今井雅人の「どうする? どうなる? 日本経済、世界経済」

新型コロナウイルスでリスクオフの今は、 円売りの絶好のチャンスになるかも!? ブログ

新型コロナウイルスでリスクオフの今は、 円売りの絶好のチャンスになるかも!?

■新型コロナウイルスに市場の関心が集中 現在、市場の関心事は、中国・湖北省武漢で発生した、新型コロナウイルスに集中しています。

 その感染状況については、2002年から2003年にかけて流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)と比較してみると、よくわかります。

 新型コロナウイルスによる肺炎の感染者は、1月30日(木)時点で、9692人と報道されています。SARSの感染者は5300人程度であったので、わずか2カ月足らずで、新型コロナウイルスはそれを上回ってしまっています。

 一方、SARSと比べると、症状が重症化することについては、かなり確率が低いと言われています。

 感染率は高いが重症化率は低いという状態を、どう評価していいのかわからないというのが、市場関係者の実感ではないでしょうか。

【参考記事】

●コロナウイルス騒動で景気低迷!? 隠れQE打ち切りに言及するのか? FOMCに注目!(1月27日、西原宏一&大橋ひろこ)

●ドル/円は109円中心のレンジで戻り売り。新型コロナウイルスでリスク回避の動き続く(1月28日、バカラ村)

■リスクオフで為替市場は円全面高 しかし、中国政府が移動制限をかけたり、中国からの受け入れを拒否する国が出てきたりして、少なくとも、人の移動という点については、かなりの影響が出てきているのは事実だと思います。

 そういう状況を懸念して、金融市場全体がリスクオフの動きとなってきています。

 世界の株式市場は、連日下落し、日経平均は1月30日(木)の終値で、2万3000円の大台を割り込みました。

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 そうした株価の下落を受けて、為替市場では、円全面高という展開となっています。

世界の通貨VS円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)

■株買い・円売りの絶好のチャンス!? さて、今後の展開ですが、病原菌のことなので、私自身は専門家ではありませんが、このウイルスによる経済への影響は、それほど心配しなくてもいいのではないかと考えています。

 もし、ウイルスが変化して、重症化するようなものになっていけば、状況も変わるのかもしれませんが、そこまでにはならないと思っています。

 そうであれば、通常のインフルエンザとそれほど変らないわけですので、段々と市場も落ち着きを取り戻すのではないかと考えています。

 その前提に立てば、現在の株価の下落は絶好の買いのチャンスということになりますし、為替市場も円売りのチャンスということになるのではないかと考えています。

【参考記事】

●中国の新型肺炎では株高・円安のトレンドは変わらない! 押し目買いの好機到来!(1月24日、陳満咲杜)

世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)

 ところで、今月末(1月31日)、いよいよ…
動かない為替相場にどう向き合うべき…? 下値堅いドル/円は109.20~40円メドに買いか ブログ

動かない為替相場にどう向き合うべき…? 下値堅いドル/円は109.20~40円メドに買いか

■相場は膠着。トレードへの向き合い方は? 米中貿易交渉、英国のEU離脱(ブレグジット)問題など、政治的な材料がいったん落ち着いてしまったことで、市場はとても静かになってきました。さらに、各国の中央銀行も、当面、新しい動きを見せる様子がないことが、より相場を膠着させることになっています。

【参考記事】

●2020年の注目材料とトレード戦略はコレ! オリンピック後の景気後退は都市伝説!?(1月9日、今井雅人)

 トランプ米大統領が、1月21日(火)から開催されている世界経済フォーラム(ダボス会議)で、何か新しい発言をするかもしれないと思われていましたが、従来からの主張を述べたに留まりましたので、あまり材料視されませんでした。

注目されたダボス会議でのトランプ大統領の発言内容は、従来の主張を述べるに留まったため、あまり材料視されなかった (C) Chip Somodevilla/Getty Images News

 これでは、正直、近いうちに相場に方向感が出てくることは、まずないと考えてトレードに向き合わないといけないと思います。

■下値が堅い米ドル/円は押し目買い方針 まず、米ドル/円ですが、米国株式の好調もあって、一時110.00円を超える動きとなっていました。

 しかし、やはり110円台は、輸出企業の米ドル売りや、ポジションをロング(=買い)にしていた人の利食い売りが出てきて、なかなかそのレベルを維持することができません。

