今井雅人の「どうする? どうなる? 日本経済、世界経済」

9月米利上げの可能性は、まだ五分五分! この先、イケイケ相場にならない理由とは? ブログ

9月米利上げの可能性は、まだ五分五分! この先、イケイケ相場にならない理由とは?

■暴落へのムチャ対策で中国市場への信頼は失墜 中国での人民元切り下げを契機として、世界の金融市場が混乱状態に陥りました。状況については、ここでは、解説は割愛します。

【参考記事】

●中国経済悪化で米利上げ先送り説浮上!人民元基準値切り下げで何が起きたのか(8月13日、今井雅人)

●中国ブラックマンデーから衝撃の急落劇!戻りの弱い米ドル/円の上値メドは?(8月27日、今井雅人)

 その後、金融市場も徐々に落ち着きを取り戻してきています。中国の経済は正直言って、かなり深刻な状態にあるのではないかと私は見ています。

 さらに申し上げれば、中国の株式市場が急落していることに対して、中国当局が空売り規制を強化したり、大株主の株式売却を禁止し、違反したものを厳罰に処するという対応をしたことは最悪でした。

 こういうムチャな対策を講じたことで、中国の株式市場に対する信頼は失墜しました。特に外国人投資家は、中国市場から離れてしまうのではないでしょうか。

 しかし、中国株式市場は、すでにかなり下落してきているので、ここから強烈な下げが起きるようなことはないと思っています。

上海総合指数 日足(出所:CQG)

 であれば、その他の金融市場への影響は、限定的ではないかと思います。

■実体経済の低迷が長期化すると資源価格に影響 一方で、実体経済の低迷は長期化する可能性が高いと考え、その影響がどうなるかも考えておく必要があるでしょう。

 一番影響が出るのは、資源価格ではないかと私は考えています。

 中国の景気が低迷すれば、原油などの資源価格の低迷は続きます。原油価格も、先物のポジション調整(ショートカバー)で若干戻ってはいますが、これも一時的。またズルズルと下がってくるのではないでしょうか。

NY原油 日足(出所:米国FXCM)

■資源国通貨は、急落しないが低迷は続くだろう そう考えると、資源国通貨にはどうしても下落圧力がかかります。

 豪ドル、NZドルなどもすでにかなり下落してきているので、急落はないと思いますが、低迷は続くのではないでしょうか。

豪ドル/米ドル 週足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 週足)

NZドル/米ドル 週足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:NZドル/米ドル 週足)

 ところで、先日…
中国ブラックマンデーから衝撃の急落劇! 戻りの弱い米ドル/円の上値メドは? ブログ

中国ブラックマンデーから衝撃の急落劇! 戻りの弱い米ドル/円の上値メドは?

■中国ブラックマンデーから暗雲立ち込め、急落劇へ 市場センチメントの一夜にしての急変。先週末のアジア市場から始まったマクロファンド勢のリスク資産縮小の動きは、週明け8月24日(月)のNY市場で一気に投げ出されることになりました。

 翌8月25日(火)のフィナンシャル・タイムズが報じているように、「中国ブラックマンデーによる株価急落で市場に暗雲が立ち込めた」相場展開となったワケですが、8月24日(月)の午後10時過ぎの数分の出来事は、これまで経験したことがないような急落劇と化しました。

■投げが投げを呼んで、米ドル/円も一時116円台まで急落! 欧州時間から急落していた時間外の日経平均先物が、一時1250円安の1万7160円まで暴落。この動きをきっかけに、相場は急転直下の動きに。

 市場の投げが投げを呼ぶという「極限状態のリスクオフ」となると、米ドル/円は、119円台半ばから116.15円まで、「ちょっと目をそらしている隙に」下落。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 その後に寄付いたNYダウも、1089ドル安の記録的な急落となりました。

米国株(US30) 1時間足(出所:米国FXCM)

 ただ、その後はNYダウが90ドル超安まで急速に買い戻されたほか、日経平均先物も50円安まで1200円の買い戻しとなると、米ドル/円は119.475円まで値を戻す展開。

 一時、1.9015%まで急低下していた米10年債利回りが、その後、プラス圏まで上昇したこともショートカバーを余儀なくさせています。引けにかけてはNYダウが再び下げ幅を拡大したこともあり、米ドル/円は、118.35円まで下押しするといった、乱高下となりました。

