
この記事の要点
- CoinSharesがBTC量子リスクに関する最新レポートを公表
- 量子攻撃による市場影響は短期的に限定的と評価、従来推計を修正
- 公開鍵が露出した旧式P2PK出力は約160万BTC存在するが影響は約10,200BTC
- 耐量子対応の急速導入は技術リスクと市場原則への影響を伴うと警鐘
「BTC量子リスクは限定的」CoinShares分析
デジタル資産運用会社のCoinShares(コインシェアーズ)は2026年2月6日、量子コンピュータがビットコイン(BTC)の暗号基盤に及ぼす影響を検証したレポートを公表しました。
同レポートでは、量子計算による潜在的な脅威を直近の危機とは位置づけず、管理可能な長期的課題として整理し、これまで示されてきた推計は過大評価であるとの認識を示しました。
同社は、公開鍵がブロックチェーン上で恒久的に露出している旧式のP2PK出力には約160万BTC(総供給量の約8%)が残存する一方、市場へ急激な影響を及ぼし得る規模は約10,200 BTCに限定されると分析しています。
「量子コンピュータ脅威論は誇張」
CoinSharesが定義したBTC量子脅威の現実的な影響範囲
量子脅威の焦点は署名方式に限定
CoinShares(コインシェアーズ)は、ビットコインにおける中核的なリスクは、署名方式(ECDSA/Schnorr)において公開鍵から秘密鍵が推定され得る点にあると整理しています。
同社は、量子計算によって発行上限である2,100万枚が変更されたり、プルーフ・オブ・ワーク(PoW)が回避されたりする可能性はないとしています。
さらに、ハッシュ関数(SHA-256)への量子アルゴリズムの影響にも言及したうえで、当面の現実的な攻撃対象は公開鍵がすでに露出している領域に限られるとの見方を示しています。
コインシェアーズが算定した実務上のリスク量
同レポートによると、P2PK形式に残る約160万BTCは、32,607個のUTXOに分散しており、平均規模は約50 BTCとされています。
このうち、仮に量子攻撃による盗難が生じた場合でも、短期間で市場へ流入し価格形成に影響を与える可能性があるのは、より規模の大きいUTXOに限られると説明しています。
その結果、実務的な観点から市場影響を伴うリスク量は約10,200 BTCに集約されるとの分析が示されました。
必要とされる量子計算規模の試算
コインシェアーズは、P2PKHやP2SHなど、支出時まで公開鍵が隠される形式について、攻撃者はmempool上で公開鍵が確認できる短時間に計算を完了させる必要があると指摘しています。
この時間窓は概ね10分未満とされ、公開鍵を1日以内に逆算するためには、誤り耐性を備えた量子計算機で約1,300万の物理量子ビットが必要になるとしています。
また同社は、この規模が現状の最大級量子計算機を約10万倍上回る水準である点にも言及しました。
同レポート内で、ハードウェアウォレットを展開するLedger(レジャー)のCTOであるシャルル・ギエメ氏の見解として、現行技術との差が極めて大きいことが紹介され、短期的な脅威論を抑制する材料とされています。
拙速な耐量子対応が招くリスク
コインシェアーズは、未成熟な耐量子方式を拙速に導入することや、脆弱とされるコインを焼却するなどの強い介入策について、技術的なバグ混入リスクを伴うと警鐘を鳴らしています。
加えて、こうした措置は財産権や中立性といったビットコインの基本原則を損なうおそれがあるとの認識を示しました。
同社の別のレポートでは、量子による盗難そのものよりも、善意の介入が供給固定や自己保管という前提を崩しかねない点が指摘されています。
一方で、金融当局や業界では移行準備を前倒しで進めるべきとの意見もあり、Europol主導の枠組みにより金融機関に量子耐性への移行計画策定を促した事例が報告されています。
アップグレードを前提とした量子対応論
米上場企業ストラテジー(旧マイクロストラテジー)の共同創設者で会長のマイケル・セイラー氏はX(Twitter)上で、量子計算はビットコインを破壊するものではなく、ネットワークのアップグレードを通じて強化されるとの見解を示しました。
The Bitcoin Quantum Leap: Quantum computing won’t break Bitcoin—it will harden it. The network upgrades, active coins migrate, lost coins stay frozen. Security goes up. Supply comes down. Bitcoin grows stronger.
— Michael Saylor (@saylor) December 16, 2025
ビットコインの量子ジャンプ:
量子コンピュータがビットコインを壊すことはありません。むしろ、ビットコインはより強固になります。ネットワークはアップグレードされ、アクティブなコインは新しいシステムへ移行し、失われたコインは凍結されたままです。セキュリティは向上し、流通するコインは減ることで、ビットコインはさらに強くなります。
これに対しコインシェアーズは、アップグレードの必要性自体を否定するものではなく、現実的な時間軸と被害規模を踏まえた段階的な移行が重要だと整理しています。
「量子コンピュータはBTCを強化する」
量子耐性技術を巡るBTCエコシステムの関連動向
こうした議論が展開される中、Bitcoin Optechのニュースレターは2026年2月6日、Falconを含む耐量子署名案や、ハッシュ系署名に関する具体的な議論を取り上げています。
また、1月6日に公表されたCoinbaseの機関投資家向けリサーチでは、量子脅威は差し迫ったものではないとしつつ、ソフトフォークを含む移行設計には年単位の準備が必要だと指摘しました。
インフラ面では、耐量子移行を支援するProject Elevenが1月14日に2,000万ドルのシリーズAを発表し、ネットワークおよび機関向けの移行支援ツール開発を掲げています。
今後は、量子耐性署名の候補が実装可能なサイズや検証コスト、運用手順の面で収れんしていくかに加え、旧式鍵が露出したUTXOの扱いを巡る合意形成が進展するかが、BTCエコシステム全体の焦点となります。
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Source:CoinSharesレポート
サムネイル:AIによる生成画像





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