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

 一説によると、中国で発生している新型肺炎(コロナウイルス)の感染拡大懸念で、米ドル/円が売られているということですが、本当かどうか、よくわかりません。ただ、利食いの材料として利用されている可能性は、あるかもしれないなと思っています。

 僕自身は、米ドル/円の下値は堅いと考えていますので、もう少し下がった局面があれば、米ドル/円のロングポジションを作ってみようと思っています。

【参考記事】

●110円超えの米ドル/円は当面、押し目買い。ユーロ/米ドルは、上がれば売りが良さそう(1月17日、今井雅人)

 レンジが狭いので、何とか良いところで買えないかなと思っています。メドとしては、109.20~40円の間と考えています。

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

 また、ユーロ/米ドル、ユーロ/円ですが…
110円超えの米ドル/円は当面、押し目買い。 ユーロ/米ドルは、上がれば売りが良さそう ブログ

110円超えの米ドル/円は当面、押し目買い。 ユーロ/米ドルは、上がれば売りが良さそう

■米中が第1次合意。懸念材料が1つ消滅 1月15日(水)、米中は貿易に関しての第1次合意をしました。ようやく、という感じです。

 今回の内容は、簡単に言えば、中国が米国から農産物などを大量に購入する代わりに、米国は中国への追加関税を見送るというものです。11月の大統領選挙に向けて実績をアピールしたいトランプ米大統領が、かなり妥協をした結果だと思います。

【参考記事】

●2020年の注目材料とトレード戦略はコレ! オリンピック後の景気後退は都市伝説!?(1月9日、今井雅人)

●2019年の為替市場を総まとめ! 米中貿易摩擦とブレグジット問題は、2020年も続く!?(2019年12月27日、今井雅人)

1月15日、米中は貿易に関する第1次合意で署名に達した。今井氏は、その内容から、大統領選挙に向けて実績をアピールしたいトランプ米大統領が、かなり妥協をした結果ではないかと指摘。写真は2019年6月の大阪G20時のもの (C)Visual China Group/Getty Images

 もちろん、中国の企業への補助金政策など、根本的な問題に対しては先送りですし、これまで課してきた関税もそのまま残っていますので、まだまだこれからという面はあります。

 しかし、合意は合意です。これで、1つ、金融市場が心配していた懸念材料が、当面はなくなったと考えるべきだろうと思います。

■株高を心配しすぎる必要はない 実際のところ、米国の株式市場では、主要株価指数が連日、史上最高値を更新しています。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 これだけ、連日、上がり続けると、ちょっと心配になったりもするのですが、今は、あまり心配しすぎないようにしたほうが良いのではないでしょうか。

■米国とイランの緊張もいったん収束 米国がイランの軍事司令官を殺害したことで、一時、不安材料となった米国とイランの関係悪化ですが、イランが形だけの報復として米国の軍事基地をミサイル攻撃し、これ以上はやらないと宣言したことで収まりました。

 両国の関係は、悪化した状態のままではありますが、いったん、緊張は収まったと考えて良いと思います。

【参考記事】

●2020年の注目材料とトレード戦略はコレ! オリンピック後の景気後退は都市伝説!?(1月9日、今井雅人)

●イラン戦争の心配はイランかった!? 出た~! 米ドル/円に調整完了のサイン!(1月10日、陳満咲杜)

●イランと米国による戦争回避で株価反発! リスクオフ沈静化で豪ドル買いに妙味!?(1月9日、西原宏一)

■米ドル/円は当面、押し目買いで! さて、リスクオンの動きが広がっていることで、為替市場も円安傾向になっています。

世界の通貨VS円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)

 米ドル/円は、なかなか抜くことができなかった110.00円を超えてきました。最初に110円を超えたときは、さすがに輸出企業の米ドル売りや利食いの米ドル売りが出てきて、いったん109円台に戻りましたが、その後、下押しもそれほどではなかったこともあって、また110円台に戻ってきています。

【参考記事】

●米ドル/円は年末年始にかけて110円へ!? EU離脱で2020年の英ポンドは下落か(2019年12月19日、今井雅人)

●米ドル/円は上昇するチャートパターンに! でも、米中署名後は方向感なく推移する!?(1月14日、バカラ村)

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

 これからですが、この相場は大きく崩れることはないと、私は考えています。

 一気に111円、112円と向かっていく相場ではないかもしれませんが、よほど不測の事態が起きない限り、下に抜けていくような相場ではないと思いますので、当面、米ドル/円の押し目買い方針で、トレードをして大丈夫ではないでしょうか。

 その他の通貨では…
2020年の注目材料とトレード戦略はコレ! オリンピック後の景気後退は都市伝説!? ブログ

2020年の注目材料とトレード戦略はコレ! オリンピック後の景気後退は都市伝説!?