■中国人民元切り下げの意味とは? 思い起こせば、中国人民銀行が、「実質的な人民元の切り下げ」を断行した際、市場では、「中国当局が経済状況の悪化を全面的に認め、通貨切り下げを突然行わざるを得なかったほど、中国経済が悪化している証拠」との声も聞かれていたわけですが、一方では、「ファンド勢のポジション調整が終われば落ち着くだろう」と、あまり、今回の政策変更の意味を深刻に受け止めていなかった向きも多かったように思います。

【参考記事】

●中国経済悪化で米利上げ先送り説浮上!人民元基準値切り下げで何が起きたのか(8月13日、今井雅人)

 しかしながら、8月20日(木)にNYダウが、1万7000ドルを下抜けて安値引けとなったことをきっかけに、急速なセンチメントの悪化が蔓延。

 この問題を過小評価していた市場は、これまで買っていた日経平均や、彼らにとっては虎の子のポジションだった米ドル/円のロングを一気に売り払うことになりました。

 WTI原油先物の…
<i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>FOMC議事録受け、米9月利上げ期待後退!</i> ポイントとなった3つのキーワードとは? ブログ

<i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>FOMC議事録受け、米9月利上げ期待後退!</i> ポイントとなった3つのキーワードとは?

■発表されたFOMC議事録を受けて米9月利上げ期待後退 7月28日(火)~29日(水)に行われたFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録が、日本時間8月20日(木)に発表されました。

 内容に関して、以下にポイントをまとめてみます。

【発表された7月FOMC議事録のポイント】

・ ほぼ全員のメンバーが米経済の緩やかな拡大が続いているとの認識で一致


・ 参加者の大半が、「利上げの条件をまだ満たしていないが、その時期が近づいている」と指摘


・ 利上げに積極的な参加者は、環境がほぼ整ったと強調。利上げの遅れが急激な物価上昇を招くことを警戒


・ 利上げに慎重な参加者は、中国の景気減速やもう一段の米ドル高が、米経済を下押しし、物価上昇率の目標達成を妨げることを懸念


・ インフレ率が、中期的に委員会の目標に戻っていくと合理的に確信できるだけの改善を見せたという、「さらなる証拠が必要」で、雇用と物価の動向をさらに見極めることで一致

 これを市場はどう受け取ったかと言うと、2015年9月の米利上げ可能性が、やや後退したという受け止め方でした。

■米9月利上げ期待が後退した3つのキーワード たとえば、専門機関のデータによると、市場が織り込む9月利上げ確率は35%と、発表前日の46%から低下しています。

 どの部分で可能性が後退したと感じたのか、でありますが、3つのキーワードがあると思います。

 1つ目は、「利上げの条件をまだ満たしていない」という表現。

 これは、言葉どおりです。

 2つ目は、「(利上げには)さらなる証拠が必要になる」という表現。

 そして、もう1つは、「中国の景気減速に対する懸念」の声を示しているという点となります。

【参考記事】

●中国経済悪化で米利上げ先送り説浮上! 人民元基準値切り下げで何が起きたのか(8月13日、今井雅人)

■次回FOMCまでの米経済指標が重要! こうした状況を考えた場合、これから9月16日(水)~17日(木)に行われる次回FOMC前の米国経済指標は、非常に重要になっていきます。

 特に、雇用関係と物価関係の指標は、注目度が高まってくると思います。

例:米雇用統計(失業率・非農業部門雇用者数変化)(詳しくはこちら → 経済指標/金利:米国主要経済指標の推移)

 私は、9月に利上げが行われる可能性が高いと…
中国経済悪化で米利上げ先送り説浮上! 人民元基準値切り下げで何が起きたのか ブログ

中国経済悪化で米利上げ先送り説浮上! 人民元基準値切り下げで何が起きたのか

■9月の米利上げに向けて明確な方向性はないまま… 先週末、8月7日(金)に発表された7月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が21.5万人と市場予想の22.5万人を若干、下回る数字。

(詳しくはこちら → 経済指標/金利:米国主要経済指標の推移)

