に対する弾劾が成立する可能性は極めて低い (C)Mark Wilson/Getty Images

 可能性はほとんどありませんが、仮にトランプ大統領が弾劾されたとしても、ペンス副大統領が米国大統領に昇格します。

 共和党の保守派は、ペンス副大統領を支持しており、共和党の結束が乱れるわけでもありません。

 つまり民主党にとって、「ペンス大統領」は組みやすい相手ではありませんので、トランプ大統領の弾劾問題は、今のところリスクオフの材料とはならなくなっています。

 結果、前述の3つのリスクオフ要因はほぼ消滅し、「隠れQE」による株のプラス要因が残る形となります。

 よって、米国株の堅調さは継続。

 NYダウは、200日移動平均線から大きく乖離したまま上昇し、オシレーター系の代表格であるRSIが、日足ベースで買われ過ぎを示唆していますので、多少の調整はあるのでしょうが、米国株の底堅さは継続しそうです。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 こうした中…
森林火災危惧も、豪州株は最高値更新。 豪ドルは底堅い! 対円は80円へ反発開始 ブログ

森林火災危惧も、豪州株は最高値更新。 豪ドルは底堅い! 対円は80円へ反発開始

■森林火災の被害危惧も、豪州株は最高値更新 みなさん、こんにちは。

 年初のイラン情勢の緊迫化により、マーケットはリスクオフに傾斜し、急速に「株安、資源国通貨安、円高」が進行しました。

 しかし、そのリスクオフ相場も一時的で、マーケットは、すでに落ち着きを取り戻しています。

【参考記事】

●第3次世界大戦の危機!? 今はイラン情勢がすべて。ドル/円や豪ドル/円は戻り売りか(1月6日、西原宏一&大橋ひろこ)

●イランと米国による戦争回避で株価反発! リスクオフ沈静化で豪ドル買いに妙味!?(1月9日、西原宏一)

 そんな環境下、底堅く推移しているのが豪ドル。

豪ドル/円 週足(出所:Trading View)

 現在、豪州といえば、森林火災の被害が危惧されています。

 豪州は、空気が乾燥していることで、ほぼ毎年のように森林火災が発生。

 2019年12月には記録的な熱波が到来し、大規模な森林火災が発生しました。

 今回の森林火災による被害は甚大であり、豪州経済の成長率を押し下げることが予想されます。RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])は、年内に0.25%利下げし、政策金利は0.50%になることが予測されている状況です。

 RBAの利下げが予測されている局面では、通常、豪ドルは値を崩すことが多いのですが、豪ドルは総じて底堅く推移しています。

 そして、豪州の株式市場も堅調。

 先週(1月6日~)、豪州の代表的な株価指数であるS&P/ASX200は、過去最高値を更新しています。

S&P/ASX200 月足(出所:Bloomberg)

 このS&P/ASX 200の上昇と…
イランと米国による戦争回避で株価反発! リスクオフ沈静化で豪ドル買いに妙味!? ブログ

イランと米国による戦争回避で株価反発! リスクオフ沈静化で豪ドル買いに妙味!?

 明けましておめでとうございます。

 本年もよろしくお願いします!

■2020年はイランVS米国によるリスクオフでスタート さて、2019年は、米中貿易協議で金融市場は乱高下しましたが、年後半は米国株が最高値を更新し、リスクオンの環境下で終了しました。

【参考記事】

●2大イベント終了で利益確定の動き加速!? トランプ大統領の弾劾裁判の影響は…?(2019年12月19日、西原宏一)

 しかし、2020年は再び波乱のスタート。

 金融市場が神経質な展開となったのは、中東情勢です。

 1月2日(木)、米国はイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害したと発表。

【参考記事】

●第3次世界大戦の危機!? 今はイラン情勢がすべて。ドル/円や豪ドル/円は戻り売りか(1月6日、西原宏一&大橋ひろこ)

 これをきっかけに、2020年はイランと米国の対立によるリスクオフ相場でスタートしました。

 殺害されたソレイマニ司令官は、イランでは「影の司令官」とも呼ばれる大物だったそうです。

【参考記事】

●ソレイマニ司令官暗殺で中東情勢緊迫化! トルコリラの2つのリスクシナリオとは?(1月8日、エミン・ユルマズ)