■ソレイマニ司令官殺害で世界に緊張! みなさん、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 さて、年初から大きな出来事がありました。

 トランプ米大統領の指示により、米国軍がイランのソレイマニ司令官を殺害したことで、世界に緊張が広がりました。

米ドル/円 4時間足(出所:TradingView)

 この措置に対し、イラン国内は怒りに満ち溢れ、軍関係者も政府関係者も宗教指導家も、口をそろえて米国を非難し、必ず報復すると発言をしました。

【参考記事】

●第3次世界大戦の危機!? 今はイラン情勢がすべて。ドル/円や豪ドル/円は戻り売りか(1月6日、西原宏一&大橋ひろこ)

●ソレイマニ司令官暗殺で中東情勢緊迫化! トルコリラの2つのリスクシナリオとは?(1月8日、エミン・ユルマズ)

■全面戦争突入の不安は払拭 下手をすれば、イランと米国の全面戦争に突入するかと心配されましたが、その不安はどうやら払拭されたようです。

 イランは、国内向けのアピールという面もありますが、イラクにあるいくつかの米軍の基地にミサイル攻撃をしかけました。しかし、これは非常に抑制された攻撃で、米国人の死者は一人も出ませんでした。さらに、イラン側は、これで報復は終わりで、戦争は望んでいないというメッセージも出しています。

 これに対して、トランプ米大統領も、「軍事報復はしない」と発言。その代わりとして、新たな経済制裁を科すとしました。

 よくよく考えてみると、どちらも戦争だけは避けたいという意図が、最初から見え見えだったわけです。

【参考記事】

●米ドル/円は、新たなレンジで戻り売り! 中東情勢緊迫化は、短期で決着がつきそう(1月7日、バカラ村)

■中東リスクを材料にした相場はいったん終了へ 金融市場も、一時、リスクオフで株価急落、円全面高という展開がありましたが、現在は落ち着きを取り戻し、元に戻ってきています。

世界の通貨VS円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 1時間足)

 これでいったん、この材料は終わりかなと考えています。

■2020年の注目は米大統領選。米ドルはどうなる? さて、今年(2020年)1年を展望してみましょう。

 今年(2020年)は、何といっても、米大統領選挙がもっとも注目されます。

 トランプ米大統領は、これから再選に向けて、とにかく景気を浮上させることに全力を傾けると思います。

 FRB(米連邦準備制度理事会)に対しても、さらなる利下げ圧力をかけてくるでしょう。

今井氏は、11月の米大統領選で再選を果たしたいトランプ大統領が、ここから景気を浮上させることに全力を傾けるだとうと予想している。FRBに対しても、さらなる利下げ圧力をかけてくるのではないかと指摘。写真は2016年の米大統領選に向けた演説時のもの (C)Mark Wilson/Getty Images

 そうなると、若干、米ドル安圧力がかかりますが、一方で米国の景気が底堅いことで下支えされるため、米ドルは、狭いレンジの中で安定的に推移することが多くなるのではないかと考えています。

ドルインデックス 週足(出所:Bloomberg)

 米中は、おそらく来週(1月13日~)…
2019年の為替市場を総まとめ! 米中貿易 摩擦とブレグジット問題は、2020年も続く!? ブログ

2019年の為替市場を総まとめ! 米中貿易 摩擦とブレグジット問題は、2020年も続く!?

■2019年の為替相場を振り返り 今年(2019年)も残すところ、あと数日になりました。そこで、今回は少し、今年1年を振り返ってみたいと思います。

 全体的に言って、今年(2019年)の為替市場は、本当に変動幅の少ない、静かな展開となりました。

【参考記事】

●ザイFX!で2019年を振り返ろう!(1)大暴落後は動かない、動かない、動かない

米ドル/円 週足(出所:TradingView)

 そんな中でも、比較的、市場に影響を与えた3つの要因があったと思います。それを、1つずつ、見ていきたいと思います。

■米中貿易摩擦に振り回された1年 まず、もっとも影響が大きかったのは、米中の貿易摩擦の問題でした。

 トランプ米大統領は就任以来、世界各国と1対1での貿易交渉を展開してきましたが、その中で最大の注目であったのが、対中国でした。この問題については、再三にわたって触れてきましたので、ここでは詳しい説明は省略します。