 この結果を受けて、米ドル/円は、一時124.33円まで売り込まれたのですが、6月分が22.3万人から23.1万人、5月分が25.4万人から26.0万人にいずれも上方修正されたほか、平均時給も予想どおりの数字ではありましたが、6月分の横ばいから前月比0.2%の上昇となったことが判明すると、一気に125.075円まで上昇。

 ただ、その後は、ダウ平均が大幅に下落したほか、米長期金利の低下を受けて、124.11円まで再び下落して週末の取引を終えました。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 市場では、注目していた失業率が、5.3%とイエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長が正常と考える5.0-5.2%の水準まで改善されていなかったものの、ロックハート米アトランタ連銀総裁が言及しているように、「9月利上げを遅らせるほどの悪い数字ではない」と考える向きも多く、明確な方向性がないままとなりました。

(詳しくはこちら → 経済指標/金利:米国主要経済指標の推移)

■中国人民元の基準値が連続で引き下げられた! さて、そんな中、今週(8月10日~)に入って、1つ大きな決定がなされました。

 8月11日(火)に、中国人民銀行[中国の中央銀行]が対米ドルの中国人民元の基準値をなんと、6.2298元に設定しました。

 このレートは、前日の基準値から1136ポイントの元安水準。率で言えば1.9%の元安のレベルに切り下げを行ったことになります。

米ドル/中国人民元(USD/CNY) 1時間足(出所:CQG)

 事実上の通貨切り下げとなったワケですが、中国人民銀行は、「人民元は他の通貨に比べて実効レートではまだまだ高い水準にあった」と、その切り下げに対する整合性を表明しました。

 市場は、サプライズとともにポジション調整の動きへと舵を切ることになったワケですが、翌8月12日(水)にも、中国人民銀行は、再び中国人民元の対米ドル基準値を1.6%の元安水準に決定しました。

■さらに驚いたのは中国人民銀行の介入! そして、さらに市場を驚かせたのが、8月12日(水)午後に入ってからの中国人民銀行による「米ドル売り・人民元買い」介入の実施でした。

 オンショアの中国人民元(CNY ※)では6.38元、オフショアの中国人民元(CNH ※)では6.43元レベルでの介入だった模様ですが、市場はお盆休みで流動性が極端に薄れている状況のなか、一気にリスクオフの動きに。

(※編集部注:中国人民元の通貨コードで、「CNY」は中国本土市場で取引されているものを指し、「CNH」は香港オフショア市場で取引されているものを指す)

 夜間取引の日経平均先物や米ドル/円の下落といった動きにつながっています。

米ドル/円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)

 今、起きていることは…
ドル/円が一時125円台へ上昇した理由は? 利上げを見据えて、米雇用統計が超重要! ブログ

ドル/円が一時125円台へ上昇した理由は? 利上げを見据えて、米雇用統計が超重要!

■利上げムード高まり、米ドル/円は一時、125円台へ! 8月5日(水)のニューヨーク市場で、久しぶりに米ドル/円が125円台にまで米ドル高・円安になる局面がありました。

米ドル/円 30分足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 30分足)

 黒田ラインと呼ばれる124.63円近辺をしっかり抜けて、上昇する展開となりました。

 日本の機関投資家が下がったら買うという下支えをしている中で、経済指標などにより、米国の利上げムードが高まったことが原因でしたが、これについて、もう少し詳しく解説したいと思います。

■米9月利上げに賛成? 中立? 反対? まず、8月4日(火)に新聞記事の中で、アトランタ連銀のロックハート総裁が、FOMC(米連邦公開市場委員会)は、利上げの用意が整う位置に「接近しつつある」と述べています。

 さらに、彼は利上げを9月から後へ先延ばしすることについて、「自身が納得するには、経済データが顕著に悪化する必要がある」とも述べています。

 彼は、今の状態では、9月の利上げには賛成するということです。

 さらに翌8月5日(水)のテレビインタビューで、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)理事は、利上げに関して、「時は近づいている」と認めたうえで、9月のFOMCで利上げを支持するかどうかを決める前に、「それまでに発表されるデータを見極めたい」との考えを示しています。

 こちらはまだ、中立というところでしょうか。

■最近発表された米経済指標の結果を振り返る 経済指標が重要ということなので、直近、発表された米国の経済指標の結果を少し見ておきます。

 まず、8月3日(月)に発表されたISM製造業景況指数7月分ですが、予想53.5に対して52.7と若干弱い結果になっています。

(詳しくはこちら → 経済指標/金利:米国主要経済指標の推移)