 ソレイマニ司令官殺害について、トランプ大統領は、「戦争をやめるためであって、戦争をしかけたわけではない」と説明しています。

 なぜなら、米国が戦争を宣言するには、議会の承認が必要だからです。

 現在、多くの米国民はイランとの戦争を望んでおらず、仮にイランとの戦争に発展すれば、トランプ大統領の再選は、まず、ありません。

トランプ大統領はソレイマニ司令官殺害について、「戦争をやめるためであってしかけたわけではない」と説明した (C)Mark Wilson/Getty Images

 そんな、米政府の思惑とは裏腹に、イラクの米大使館付近や米軍基地が砲撃され、また、イラン政府は「もはや核開発に制限はない」と宣言したため、マーケットは混乱。

 「#ww3」(第3次世界大戦)のハッシュタグがツイッターで流行っているように、今週(1月6日~)の金融市場は緊張感が極度に高まっていました。

【参考記事】

●第3次世界大戦の危機!? 今はイラン情勢がすべて。ドル/円や豪ドル/円は戻り売りか(1月6日、西原宏一&大橋ひろこ)

 そんな環境下で…
2大米銀の2020年為替予想は米ドル安! 米大統領選挙は波乱要因になるのか? ブログ

2大米銀の2020年為替予想は米ドル安! 米大統領選挙は波乱要因になるのか?

■2019年の主要米銀の米ドル/円予想は105円だったが… みなさん、こんにちは。

 このコラムで何度か取り上げましたが、過去数年の為替市場は、主要米銀の年間予想を年末から年初に、一気に織り込む動きが目立つようになってきました。

【参考記事】

●12月は2020年を先取りする米ドル安進行!? 英総選挙に向けて英ポンドは1.33ドル台へ(12月5日、西原宏一)

 そして、その動きが徐々に前倒しになっています。

 たとえば、昨年(2019年)の主要米銀の米ドル/円の予測は、105円への円高というのが目立っていました。

【参考記事】

●米ドルは早晩ピークアウトする!? 2019年にかけて、米ドル弱気派が急増するワケは?(2018年11月22日、西原宏一)

●2019年の米ドル/円は105円台へ下落か。リスクオフ相場到来なら100円近くまで想定(2018年12月27日、西原宏一)

 その予測は、確かに1月に織り込みに行きましたが、そのタイミングは、なんと1月3日(木)。2019年の米ドル円/は、1月3日(木)に一気に104.87円をつけ、105円というターゲットに早々と到達。その後は、レンジ相場へ突入という展開。

米ドル/円 週足(出所:TradingView)

■2020年の2大米銀の予想をチェック では、2020年の2大米銀の予想はどうか?

(出所:筆者作成)

 モルガン・スタンレー、そしてゴールドマン・サックスも、英ポンド/米ドル中心に米ドル安予想。そして、来年(2020年)の英ポンド/米ドルは、1.3500~1.4000ドルへ上昇するとのシナリオです。

 確かに、今年(2019年)もそうした動きが顕著になっており、11月後半から英ポンド/米ドル、NZドル/米ドルは続伸。

 さらに、今月(12月)13日(金)の英国総選挙では、保守党圧勝というニュースを受けて、英ポンド/米ドルは一気に1.3512ドルまで急騰しました。

 その後、セル・ザ・ファクトにより、一時1.2905ドルと、600pipsも反落しています。

英ポンド/米ドル 日足(出所:TradingView)

 つまり、年を超えるどころか、年内に最初のターゲットに到達し、調整に入っていることになります。

【参考記事】

●2大イベント終了で利益確定の動き加速!? トランプ大統領の弾劾裁判の影響は…?(12月19日、西原宏一)

 モルガン・スタンレーによれば、来年(2020年)のNZドル/米ドルのターゲットは0.6900ドルなのですが、本稿執筆時点でのNZドル/米ドルは0.6649ドルまで上昇しており、ターゲットまであと250pipsということになります。

NZドル/米ドル 週足(出所:TradingView)

