ヴィタリック、予測市場の投機偏重を問題視。「ヘッジ」中心の設計を提起

予測市場の短期的収益モデルへの偏りに警鐘

イーサリアム(Ethereum)共同創設者のヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が、現在の予測市場(prediction markets)の在り方について懸念を示し、将来的な方向性として「ヘッジ(リスク移転)」用途への転換を提起した。同氏はこの考えを、自身のXアカウントで2月14日に投稿した。

ブテリン氏は、予測市場が一定の成功を収めている点は認めつつも、近年は暗号資産(仮想通貨)価格の短期的な値動きやスポーツベッティングといった用途に偏りつつあるという。このような用途は刺激は強いものの、長期的な意義や社会的な情報価値に乏しいと問題点を指摘した。

こうした傾向について同氏は、弱気相場において収益を確保するため、運営チームが短期的に収益性の高い分野へ傾く動機が働いている可能性に言及した。その結果として、プロダクトが本来の目的から逸脱し、質の低い方向へ最適化されていくリスクがあるとの認識を示した。

ブテリン氏は、予測市場の構造的性質について、市場に情報をもたらす「スマートトレーダー(smart traders)」が存在する一方で、必然的に損失を負う主体が必要になると整理した。その上で、損失を受け入れる主体として、(1)誤った見解に基づいて取引を行う参加者「ナイーブトレーダー(Naive traders)」、(2)情報を得る目的で意図的に損失を出す「情報の買い手(Info buyers)」、(3)リスク低減を目的として市場を利用する「ヘッジャー(Hedgers)」の三つの類型を挙げている。

同氏によれば、現在の予測市場は(1)の参加者に大きく依存した構造になっているという。この構造自体が直ちに不正であるとはしないものの、プラットフォーム側が「愚かな意見(dumb opinions)を持つ参加者」を呼び込み、そうした意見を奨励するブランドやコミュニティを形成する方向に最適化されやすい点に懸念を示した。

このような状況に対しブテリン氏は、予測市場の主要な用途を(3)の「ヘッジ」に広げていくべきだと提起する。ヘッジとは、将来の不確実な出来事によって生じる損失リスクを、あらかじめ市場取引によって相殺する行為を指す。同氏は、予測市場を保険的な役割を果たす仕組みとして活用することで、より持続可能な利用形態が成立し得ると述べている。

具体例としてブテリン氏は、将来の出来事によって損失を被る可能性がある主体が、そのリスクを相殺する手段として予測市場を利用するケースに言及した。例えば、バイオ企業の株式を保有する投資家が、選挙結果によって株価の分布が変わり得る状況で、特定の結果に賭けることでリスクをならすといった使い方が想定される。この場合、取引は将来を「当てる」ためのものではなく、望ましくない結果が生じた際の影響を和らげるための保険的な役割を果たすという。

同氏は、こうしたヘッジ用途が広がれば、予測市場において損失を受け入れる参加者が、短期的な投機家ではなく、リスク管理を目的とした利用者へと置き換わっていく可能性があると指摘している。

さらにブテリン氏は、ステーブルコインが担っている「価格の安定性」という役割についても、この文脈で言及した。同氏によれば、人々が本質的に求めているのは特定の通貨そのものではなく、将来予定されている支出を確実に賄えるという安心感だという。

その上で同氏は、安定性を単一の通貨に依存して確保するのではなく、生活費や事業コストといった支出項目ごとに、不確実性をヘッジするための予測市場ポジションを組み合わせて保有するという考え方を示した。加えて、地域やカテゴリごとの物価指数に対応する予測市場を用意し、各ユーザーがローカルLLMを用いて自分の支出構造に合った「将来N日分の支出」に相当する予測市場持分のバスケットを保有するという具体像にも触れている。これにより、将来コストが上昇した場合には予測市場での利益が損失を補い、逆に上昇しなかった場合には市場での損失が発生しても、実際の支出負担は軽減される形になるという。

ブテリン氏は、このような仕組みが実現すれば、従来の法定通貨や単一の価格指標に依存せずに、将来の不確実性に備える新しいリスク管理の形につながる可能性があるとの認識を示した。同氏はまた、こうしたヘッジ型予測市場は「人々が保有したい資産」建てである必要があり、無利息の法定通貨建ては機会費用が大きすぎてヘッジ価値を上回り得るとして、利付き法定通貨・ラップド株式・ETHなどを例示した。さらに「ヘッジを一般化することで法定通貨を置き換える(通貨概念を薄める)」という方向性も示している。

同氏は最後に、短期的な収益を生む「当て物」型の予測市場ではなく、長期的に参加者双方が納得できる金融インフラを構築すべきだと強調している。今回の投稿は、予測市場が直面する構造的な課題を整理し、その進化の方向性を再考する問題提起として位置付けられる。

 

画像:大津賀新也(幻冬舎 あたらしい経済)

関連ニュース

参照元:ニュース – あたらしい経済

コメント

タイトルとURLをコピーしました