 一方、8月5日(水)に発表されたISM非製造業景況指数7月分は、予想56.2に対して60.3という驚異的な結果となりました。

 5日(水)のニューヨーク市場で米長期金利が上昇し、米ドル高になったのは、この結果に反応したということです。

米国長期金利(出所:CQG)

 そういう意味においては…
まだ資源国通貨を買いと言えないワケは? 確実なのは米ドル/円の押し目買い戦略か ブログ

まだ資源国通貨を買いと言えないワケは? 確実なのは米ドル/円の押し目買い戦略か

■目立った変化はなかった米FOMC 7月28日(火)、29日(水)に米国でFOMC(米連邦公開市場委員会)の会議が開催されました。

 今回は、イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長の会見はないFOMCだったので、それほど重要な決定がされることはないというのがコンセンサスとなっていましたが、それでも声明文の表現がどう変化しているかに市場関係者は注意を払っていました。

 結論を言うと、目立った変化はありませんでした。

 また、利上げをいつ開始するかを示唆するような表現も見受けられませんでした。

■個人的には2015年9月のFOMCで利上げすると考える 経済の動向に関しては、「この数カ月で穏やかに拡大した」と指摘しています。

 また、雇用環境に関しては、「労働市場は改善が続いた。雇用の伸びは堅調で、失業率は低下している」との見方を示しています。そして、「労働市場がさらにいくらか改善し、物価が上昇するという合理的な確信が得られれば、利上げに動く」方針を示しています。

 若干変わった点を挙げるとすれば、労働市場の「さらなる改善」ではなく「さらにいくらかの改善」という表現に変えています。この表現が、前回より若干ではありますが、利上げに近づいたと市場は解釈したようです。

 私、個人的には、次回の2015年9月に、FOMCは利上げをすると考えていますが、市場の予想は、まだ五分五分のようです。

■米ドル高トレンドに向かうと考えるのは、早計だろう 声明が出た後は、若干、乱高下しましたが、動きもすぐに落ち着いてジリジリと株高・米ドル高に向かっています。

米国株(US30) 1時間足(出所:米国FXCM)

米ドル/円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)

 しかし、これでまた米ドル高トレンドに向かっていくと考えるのは早計だと思っています。

 米ドル/円では、黒田ラインの124.63円を抜けて、再び125円台に向かっていくには、もう少し力強い材料が必要になってくるのではないでしょうか。

【参考記事】

●ドル/円は黒田ライン124.63円を越えられず。NZドルは利下げでなぜ、上昇したのか?(7月23日、今井雅人)

 ここのところの日本の機関投資家などの動きを…
<i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>ドル/円は黒田ライン124.63円を越えられず。</i> NZドルは利下げでなぜ、上昇したのか? ブログ

<i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>ドル/円は黒田ライン124.63円を越えられず。</i> NZドルは利下げでなぜ、上昇したのか?

■米ドル/円は黒田ラインを上抜けることができなかった 前回のコラムでは、イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長の発言を紹介して、その発言が米ドル高要因になっているという内容を解説しました。

 ただし、現在の市場環境を考えると、緩やかな動きとなるのではないかという予想をしました。

【参考記事】

●一方的な株高・円安になりにくいワケは?GPIFの株買い・円売りはまだ続くのか?(7月16日、今井雅人)

 その後の動きを見てみましょう。

 米ドル/円は、124円台半ばまで上昇しましたが、結局そこで力尽きて、その後は、124円を挟んでのレンジ相場になっています。

 今、市場の中で意識されている、いわゆる黒田ライン(6月10日の高値124.63円)という水準を結局は、上に抜けることができませんでした。

【参考記事】

●本音ポロリ!? 黒田総裁発言の真意とは?一時的な影響で再びドル高・円安に戻るか(6月11日、今井雅人)

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 この間の機関投資家の動きを見てみると、やはり上がっていくところはじっと我慢して、反落したところで買うというパターンを繰り返しています。

 現時点では、123円台半ばあたりでの買い注文が多いようです。

■ユーロ/米ドルは短期ポジション積み上がり、すぐに反転… ユーロ/米ドルですが、こちらは、1.12ドル台からの下落をさらに追いかけていこうという動きが見られ、一時期は、1.0800ドルを下抜くような動きを短期の投機筋が活発に行っていたようです。