 NZドル/米ドルは、まだターゲットに向けて順調に上昇中とも言えますが、英ポンド/米ドルは、英国の総選挙までの一方的に上昇する、比較的簡単な相場は終了し、年を超える前にいったん調整局面入り。

 ただ、2020年も、「クリフエッジブレグジット」(前回コラムを参照)がささやかれる英ポンド/米ドルは、ボラティリティの高さを維持する可能性が高く、来年(2020年)も注目通貨は、英ポンド/米ドルということになりそうです。

【参考記事】

●2大イベント終了で利益確定の動き加速!? トランプ大統領の弾劾裁判の影響は…?(12月19日、西原宏一)

 ここで気になるのは…
2大イベント終了で利益確定の動き加速!? トランプ大統領の弾劾裁判の影響は…? ブログ

2大イベント終了で利益確定の動き加速!? トランプ大統領の弾劾裁判の影響は…?

■今年最後の2大ビッグイベントが終了 みなさん、こんにちは。

 先週(12月16日~)は、今年(2019年)最後のビッグイベントでマーケットは活気づきました。

【参考記事】

●クリスマス前のセル・ザ・ファクトに注意。ユーロ/米ドルに、上昇の可能性あり!?(12月16日、西原宏一&大橋ひろこ)

 まず、米中貿易協議のフェーズ1。

 期限である12月15日(日)の数日前には、何らかの発表があるだろうと想定されていましたが、米中貿易協議のフェーズ1の合意が発表されたのは日本時間12月13日(金)未明。

 つまり、英総選挙結果と重なる時間帯となり、マーケットは一時パニック状態に…。

 12月10日(火)~11日(水)に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果を受け、108円台ミドルに下落していた米ドル/円は、一気に109円台ミドルに上昇。

米ドル/円 4時間足(出所:TradingView)

 そして、注目の英総選挙は、保守党の勝利という結果に。

 前回のコラムでご紹介させていただいたマジョリティは、なんと「80」という大勝利!

【参考記事】

●英総選挙に注目! 保守党の単独過半数は? 英ポンドは1.35ドル、1.40ドルへ続伸なるか(12月12日、西原宏一)

 この結果を受け、英ポンド/米ドルは、一時1.3514ドルまで急騰。

 しかし、今週(12月16日~)に入り、英ポンド/米ドルは、12月13日(金)に急騰した値幅をすべて失って反落しました。

英ポンド/米ドル 4時間足(出所:TradingView)

■英ポンド急落のきっかけ「クリフエッジブレグジット」とは? 英ポンド下落のきっかけになったのが、クリフエッジブレグジット(崖っぷちの離脱)。

 フォンデアライエンEU(欧州連合)委員長が、EU離脱後の移行期間が終了する2020年末までに英国と貿易合意できなければ、崖っぷちに立つことになる、つまり、クリフエッジブレグジットはEU以上に英国に悪影響を与えると発言したことで、英ポンド/米ドルは利益確定の売りも入り、400pips以上急落。

 しかし、クリフエッジブレグジットについてですが、仮に英国が移行期間を延長しないことを法制化したとしても、ブレグジットに関してはあまり関係がありません。

 たとえば、英国内法は、2019年1月21日(月)を合意なき離脱回避の期限と定めましたが、実際、当日(1月21日)になってそんな声は一切聞かれず、結局、延長されました。

 こうしたことは、ジョンソン首相の交渉術の1つだと認識しています。

 この英ポンド/米ドルの急落は、クリスマス休暇を控え、2大イベントが終わったことによる利益確定の動きが加速したと考えています。

 つまり、「セル・ザ・ファクト」。

英ポンド/米ドル 4時間足(出所:TradingView)

 このセル・ザ・ファクトの動きを警戒する向きは多かったのですが、短期間で400pips以上の急落を見せたのは、英ポンド/米ドルマーケットが、ガンマショート(※)になっていたため、短期的に売りが加速したからでしょう。

(※編集部注:「ガンマショート」とは、オプションを売り持ちしていること)

【参考記事】

●【オプションFX】のスプレッドが大幅縮小! プロがやってるガンマトレードを個人もできる

 では、英ポンド以外にも…