【参考記事】

●米ドル/円は100円割れ? それとも110円へ!? カギ握る米中首脳会談から目が離せない!(6月27日、今井雅人)

●米中交渉決裂なら米ドル/円は105円割れ!? トランプ大統領の円安誘導批判にも警戒!(6月13日、今井雅人)

●米ドル高でも米ドル/円は、なぜ上昇しない? 米中貿易交渉に中国が秘密兵器を投入!?(5月30日、今井雅人)

●米中の関税合戦は世界経済にマイナス! 米ドル/円とクロス円はショート戦略で(5月16日、今井雅人)

 トランプ米大統領は数次にわたって、中国からの輸入品に対して関税措置を追加していきました。さらに、トランプ米大統領は、中国との貿易不均衡を解消するに留まらず、中国政府が実施している国内企業への補助金などの、国家政策の転換を迫ってきました。

 これは、中国政府としては、絶対に飲めない要求でした。事態は次第に悪化していきました。

今井氏が今年、為替市場にもっとも影響が大きかった材料として挙げたのが米中の貿易摩擦問題。米国の追加関税措置は第4弾にまで達し、事態は次第に悪化していった。写真は2019年6月の大阪G20時のもの (C)Visual China Group/Getty Images

 米国と中国は、GDP(国内総生産)が世界1位と2位ですから、この2つの国の貿易衝突は、当然、世界経済全体に大きな影響を与えます。交渉が難航して、トランプ米大統領がツイッターで不満を述べるたびに、金融市場はリスクオフの動きを見せ、為替市場でも、円全面高の展開となる場面もありました。

【FX初心者のための基礎知識入門】

●GDPを見ればその国の景気がわかる! 実質・名目の違いは? 個人消費にも注目

世界の通貨VS円 週足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 週足)

■2020年、米中の交渉は第2弾へ しかし、トランプ米大統領も、来年(2020年)の大統領選挙を控えて、何かしらの成果がほしかったのと、米国の経済界からも、中国との貿易摩擦による米国経済へのマイナス影響を懸念する声が挙がってきたこともあって、突然、大きな妥協をします。

 中国が、米国の農産物を大量に購入するという条件で、部分合意をするという動きに出ました。おそらく、近日中にも、正式に署名されて部分合意が決定すると思います。

【参考記事】

●米ドル/円は年末年始にかけて110円へ!? EU離脱で2020年の英ポンドは下落か(12月19日、今井雅人)

●米中部分合意で米ドル/円に110円の可能性。でも、リスクオンの円安基調は期間限定!?(10月18日、今井雅人)

●米中が部分合意へ!? トランプ大統領が米中貿易摩擦のヤバさに気づいた!?(10月11日、今井雅人)

年末になって米中はようやく、第1段階の合意に達したと発表。今井氏は、2020年の大統領選挙を控えて、トランプ大統領が妥協したと指摘している (C) Chip Somodevilla/Getty Images News

 この動きに、今度は市場がリスクオンに転じ、株価は上昇。為替も円安に戻っていきました。

世界の通貨VS円 週足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 週足)

 来年(2020年)も、第2弾の交渉がどう展開していくかが、金融市場に影響を与えることは必至です。

 2つ目は英国EU(欧州連合)離脱問題、いわゆるブレグジット問題です。これも…
米ドル/円は年末年始にかけて110円へ!? EU離脱で2020年の英ポンドは下落か ブログ

米ドル/円は年末年始にかけて110円へ!? EU離脱で2020年の英ポンドは下落か

■2019年は動きの少ない1年に… 今年(2019年)も残すところ、あと10日余りとなりました。本当に今年は、動きの少ない1年でした。おそらくこのまま、1年を終えることになると思います。

【参考記事】

●ザイFX!で2019年を振り返ろう!(1) 大暴落後は動かない、動かない、動かない

米ドル/円 月足(出所:TradingView)

 米中貿易交渉も1次合意に達し、いったん、落ち着いてしまいました。

 中国は、国家の経済政策の根幹でもある基幹産業への補助金などについて、断固たる態度をとっていましたが、それに対してトランプ大統領が折れたという結末となっています。

■米中、来年は第2弾の協議へ。相場への影響は…? 結局、トランプ大統領は、来年(2020年)の米大統領選挙に向けて、成果がほしかったのだと思います。今後、中国への米国産農産物の輸出が増えるということを、農業地域でアピールするための合意ではなかったかと考えています。