 しかし、結局、下抜けさせることに失敗してしまうと、逆に短期的なショートポジションが積み上がってしまい、その反動でユーロ/米ドルは反転。

 今度は、なかなか下がらなくなっています。

ユーロ/米ドル 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)

 市場全体のエネルギーがあまり大きくない状況なので、どちらかに相場が一定程度動くと、すぐ短期的なポジションが積み上がってしまい、反転してしまうという流れに、現在はなっているようです。

 じれったい相場展開となってしまっていますが、それも相場であるので、割り切ってつきあうしかないと思っています。

 大きく狙わないで、ていねいに取引をする時期と考えてほしいです。また良い相場が、いずれやってきます。

 その他で注目する動きとしては…
一方的な株高・円安になりにくいワケは? GPIFの株買い・円売りはまだ続くのか? ブログ

一方的な株高・円安になりにくいワケは? GPIFの株買い・円売りはまだ続くのか?

■ギリシャと中国株式市場がとりあえず落ち着いた ギリシャの問題も、結局、ギリシャが屈した形となって決着を見る見通しとなりました。

 中国の株式市場も、中国当局のなりふり構わぬ対応で下落に歯止めがかかっています。

【参考記事】

●日中株価がさらに急落する可能性は低い。中国政府の「死に物狂い」の対応策とは?(7月9日、今井雅人)

 2つの不安材料がとりあえず落ち着いたことで、市場も、その前の段階のところまで戻してきています。

 結局のところ、ポジション調整の材料とされてしまったということだと思います。

 ただ、中国株式に関しては、下落は止まったものの、反転して上昇トレンドに向かう可能性は低いと私は考えています。

上海総合指数 日足(出所:CQG)

■イエレンFRB議長の議会証言に注目! さて、米国では、7月15日(水)に、イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長が、半期に一度の議会証言を米下院金融委員会で行いました。

 まず、その内容から見てみましょう。

「米経済はこれまでよりもかなり良い状況にあると言える。低金利がその支えとなってきた。利上げに踏み出す決定は経済状況が決して悪くないとする我々の見方を反映する。

米経済は望ましいとされる状況に近づきつつあり、利上げをこなせるだけでなく、利上げを必要とする状況にあると考える。逆風は存在し、FRBは金融政策を用い、それを克服することに取り組んできた」

「利上げにより経済がリセッションに陥ると予想される場合、利上げは行わない。我々は、議会に委託された目標の達成に向け金利の引き上げが適切となるほどに経済が十分に力強いと見なす時に、利上げを実施する」

「(利上げを)待ち過ぎた場合、利上げを開始した後は、より速いペースで実施しなくてはならないことを当然意味する。このため、若干早めに開始することの利点は、金利の道筋が緩やかなものになる可能性があるということにある。

現時点ではFF金利(※)の引き上げを行う適切な時期をめぐる判断はしていない。我々の判断は、経済の進展、およびその進展が我々の見通しにどのような影響を及ぼすかに左右される」

(編集部注:「FF金利」とは、フェデラルファンド金利のことで、FFレートとも呼ばれる。米国の政策金利)

 少し解説を…
日中株価がさらに急落する可能性は低い。 中国政府の「死に物狂い」の対応策とは? ブログ

日中株価がさらに急落する可能性は低い。 中国政府の「死に物狂い」の対応策とは?

■ツイッターに書き込んだ懸念が現実のものに… 7月7日(火)の自分のTwitter(ツイッター)に、「ギリシャ問題は、世界の金融市場にはあまり影響が出ないとは思いますが、心配なのは、むしろ中国です」という書き込みをしました。

 いみじくも、翌日7月8日(水)から中国株が急落を始め、日経平均も急落。為替市場でも、リスク回避の円高が進行するという展開となっています。

■上海総合指数は、2000ポイント近くの上昇と下落! 中国株の代表的指数である、上海総合指数を例にとってみましょう。

 2015年に入ってから、3000~3500ポイントの水準でのもみ合いが続いていました。しかし、3月中旬から急上昇を始め、6月12日(金)には、5178ポイントの高値をつけています。

 3カ月の間に、2000ポイント近く上昇したことになります。

上海総合指数 日足(CQG)

