全銀ネット、全銀システム刷新を検討。新決済基盤を2030年めどに稼働へ、トークン化預金連携も視野

次期決済基盤を検討開始

国内銀行間送金網を運営する全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)が、現行の「全銀システム」に代わる新たな資金決済システムの構築に向けた検討を本格化している。2030年の稼働を一つの目標として、2026年度中に構築の是非を判断する方針だ。

官民の有識者で構成される「資金決済システムの将来像に関するスタディグループ(将来像SG)」が報告書を3月19日に公表し、新システムの基本的な方向性が示された。

1973年に稼働を開始した全銀システムは、銀行や信用金庫、農業協同組合など約1,000超の金融機関が接続する国内決済インフラの中核だ。

同システムは、長年の制度対応や機能追加の積み重ねにより、構造の複雑化が進行している。報告書では、現行システムを前提とした改修や機能追加には限界があり、新たなシステムを構築する方が柔軟性やコスト面で合理的となる可能性が指摘された。

具体的には、着金確認など新たな利用者ニーズへの対応が難しい点に加え、レガシーアーキテクチャの継続利用による持続性や安定性への懸念がある。また、システム設計の複雑化に伴い維持・更改コストが高止まりしていることや、ISO20022やFATFといった国際標準・規制への対応が困難である点も課題として挙げられている。

2023年10月に発生した中継コンピュータ障害も、こうした構造課題を象徴する事例と位置付けられている。

一方、海外ではリアルタイム決済システム(FPS)の整備が進んでいる。2023年の米国のFedNow、2018年の欧州のTIPSと豪州のNPPなどが代表例だ。

これらのシステムでは、送金前に口座の有効性を確認する仕組みや、送金後に入金結果を即時に把握できる機能が整備されているほか、携帯電話番号やメールアドレスを用いたエイリアス送金にも対応している。さらに、QRコードを活用した送金や、受取側から支払いを依頼できる支払リクエストといった機能も広く実装されている。

全銀システムではこうした機能の実装が限定的であり、国際的な決済インフラとの間で機能面の乖離が生じているという。

新システムはリアルタイム性・データ活用を重視

検討されている新たな決済システムでは、幅広い利用者が利用可能なリアルタイム決済の実現が柱となる。

稼働当初においては、送金の即時着金および着金確認機能への対応が図られるほか、送金前の口座確認機能の活用が進められる方向だ。また、携帯電話番号などを利用した送金手段についても検討が進められている。さらに、システムの安定運用などの観点から、送金金額には一定の上限が設けられる見通しとなっている。

またQRコード送金や支払リクエストといった機能については、稼働当初には実装せず、将来的な機能拡張の中で導入の是非が検討される見込みだ。

既存の全銀フォーマットについても一定の継続利用を可能とする設計が検討されており、参加金融機関の移行負担を抑えることが意識されている。

今回の全銀ネットによる新システム検討の背景には、国際規制への対応もある。

金融活動作業部会(FATF)は2025年に勧告16の改訂版を公表し、2030年末までの対応を求めている。この改訂により、従来は国内送金として扱われていた一部の取引がクロスボーダー送金とみなされる可能性があり、国内の決済インフラにも対応が求められることになる。

また、国際標準フォーマットであるISO20022への対応も重要な論点となっており、新システムでは国際的な相互運用性を意識した設計が前提となる。

ロードマップでは、2026年度に要件整理と構築判断を行い、2030年の稼働を目標とする方針が示されている。

稼働後は、現行の全銀システムと併存する形で運用されながら、段階的に機能拡張が進められる見通しだ。具体的には、2033年度を目安に送金上限の引き上げやQRコード送金、支払リクエストといった追加機能の実装、さらには国際送金への対応などについて検討が行われるとされる。さらに、2038年度には現行システムの更改タイミングに合わせて、新システムへの機能集約や役割分担の見直しが検討される可能性もある。

報告書では、ステーブルコインやトークン化預金といった新たな決済手段との連携も視野に入れる必要性が指摘されている。

新システムは、こうした新技術との接続や、海外の決済システムとの相互接続にも対応可能な基盤として設計される方向だ。国内決済インフラの刷新は、日本の金融システムにとって約半世紀ぶりの大規模な転換となる可能性があるため、今後の制度設計と実装の進展が注目される。

参考:一般社団法人全国銀行資金決済ネットワークスタディグループ検討結果
画像:PIXTA

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参照元:ニュース – あたらしい経済

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