【参考記事】

●米中問題とブレグジットがいったん収束。リスク選好でオセアニア通貨を押し目買い(12月17日、バカラ村)

 中国としても、まだ途中段階で課せられた関税は、そのままになっていますので、来年(2020年)、第2弾の協議が行われるでしょう。そのときにまた、相場にある程度の影響が出てくるのではないかと思います。

米中の通商協議は来年(2020年)、ステージを第2弾へ移して行われていく予定。今井氏はそのときにまた、相場にある程度の影響が出てくるのではないかと予想している。写真は2019年6月の大阪G20時のもの (C)Visual China Group/Getty Images

■当面は円高要因の1つが消滅 この問題は、深刻化するとリスクオフになるということで、円高リスクが心配されていました。

 実際、交渉が難航するたびに円高になっていたのは、みなさんもご存知だとは思います。ということは、当面は、円高要因が1つ消えたということになります。

世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)

■ブレグジットは英国経済にマイナス!? ブレグジット(英国のEU(欧州連合)離脱)問題も、英保守党の歴史的圧勝によって、方向性がはっきりしました。

【参考記事】

●いよいよ英総選挙。13日のアジア市場が主戦場に! 米ドル/円は110円台へ!?(12月12日、今井雅人)

●英総選挙の出口調査で保守党が圧勝! 対中関税も見送りへ…ポンド急騰&円下落

 1つ言えることは、英国は予定どおり、EUから離脱するであろうということです。

 私は、英国のEUからの離脱は、英国経済にとって決してプラスにならないと考えてきました。それは、英国、特にロンドンに欧州の拠点を構えている企業が、世界にたくさんあるからです。

 英国がEUから離脱することになれば、かなりの企業がEU圏内に拠点を移すことが予想されます。実際、すでにそうした動きは起きています。

 それに加えて、ボリス・ジョンソン英首相は…
いよいよ英総選挙。13日のアジア市場が 主戦場に! 米ドル/円は110円台へ!? ブログ

いよいよ英総選挙。13日のアジア市場が 主戦場に! 米ドル/円は110円台へ!?

■FOMCは予想どおりの据え置き 今週(12月9日~)は、かなり重要なイベントが目白押しであるので、なかなか方向感の出ない動きが続いています。

 そのイベントですが、まず、12月10日(火)~11日(水)に、米国でFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されました。

【FX初心者のための基礎知識入門】

●FOMCとは? 米国の政策金利FFレートやイベントのスケジュールを徹底解説!

 FF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標レンジは、1.50~1.75%に据え置き。これは、市場の予想どおりの結果でした。

※フェデラル・ファンドレートの誘導目標レンジ上限を掲載

※FRBのデータをもとにザイFX!が作成

 声明文を覗いてみると、これまで表明されていた「見通しに対する不確実性が残っている」との文言が削除されました。

 先行きの不安材料が減ってきたとの判断があったのかもしれません。

■FF金利は2020年末まで現状維持か また、声明文と同時に公表された「経済・金利見通し」の中のドット・チャート(FOMCメンバー全員のFF金利予想)では、来年、2020年末時点の予想が据え置き(1.50~1.75%)に集中していることが判明しました。

 来年(2020年)、1回の利上げを予想しているメンバーは4人だけで、残りの13人はすべて、据え置きが適正レベルであるとの認識でした。

12月FOMCで公表されたドットチャート(出所:FRB)

 さらに、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の定例記者会見では、「現在の政策金利は適切である」ことを示すと同時に、「物価の著しく、かつ持続的な上昇を確認するまでは、利上げの可能性は低い」との見解を表明。将来的な利上げの可能性が、かなり低いことを強調しました。

パウエルFRB議長は定例記者会見で、将来的な利上げの可能性がかなり低いことを強調した (C)Bloomberg/Getty Images News

■物足りなかった為替相場の動き… 市場は強めの声明文を受けて、発表直後は米ドル買いで反応しましたが、その後は、一転して米ドル売りとなりました。

米ドル/円 15分足(出所:TradingView)


 ただ、値幅や値動きは、かなり小さく、FOMCといった大きなイベントのあとの動きとしては、物足りないものとなっています。

 市場では、「利上げも利下げも、しばらくはないということだが、メンバーの見通しがこれまでのようにばらつきがなく、まとまってきたことは相場にはプラス」との認識となっているようです。