 しかし、その後、一転して下落トレンドに入り、わずか1カ月で上昇し始めた頃の水準にまで戻してきています。

 驚くようなスピードで、下落してきたということになります。

■中国政府が打ち出した「死に物狂い」の対応策 これに対して、中国政府も様々な対策を打ち出しています。

 まず中国の主要証券会社が、中国株式投信に2.4兆円の資金をつぎ込むことを発表しました。

 それでも下落が止まらないのを見ると、中国当局は、企業の主要株主などの持ち株売却を禁止するという禁じ手に打って出ました。

 「死に物狂い」という印象です。

 これにより、やはり中国という国は、健全な資本主義国家とは違う、ということをさらけ出してしまったと、私は感じています。

 実質的には、典型的な国家資本主義の国なのでしょう。

■「山高ければ谷深し」で元の水準に戻っただけ 中国の問題は、それだけではありません。一番の問題は、実体経済に陰りが見えているということです。

 中国関係のビジネスを行っている日本企業も、中国での業績が落ちてきていると発言しています。

 新車の販売台数も、伸び悩んでいるようです。GDP成長率も、2015年は7%を下回るという見方が広がってきています。

 こうしたことが、株価急落の背景にあるのだと思います。

 実際には、上がった分だけ下がった、つまり「山高ければ谷深し」ということで、元の水準に戻っただけです。

 一度荒れた相場は、しばらく余韻を残すものであるので、まだしばらくは、乱高下が続くかもしれません。

 しかし、ここからさらに急落していくという展開には、ならないだろうと考えています。

 さて、日本の市場ですが…
ギリシャ国民投票は賛成多数で一件落着!? 離脱・デフォルトでも痛くもかゆくもない? ブログ

ギリシャ国民投票は賛成多数で一件落着!? 離脱・デフォルトでも痛くもかゆくもない?

■7月5日(日)は、ギリシャの国民投票だが… 今回は、まず、ギリシャの話からしたいと思います。

 ツィプラス首相は、昨日7月1日(水)、債権者に書簡を送り、条件付きで譲歩する姿勢を示しましたが、ユーロ圏各国はこれを拒否しました。

 相変わらず、ギリシャとユーロ圏各国の溝は埋まりません。

 そうこうしているうちに、7月5日(日)には、ギリシャで緊縮策の賛否を問う国民投票が実施されます。

 今、このコラムを書いている時点(7月2日)では、結果はわかりませんが、これは、ある意味、今のツィプラス政権が統治能力を失ってしまったことを証明しているようなものです。

ギリシャのツィプラス首相。7月2日現在、国民投票の結果はまだわからないが、これは、ある意味、今のツィプラス政権が統治能力を失ってしまったことを証明しているようなもの!?

(C)Greek Prime Minister's Office via Getty Images

■ギリシャがユーロ離脱、デフォルトしても影響は大きくない 私は、賛成が上回るのではないかと思っていますが、仮にそうなった場合は、一件落着となります。

 逆に、反対となった場合は、ギリシャのユーロ離脱、デフォルトという流れになる可能性が高くなってきます。

 しかし、私はその場合でも、市場への影響はそれほど大きくはないと考えています。

【参考記事】

●日本株上げ相場の終焉は、どう予測する?ギリシャ問題決着の市場への影響は軽微(6月25日、今井雅人)

ユーロ/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)

 デフォルトは、確かに国にとっては一大事ですが、それによってギリシャ国民も現実を知ることとなり、意識が変わっていくと思います。

ユーロ離脱? デフォルト!? 混乱の中にあるギリシャ国民…。いったいどうなるのだろうか…

(C)ZUMA Press/amanaimages

 そして、資金調達ができなくなるので、結局は、IMF(国際通貨基金)などに救いの手を求めることになると思っています。

■市場への影響は、1日ぐらいのものだろう また、ギリシャがユーロから離脱したからと言って、ユーロ圏の国には痛くもかゆくもないでしょう。

 むしろ、ポルトガルやスペイン、イタリアなどの国は、身を引き締め直すきっかけになるかもしれません。

 いずれにしても、1日ぐらいは市場に影響が出るかもしれませんが、その影響も持続しないと思っています。

ユーロVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 日足)

 さて、金融市場は…