
CLARITY法案に反旗、アームストロング氏の懸念とは
米大手仮想通貨取引所Coinbase(コインベース)のブライアン・アームストロングCEOは2026年1月15日、米上院銀行委員会で審議が進む仮想通貨市場構造法案「CLARITY法案」について、現行の法案草案を支持しない考えを明らかにしました。
同氏は自身のX(旧Twitter)を通じて声明を投稿し、これまで一定の期待を寄せてきた同法案について「現状の文言では問題点が多く、支持できない」と述べ、事実上の支持撤回を表明しています。
アームストロング氏は「草案に盛り込まれた複数の規定が、仮想通貨産業の成長や技術革新に中長期的な悪影響を及ぼしかねない」との認識を示しました。
具体的には、トークン化株式の展開を事実上制限する内容や、DeFi(分散型金融)分野に対する過度な規制設計によって、利用者のプライバシーや自己管理の原則が損なわれる可能性がある点を問題視しています。
同氏は「現行制度よりも市場環境を悪化させる法案であれば、成立しない方が望ましい」との見解を示し、今回の草案に対して距離を置く姿勢を示しています。
アームストロング氏の支持撤回は、同法案が上院銀行委員会で採決に向けた最終調整段階(マークアップ)に入る直前という重要な局面で行われたものであり、今後の審議や修正協議に影響を及ぼす可能性があるとの見方が出ています。
After reviewing the Senate Banking draft text over the last 48hrs, Coinbase unfortunately can’t support the bill as written.
There are too many issues, including:
– A defacto ban on tokenized equities
– DeFi prohibitions, giving the government unlimited access to your financial…— Brian Armstrong (@brian_armstrong) January 14, 2026
上院銀行委員会の法案草案を過去48時間にわたって精査した結果、残念ながらコインベースは現行の内容のままでは本法案を支持できないとの結論に至りました。
問題点は多岐にわたります。例えば、
・トークン化株式を事実上禁止する内容となっている点
・DeFiを制限し、政府に無制限の金融記録へのアクセスを認め、プライバシーの権利を損なう点
・CFTCの権限を弱め、イノベーションを阻害したうえで、同委員会をSECの従属的な立場に置く点
・ステーブルコインの報酬を事実上不可能にし、銀行が競争相手を排除できるようにする修正案が盛り込まれている点超党派での合意を目指し、上院議員の皆様が尽力されてきたことには敬意を表します。しかし、この法案は現状維持よりも大きく後退する内容であり、悪い法案であれば成立しない方がまだましだと考えています。今後、より良い草案に到達できることを期待しています。(後略)
「CLARITY法案」1月15日に修正審議へ
CLARITY法案が直面する規制論点と仮想通貨業界の反応
当初構想から乖離したCLARITY法案草案
CLARITY法案は、仮想通貨を証券と商品に区分する基準や、SEC(米証券取引委員会)とCFTC(米商品先物取引委員会)の監督権限を整理することで、包括的な仮想通貨規制の枠組みを整備することを目的としています。
しかし、アームストロング氏は最新の草案について、当初掲げられていた規制の明確化や産業育成という目的から逸脱しているとの認識を示しています。
特に問題視されている点の一つが、ステーブルコインに対する利息(報酬)提供の禁止です。
銀行業界の要請を背景に、ステーブルコインを保有するだけでは利息を得られない条項が盛り込まれており、同氏はこれを「銀行に競争相手を排除させかねない反競争的な規定」と位置付けています。
トークン化株式を巡るCLARITY法案の影響
またアームストロング氏は、株式をブロックチェーン上で表現・取引するトークン化株式についても、事実上の禁止につながる内容が含まれている点に言及しました。
コインベースも米国株のトークン化サービスを検討しているとされており、こうした新たな金融商品の発展機会が制限されることへの懸念が示されています。
加えて、修正案によってCFTCの権限が相対的に縮小され、SECの影響下に置かれる構造についても、イノベーションを阻害する規制設計だと批判しました。
一方で同氏は「仮想通貨産業が米国で持続的に成長するには、従来の金融サービスと同等の競争環境が必要だ」と述べています。
業界内で分かれるCLARITY法案の受け止め
この姿勢には、他の著名投資家からも賛同の声が上がっています。
ベンチャー投資家のティム・ドレイパー氏は、X上で「現行の上院妥協案は、成立しない方が望ましい」と投稿し、銀行業界の影響を強く受けている点を問題視しました。
一方で、米大手仮想通貨取引所Kraken(クラーケン)の関係者であるアルジュン・セティ氏は「完璧を求めすぎて前進を妨げるべきではない」と述べ、法案成立を優先すべきだとの立場を示しています。
「トークン化株式は次の主戦場」
米国仮想通貨規制を左右するCLARITY法案の焦点
採決見直し論が広がるCLARITY法案の現状
アームストロング氏がCLARITY法案への支持を撤回したことを受け、2026年1月15日(米国時間)に予定されている上院銀行委員会での採決について、見直しや延期が検討される可能性があるとの見方も出ています。
法案を巡る与野党間の調整に加え、金融業界や仮想通貨業界を含む関係者との意見集約も流動化しており、立法プロセスは当初想定よりも複雑な局面に入ったと受け止められています。
ステーブルコイン利息を巡る業界間対立
CLARITY法案を巡っては、複数の規制論点が交錯しており、その象徴的な事例としてステーブルコインの利息提供を巡る議論が挙げられています。
この論点では、銀行業界と仮想通貨業界の利害が鋭く対立しており、既存金融システムの安定性と新興分野の競争環境をいかに両立させるかが大きな課題となっています。
銀行側は預金流出への懸念から規制による抑制を求める姿勢を示す一方、仮想通貨事業者は市場原理や利用者の選択肢が不当に制限される可能性があるとして慎重な対応を求めています。
こうした利害の隔たりが、法案全体の合意形成を難しくしている要因の一つとなっています。
制度整備を求める業界と政治の駆け引き
コインベースを含む仮想通貨業界は、2024年の米大統領選挙において親仮想通貨派の候補者を支援するPAC(政治団体)に数百万ドル(数億円)規模を拠出してきました。
規制を巡る議論が政治動向と密接に結び付いている点も、今回のCLARITY法案審議を一層複雑にしています。
業界としては、規制の不透明さを解消し、長期的かつ安定的な事業展開が可能となる制度整備を強く求めてきました。
そのため、CLARITY法案を巡る混迷は、仮想通貨を既存の金融システムとどのように調和させるかという米国における仮想通貨規制の構造的な課題を浮き彫りにしています。
今後の修正協議や立法プロセスの行方は、引き続き市場関係者から注視されています。
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Source:ブライアン・アームストロング氏X投稿
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