 そして、一番の注目は、本日…
トランプ大統領の要求は、さらに過激に!? 米ドル/円は110円台へ。押し目買い継続 ブログ

トランプ大統領の要求は、さらに過激に!? 米ドル/円は110円台へ。押し目買い継続

■トランプ大統領、NATOで大暴れ!? 今週(12月2日~)も、またもやトラブルメーカーのトランプ大統領が、世界を混乱させています。

 12月4日(水)まで開催された、NATO(北大西洋条約機構)の首脳会談で、各国のトップと激しい衝突を繰り広げました。

ロンドンで開催されたNATOの首脳会談で各国のトップと激しい衝突を繰り広げ、世界を混乱させているトランプ大統領 (C) Chip Somodevilla/Getty Images News

 まず、最初の相手は、フランスのマクロン大統領でした。

 マクロン大統領は11月、英誌のインタビューで、NATOが機能不全に陥っていると指摘し、「脳死状態」との表現で批判をしてきました。トランプ米大統領の非協力的な態度を、暗に批判してきたのだと思います。

 一方のトランプ米大統領は、就任以来、他の加盟国にGDP(国内総生産)の2%を国防費にあてるという、共通目標の達成を求めてきました。

【FX初心者のための基礎知識入門】

●GDPを見ればその国の景気がわかる! 実質・名目の違いは? 個人消費にも注目

 これに対して12月3日(火)、マクロン大統領は、「ただの金の問題ではない。どんな役割を果たすべきか、という根本を明確にしなければならない」と痛烈に批判し、激しい言い合いになったということです。

■記者会見をキャンセルして帰国 次は、カナダのトルドー首相です。

 NATOの前夜祭であるバッキンガム宮殿での晩餐会で、トルドー首相はフランスのマクロン大統領や英国のジョンソン首相との会話で、トランプ大統領が、個別の会談の冒頭で「記者団に対して40分も話し続けたから遅刻した」と説明したあと、トランプ米大統領に対して「側近達も呆れて、あごが床に落ちるほどだった」と談笑している様子を、フランスの一部メディアが報じました。

 これに対して、トランプ米大統領は、「トルドーは二枚舌だ」と痛烈に批判し、予定していた記者会見をドタキャンして、米国に帰ってしまいました。

トランプ大統領を皮肉る発言が一部メデイアに報じられたカナダのトルドー首相。写真は2016年9月のイベント講演時のもの。トランプ大統領はトルドー首相を批判し、記者会見をせずに帰路についた (C)Bloomberg/Getty Images

■米中の第1段階の合意にも「待った」!? さらに、トランプ米大統領はこれまで、中国との貿易交渉に関して、第1段階の合意が確実になってきているとの認識を示していましたが、12月3日(火)になって、訪問先のロンドンで「交渉の期限は設けない。来年(2020年)の大統領選挙まで待っても良い」と、突然、発言をしました。

 これにより、一時、米国の株価が急落し、為替市場では円高が広がりました。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

米ドル/円 4時間足(出所:TradingView)

 本当にお騒がせな大統領です。実際のところは…
米ドル高・円安で米ドル/円は110円超えへ! スワップ狙いのトルコリラ/円買いも有効か ブログ

米ドル高・円安で米ドル/円は110円超えへ! スワップ狙いのトルコリラ/円買いも有効か

■米国株は連日で史上最高値を更新 米国の株式市場の活況が、依然として衰えを知らず、代表的な株価指数は、連日のように史上最高値を更新しています。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

ナスダック総合指数 日足(出所:Bloomberg)

 その背景には、元々、経済が好調なことに加えて、FOMC(米連邦公開市場委員会)で3回連続の利下げが実施されたこと、そして、米中貿易交渉の合意に、楽観的な見方が広がっていることが挙げられます。

【FX初心者のための基礎知識入門】

●FOMCとは? 米国の政策金利FFレートやイベントのスケジュールを徹底解説!

■金融政策面では米ドルが優勢な展開 FOMCに関しては、今後しばらく、今の状態を継続することをパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長も示唆していますので、今後3~4カ月はこのまま、現状維持になると思います。

※フェデラル・ファンドレートの誘導目標レンジ上限を掲載

※FRBのデータをもとにザイFX!が作成

 ですから、さらなる相場の変動要因には、なりにくいかなと思います。

【参考記事】

●米連続利下げ終わりで米株高も息切れ? ドル/円はレンジ…108円台前半で買い方針(11月14日、今井雅人)

 ただ、今後、追加の金融緩和をするのは米国ではなく、ECB(欧州中央銀行)や日銀の可能性が高いと、市場関係者の多くは見ていますので、そういう点においては、やや米ドルが優勢な展開になるのかなと考えています。

■米中貿易交渉は合意に向けて進みそう 米中貿易交渉に関してですが、米国サイドからも中国サイドからも、そろそろ第1段階の合意に達しそうであるとの見方が示されています。

 そういう点を、市場は考慮しているのだと思います。

 ただ、トランプ米大統領が香港人権・民主主義法案に署名をしたことに対して、中国が内政干渉だと激しく反発しています。

 これが、米中貿易交渉の行方に影響してくる可能性があるので、少し注意が必要かもしれません。

今井氏はトランプ米大統領が香港人権・民主主義法案に署名したことは、米中貿易交渉の行方に影響してくる可能性がありそうだと指摘。写真は2017年11月の米中首脳会談時のもの (C)Bloomberg/Getty Images

 しかしながら、中国は、たしかに面子の国ではありますが、貿易交渉は中国経済の生き死にを左右するものですので、ここはぐっとこらえて、合意に向けて進むのではないかと、私は考えています。

 さて、それ以外のところを見回してみても…
政治的要因に変化なく、レンジ相場続くか。 レンジトレードの4つのポイントを考察! ブログ

政治的要因に変化なく、レンジ相場続くか。 レンジトレードの4つのポイントを考察!

■米中貿易交渉も英総選挙も状況は変わらず… 先週(11月11日~)の時点から、ほとんど状況は変っていません。特に追加するような出来事も起きていません。

【参考記事】

●米連続利下げ終わりで米株高も息切れ? ドル/円はレンジ…108円台前半で買い方針(11月14日、今井雅人)

 米中の貿易交渉に関しては、多少、楽観的に見ているといったような観測や関係者の発言も出てきていますが、こんなものを真に受けてはいけません。

 どっちに転ぶかは、最後までわからないと思っておくことが必要です。まだ、結果は先になると思いますので、当面、材料にはならないと思います。

 英国ですが、下院の総選挙運動が本格化しています。今のところ、保守党がリードを保っていて、労働党がそれに続いていますが、差はそれほど詰まってはいません。

 それよりも、自由民主党、ブレグジット党の支持率が低下してきており、また、候補者の乱立も起きていませんので、保守党と労働党の一騎打ちの構図になりつつあります。

政党別の支持率※最新データ調査日は2019年11月18日~19日

(出所:YouGov)

 今のままいけば、与党の保守党が勝利するという流れになっていきますが、まだ序盤戦ですので、もう少し状況を見極める必要があるでしょう。

■レンジトレードのポイント考察。まずは、エントリー このように、政治的な要因には大きな変化がないわけですので、引き続き、レンジ相場が続く可能性が極めて高くなってきます。

 そうなると、当然、レンジトレードを続けることになってくると思います。

 そこで、レンジトレードをするに当たってのポイントについて考えてみたいと思います。

※ザイFX!編集部が作成

 まず、エントリーについてです。エントリーについては、買いのときも売りのときも、エントリーのポイントを点で決めるのではなく、幅で決めることが重要です。

 チャート分析などをしていると、移動平均の何日線がどこのポイントだとか、トレンドライン上のポイントがどこだとかが、よく話題になります。しかし、相場はそんなにピンポイントで止まったりするわけではありません。

 そのポイントの手前で止まってしまったり、逆に少しそのポイントを突き抜けてしまったりすることもあります。ですから、買いの場合も売りの場合も一定の幅、つまりゾーンを決めて、そのどこかで買うというぐらいの柔軟性があってもいいと思います。

 例えば、108.00~108.30円のゾーンを設定して、その中で買うというぐらいのアバウトなイメージです。

 買い注文を入れる場合は、面倒でなければ、買いのポイントをゾーンの中で2つ、3つ決めておくというのもいいのではないかと思います。例えば、108.05円、108.15円、108.25円の3つに分けて買い注文を置く、というようなやり方です。

 売りの場合も、同様となります。

米ドル/円 4時間足(出所:TradingView)

 次に、前述のこととも関連しますが…